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08・これで後10年は……戦える

【閲覧注意】

今回、BL表現がありますがBL要素は

ありません。

何を言っているかわからねーと思うが俺も(ry



天界・フィオナの神殿じっか―――


そこである母娘が女神同士、家族の会話をしながら

くつろぐ。


「それでねー、聞いてよママ。

 チャンスって言ってもね」


去年、出会いはあったもののどの眷属とも主従以上の

関係が築けなかった事で、彼女はアルフリーダに

グチっていた。


「はいはい、何度も聞いてますって。

 でもフィオナちゃんの方にもねー、

 もうちょっと積極性が欲しい気がするんだけど」


「だあってぇ、今だって複数で行動してるし……

 せめて2人きりになれたらなー」


テーブルの対面に座ったまま、その言葉に母は

首を傾げる。


「2人きりって言えば地球にいる時の貴女が

 そうじゃないの?

 ナヴィの事、別に攻略対象じゃないってワケじゃ

 ないんでしょう?」


「た、確かにそうですけど……

 でも家だってママやパパがいきなり神託カイセン繋げて

 くる時もあるしー。


 だいたいママ、ナヴィにアタシ対策のための

 拘束魔法バインドとか渡していたじゃない(1章12話)」


アルフリーダは額に手を当ててため息をつく。


「いきなり襲ったり飛び掛かったりする事しか

 考えられないの?


 ……ねぇフィオナちゃん。

 聖戦の日と年末年始は帰って来ないでって

 言ったけど―――


 その時、貴女は何をしていたのかしら?」


「?? 別に、フツーに過ごしてましたけど?」


彼女はおもむろに立ち上がると、娘の両肩に

手を置いて―――


「『その時』は、決してジャマは入らなかった

 はずよ?」


アルフリーダが諭すように語ると、フィオナは

電流が走ったように衝撃を受けた。


「そ、そうか……!

 『ジャマをするな』という事は、その間決して

 ジャマもされないという事……!」


「わかったようね。

 今後はその機会をきちんと生かすのよ」


片手を上げてガッツポーズを決める娘と、

それを微笑で見守る母親―――


そしてそれを扉の向こうからのぞく影が

2つあった。

1人はアルフリーダの夫・ユニシスと、もう1匹は

従僕・ナヴィ(猫Ver)である。


「……あれは何の話をしているのかなあ」


「野生の本能が、『見なかった事にしよう』と

 言っております。


 それではそろそろ、本編スタートします」




│ ■マービィ国・温泉街    │

│ ■温泉宿メイスン・大部屋  │

│ ■フィオナ一行宿泊部屋   │




神託のあった晩が明けて翌朝―――

フィオナはベッドの上で意識を取り戻した。


「……はっ!

 いつの間にアタシ、寝ちゃってたの?」


「おはようございましゅ、よく眠れましゅたかダ女神?

 ま、朝食の時にでも共有した情報は話すでしゅよ」


お目付け役に見下ろされながら、彼女は上半身を

ゆっくりと起こし、伸びをする。

そしてきょろきょろと辺りを見回した後、自分の

胸を見るように視線を下げ、


「……ナヴィ、何もしてないでしょーね」


「一応、個別の仕切りはありましゅが、

 この大部屋にアルプ君もレイシェンしゃんも

 泊まっているんでしゅよ?


