表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
117/402

20・今まで何とかなってきた実績が憎い

( ・ω・)去年の同じ時期、前書きで

花粉なのか咳が酷いと書いてましたが

今年もバッチリです。



日本・とある都心のマンションの一室―――


ごろごろと寝転がりながら、スマホを操作する

家主の少女と、それを見ている猫の姿が一匹。


「ん~……毎年この時期になると、イベントが

 落ち着いちゃって、する事なくなるんですよねえ。


 バレンタイン、ホワイトデー、お花見とか

 軒並み終わっちゃって……

 エイプリルフールも今年は自粛してる

 みたいですし」


「状況が状況ですから、仕方ないですよ」


フィオナのグチにも似た話にナヴィは付き合い―――

何気なく彼女は続けて、過去の出来事を口に出す。


「そういえば去年の今頃くらいの時期に、

 ママがラクロスにはまっていたような」


「あー、フィオナ様が盛大に勘違いした

 アレですね(4章4話)」


後ろ足でカカカカッ、と頭をかきながら、

ナヴィは主筋の女神に受け答えする。


「よく覚えていらっしゃってやがりますね……

 そういやママ、アレ続けているの?」


「どうなんでしょうね?

 結構飽きっぽいところもあるお方ですから。


 案外、フィオナ様が勘違いした方向で極めて

 いたりして」


まさかー、と笑い合う女神とお目付け役。

そして続けてナヴィはフィオナに提案し、


「それはそうと、お時間があるのであれば

 アルフリーダ様に連絡を取ってみては

 いかがですか?


 母娘なのですから、たいした用事はなくとも

 娘からの連絡は嬉しいはずですよ」


「ん~……そうですねえ、たまには」


彼に促され、女神は天界へと連絡を取る事にした。

フィオナが意識を集中して間もなく、2人が

知っている声が室内に響く。


『あら、フィオナちゃん?

 どうしたの?』


「あ、いえ、特に用ってほどの事は無いんですけど、

 確かママ、ラクロスしていたでしょ?

 まだやっているのかなーって」


『失礼ね、ちゃんと続けているわよ。

 今、天界で5チームくらいに増えているんだから』


おおー、と素直に感心する娘と従僕に、

アルフリーダは続けて―――


『そうそう、あと歌って踊って可変翼機に乗る?

 だっけ?

 アレもちょっとチャレンジしてみようかと

 思っててねー。

 軍神パパに頼んで、取り合えず地球そちらの、えーっと、

 F14トムキャット? を再現してもらって、

 今それを』


ブチ、という音と共に強制的に神託カイセンは閉じられ―――


「アタシたちは何も聞いてない! いいね?」


「さて、そろそろ本編スタートしましょう!」




│ ■マービィ国・温泉街    │

│ ■フィオナ一行宿泊部屋   │




その日の夕刻過ぎ―――

『女神の導き』から戻って来たレンティルを加え、

バクシア・フラール両国といつも通り神託を繋ぎ、

シンデリンからの担保要求について話し合う事に

なったのだが……

当然というか想定通り反対が続出した。


アルプとファジーは『フィオナ様の命に従う』と

当人の同意は得られたものの―――




│ ■フラール国・アルプの果樹園  │

│ ■アルプの家          │




「ダメですー!! ですー!!

 シンデリンってアレっしょ!?

 あの女のところへアルプ君を行かせるのは

 刺し違えてでも止めますー!!」


「あの、メイさん落ち着いて……

 フィオナ様もお考えあっての事でしょうし」


と、猛反対するメイを、母親であるソニアの方が

なだめる状況となり―――


「ファジーだって行かせられないよ!

 アイツ、ルコルアの時からアルプさんとセットで

 狙ってたって話じゃん!」


「ミ、ミモザ姉も落ち着いて……!

 まだ行くって決まったわけじゃないんだから」


姉に抱きしめられながら、第二眷属である弟は

猛抗議する彼女に胸の中から声をかける。




│ ■バクシア国・首都ブラン  │

│ ■ボガッド家屋敷      │




「ううむ……

 確かに、トーリ財閥に対して相場の2/3以上の

 損害が出なければ、担保として引き取られる事は

 ありませんが―――


 何か打開策がおありなのでしょうか?

 フィオナ様」


アルプの義祖父にあたるローン・ボガッドは、

消極的ながらも理解に努めようとするが、

それにはやはり納得する材料が必要で―――




│ ■フィオナ一行宿泊部屋   │




「まま、まあ、それは?

