表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
114/402

17・フィオナ.exeが動作を停止しました

( ・ω・)もう茶番も100回以上

やっているので重なる事があるかも

知れない(前もって言っておけば

許される感)



日本・とある都心のマンションの一室―――


家主の少女が、手元にあるスマホを捜査しながら

お目付け役(猫Ver)に何気なくつぶやく。


「あー、ホワイトデーかあ。

 もう今年もそんな季節になったんだ」


「相変わらず季節の変わり目を感じるのが

 ソシャゲ準拠ですか。


 ……そういえばアルフリーダ様も、

 やたら気合を入れてたような」


基本的に趣味は同じ母子なので、同時に

思い当たる事もあった。


「あー、ママならパパにちゃんとしたチョコレート

 あげる事が出来たしねー」


「そうですね。

 フィオナ様との合作はちゃんとした物では

 無かったですし」


「やめろその話はアタシに効く。

 で、ママ、どんな感じだった?」




―――ナヴィ回想中―――


│ ■天界・フィオナの神殿じっか  │




「何かあったのですか、アルフリーダ様。

 機嫌が良さそうですけど」


鼻歌混じりに踊り出しそうなくらいの陽気な主人に、

ナヴィは後ろから声をかける。


「今日はホワイトデーですからねー♪

 バレンタインのお返しがもらえる日なのですよ。


 しかも3倍!

 3倍も絞れちゃうのよー♪」




―――ナヴィ回想終了―――




「?? しぼるってなあに?(棒)」


疑問を呈する少女に、ナヴィもまた首を傾げ―――


「さあ。ここはじゅうはちきんではないので……(棒)」


「そうね。

 きっとぼくたちあたしたちにはわからない

 ことだわ。


 それではそろそろ、ほんぺんすたーと

 しましょう(棒)」




│ ■バクシア国・首都ブラン  │

│ ■ボガッド家屋敷      │




「……マズい事になりました、フィオナ様」


いつも通り、夜の定期連絡としている神託で―――

ローン・ボガッドから放たれた第一声がそれだった。




│ ■マービィ国・温泉街    │

│ ■フィオナ一行宿泊部屋   │




「ど、どゆこと?

 何がわかったんですか?」


女神が不安とも焦りとも取れない言葉で返し、




│ ■フラール国・アルプの果樹園  │

│ ■アルプの家          │




「そういえば、トニックとソルトの2人が戻ってきた

 みたいですが……」


「そんなに緊急性の高い情報を持ち帰って

 きたのですか?」


マルゴットが自分の使っている情報屋2人の状況を

確認し、続けてバートレットが疑問を呈する。




│ ■ボガッド家屋敷      │




「えっと、確かグレイン国から―――

 例の農法で得られる詳しい成果がわかったとの

 情報ですが……


 でも、豊作になるのはもう知ってたんですよね?

 何がそんなに問題なんですか?」


第三の眷属、ポーラも疑問を口にし、

ローン・ボガッドから返ってきた答えは―――


「結論から言うと、特区で行われている

 クルーク豆の生産量が、5倍近い増産を

 見込んでおるとの事。


 これに通常の農法で行われている、

 マービィ国全土での生産量を合わせると、

 例年の3倍近くに……!」


その言葉に、ポーラとボガッド夫人、

トニック、ソルトの4人は何だか状況が

飲み込めない顔になり、対照的にシモンは

顔を青ざめさせた。


「あちゃー……

 ちょっとシャレになんねえぞ、コレ」




│ ■アルプの家          │




「それは……ちょっとどころの話じゃなく、

 とんでもない事になります」


「お、お義母さま?

