18・それもう助からないヤツ
( ・ω・)シナリオが長期的になってネタが
詰まってくると、他人のSSを書いている
気持ちで書く事にしています(現実逃避)
日本・とある都心のマンションの一室―――
そこで家主の女神が、神託を通じて異世界と
連絡を取っていた。
│ ■マービィ国・温泉街 │
│ ■温泉宿メイスン・大広間 │
「え? 先物取引について?」
「ええ。どうもウチのバ……ダ女神が理解して
いりゅかどうか怪しいので、改めて勉強さしぇて
頂ければと」
ソファに座って対峙しながら、ナヴィがシンデリンと
話し合う。
│ ■日本国・フィオナの部屋 │
「言い直してダ女神ってどういう……
まあ話を戻しますと、その先物取引って―――
聞いている限りでは、悪いイメージしか
無いんですけど」
今回の件もあり、フィオナは素直に感想を述べる。
│ ■温泉宿メイスン・大広間 │
「でも、トーリ財閥では一般的といいますか、
商品の取引はむしろそれが主体ですわ」
「しょうなんでしゅか?」
意外そうに聞き返すお目付け役に、彼女は説明する。
「確かに投機的な印象が強いんでしょうけど、
本来の目的は、『相場に左右されない事』
ですからね。
もちろんそれで、損をする時もありますけど……
基本的には長期的な取引が前提ですから、
年間を通して黒字であれば問題はありません」
「ふみゅ。
規模が大きいところだからこそ、出来るという
わけでしゅか」
納得するナヴィに、シンデリンは続ける。
「商売で重要なのは『信用』と『継続』です。
どんなにいい商品でも、時期によって値段が
半分になったり3倍になったりしたら、安定して
取引を続けてくれるところはありません。
価格を大きく上下させずに商品を市場に
供給する事―――
それが安定して利益を生み出すのですわ」
「なるほどでしゅ」
ウンウンとうなづく彼に、彼女はさらに
補足を加え―――
「それに、ナヴィさんのおっしゃる通り、
ウチは規模が大きいですから。
商品が暴落して在庫が有り余っても、それを保存、
貯蔵させる施設には事欠きませんし―――
品薄になったら、それを放出すればいいだけです。
それで繰り返し調整を行えます」
「―――という事でしゅが、聞いてましゅか?
しょして理解してましゅか?」
│ ■日本国・フィオナの部屋 │
お目付け役から問われた女神は―――
「あー、
そーゆーことね。
完全に
理解した」
(それ、絶対にわかってない時に使う
セリフオブザイヤー(万年)ですからね。
まあいいです。
そろそろ本編スタートしますよ)
│ ■マービィ国・温泉街 │
│ ■フィオナ一行宿泊部屋 │
神託から1日明けて翌朝―――
ナヴィは改めてマービィ国の現状と、ボガッド家や
その他の対応、対抗策を女神に説明していた。
「まあアタシも途中までは聞いてましたけど……
結構深刻を通り越して絶望的じゃない?」
「あとはあちらがいつ情報を開示するか、
だけでしゅからね。
正直、『枠外の者』が仕掛けてきた中では
最悪の状況でしゅよ。
『新貴族』も絡んでましゅし」
お目付け役と女神の会話の中に、第一眷属も
割って入り―――
「バーレンシア侯爵様は可能な限り資金を
使ってもいい、って仰ってましたけど……」
「それはボガッド氏に止められましたからね。
マービィ国に新農法は定着するでしょうから、
今年だけしのいでも意味はありません。
共倒れを避けるためにも、赤字運営は
避けねば、という彼の意見は正論だと思います」
誰からともなくため息が出て、それを一番最初に
止めたアルプが口を開く。
「結局のところ、昨日レンティルさんが言っていた
事ですが―――
暴落する見込みのクルーク豆の需要が上がるのが
一番の解決策なのですが」
その彼は、最悪の情報を共有するために、同じ地の
『女神の導き』へ報告しに行っていた。
「まとめてみましゅと、解決というか条件は、
・クルーク豆の暴落を最小限に食い止める。
・しょのために、買ってくれる先を新しく探す。
という事くらいでしゅね」
「 ウ ン 、ム リ ゲ ー 」
早々に諦める女神に、久しぶりにナヴィは
アイアンクローを極める。
それを少年と令嬢があたふたしながら見守り―――
「簡単に諦めるなでしゅ。
お前の存在意義とここに来た意味を思い出しぇ」
「あだだだだつーかアタシの本職は果樹の豊穣
なんですけどねー。
何か解決方法がそれ以外ばっかりって気が。
んー、それならちょっと『アンカー』していい?」
その言葉にお目付け役は手を放し、周囲はホッと
息をつく。
「確かに、今回はかなり厳しい状況でしゅからねえ……
ただ、取り扱いには注意するでしゅよ」
そして彼女は地球の自分の部屋のPCを通じて、
『アンカー』たちへ語り掛ける。
「(とゆーわけなんですけど、結構マズイ状況で
ありまして)」
【 まーた厄介な状況になってんな…… 】
【 初期のフラールを思い出す詰みっぷりじゃん 】
状況を伝えると、ストレートな反応が返ってきた。
「(やっぱりってゆーか……
どれくらいマズイと思います?
