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19・手を出しても出されてもいません

( ・ω・)会社の健康診断の結果、

『ギリメタボじゃありません』と

言われて喜び、お祝いにラーメン大盛りを

食する(バカ)



天界・フィオナの神殿じっか―――


そこで、アルフリーダの従僕であるナヴィは、

珍しく人間Verでくつろいでいた。


「ママ、フィオナの事なんだが……

 ってあれ? ナヴィ、お前しかいないのか?」


そこへ主人の夫でお目付け役をしている対象の

父親が入ってきた。


「あ、アルフリーダ様ならフィオナ様のところへ

 行っておりましゅ。

 何でも、びいえるカフェとやらに一緒に行く

 とかで」


聞き慣れない、しかし知らなくてもいい単語を

出されて彼は首を傾げるが―――

そんなユニシスを見て従僕は話を続ける。


「フィオナ様の事でしたら、後で私が伝えて

 おきましゅが」


「そうだね。

 えっと、以前ルコルアで新たな眷属を任じた時、

 彼に提供した武器があっただろう?」


果樹の豊穣の女神が提供した武器?

と思いナヴィは一瞬困惑するが、思い当たる物は

一つしかなく―――


「もしかして、『ぱんつぁーふぁうすと』の事

 (3章参照)でしゅか?」


「ああ、それなんだが……

 神が眷属に下賜かしされた武器として認められ―――

 今回、神器じんきとして認定されたんだよ。


 その事をフィオナに伝えて欲しい」


そう言われ、彼は軽く眉間にシワを寄せる

反応を見せ、


「……改めてお聞きしましゅが、フィオナ様って

 『果樹の豊穣を司る優しき女神』なんでしゅよね?」


「ウンまあ落ち着いてくれ。

 ナヴィの言いたい事はわかる。僕だって言いたい

 事がある。本当にたくさんある……


 でも今はやめておいた方がいい。

 とにかくツッコミどころが多過ぎるんだよ。

 この茶番1回では全然足りないくらいに」


ナヴィを見つつも、どこか遠いところを見ているような

ユニシスに、これ以上何も言えず―――


「……まあ、そうでしゅね。


 しょれではそろそろ現実逃避―――

 もとい、本編スタートしましゅ」




│ ■温泉宿メイスン・最上級客室『光の間』  │

│ ■シンデリン一行宿泊部屋         │




「えーっとね、もう1回言ってくれるかしら?」


フィオナは、前回の『アンカー』通り―――

シンデリンに話を通すため、彼女の部屋を訪れていた。


本来は一人だけで来る予定だったが、少しは商売上の

事を知っている人間も必要だと、アルプが名乗り出て

お供として同行している。


ただ、さすがに『下落するであろうクルーク豆を、

通常の相場の2/3を保証して買い取って♪』という

申し出に、トーリ家の姉妹と従者は困惑を通り越して

呆れ果てていた。


「……値下がりへのけん制には……なるけど……

 それだけだと……思う……」


「マービィ国の農家の損害は抑えられるかも

 知れませんが、それも2/3―――

 生活が苦しくなるのは変わりませんし、

 しかもそれでトーリ財閥は大損害をこうむりります」


返答を待たず、ベルティーユとネーブルが続ける

言葉に、女神と眷属は反論出来ずに黙り込む。


「それにねぇ、もしトーリ財閥が

 『いくらでも相場の2/3で買い取ります』

 なんて宣言したら、それこそ格好の空売りの的に

 なるわ。


 むしろ暴落に拍車がかかるかも知れない。

 取りっぱぐれのないスポンサーが出現するんだから。


 まあ、マービィ国のクルーク豆程度なら、全部

 買い占めたところで、それほどダメージには

 ならないけど……」


上位三ヶ国の財閥だけあって、資本には桁違いの

余裕をシンデリンは語るが、問題は……


「何でウチがそれで一方的に損をしなきゃ

 ならないの?」


「(ですよねー!!)」


彼女の火の玉ストレートを受けて、フィオナは

声には出さずに心の中で叫ぶ。


「あ、あの……どうしてもダメですか?」


アルプが思わずフィオナの横から、シンデリンへ

懇願するように声をかける。


「い、いえ、いいんですよアルプ。

 話はしたので、これで『アンカー』は

 達成されましたから、もう」


眷属と、同時に自分を慰めるようにして、女神は

席を立とうと手に力を入れた時、


「いいわよ」


その瞬間、声の主に妹と従者、そしてフィオナと

アルプの視線が集中した。


そして間を置いて、疑問と当惑の言葉が続く。


「お、お嬢様!?