 似たような事はメイしゃんにもしつこく

 聞かれましゅたけど……」


呆れながら、女神の疑問に応えるお目付け役。


「それはそれで安心というか残念と言うべきか……」


「いちゅまでも寝ぼけた事を言ってないで、

 朝風呂にでも行って目を覚ましてくるでしゅよ」


そしてその後―――

起きてきたアルプ・レイシェンと一緒に、

それぞれ浴場に向かう事となった。




│ ■温泉宿メイスン・男性用露天風呂  │




「奇遇でしゅね、ネーブルしゃんも朝風呂とは」


「お嬢様が朝風呂に入ると言ってきかなくて……

 ココなら壁一枚隔てて向こうですし、騒ぎがあれば

 すぐ気付きますからね」


朝風呂で再び偶然一緒になった男性陣は、湯舟の中で

何気ない会話を語り合う。


「そ、そういえばベルティーユさんは?」


アルプがおずおずとたずねると、従者は女湯の方の

壁を指差し―――


「今日はベルティーユ様もあちらにおります」


「ふみゅ。じゃあレイシェンしゃんと一緒でしゅね」




│ ■温泉宿メイスン・女性用露天風呂  │




「まさか貴女と一緒に湯舟につかる事になるとはな」


「そう言わないでよ。

 それに前回の件については、私はむしろ被害者側

 なんだけど?」


『新貴族』だった者と『枠外の者』の女性2人が、

肩を並べるようにその身を湯に沈めていた。


「まあ、アレはわたくしの早とちりでもあった。

 それについては詫びよう。


 しかし―――早朝だからか貸し切りみたいで

 気持ちがいいな。


 フィオナ様、具合は大丈夫ですか?

 昨夜、突然眠ってしまわれたようですが……」


不意に話を振られた女神は、昨夜の失態をどう

ごまかそうか焦りながら答える。


「そっそうですね、もう大丈夫です!

 ナヴィ、そっちはどうかしらー?」


男湯の方の壁に向かって話しかけるが―――

返事はなく、ただ沈黙が続く。


「……?……

 ……ネーブルお兄ちゃん……?」


ベルティーユが壁に近付き、それに続いて女性陣も

不審に思い壁際に寄る。


聞き耳を立てると、向こう側から断片的にだが

会話が聞こえてきた。


「……で、ちょっと後ろの方を上げて……」


「……先だけ入れれば、何とか……」


「……ダメ、壊れちゃう……」


その瞬間、息を合わせたかのように4人の女性は

壁際に片耳を張り付けた。




│ ■温泉宿メイスン・男性用露天風呂  │




男湯では―――

備え付けてあった木製の湯おけをの取っ手を持って、

ひっくり返したりねじったりしている少年3人がいた。


「やっぱり取れかかってますね。

 最初からゆるんでいたんじゃないですか?」


「はめ込み式みたいでしゅから、先っぽさえ

 入れてしまえば、何とかなりゅと思うんでしゅが」


「でもナヴィ様、無理に入れると穴が広がって、

 もっと壊れちゃうかも……」


ナヴィが手に取って確認するようにいろいろと

向きを変えて見回し―――

ネーブルとアルプに語り掛ける。


「もう一回だけやってみましゅ。

 ちょっと押さえておいて欲しいでしゅ」


「んー……もう少し奥まで押し込めば何とかいけるかも」


「あっ、あっ、そ、それ以上は、壊れっ……」


その時―――

壁の向こうから何かが倒れる大きな音×4がした。


「みゅ!?」


「お嬢様!?」


「今の、女湯からですか!?」


3人は慌てて湯おけから手を離し―――

脱衣所へと向かった。




│ ■マービィ国・温泉街    │

│ ■温泉宿メイスン・大広間  │




30分ほどの後―――

女性3名は男性2人を前に、釈明を迫られていた。


ナヴィたちから異常を報告された宿の従業員たちが

女性用露天風呂で見た光景は、壁に寄りかかるように

倒れていた彼女たちの姿。


その顔は鼻血を流しながらも、幸せそうな

表情だったという―――


「ネ、ネーブルたちが悪いんじゃないの!

 あんな勘違いしそうな声を出すから……」


「勝手に勘違いされる事まで責任持てませんよ」


「ていうか、フィオナ様は仕方ないとしゅても、

 レイシェンしゃんまで倒れていりゅとは……」


「め、面目ございません」


「え? アタシ仕方ないって扱い?」


主従が逆転したかのように、ネーブルの前では

シンデリンが、ナヴィの前ではフィオナと

レイシェンが正座し―――


それを見せつけられるかのように、アルプと

ベルティーユがソファに座っていた。


「何を勘違いしたんでしょうか?


