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11・『浮く』んですねえ

( ・ω・)今回はソシャゲ業界の

慢性的な構造的欠陥に一石を投じる

衝撃の問題作!(超ウソ)


勢いだけのギャグ・ラブコメです。



日本・とある都心のマンションの一室―――


そこの家主である女神と、彼女の母親が対峙して

コタツに座り―――

真剣な表情で視線を手元に向ける。


「うあ、ゲームオーバーになっちゃった。

 最終面なのにー」


「あーママ、そのイベント?

 結構難しいよねーそれ。

 でもコンティニュー出来るステージでしょ?」


フィオナ母親アルフリーダが置いたスマホの画面をのぞきながら、

継続を勧める。


「そーなんだけどね……

 何かこう、コンティニューしちゃうと

 勝った気がしないっていうかー。

 特にこういう最終ステージでやられちゃうと。


 『え? 止めちゃうんですか?

 また最初からやり直すの面倒くさく

 ないですか?

 ホラホラ、コンティニューすれば

 すぐに終わりますよー?』


 って製作者サイドの意図が透けて見えるようで」


「ソシャゲあるあるですよねソレ。

 ナヴィはどう思います?」


その言葉に、コタツの中にいたお目付け役(猫Ver)は

もそもそと出てきて、大きく伸びをする。


「いや別に……

 ていうかお2人とも神様なんですから、

 そういう人間っぽい事で頭を悩ませなくても」


興味が無い、という事を隠そうともせずに、

眠そうな顔を洗いながらナヴィは答える。


「そうね、じゃあ神様らしくこのゲームの

 製作スタッフに、

 『家から出かける直前のタイミングで

 郵便物お届けのチャイムが押される呪い』

 でもかけておくわ」


「それ一人暮らしあるあるの中で

 地味にキツいヤツだ!」


母娘のやり取りを見て、さすがにお目付け役は

ツッコミを入れる。


「あの、アルフリーダ様。

 信仰地域外でそれはどうかと」


やんわりと主人の行動を否定するナヴィに、

アルフリーダは多少冷静になり、


「そうね。

 さすがにスタッフ全員はやり過ぎだから―――

 バランス調整と、それを認めた人限定にしましょう」


「さすがね、ママ!」


「(もうどうにでもなーれ♪)

 それではそろそろ、本編スタートしますね」




│ ■マービィ国・温泉街        │

│ ■温泉宿メイスン・女性用露天風呂  │




「ふぅ。申し訳ありません、フィオナ様。

 入浴に突き合わせてしまって……」


「まー貴女は護衛なんだし仕方ないわ。

 それに、実力のほどもこの目で見れたし……」


ネーブルと手合わせを終えたレイシェンは、

汗を流すために温泉へ―――

護衛対象であるフィオナと一緒に入浴していた。


「でもお互い無事で終わって何よりですよ。

 あれだけの打ち合いで、ケガらしいケガ

 ひとつせずに決着するなんて……

 あ! もしかして手加減したんですか?」


女神の問いに、伯爵令嬢は首を横に振る。


「手加減はしていません。

 それは彼も同じでしょう。


 ただ、あくまでも手合わせの範囲内です。

 『試合』と『戦闘』の差とでも申しますか」


手ぬぐいで顔の汗を拭きながら―――

レイシェンはふと、フィオナの視線に気付いた。

それは胸元に集中しており―――


「あ、あの何か」


「……シンデリンさんもそうでしたが、

 『浮く』んですねえ、それだけ大きいと」


同性からのそういう指摘がどのようなものか、

ある程度知っていた彼女は言い訳のように、

焦りながら釈明する。


「えっ、あ、あのっ、その……

 で、でも剣を振る時はジャマなだけですよコレ!

 あんまり大きいと重いし肩もコリますし、

 しょせんは脂肪のカタマリですし!

