表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/402

10・平日は半日ずつ、休日は共同で

( ・ω・)いつも金曜25時(土曜日午前1時)に

更新しますが、実は木曜日にはすでに書き終えていて

金曜日はゆっくり見直すだけだといいなあって

思っている(願望)



│ ■フラール国・アルプの果樹園  │

│ ■アルプの家          │




とある昼下がり―――

仕事を一通り終えた姉弟が、食事を取る居間で

くつろいでいた。


(……ファジー、聞こえますか?)


「あれ? フィオナ様?

 御神託のお時間は就寝前にするという

 お話でしたが……

 マービィ国で何かありました?」


「ファジー、フィオナ様からかい?

 もしかして何かトラブルでも?」


姉弟が心配そうに聞き返すので、安心させるために

理由を話す。


(すいません、ただの様子見です。

 メイさんが来ているというので、その……

 予定になかった事ですので気になって)


手にしていた飲み物を置いて、姉弟はいったん

顔を見合わせる。


「そういやアイツ、今どこにいるんだ?」


「メイさんでしたら、さっきソニアさんと一緒に

 果樹園の方に……」


(んー、バクシアの首都出身ですし、お金持ちと

 までは言いませんけど、いいところのお嬢さん

 ぽかったので……

 肉体労働とか大丈夫かなーと思っていたんですが)


フィオナの言葉に、姉弟は顔を見合わせ―――

さらに詳しい状況を語る。


「最初はアタイもそう思ったんだけどさ。

 その……なんだ」


「結構ソニアさんの人の使い方が上手じょうずって

 言いますか……」


(?? とゆーと?)




―――姉弟回想中―――




〇ミッション1・果実収穫


「アルプなら、だいたい1人であそこからここまで

 やってくれるんですけど……」


「はいっ! お任せくださいお義母かあ様!!」


ソニアの言葉に少女はダッシュで果樹園内に

突撃していった―――




〇ミッション2・荷物運び


「アルプならこれくらい1人で運べるんですけど、

 メイさんは女の子だから無理しないで」


「大丈夫です! お任せくださいお義母様!!」


ソニアの言葉に少女は、肉体強化でもしたかのように

テキパキと荷物を運んでいった―――




―――姉弟回想終了―――




「といった感じで……

 メイさんもかなり順応しているといいますか」


「ソニアさんも、さすがにアルプさんを女手一つで

 育てただけあって、たくましいというか何というか」


(い、意外とやり手なんですねソニアさん……


 ではそろそろ、本編スタートしましょう)




│ ■マービィ国・温泉街    │

│ ■温泉宿メイスン・大部屋  │

│ ■フィオナ一行宿泊部屋   │




「あれ? ナヴィ、どこか行くんですか?」


昨夜の神託から明けて翌日―――

朝食後、何やら荷物をまとめているお目付け役を見て、

女神は問いかける。


「レンティルしゃんの案内でアルプ君と一緒に、

 話にあった特別農業区域を見てくるでしゅよ」


アルプもいったん荷物から手を離すと、フィオナの方へ

顔を向けて、


「果樹とは勝手が違いますけど―――

 同じ農作物であるのなら、僕でもわかる事が

 あるかも知れませんので」


「ナヴィ様、アルプ様も一度現場を見てみたいと

 仰られて……

 ここから一番近くにある特区なら、半日で

 戻って来れますから」


レンティルもフィオナに向き直るのを見て―――

フィオナと同性の同室の人間があたふたと焦る。


「あ、あのっ、護衛は―――」


「しょれは私がいりぇば大丈夫でしゅ。

 レイシェンしゃんには、フィオナ様の方を

 お任せしたいでしゅ」


こうして、女性2名と男性3名に別れ―――

それぞれ別行動をする事になった。




│ ■温泉宿メイスン・最上級客室『光の間』  │

│ ■シンデリン一行宿泊部屋         │




「あら?」


最上階―――と言っても3階しかない宿の

その窓から、宿から出て行くアルプ・ナヴィ・

レンティルの3人の姿を見かけたシンデリンは

思わず声を上げた。


「ナヴィさんとアルプ君ですね。

 どこへ行くんでしょうか?」


一緒に窓の下を見るようにシンデリンとネーブルは

隣り合わせになったが、すかさずネーブルの片側に

彼の主人の妹がピタリと張り付く。


「……ん……外、寒いのに……」


姉妹に挟まれる形になった少年は一歩下がろうと

するが―――

2人はそれぞれ片腕をガッチリ掴んで離さない。


「……お2人とも、離して頂けませんか?

