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12・誰もがあえて口に出さなかった事を

( ・ω・)この小説の半分は病名を言わない

医者の優しさで出来ています。


勢いだけのギャグ・ラブコメです。



日本・とある都心のマンションの一室―――


母と子が、同じ目標に向けて―――

協力し合い、奮闘していた。


「ママ! そっち行ったわ!」


「だらっしゃあぁあああ!!

 大人しくしろおぉおお!!」


植物のような異形の物が、その根を足のように素早く

動かして移動しているところを、アルフリーダは

足で踏んづけて行動を封じる。


「きしゃあぁああああー!!」


ちょうどヒマワリのように放射状になった葉の

中心から、クチバシに似た口を開けて―――

それをフィオナが首の部分をつかんで持ち上げる。


「まったく、手こずらせてくれちゃってぇ……

 チョコの材料のくせに生意気な」


「ホラ、フィオナちゃん。

 もうお湯が沸いているから、丸ごと突っ込んで

 煮ちゃいなさい」


「きぃいええぇえええー!!」


暴れる異形の怪物を取り押さえて連行する

女性2名に、後ろからナヴィ(猫Ver)が

声をかける。


「……何をしてらっしゃるのでしょうか。

 アルフリーダ様、フィオナ様」


「あ、ナヴィ。

 見てわからない?」


「わかりません(0.5秒)」


フィオナの問いに食い気味に答えると、彼女の母親が

代わりに返答する。


「フィオナちゃんがねー、バレンタインチョコを

 作ろうとしたんだけど……


 何か素材のイキがすごくよくなっちゃって」


「去年(3章27話目)は動く程度だったん

 ですが……

 今年は自立して移動まで出来るように

 なったんですね」


ジタバタと手の中で荒ぶる素材から目を反らして、

フィオナは釈明のように話す。


「きょ、去年までのアタシではないという

 事ですよ!」


「確かにな(強調)。


 ……というより今さらですが、アルフリーダ様。

 どうしてこんな事に?」


とにかく状況の把握をしようと、ナヴィは自分の

主人へ説明を求める。


「ええと、私もパパにバレンタインチョコとやらを

 作ってみたくなって……

 それでフィオナちゃんに料理を教えてあげるのを

 兼ねて、一緒に作ってみようとしたんだけど」


「それで、どうでしたか?」


質問を重ねる従僕に、アルフリーダは―――


「いやそれがね、私にも何がどうしてこうなったのか

 わかりかねるとゆーかー。

 あ、でも素材は普通だったのよ?


 フィオナちゃんの力(果樹の豊穣)でカカオ豆を

 育成出来るかどうか試してみて―――

 同時に私の力で成長時間の短縮をしてみたらね?」


母子おやこで合作した結果がこれですか。

 何てもの生み出してやがる。


 ともあれ、ユニシス様にこんなので作った物を

 出さないでくださいね」


従僕の注意に、娘はさすがに落ち込み気味に応える。


「は、はぁ~い……」


「でもどうやって処分したものかしら、コレ。

 切っても再生しそうだし……

 やっぱり焼き尽くすか熱湯消毒しかなさそう」


主人の悩みに、ナヴィは釘を指すように告げる。


「どっちにしろ、外にだけは絶対に逃がさないで

 くださいね。


 それではそろそろ、本編スタートしましょう」




│ ■マービィ国・温泉街    │

│ ■フィオナ一行宿泊部屋   │




「昔の―――『元』婚約者です」


レイシェンの言葉に、彼女以外の全員が沈黙し、

それでも状況を把握しようとアルプが声を上げる。


「それは……今回、僕たちが来た事と関係が」


「いえ、それは無いと思います。

 彼と婚約者だったのは、もう数年前の事ですから」


無関係、という事を言明し―――

同時に今の自分とも関連が無いと言外に説明する。


「でも、『元』ですよね?

 話したくないのならいいんですけど、どうして?


 やっぱり性格の不一致?

