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09・今すぐ耳を塞げ

( ・ω・)そういえばまだ5章でアンカーは

していないな(今さら)


日本・とある都心のマンションの一室―――


そこの家主である女神と、お目付け役(猫Ver)が

何気なく言葉を交わし合う。


「あー、新年イベントも終わったし……

 お次は節分かバレンタインまでこれといった

 季節イベがないですねえ」


「貴女の季節を感じる基準はソシャゲ準拠ですか。

 地球こちらではすっかり引きこもり何ですから」


呆れるように話すナヴィに、フィオナはスマホから

目を上げて反論する。


「だってーココじゃ別に学校に通っているワケでも

 ないしー。

 信仰地域外だから、なるべく目立たぬよう

 騒がぬよう生活しなきゃいけないし……」


「アルフリーダ様が時々訪ねてこなければ、

 不審な一人暮らし引きこもり少女認定でしょうね。


 ……そういえば、アルフリーダ様に比べて

 ユニシス様はめったにこちらに来られない

 ようですが、忙しいんでしょうか?」


首を傾げるお目付け役に対し、女神はその疑問に

答える。


「多分それ、ママが関係していると思う。


 ママが来て確認すればパパも安心するし―――

 それに」


「?? それに?」


「……ママもああ見えて、意外と嫉妬心が

 底なし沼だからねー。

 そりゃもうマリアナ海溝よりも深く。


 パパが1人で別世界に出掛けるのが、

 不安で仕方ないんだと思う」


その言葉に彼は、自分の主人であるアルフリーダの

ユニシス評(4章21話)を思い出し―――


「(あー……

 ベクトルは違えど、似た者夫婦なんですね)」


「?? 何か言った、ナヴィ?」


「いえ別に。

 それではそろそろ、本編スタートしましょう」




│ ■マービィ国・温泉街    │

│ ■温泉宿メイスン・大部屋  │

│ ■フィオナ一行宿泊部屋   │




すでに日も傾き―――

夕食も済ませた男女5名は、同じ室内でその時を

待っていた。


「準備はよろしいでしゅか?

 フィオナ様、皆しゃん」


ナヴィの言葉を皮切りに、それぞれが頷き、

姿勢を正す。


「レンティルさん、神託はアタシかナヴィ、

 アルプを通じて出来ますから―――

 普通にしゃべって頂いて構いませんよ」


「は、はい!

 それでは報告させて頂きます!」


『女神の導き』メンバーで、かつ地元出身者の

青年を中心に置いて―――

フラール・バクシア・マービィ国間が繋がった。




│ ■バクシア国・首都ブラン  │

│ ■ボガッド家屋敷      │




「……ふむふむ。

 グレイン国のマイヤー伯爵が……


 提供した最新農業技術の視察―――

 目的はご立派なものだが、さて」


「しかし、王族相手に伯爵家ですか。

 本当に『格が違う』んですね」


家主であるローン・ボガッドと、第三眷属である

ポーラが口々に感想を述べる。


その隣には当然のようにシモンを座らせて―――

2組の夫婦のように、ローン夫妻と対峙する構図と

なっていた。




│ ■フラール国・アルプの果樹園  │

│ ■アルプの家          │




アルプの家では、ミモザ・ファジー姉弟と情報屋の

ソルト、そしてメイと家主のソニアが席に着いていた。


「グレイン国は連合国家の中でも、最大の農業国家でも

 あるし―――

 序列下位国に技術指導しても不思議はないけど」


「うさんくせーなー。

 だいたい、農業指導の関係でわざわざ伯爵サマが

 おいでになるってところがよー」


「ミ、ミモザ姉っ」


ソルトの一般論に対し、不審な様子を隠そうとも

しないミモザ。

そしてファジーがたしなめ、アルプの母・ソニアが

言葉を続ける。


「その伯爵が、『新貴族』なのですか?