 私の体は1つしかありませんので」


その言葉に姉妹は余計に腕に力を込め―――

彼を挟んで対峙する。


「むむむむむ……」


「……んー……」


お互いにうなるように声を絞り出すと、姉妹は

目で合図をするかのように何らかの意思疎通を行い、


「平日は半日ずつ、休日は共同でどや?」


「……ん……それなら……」


「何の話ですかっ!?」


彼が叫び声を上げた時には、すでに3人の姿は

遠く離れつつあった。




│ ■道中・ナヴィ一行   │




「(何か今、決して他人事ではないような

 気配を感じましゅたが……)」


ふと足を止めて元来た道を振り返るナヴィに、

気付いたアルプとレンティルも立ち止まる。


「どうかしましたか? ナヴィ様」


「何かありましたでしょうか」


「いや、何でもないでしゅよ。

 それでは先を急ぎましゅ」




│ ■フィオナ一行宿泊部屋   │




「(何か今、羨ましいような、決してそうで

 ないような気配を感じたような)」


2階の大部屋から窓の外へふと視線を向ける

フィオナに、レイシェンは気付き―――


「何か気になる事でも? フィオナ様」


「あ、いえ。多分気のせいだと思います」


自分でも説明のしようがないので切り上げ、

会話を変えようと別の話題を振る。


「そういえばバーレンシア侯爵がミイト国で

 剣の指導を行っているとの事ですが……

 そんなに強かったんですか、彼?


 アタシは貴族の割に気さくな―――

 仕事ではちょっと融通の利かない方だという

 印象があったんですけど」


「そうですね少なくともわたくしが出会った中では

 最強ですね剣さばきだけでなく状況の読み合いとか

 集団戦でも不特定多数相手でも無類の強さを発揮

 しますしそれでいて強さに溺れず慢心せずそれに

 よく近くで見るとすごく格好いいし、あ、でも

 容姿だけが理由ではなく時折見せる気弱さとか

 そこがまた人間っぽいと言いますか案外子犬っぽい

 ところもあり年上でも母性本能をくすぐられて

 全部自分一人で出来る能力があっても自覚がなく

 誰かそばで守ってあげないとダメなタイプって」


「う、うん、そう……

 (やべぇ何か変なスイッチ押しちゃった)」


一気に興奮気味にまくしたてるレイシェンに対し、

たじたじになるフィオナ。

と、そこに助け船のように扉をノックする音がした。


「―――!

 どなたですか?」


護衛の彼女が一瞬で戦闘モードに切り替わり、

扉に向かって身構える。


「あー……ネーブルです。

 ナヴィさんたちがお出かけになられたようなので、

 どうしたのかと」


彼もまた、シンデリン・ベルティーユから逃げる口実で

来たのだが―――

幸いとばかりにフィオナはネーブルを迎え入れた。




│ ■温泉宿メイスン・大広間  │




「ふーん、特区へ視察に、ねぇ」


姉妹はフィオナと相対するように座り、

会話をしつつ飲み物に口を付ける。


ネーブルがフィオナの部屋を訪ねてから間もなく、

主従関係である姉妹が現れ、場所を変える事になり、

1階の大広間まで降りてきていた。


「まあ今回、『枠外の者』や『新貴族』の目的が

 全くわかりませんからね。

 それで、取り合えず現地調査という事で」


女神も手元のカップを手に取り、口に近いところで

止めてそのまま語る。


そして彼女の背後にはレイシェンが―――

姉妹の後ろにはネーブルが、それぞれの任務を帯びて

立っていた。


「……でも……

 その3人で……大丈夫……?