 それとも年齢差? あ、顔?」


「急に興味津々で食いつくなでしゅ。

 無理する必要はないでしゅよ、レイシェンしゃん」


矢継ぎ早に質問するフィオナをナヴィはたしなめ―――

おずおずとレンティルが口を開く。


「ですが、今は情報はひとつでも多く欲しい

 ところです。


 その伯爵の人となりとか、話せる範囲でいいので

 教えて頂けないでしょうか」


「そ、そうですねっ。

 対策とか考えるにあたって―――


 外見とかは、その、どんな人なんですか?」


青年を補佐するように、少年も進行を促す。


「―――上級貴族にしては珍しい、ガッシリとした

 体形でした。

 普段から鍛錬を怠らず、また暴飲暴食をするような

 方でもなかったので。


 年齢はわたくしより20才ほど上でしたが、

 実年齢より10は若く見えました」


彼女の答えに、男性陣は把握に努め、女神はさらに

己の欲望に忠実に問う。


「ほぉお、で、顔は?」


「聞くのはしょこでしゅか」


呆れながらお目付け役がため息をつくが、彼女は

さらに話を続け―――


「美男子、というほどではありませんが、武人の

 顔付きをしておりました。


 そのため、本国ではお見合いの話もかなりあった

 みたいですが、当人の希望で……


 『いざという時、夫の留守を守れない妻はいらぬ』


 との事で、他国まで手広く良縁を求めていた

 らしいです」


その説明に周囲は黙り込んで考え込み、第一眷属が

疑問の声を上げる。


「えっと、何でそんな人が『新貴族』に?」


「一度、わたくしも聞いた事があるのですが―――

 たとえ国のためであっても、既得権益や伝統に縛られて、

 思うように動けないという不満があったそうです。


 『新貴族』ではありますが、国への忠誠心は

 失っておりません。

 わたくしが『新貴族』になったのも、彼の影響が

 強かったもので……」


彼女は次々と質問を受けては返し―――

ナヴィが一通り話が聞けたと判断したところで、

いったん情報を整理する事になった。




―――10分後―――




「ふみゅ、まとめましゅと―――


 ・己に厳しく自己管理も完ペキ。

 ・指揮官タイプ。

 ・当人の戦闘能力も低いわけではない。

 ・酒もタバコもやらない。

 ・女性関係も潔癖。

 ・教養も高い。

 ・人望もある。


 という人物でしゅね」


「聞いていると、そのマイヤー伯爵様……

 非の打ち所がない人のように思えるんですけど」


ナヴィの次に、アルプが当然の感想を口にする。


「まさかとは思いますが、もしかしたら

 その人は貴女の想像上の存在に過ぎないのでは

 ないでしょうか?

 もしそうだとすれば、貴女自身の病気が悪化して

 いるのではないかと考えられます」


「オイ何を口走っているでしゅダ女神」


やや情報量が多くなり混乱した感じになっている

女神を、お目付け役は現実に引き戻す。


「ですが、話のわからなそうな方では無いと

 思われます。

 交渉の余地があるのでは」


レンティルの発言に、元婚約者の女性は黙って

首を横に振る。


「彼はそんなに甘い人ではありません。

 あの人が動いているという事は国益のためだと

 思われますから―――


 そこに妥協は無いでしょう」


重苦しい雰囲気の中、女神のお目付け役と眷属が

それを振り払うように語る。


「ふみゅ。

 まあとにかく、相手が何を仕掛けてくるのか

 わかっておりましぇんので」


「そっそうです!

 やっぱり、まずはそれを知る事が先決だと

 思います!」


何とか室内の人間が冷静さを取り戻したと

思われたその時、女神が動いた。


「そういえばレイシェン、どうしてその

 マイヤー伯爵さんと結婚しなかったんですか?」


それまでとは別の意味で、室内の空気が凍り付く。


「(こ……この女神バカ……!