 疑っているわけではありませんが、こちらには

 区別がつかないものですから」




│ ■フィオナ一行宿泊部屋   │




その問いに、同じく伯爵になる女性が答える。


「間違いありません。

 その男は―――紛れもなく『新貴族』の一員です」


レイシェンの方を向いて、今度はフィオナが質問する。


「レイシェンさん……

 レイシェンは知っているんですか?」


「ま、まあ面識といいますか、少し関わりが。


 それよりその―――

 本日は、そちらに侯爵様はおられないのですか?」




│ ■アルプの家          │




彼女に話を振られたフラールでは、姉弟が

向き合った後、姉が口を開いた。


「あー、今ちょうど他国からの商人が来ている

 らしくてさ。

 伯爵様とグラノーラさんもそれに付き合って

 不在なんだ」


続けて、同席していたソルトも口を開く。


「後で情報は共有するから安心してくれ」




│ ■フラール国・バクシア国代官館  │




同時刻―――

野戦病院から要塞風に進化した館で、貴族と

商人が奮闘していた。


「礼服、靴、小物……

 あと予備は絶対必要ですからそれもリストに。

 マルゴット、期日調整は大丈夫ですか?」


「待って待って!

 今確認しているところだから!

 あーあと何が必要だったかしら……

 とにかく、購入出来るうちにしておかないと!」


それを見て、オロオロと右往左往する侯爵が1名―――


「ね、ねえ。

 今からそんなに急ぐ事も無いんじゃないかな?

 それに、謁見えっけんの場に出るって言っても、

 パパっと会うだけで何事もなく終わるかも

 知れないし?」


その言葉に、バートレットとマルゴットは

2人でそれぞれ片腕でバーレンシア侯爵の両肩を

ガシッと掴み、


「そんな事は」

「絶対に」

「100%」

「あり得ませんから」


微笑みながら交互に語り、言外に

『信頼と実績があり過ぎるんですよ貴方は』と

プレッシャーをかける2人に対し、


「ですよね!!!」


バーレンシア侯爵は泣き笑いのような表情で、

勢いよく大声で元気よく返事をした―――




│ ■フィオナ一行宿泊部屋   │




一方で、神託が繋がれた国々の中で、ナヴィが

流れを再開させる。


「ふみゅ。まああの2人がついていれば

 安心でしゅが―――


 しょれでレンティルしゃん、不穏な動きは

 しょれだけでしゅか?

 グレイン国の農業技術に、何か落とし穴が

 ありゅとか……」


「いえ、今のところそのような動きはありません。

 どの特別区域でも、予想以上の収穫量を上げている

 とかで―――」


うーん、と考え込む一行の中で、フィオナの視線が

アルプと交互に合う。


「あの、アルプ。

 人の手でいきなり果樹を不作にするとかって

 可能かしら?」


少年は少し悩むが、すぐに彼女に向き直り、


「不作と言いますか、密集し過ぎた場合は

 枝を落としたり、本体の樹ごと撤去する事が

 あります。

 そうしないと、結果的に収穫量が落ちるので……」


そこに、彼の母親からも報告が入る。




│ ■アルプの家          │




「全体的な不作というのは自然によるものが

 大きいです。

 病気が流行ったりとか、冷害とか―――


 焼き払うという事でもしなければ、人の手で

 たいした事は出来ないと思います」


専門家の言葉に、他の3人はただ納得して

ウンウンと頷く。




│ ■ボガッド家屋敷      │




「だけど、じゃあ連中の狙いって何だ?

 経済混乱が目的だろ?」


「その農法をマービィ国全土に行き渡らせてから、

 輸出品目の取引価格を下げるとか?」


バクシアで待機していたシモンとポーラが、

ますますわからないというふうに疑問を振る。


「それはさすがに連合法に引っかかるだろう。

 そうなればミイト国もシフド国も黙っておらん。


 序列一位の国がマービィ国を相手にするのに、そんな

 リスクを取るとは思えんが……」


ボガッド氏はそう否定したものの、それ以上の事は

わからず―――


「とにかく、そこにいるレンテイィル殿には

 引き続き調査を進めてもらいたい。


 ソルト君は―――

 ルコルアにその情報を伝えた後、いったんこちらに

 向かってくれんかね?