 護衛は……?」


ベルティーユの問いに、彼女の背後からの声が

それに応えた。


「ナヴィさんが一緒なんですよね?

 それなら大丈夫かと。


 あの人―――

 かなり『出来ます』よ」


「ネーブルにそう言わせるなんてね。

 そんなに強いの?」


主従が顔を見合わせながら語り、肯定で

うなづくネーブルを見て、レイシェンが

話を引き継ぐ。


「そういえば―――

 トーリ家での一件……

 事前情報では一番の手練れはネーブル殿だと

 聞いていた」


「あ、ナヴィもそんな事言ってたっけ。

 『相当強い』って―――」


フィオナは『まあ、人間にしては』という言葉を

飲み込み、話の続きはレイシェンに任される。


「あの時は、剣を交える機会は無かったが―――


 もしよろしければ、わたくしとひとつ

 手合わせして頂けないだろうか?」


彼女が少年に視線を向ける中、その主人が

言葉を返す。


「言っておくけど、彼はトーリの家の中では

 最強の護衛よ?」


「お嬢様のお許しがあれば……

 しかしその、貴族と平民が戦うというのも」


シンデリンとネーブルの言葉を微笑みで

レイシェンは受け止め―――


「今のわたくしはただの護衛―――

 腕に覚えがあるボディガード同士が戦う、

 ただそれだけの事です。


 稽古用の木製の剣を持ってきています。

 それでお相手願いましょう」


そうして5人は場所を変える事になった。




│ ■温泉宿メイスン・中庭  │




それから1時間ほど後―――


互いに肩で息をし合う男女が一組、3人の女性に

見守られながら呼吸を整えていた。


やがて力尽きたのか不意に少年が膝をつき、

それが合図であるかのように、女性は布で巻かれた

木剣ぼっけんの先を地面に向けて下げる。


「負け、ですね……

 さすがはミイト国の『剣姫けんき』……」


ネーブルの敗北を認める声に、レイシェンは

大きく息を吐いて応える。


「もしあの時に戦っていたら互角―――

 いえ、確実にわたくしの方が負けていたでしょうね。


 しかし、バーレンシア侯爵様とビューワー伯爵殿に

 稽古を付けて頂いたわたくしに、ここまで本気を

 出させるなんて」


主人である姉妹が従者に駆け寄り、タオルで汗を

吹きながら、飲み物を差し出してその労をねぎらう。


「ウソでしょ……

 貴方が負けるところなんて初めて見たわよ」


「……ん……大丈夫? お兄ちゃん……」


主筋に自分の世話をさせる事に抵抗があるのか、

彼は何とかその体を動かそうするが、疲労のため

うまく対応出来ず、その身を彼女たちに任せる。


「め、面目ありません……」


「いやでも、ネーブルさんもすごかったですよ?

 まるで3Dの格闘ゲームでも見ているような

 感じでした。


 レイシェンもお疲れ様です」


「は、はあ……ありがとうございます。

 (すりーでぃ? かくとうげぇむ?)」


フィオナのねぎらいを困惑しつつも素直に受け取り、

レイシェンは剣から布を取り払い、腰に納める。


「……でも、確か貴女は……あの時……、

 ……バーレンシア侯爵様に……」


「ええ。文字通り手も足も出ませんでしたわ♪」


ベルティーユの問いにレイシェンは笑顔で応じ―――

『あの人、どんだけ化け物なのよ』

という感想をシンデリンは口には出さずに飲み込む。


「……では、戻りましょう」


ネーブルが立ち上がると、いつの間にか周囲には

ギャラリーが集まり、拍手が送られる。


「いい勝負だったぞー、兄ちゃん!」


「お姉さま、ステキー!」


「明日もやってくれー!!」


見上げると、宿の各階の窓からも観光客と思しき

人たちが身を乗り出し、歓声を上げていて―――

5人はそそくさとそれぞれの部屋へと戻って行った。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在3089名―――




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