 信じて頂くしかないというか、ですね」


しどろもどろになりながらも、話を進めようとする

女神に、第一眷属もサポートに入る。


「おじい様、不安はわかりますが―――

 今までフィオナ様のなさってきた事に

 間違いはありません」


「(くああぁああ……

 憎い! 今まで何とかなってきた実績が憎い!!)」


絶大な信頼を寄せられ、フィオナはそれまでの

成果に反省とも恨みとも取れない感情を抱くが―――

アルプはさらに続け、


「それに、あちらのネーブルさんとナヴィ様は

 懇意こんいになさっているみたいですので、もし万が一

 奉公労働者になっても、酷い扱いにはならない

 かと……」




│ ■アルプの家          │




「そうなんですか、ナヴィ様?」


「そういえば、以前ミイト国に行った際、

 トーリ家の従者と知り合ったというお話は

 聞いてますけど」


ファジーとメイが、第一眷属の説明に当人に

聞き返し、


(ん~……それもありますが、あのシンデリンって

 いう人も、フィオナ様と同じ匂いというか―――

 似たような印象があるんですよねえ。

 普段積極的なように見えて、いざとなると……

 ってところとか)


ナヴィの答えに、ソニアとミモザは微妙な

表情となり、


「ま、まあ……

 そこは個人差、とでもいいますか……」


「本当にそうなら安心材料になるんだけど、

 それはそれで」




│ ■フィオナ一行宿泊部屋   │




「何か国家をまたいで遠回しにディスられているような

 気がするんですけどアタシ」


「いいじゃないでしゅか。

 ぐろーばる(笑)で」


なおも何か言いたそうな女神をお目付け役は制し、


「でもアルプしゃんの言う通り、ネーブルしゃんが

 いれば大丈夫そう、というのは同意しましゅ」




│ ■ボガッド家屋敷      │




「ううむ……

 ナヴィ様までそう仰られるのであれば」


屋敷の主は心配そうにしながらも賛同し―――


「今のところ、それ以上の手立てはありませんし……」


「この条件下で、今年はクルーク豆の暴落を

 回避出来るってだけでも御の字なんだろうな。


 時間稼ぎが出来るってのもデカイ」



ローンの後に、ポーラとシモンも同調の言葉を続ける。




│ ■アルプの家          │




「あくまでも暴落をある程度食い止める、

 というだけで、値下がりそのものは

 避けられませんが―――」


マルゴットが厳しい現状を追認するように口を開き、


「それは仕方ないでしょう。

 これまでは、準備段階ともいえるところで介入

 出来ましたが……」


「何かもう、全部終わっているみたいだしね。

 これを覆すには、生半可な手では通じないよ」


バートレット伯爵とバーレンシア侯爵も、担保の件は

容認かつ前提として語り始めた。


「それにしても、シッカ伯爵―――」




│ ■フィオナ一行宿泊部屋   │




「はははっはい! 何でございましょう!?」


突然のバーレンシア侯爵の名指しに、レイシェンは

見えないはずの相手に姿勢を正す。




│ ■アルプの家          │




「いや、こんな事になってしまって、

 すまないと思って……

 護衛を頼んだつもりだったのに、

 巻き込む形になってしまったから」


おずおずと話す侯爵に、伯爵令嬢は―――




│ ■フィオナ一行宿泊部屋   │




「いえ、元『新貴族』のわたくしに取っても

 無関係ではないかと。


 ・・・

 あの人まで絡んでいるのですから―――

 何かの因縁、という事でしょう。


 それに、侯爵様に恩を返すには絶好の機会とも

 思っておりますので」


うやうやしく、フラールにいる侯爵に向かって

彼女は頭を下げる。




│ ■ボガッド家屋敷      │




「こう言っては何ですが―――

 シッカ伯爵様へ何らかの接触は無いのですか?

 その、マイヤー伯爵からは……」


何か少しでも打開策を見つけたい焦りからか、

言いにくそうに語るローンを、妻がたしなめる。


「あなた、いくら何でも……」


ポーラも同性として苦言を呈する。


「それはちょっと、さすがに」


彼は慌てて、失言を取り消す。


「いや、失礼な事を申しました。

 お忘れください」


そしてフォローするかのように、シモンが別の

話を振る。


「そういや、トニックさんとソルトさんは?

 今日は姿が見えねーけど」


その疑問に屋敷の主が答える。


「彼らなら、マービィ国へ向かわせた。

 こちらでの活動はこれ以上効果が得られないと

 判断したのでな。


 いったんフラールへ寄った後、フィオナ様の元へ

 行く予定だ」




│ ■アルプの家          │




「そうですか、お義父とう様―――


 あ、じゃあついでと言っては何ですけど、

 アルプに何か持っていってもらおうかしら」


「お手伝いいたします、お義母様!」


「あ……じゃあ私の方からも何か」


すっかり母親の顔になったソニアに、メイと

マルゴットが色めき立ち―――

いくつか私的な会話が各人で交わされた後、

神託は閉じられた。




│ ■フィオナ一行宿泊部屋   │




「(……って、結局解決策らしい手が全然

 出てこなかったワケですが)」


神託を終えた後、フィオナはガックリと肩を落とし、

そこへナヴィが追い打ちをかける。


「(しょれはフィオナ様の考える事でしゅ)」


「(いやいやいや、こういう時って何かいろいろ?

 案とか作戦とか出てきて、それをヒロインが

 上手くまとめる展開でしょ?)」


不満気に理想論を話す女神に、お目付け役は

さらに追撃し、


「(ま、諦めるでしゅ。

 フィオナ様はしょういうキャラでしゅし)」


「(どんなキャラだっつーのよ!?)」


小声で語り合う彼らを周囲が見守りながら―――

夜は過ぎていった。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在3160名―――




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