 それに、着ている物や鎧も特注になってしまい

 ますので、お金もかかって……」


「やめて余計にミジメになるからやめて」


そう言いながら涙目で湯の中に沈んでいく女神を見て、

慌ててレイシェンは彼女を湯舟から引き上げた。




│ ■温泉宿メイスン・最上級客室『光の間』  │

│ ■シンデリン一行宿泊部屋         │




「はいネーブル、あーん♪」


「……ネーブルお兄ちゃん、食べて……」


同時刻―――

一人の少年がベッドに寝かされ、主筋の姉妹から

看病という名の攻勢を受けていた。


「自分で出来ますから……

 大げさですよ、シンデリン様、ベルティーユ様」


さすがに主従の関係でありながら、自分を

看病させるのは抵抗があるのか、ネーブルは

遠慮がちに差し出されたスプーンを拒む。


「でもあれだけ打ち合ったのにケガひとつ

 無いなんて、さすが私の従者ね」


「そこはお互いに『一線』を引いておりましたから。

 ただ、これだけ疲れたのは久しぶりです」


何とかベッドから起き上がろうとするのを、

幼い少女が長髪を揺らしながら胸に手を置く。


「……ん……まだ起きちゃダメ……」


ベルティーユの言う通りに彼は横になって

そのまま視線を変え、彼女たちが持ってきた

料理へと向ける。


「……ところであの、何を持ってきてくださったの

 でしょうか。

 マービィ国の豆料理とも思えないですし。

 匂いがその、独特といいますか……」


その言葉に姉妹は露骨に視線を反らし―――


「え、えっとねー疲れて体力が落ちて

 いるんでしょ?

 疲労回復のためにちょっといろいろと

 材料を手配して―――

 まぁ夏バテ対策の素材をちょっと入れてね?」


「今バリバリの真冬ですよね?」


「……大丈夫……信じて……

 精力増強のための……アレやコレやソレとか……

 入ってない……から……」


「否定する中身があやふやなのに

 内容がやけに具体的ですね?」


しばらく従者と主人姉妹の間で、言い訳と

ツッコミの応酬が続き―――

時間は過ぎていった。




│ ■フィオナ一行宿泊部屋   │




「あら?」


「あ、アルプ殿にナヴィ様。

 もう戻って来られたのですか」


部屋に戻ったフィオナとレイシェンは、外出していた

メンバーと遭遇した。


「レンティルさんは?」


「しかし、ずいぶんと早かったですね」


半日で戻ってくる、と聞いていた2人は、

一緒に外出していたメンバーの不在と、予想より

早い帰りを疑問に思い、口にする。


「それが……」


「調べられなかったというか、見れなかったん

 でしゅよ。

 今、レンティルしゃんが『女神の導き』の

 メンバーに情報を聞きに行ってましゅ」


その言葉に彼女たちは顔を見合わせた。


「えっと、今、グレイン国から貴賓きひんが―――

 例の『新貴族』が来ているからと、警備が

 厳重になっていたんです」


アルプの話す内容に、レイシェンは首を傾げる。


「特区は国の直属の管理下と思いますので、

 それ自体は不思議ではありませんが……」


「でも農地、農場ですよね?

 いくら重要人物が来るからと言っても、

 そこを警備する必要ってある?」


女神の言葉にお目付け役も同調し―――


「しょこはレンティルしゃんもおかしいと

 言ってましゅた。

 今は、彼の帰りを待つとしましょう。


 とこりょで―――

 こちらにも聞きたい事があるのでしゅが」


「?? 何でしょう?」


レイシェンは姿勢を正すと、アルプの方が口を開いた。


「あの、こちらに戻って来た時、他のお客さんが

 話していたのを聞いたのですが―――」


「何でも、若い男女によるすごい剣の試合が

 行わりぇたというのでしゅけど」


「「あ」」


女神と伯爵令嬢は同時に声を上げ、その説明に

追われる事になった。




│ ■マービィ国・ファーバ邸      │




「あの女神様の一行が特区の事を?」


「ええ、追い返しましたけどね」


同じマービィ国内で、再びラムキュールは地元の

『枠外の者』の屋敷にいた。


そして今回は男がもう1人―――


「そこまで隠す必要があるのか?