 いったい何をお考えですか?」


「……シンデリンお姉さま……?」


同じトーリ家の彼らですら意外だったのだから、

当然申し入れをしに来た彼らもまた、困惑し―――


「い、いいい、いいんですか?」


「あの、損害は元より……

 同じ『枠外の者』に疑われているのでは」


フィオナとアルプの想定外かつ心配そうな問いに、

シンデリンは答える。


「こちらでも情報は分析しているの。

 『枠外の者』はともかく、あの『新貴族』は―――

 今回、マービィ国をグレイン国の支配下に置く事を

 目的としている。

 またマービィ国も保護国化を望んでいる。


 経済破綻はその大義名分のようなもので、

 そのおこぼれを『枠外の者』が拾う手はずだから、

 そこだけなら『新貴族』と敵対する理由は無いわ」


淡々と話す彼女に、ネーブルが問い質す。


「で、ですがそれでは……『枠外の者』とは?」


「今回は関わらないって言ってあるし、それに

 『枠外の者』は利益が最優先。

 こっちの方が儲かれば文句を言われる筋合いは

 無いわ。


 だいたい、最近はあいつらのおかげで全然

 儲かってないんだから……

 という事は連中の逆をやればいいのよ。


 期待しているわ、女神様♪」


すっかり商人の顔になったシンデリンに、話が

上手くいっているはずのフィオナは、おろおろ

しながら対応する。


「ええええ……で、でもですねえ、今回の話はその、

 決して利益を保証するものでは」


「あら、もちろん担保はもらうわよ?」


突然の申し出に、フィオナとアルプは顔をいったん

見合わせて、


「へ? 担保って……」


「いったい何を……

 それに、そちらが納得するような価値があるものを、

 こちらが用意出来るとは思えませんけど」


心配そうに伺うアルプに、シンデリンは視線を

向けたまま―――


 ・・・・・・・

「いるじゃないの。


 実際に高値がついた事もあるし……ねぇ?」


「っ!」


その目から逃れるように、少年は隣りの女神に

しがみつくようにして隠れる。


「え……ちょっと、それはもしかして……」


「正当な要求であり対価だと思われますけど?

 あ、でもアルプ君だけじゃ足りないわねえ。

 ファジー君とナヴィさんも付けて頂けますか?


 実際にクルーク豆が下落した分―――

 マービィ国全土のそれを受け入れた場合、

 恐らく金貨10万枚くらいは必要になるかと。


 財閥としてはそれくらいでビクともしませんが、

 それなりの物は頂きませんと、ね。


 いえ、人身売買とかではありませんよ?

 奉公労働者となって、カラダで返してもらう、

 という事で―――」


ゆっくりと、それでいてまくしたてるような

シンデリンの口調に、フィオナとアルプが

圧倒されていると、横から彼女の妹が割って入り、


「……ん……じゃあ……シンデリンお姉さまは……

 その3人で……


 その代わり……ネーブルお兄ちゃんは……

 私がもらう……から……」


「え”? いやちょっと待ってそれとこれとは

 話が別ってゆーかー?」


予期せぬ伏兵の登場に、彼女はそれまでの余裕の

仮面を脱ぎ捨て、純度100%の動揺を見せる。

そして追撃するように女神も参戦し―――


「そーですよ!

 だいたい、4人も独り占めしようだなんて

 欲張り過ぎです!」


「そ、そういう貴女はどうなのよ!

 いつもナヴィさんを従えているって聞いたけど!?」


反論というより反射に近いような理由で、シンデリンは

応戦する。


「あー!! それを言うならそっちには

 ネーブルさんがいますよね!?

 あんな美形さんがいて何が足らないんですか!」


「わわ、私とネーブルはまだ清い関係なの!

 貴女と一緒にしないでくださる!?」


「アタシもですー!!

 まだ手を出しても出されてもいませんー!!」


ぎゃあぎゃあとわめき合う体になってきたところで、

再び妹も加わり、


「……まだ、という事は……

 これからする、という事……?」


「ベベベ、ベルちゃん!?

 ちょちょちょちょっと話が飛び過ぎってゆーか!?」


「そそっそうですよっ!

 ユイノーだってまだだし、それに式も!!」


さらに状況が加速し、収拾がつかなくなっていくのを

少年2人は遠巻きに見つめ―――


「……あの、アルプさん。

 今、ナヴィさんっていますか?」


「え? は、はい。

 多分下の僕たちの部屋に……」


小声でネーブルはアルプの耳に口を近付け、


「では呼んできてもらえますか?

 お嬢様なら自分が何とか出来ますが―――

 フィオナ様は彼の方が上手く打開するというか、

 大人しくさせられそうな気がしますので」


「は、はいっ」


こうしてアルプは部屋を抜け出すと、下の階の

自分たちの宿泊部屋まで戻り―――

ナヴィに状況を説明し、また上の部屋まで

同行する事になった。




―――30分後―――


│ ■フィオナ一行宿泊部屋   │




「まったく……

 ただ話をしてくるだけが、どうして

 こうまでこじれてるんでしゅか」


シンデリンの部屋まで行ったナヴィは、ネーブルと

一緒に取り合えず彼女たちを物理的に引きはがすと、

いったん落ち着くようなだめ……


頭が冷えたところで、改めて彼女から―――

『クルーク豆の買い取り保証』の同意、

『損害が出た時の担保として、アルプ・ファジー・

ナヴィを奉公労働者として差し出す』条件、

これらをいったん検討するとして、やっと

自分たちの部屋に戻ってきたのであった。


「確かに金貨10万枚の担保という事であれば、

 決して不当な要求とは言えないのでしょうが……」


その提案に、レイシェンはさすがに頭を抱え―――


「ただまあ、言質を取った事はよしとしましゅ。


 それらを踏まえて、今晩の神託でみんなに相談

 しゅるとしましゅよ」


「え”? あの、いいの?」


自分たちが担保になるのは―――

という言葉を飲み込んで、きょとんとして聞き返す

女神に、眷属とお目付け役は応える。


「ぼ、僕はフィオナ様の命じるままにっ」


「大丈夫大丈夫、しょんなに気負うなでしゅ。


 私たちが担保になっている間に、フィオナ様が

 解決策を考えればいいだけでしゅよ」


「その『だけ』っていうのが一番大きな

 問題なんですけどねえ!?」


女神の絶叫をナヴィは聞き流し、伯爵令嬢と眷属は

あたふたしながら双方をなだめ―――

とにかく、今晩の神託を待つ事になった。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在3153名―――




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