ガン〇ムで例えると?)」
【 ザ〇で大気圏突入 】
「(それもう助からないヤツやんけ!!
ま、まあそう言わないで……
何か助言をですねってっていうかこれがあなた達の
存在意義じゃないの?)」
【 金もらってねーのに勝手に仕事に
するんじゃねーよw 】
【 でもなー。
ここまでくると打つ手なんて限られてるぞ 】
【 あるとすりゃ、時間稼ぎくらいか? 】
「(ん!? あるにはあるんですか?
それはどんな)」
一筋の光明にすがるように、女神は食いつく。
【 要は値下げを食い止めたいんだろ? 】
【 誰かが、例年の半額とは言わずとも2/3で
買うって保証すればいい 】
「(そ、それなら確かに値下げが止まるでしょうが……
その後は?)」
おずおずと切り出す女神に、『アンカー』達は、
【 そこまでは知らねーよ 】
【 だから時間稼ぎなんだって 】
【 その間に、何かクルーク豆とやらが売れるような
イベントが起きるか、それとも起こすか 】
さすがに事が事だけに、この場で何か決めるのは
危険だと判断した女神は、撤退の方向に入る。
「(んむむむむむ……
取り合えず持ち帰って検討しますね)」
【 お前はどこぞの営業かw 】
【 つーか、知り合いに結構金持ちがいたろ。
誰かに話持ち込めないのか? 】
「(まあ、話すくらいならいいですか……
どうせバーレンシア侯爵かマルゴットさんか、
ボガッド家の人くらいしかいませんし。
では久しぶりに『アンカー』を!
『アンカー』は今のスレで……800!
聞きたい事は―――
『今回の話を持ち込むお金持ち』!
―――さあ、アタシを導き給え……!!)」
>>800
【 シンデリン 】
「(え?
……え?)」
【 そんなに驚く事か? 】
【 うん、多分今まで出てきた中では
一番の金持ちだろ 】
いきなり予想外の人物を出されたフィオナは
戸惑い、取り合えず『アンカー』で決まった事を
皆に伝えるため、PCでのやり取りを閉じた。
│ ■フィオナ一行宿泊部屋 │
「……また何をしているんでしゅか。
確か彼女、『枠外の者』の中でこっちとの関係を
疑われているから、今回は動かないって言ってた
でしゅよね?」
女神は話を聞いたお目付け役から当然のツッコミを
食らい―――
第一眷属と伯爵令嬢がフォローに入る。
「で、でもお話くらいならもう何度もしてますし」
「そうです。えっと……取り合えず話を
彼女に伝えてみて、それから事態がどう動くか
見るくらいはいいのでは」
2人の言葉を聞いてナヴィはふぅ、と静かに
一息つき、
「しょうでしゅねえ。
今のところ、他にフィオナ様にやってもらう事も
見当たりましぇんし。
じゃあ、フィオナ様は話をしてきてくだしゃい。
私とアルプ君とレイシェンしゃんは、クルーク豆を
売り込む方法が無いか考えてみましゅ」
「は、はいっ!」
「心得ました」
│ ■マービィ国・ファーバ邸 │
同じ頃、同国内で―――
ラムキュールは同じ『枠外の者』の、ファーバの
屋敷にいた。
「そろそろ……か」
家主、そしてマイヤー伯爵もおり―――
短く端的に言葉を交わす。
「さて、準備は万端のようだが」
「はいはい。いつでも動けますよ。
マイヤー伯爵様」
伯爵はファーバから視線を外し、それをそのまま
ラムキュールに向ける。
「……ミイト国のトーリ財閥が、妙な動きを
しているとの情報があるが」
「それはこちらでも把握しております。
クルーク豆が暴落する情報を入手したのでしょう。
それに便乗して空売りを仕掛けるつもりのようです。
ただ……」
そこで言葉が止まったラムキュールに、伯爵が
先を促す。
「ただ、どうした?」
「……いえ、取るに足らない事かと」
「いやいや、そこで止められては返って
気になりますよ」
言いよどむ彼に、ファーバが軽口で催促し―――
「こちらにトーリ財閥の令嬢姉妹が
来ておりますが……
何というか、今回の件に関しては非常に
消極的でして」
「そうか……
最低限、邪魔さえしなければそれでいい。
例の女神様御一行はどうしている?」
マイヤー伯爵の視線が今度はファーバに向けられ、
彼もそれに応える。
「街を散策したり、『女神の導き』とやらを通じて
調査はしていたようですがね。
特区には入れませんし、情報統制しておりますから
詳しい状況はわからんでしょう。
ま、もっとも知ったところで―――
どうしようも無いんですが」
「それで、情報開示の時期はいつにしますか?」
『枠外の者』2人が『新貴族』に向き合い―――
「それは国王に決めさせてやろう。
その程度の覚悟は背負ってもらわんとな」
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在3149名―――