 どうせ―――知ったところで何も出来まい」


明らかに商人とは異なる風貌ふうぼうのその男は、

位の高そうな礼服を身に着け、席について

悠々と語る。


短髪ながら整えられた少し白髪交じりの頭は、

屋敷の主であるファーバのそれとは対照的に、

年齢と威厳を感じさせる。


頬が目立ち、顔は痩せているかのように細いが、

ガッチリとした体格のそれは、長い訓練を受けた

武人独特の、無駄をそぎ落とした筋肉を物語っていた。


「まあまあ……

 何せ相手は神サマらしいのでねぇ。

 対策を練る時間を与えてやる事もないでしょう」


「事実―――

 ルコルアでは死にかけた鉱山を再生させています。

 あまり相手を甘く見ない方がよろしいかと。


 ……マイヤー伯爵様」


ファーバとラムキュールの指摘に顔色ひとつ変えず、

グレイン国の伯爵は、否定とも肯定とも取れない

無言を返す。


「それに、伯爵サマにはこっちのホットな情報の方が

 興味がおありでは?」


「何だそれは?」


ファーバがヒラヒラさせている紙を一瞥いちべつし、

彼は先を促す。


「今到着したばかりホヤホヤの情報なんですけどねぇ、

 あの温泉宿で……

 ミイト国の伯爵令嬢サマが剣の腕を披露した

 らしいッスよ?


 ―――『元』、『新貴族』の」


「そういえば、彼女も来ていたのだったな。

 まったく、腐れ縁というものか」


ふう、とため息をつきながら初めて感情のこもった

言葉を口にし、一気にグラスをあおる。


「では、これで失礼するよ」


席を立つ伯爵に、『枠外の者』がそれぞれ声をかける。


「こちらに泊まっていかれるのでは?」


「これでも王家の御用商人なんでぇ、

 おもてなしはそれなりに出来ますよ?

 それこそ、王族クラスのね」


マイヤー伯爵はいったん足を止めたが、

振り返らず―――


「いらん。

 休息と睡眠が取れれば場所はどうでもいい。


 私は確かに『新貴族』だが……

 あくまでもグレイン国の国益のために動いている。

 貴様ら『枠外の者』の利益はただの副産物だ。


 それを忘れるな」


マイヤーはその言葉を捨て台詞のように残し―――

ラムキュールとファーバは苦笑しながら見送った。




│ ■フィオナ一行宿泊部屋   │




夕刻―――

レンティルも帰ってきて、改めてフィオナたちの間で

情報共有がなされていた。


「特区の警備強化はごく最近のものだそうです。

 それに、仲間内の伝手も使ってみたのですが……

 緘口令かんこうれいのようなものまで敷かれているらしく」


「かんこーれい?」


フィオナがきょとんとした表情で返すと、レイシェンが

補助的に説明する。


「口止めの事です。

 しかし、そこまで秘密にする必要が?」


「わかりません。

 現状判明しているのは、最新農法技術の導入が

 順調な事と、かなりの収穫が見込まれている

 くらいです。


 それと―――

 この国の『枠外の者』、ファーバの屋敷に

 ラムキュール氏とマイヤー伯爵がいるとか」


ピク、と同じ伯爵の目が反応して吊り上がる。


「彼が、ね……」


その気配を感じ取ったナヴィが、彼女に

質問する。


「しょういえばレイシェンしゃんは、しょの伯爵の事を

 知っているようでしゅたが……

 どういう関係だったのでしゅか?」


レイシェンはいったん目を閉じると、その代わりと

いうように口を大きく開いて息を吐き、


「昔の―――『元』婚約者です」


その答えに、全員の視線が集まった。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在3094名―――



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