 それと鼻血はもう大丈夫ですか?

 のぼせるほど長湯していたなんて……」


「……ん……大丈夫……

 ……これで後10年は……戦えるから……」


彼女は他の女性陣と同じく鼻にティッシュを詰めながら、

感情の乏しそうな表情を崩さず―――

その答えに少年は要領を得ない顔をしていたが、深く

突っ込む事なく静観していた。


「じゃ、そろそろ朝食に行きましゅか」


ナヴィの声が合図であるかのように、正座していた

女性陣は立ち上がった。




│ ■マービィ国・某所    │




昼近くになって―――

ボガッド家の屋敷ほどではないが、それなりの

有力者の邸宅と思える建物、その一室で―――

ラムキュールは同じ『枠外の者』と対峙していた。


「それでファーバ、どうなっている?

 『計画』の方は」


「特別農業区域は順調に広がっていますよ。


 グレイン国から導入した最新農業技術―――

 その区域は他区域と比べ、3倍から4倍の収穫を

 見込んでいるとの話です。


 来季の収穫が楽しみですねぇ」


ファーバと呼ばれた男は、淡々とラムキュールの

質問に答える。


20代前半、ダークブラウンの髪―――

髪型を気にしないのか乱雑に短髪の先端が

あちこちを向き、アウトローか金持ちの

放蕩息子にも似た雰囲気を醸し出す。


彼の言葉を聞いたラムキュールは、深くイスに

腰かけて座り直した。


「後は刈り取るだけ、という事か」


「こちらとしても、この国には豊かになって

 もらいたいですからねえ」


どちらからともなく、笑みがこぼれ―――

やがて嘲笑に変わる。


「そういえば、グレイン国からは誰が来ている?」


「『新貴族』のマイヤー伯爵様です。

 こっちじゃ、陛下自ら出迎えるほどの

 力の入れようですよ」


「序列下位国の王族など、上位三ヶ国から見れば

 子爵かそれ以下の存在だろうからな―――」


ラムキュールは出されていたグラスの中身を飲み干し、

それをテーブルの上に静かに置いた。


「で、そっちの方は?

 確かミイト国の『枠外の者』も来ているんでしょ?」


「トーリ家のお嬢さんなら、今回は様子見すると

 言っている。


 それより―――

 シッカ伯爵令嬢と神様ご一行が来ている件に

 ついてだが」


それを聞いた一方の『枠外の者』は、口元を歪め

不敵な笑みを浮かべる。


「あの温泉宿―――

 メイスンにもこちらの手の者をしのばせて

 いるんです。


 このように、何かあれば情報は逐一上がって

 きます。心配しなくてもいいですよ。

 ルコルアでの失敗のような事はココでは

 起きさせませんから」


折りたたまれた紙をラムキュールの前でヒラヒラと

させて、からかうように言い放ち―――

それに対して彼も忠告のように返す。


「自信があるのはいい事だが―――

 過信と勘違いはするな。


 ―――しかし、『何かあれば』……?

 少なくとも昨日までは何もなかったと思うが」


「宿泊客の増減とか、ちょっとでも気になった

 事があれば、とも言ってあるので。


 ま、『神様』とやらがいるんでしょ?

 平和なモンですよ、多分。

 この前は女の子が男湯に紛れ込んだとかそんな

 報告が来てましたし」


手にしている紙を広げていき、2人でその中身を

目で追い―――

そして短い内容を確認したところで彼らの動きが

停止した。


「……え?


 『複数の女性客を血まみれの姿で発見』……


 はい? なに?」


「ちょっと待て!?

 私が宿を出た後で殺人事件でもあったのか!?」


その後すぐに次の詳細報告が来るまで―――

2人の混乱は続いた。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在3078名―――




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