 誰もがあえて口に出さなかった事をわざわざ

 蒸し返しやがったでしゅね……!!)」


ピクピクと頬が引きつり、人間の姿から半ば

獣人に近付くナヴィを見て、他の男性2名も

オロオロと視線が左右に行き交う。


「えっ!? あ、い、いえ……

 た、たいした事ではありません。

 わたくしも彼も、縁談は乗り気だったのですが、

 その……」


「あ、あのフィオナ様っ」


「その、申し上げにくいのですが」


「いい加減しょのへんででしゅねえ」


レイシェンの態度に浮足立つ男性陣を見て、

フィオナは―――


「あ、ちょっとココから先は女子だけの

 お話になるから、男性はお外にお願いしまーす♪」




│ ■フィオナ一行宿泊部屋前・廊下   │




こうして部屋から追い出された3人は、それぞれ

顔を見合わせて―――


「……お風呂にでも行きましゅか」


「そ、そうですねっ。

 レンティルさんもご一緒に」


「は、はあ……

 それではお言葉に甘えまして?」


取り合えずする事も無くなった男性陣は、

ひとまず温泉で汗を流す事にした。




│ ■温泉宿メイスン・大広間  │




「しかし、今後どうするべきか……

 まさかこうまで調査活動がとどこおるなんて」


お湯から上がった後、大広間で一息つく3人。

その内の一人がグチとも諦めともつかない言葉を

こぼす。


「ふみゅ。

 レンティルしゃん、ここでの特産物―――

 豆というのはどういう扱い何でしゅか?

 主食とか、用途とか」


「あ、そうですね。

 やっぱりこの宿で出てくる料理も

 豆がメインですし」


ナヴィとアルプが取り合えず現状でも把握して

おこうと、青年に説明を求める。


「主なものはクルーク豆ですね。

 他にもいくつか種類はありますが……

 マービィ国に取っては豆は『全て』です。

 主食であり、そのまま食べたりパンにしたり、

 油や発酵させて調味料にも使います。


 また、重要な輸出品でもありますので」


地球あちらでいうところの大豆のような扱いでしゅか。


 それにまつわる行事とかお祭りとかは

 ありましゅか?」


普段フィオナが引きこもっている場所の事を

思い出して、何気なくお目付け役はたずねる。


「お祭りですか?

 豆で作られた特別な料理をみんなで食べたりとか、

 その年一番の加工品の品質を競う物はありますが」


「うみゅ、投げたりとかは?」


その質問に、レンティルの顔色はサッと変わる。


「な、投げる!? 投げ捨てるという事ですか!?

 とんでもありません!

 この国では、豆を捨てるという事は最大悪と

 されております!」


「ナヴィ様、僕としても食べ物を捨てるのは

 ちょっと……」


2人の消極的に否定する反応を見て、

ナヴィは釈明する。


「いえ、別の世界ではしょういうお祭りがあったり

 しゅるのでしゅよ。

 セツブン、というのでしゅけれど。


 ただ投げ捨てるのではなく、意味があるのでしゅ。

 しょれに少量でしゅし」


その言葉に、レンティルとアルプはホッとした

表情を見せる。


「そ、そうでしたか。


 ではそろそろ戻りましょう」


「ええ、フィオナ様、伯爵様も―――

 もうお話は終わっているでしょうし」


そして、3人の男性は女性2人が待つ部屋へ

戻る事にした。




│ ■フィオナ一行宿泊部屋前・廊下   │




部屋の前でいったん止まり、第一眷属が声を

かけようとした時、その口が止まった。


「(……あれ? まだお話し中かな?)」


「(どうしましゅたか?)」


「(話し声が……

 まだお話が終わってないのでしょうか)」


内容が内容だけに中に入るのを戸惑う男性陣。

と、ドアを通じて断片的に、自然と黙り込んだ

彼らの耳に入ってきた。


「……は、ナマモノ……」


「好み……注意……」


「……マナー……人それぞれ……」


3人は顔を見合わせ、首を傾げ―――


「(ナマ? 食べ物の事でしょうか?)」


「(好みとか言っておりますから、そうなのでは?)」


「(何か合っているような、決してしょうでは

 ないよーな気がしゅる……)」


考えても彼らには会話の内容はわからず―――

彼女たちの話が一通り終わるまで、ドアの前で

待機する事になった。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在3101名―――



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