 そろそろ、トニック君も戻ってくる頃合いだと

 思うし。


 グレイン国のマイヤー伯爵と、新農法についての

 調査をお願いしたい」




│ ■フィオナ一行宿泊部屋   │




「わかりました。

 ―――フィオナ様、申し訳ありませんが

 またしばらくここで待機をお願いいたします」


指名されたレンティルは女神に対し

深々と頭を下げ―――




│ ■アルプの家          │




「りょーかい。

 明日にでもそちらに向かいます」


ソルトも肯定の返事をし、神託もそろそろ終わりだと

誰もが思い始めた時―――

今まで一度も発言していなかった彼女が口を開いた。


「それはそれとして―――

 フィオナ様?」


メイの言葉に全員が注目する。


「そちらでは―――

 何もありませんでしたか?」




│ ■フィオナ一行宿泊部屋   │




「ん~……こっちは待機中でしゅからねえ。

 せいぜい、女湯で騒ぎがあったくりゃいで」


ナヴィがメイの質問に答えると、同室の2人の女性が

そわそわと顔を赤らめる。


「そ、その事については、その……」


「は、話してもいいんですが、男性陣にはちょっと

 聞かせられないとゆーかー」




│ ■ボガッド家屋敷      │




レイシェンとフィオナの反応を見て、クレアが

夫とシモンに話を向ける。


「ホラあなた、シモン君と一緒にお外で待っていて

 くださいな」


「わたしが聞いておきますから、ね?」


ポーラもその後押しをするように男性陣に退出を

促し―――後に女性2名だけが残る。




│ ■アルプの家          │




「あれ? でもこっちはどーすんだ?

 神託受けられるの、ファジーしかいないんだけど」


(あ……う、うう~ん……)


ミモザの質問に、困った様子のフィオナの態度が

伝わり、ミモザもまた困惑する。


すでにソルトが部屋の外に追い出され、メイとソニアが

姉弟を見守る中―――

次の指示が下される。




│ ■フィオナ一行宿泊部屋   │




「まあファジー君はまだまだ子供ですし、

 何があったのか、会話だけを正確に伝えれば

 大丈夫かと。


 ナヴィ、アルプ、レンティルさん。

 ちょっと外に出ていてください」


3人の男性陣は言葉に従い、廊下に向かう。


「?? 女湯って今朝の事ですよね?

 騒ぎにはなりましたけど、そんなに重要な

 事でしたっけ……」


「自分も何があったかは聞きましたが……

 お考えあっての事かも知れません」


途中、レンティルとアルプが心配そうに疑問を

交わす。


「深く考えるだけ無駄でしゅよ。


 あ、あとダ女神。

 最初に湯桶ゆおけを直そうとしただけの話だと

 ちゃんと言うんでしゅよ」


「は、はぁ~い」


ナヴィの念を押すような言葉にフィオナは

同意し、そして彼らが部屋を出ていった後、

『その事』がバクシア・フラール両国へと

伝えられた。


そして伝えた先の反応は―――




│ ■アルプの家          │




「ファジー、今すぐ耳をふさげーーー!!!」


「で、でもミモザ姉。

 頭の中に直接聞こえてくるんだけど……

 それに、別におかしな事は言ってないような」


姉は涙目で絶叫しながら弟にこれ以上話を

聞かないよう命じ、


「いえ、おかしいんですけど……

 何がとは言えない、そこはかとないおかしさが

 あるんですけど」


アルプの母が困ったような照れたような複雑な表情で

戸惑い―――


「くお、おお、おおお……

 何そのアルプ君のシチュ……

 生音声でめっちゃ聞きたかった……」


その目の前で、メイはテーブルに顔面を突っ伏して

ぷるぷると震えていた。




│ ■ボガッド家屋敷      │




「なるほどなるほど……

 アルプ君とナヴィ様、そしてあの美形さんが……」


「ポーラさん、よだれよだれ。

 後でそのネーブルって人について詳しく教えて

 ちょうだい♪」


一方バクシアのボガッド家では―――

そう初老の女性がハンカチを少女に手渡し、たたずまいを

整えるよう促し―――

さらなる情報共有で合意していた。




│ ■ボガッド家屋敷・廊下    │




「……なあ、何か気持ち悪い空気を扉の向こうから

 感じるんだが」


「それはワシも同じだが、こういう場合はあまり

 首を突っ込まん方がいい」


同じ屋敷の、部屋の外の廊下で―――

少年と老人がそれぞれの異性の連れの反応について

語り合う。


ふと老人が先ほどまでの話を思い出し、内容を

反芻はんすうしていた。


「(しかし、新農法、か。

 収穫量が上がるのであれば、それは確かに

 マービィ国に取って良い事だろうが……


 まさか、な―――)」




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在3082名―――




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