 何がそんなに……」


アルプの母、ソニアの発言にメイも状況が

上手く飲み込めず、思わず聞き返す。




│ ■フィオナ一行宿泊部屋   │




「3倍……

 そんなの、見た事も聞いた事もありません」


第一眷属も母の言葉に同調するように、

声と視線を床に落とす。


「え、えっと……

 でもでも、アルプの果実だって、すっごく

 増産していたような気がするんだけど。

 3倍どころじゃなく……」


「わたくしにもよくわからないのですが。

 何がそんなに問題なのですか?」


同室の女性2人もわけがわからず顔を見合わせ、

ただレンティルとナヴィは沈黙し続けていた。




│ ■ボガッド家屋敷      │




「アルプの果実は、需要に迫られての

 ものですからな」


「ファジーのもそうだけどさ、いくら仕入れたって

 すぐ売り切れるのが確定してるんだ。


 だけど、マービィ国のクルーク豆は主食だ。

 嗜好品しこうひんでもない。


 いくら供給が上がったって、需要が無けりゃ―――」


老人と少年の商人2人が説明を行い、同室に

言葉を続ける者はいなくなった。




│ ■フィオナ一行宿泊部屋   │




「えーっと、豊作って今までにもあったんじゃ

 ないですか?

 今回だけ何でそんなに深刻に……」


フィオナの言葉に、アルプはふるふると

首を左右に振り、


「僕の果樹園でも豊作や凶作はありましたが……

 豊作になったとしてもせいぜい3割か4割増し、

 多く見積もっても2倍になった事はありません。


 3倍というのは明らかに異常です」


「……すでにクルーク豆の相場は例年に比べ、

 下がり始めておりますが―――


 全体の収穫量が3倍になる、なんて情報が出たら

 それこそ悪夢……」


レンティルがうめくように引き継ぐと、

フラールの方で反応があり、




│ ■アルプの家          │




「なるほどねぇ。

 だからグレイン国は―――

 『取引は相場通り』にしたワケか」


侯爵が口を開き、第二眷属とその姉も話に

食い付き気味に割って入る。


「ど、どういう事? 侯爵様」


「あたいらには何が何だか……」


目を白黒させている姉弟に、バーレンシア侯爵は

頭をポリポリとかきながら、


「相場っていうのは、言ってみれば時価だからね。

 収穫量が3倍になって単価が落ちても、それが

 1/3で止まる保証はどこにも無い。


 パニックになって投げ売りが始まったら、

 それこそ1/10まで落ちるかも知れない。


 だから同時に情報統制も行っている。

 効果を最大限に引き出すためにね。


 これを考え付いた人は、なかなかの策士だよ」




│ ■フィオナ一行宿泊部屋   │




「さ、さすがはバーレンシア侯爵様……!

 ビジネスにまで精通しておられるなんて……!!」


目を少女マンガのようにキラキラと輝かせながら、

レイシェンは侯爵を称える。


「う~ん……でもそれがどれだけマズい事なのか

 今イチ実感が」


それまでのやり取りを聞いても今ひとつピンとこない

女神に、お目付け役がぽんぽんと肩を叩き―――


「フィオナ様がガチャで一番レア度が高いキャラを

 引いたとしましゅ……


 しょれが来週3倍の確率で復刻しゅたら?」


「何それ許さねぇ!!」


フィオナとナヴィにしかわからない会話は

さらに続けられ―――


「しょのキャラの価値はどうなりましゅか?

 確率を3倍にされたから1/3でしゅか?」


「なワケないじゃん!!

 ゴミ同然に決まってるじゃん!!」


ヒートアップする女神をどうどう、とナヴィは

なだめつつ、


「つまりはしょういう感じで、予想以上に

 価値が落ちていくと考えてもらえれば

 いいでしゅ」


そしてようやく、同室に静寂が戻ってきた。




│ ■アルプの家          │




いったん、誰からともなく発言が切れたところで、

フラールのマルゴットが口を開いた。


「でも驚きましたわ。

 失礼ではありますけど……

 普通、上位の貴族様ってもっと経済に

 うといものだと思っていましたのに」


商人から侯爵に賛辞の声が送られるが、

謙虚にバーレンシアは返す。


「ほら、僕は貴族は貴族でも貧乏だったから。

 一人で何でも勉強したり出来たりしなければ

 ならなかったしさ。

 いろいろ商売にも手を出してたし。


 あと先物取引では結構痛い目に……ゴニョゴニョ」


「?? 何かおっしゃいましたか、侯爵様?」


「あ、いや別に……アハハ……」


バートレットの質問を、バーレンシアは

笑ってごまかした。




│ ■ボガッド家屋敷      │




いったん、和やかな雰囲気が形成されたが、

ローン氏がその空気を仕切り直すように言葉を発する。


「言いにくい事ですが、侯爵様のご明察の通り―――

 暴落するのは確定です。


 ……マービィ国の経済は壊滅するでしょう」




│ ■フィオナ一行宿泊部屋   │




「で、でも……それで被害が出るのはクルーク豆の

 生産者だけですよね?

 それで国全体が壊滅ってするっていうのは」


フィオナが疑問を提示すると、該当国のレンティルが

答える。


「いえ、フィオナ様……

 残念ですが、ボガッドさんの言う事は正しいです。


 この国ではおよそ半数の人間が、クルーク豆の

 生産に何かしらの形で関与しております。


 それらの人々の収入が激減するという事は、

 その人たちを相手にする商売もまた……」


「今まで物を売っていた相手がほとんど

 貧乏になってしまうんですから、

 安くしないと物は売れない、下手をしたら

 物そのものが売れない……

 って事ですよね」


アルプが、その絶望的な状況を追認するように

声を絞り出す。


「え、えっと……

 それで対抗策っていうか解決策は?」


フィオナがおずおずと、打開する方法をたずねる。




│ ■ボガッド家屋敷      │




その問いに、バクシアの豪商が名乗り出るように応じ、


「消極的な手ではありますが、すでに大量の

 奉公労働者が出る事を想定して―――


 今、こちらでバーレンシア侯爵様の領地及び、

 ルコルアで果実の加工工場の建設を計画しておる

 ほか、人手不足のところを探している最中です」


「あ! あれか!!(5章13話)」


ローン氏の言葉にシモンが反応し、隣りにいた

ポーラが驚いて説明を求める。


「そういえばシモン君、頼まれていましたね」


「ああ、だけど……

 バクシアでもルコルアでも、どんなに詰め込んだ

 ところで、50人ずつが限界だと思うぜ。


 そこで働く労働者の世話をする人間を含めても、だ」


老人は、次に情報屋2名の方に向き直って、


月水晶ムーンクリスタルの鉱山はどうなっておるかな?

 それと、人手不足のところは……」


その問いに、トニックとソルトは顔を見合わせ―――


「鉱山の方はカベルネさんとスタウトさんが、

 あと20人は欲しいと言っていました。

 ただ、当然肉体労働……若い男限定です」


トニックが答えたあと、ソルトが続き、


「基本的に職人の国っすから、技術を覚える気なら

 受け入れるところはあると思いますが―――


 いずれは国に帰るつもりなら難しいかと……」


それを聞くと、老人はフーッとため息をつき、


「どちらにしろ、これは一時しのぎでしかない。


 フラールと同じ規模の奉公労働者の流出が

 起きると想定しても、その数2,000人―――

 その中で、なるべく女性や子供から救う事を

 前提として動くしかない」




│ ■フィオナ一行宿泊部屋   │




「確かに、焼け石に水でしゅね……

 聞いてましゅか、フィオナ様?」


反応が無い女神に目を向けると、少年が

彼女の前で手を左右に振ったりしており、


「あの、先ほどからフィオナ様が動かなくなって」


「フィオナ.exeが動作を停止しました状態でしゅね。

 まあいいでしゅ。


 取り合えず私が神託を引き継ぎましゅので、

 話し合えるところまでやりましゅよ」




こうして、フィオナを除いての話し合いは―――

ナヴィが神託を続けられるギリギリのところまで

行われた。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在3142名―――




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