03・アタシがトップオブトップですし
ついに100話です!
応援ありがとうございます(`;ω;´)
「前フリの茶番がメイン、本編はオマケ」
と言われても多分否定しない自分がいる。
勢いだけのギャグ・ラブコメです。
日本・とある都心のマンションの一室―――
家主の少女が何もない空間にガッツポーズを決める
ように気合いを入れ、
「今回のあらすじ!!」
「前回じゃなくて?
あとスタートダッシュネタバレ止めるでしゅ」
自分の主筋にあたるフィオナに対し、サポート役の
ナヴィ(人間Ver)は冷静にツッコミを入れる。
「いやーだってねえ?
今回でこの小説、100話になったって
話じゃない。
フツー記念に何かイベントとかアンケートとか
やるモンでしょう?
それが何も無いっていうんだからあの作者」
「しょれについては、作者も悩んでいたみたい
でしゅからねえ」
「ホント。アタシとナヴィも、ちょっと
アドバイスしに行ってあげたのに」
―――フィオナ・ナヴィ回想中―――
「え? 100話記念に何をしたらいいか、
今すごく忙しい上にアイデアが全く出てこなくて
困ってるって?」
「しょういう時は、今の状況を笑い飛ばしぇるくらいの
辛かった事を思い出すんでしゅ。
ほら、昔の会社の同僚と飲みに行った時、
『小説家になろう』というサイトに投稿していりゅ
って言ったら、盾の勇者や転スラと比べらりぇた事を
思い出しゅて」
『ぐわああああああああああああ!!!』
―――フィオナ・ナヴィ回想終了―――
室内なのになぜか沈む夕日の淡い日差しを
浴びながら、女神とお目付け役は最後の戦いを
終えた戦士のように佇んでいた。
「悪は―――
滅びた……」
「女装美少年しゃえ出しゅておけばそういう層に
受けがいいだりょうという安易な考えで、何度も
同じネタを使うからこういう目にあうのでしゅ……
しょれでは、そろそろ本編スタートしましゅ……」
│ ■フラール国・アルプの果樹園 │
│ ■アルプの家 │
「我がマービィ国で『奉公労働者』の大量発生を
画策しているのは……
王族か……それに近い人物だと思われます」
「王族が……ですか?」
マルゴットが青ざめた顔で、自分でも確認するかの
ような声で、レンティルに疑問を語る。
「ありえるんでしゅか、そんな事が」
「いやいやいや、おーさまですよね?
それに近い人たち、親戚縁者って事ですよね?
いくら何でも、国民にそんな事して何の意味が」
ナヴィ・フィオナ主従コンビも理解出来ないと
いった様子で、驚きと疑いの言葉を続ける。
「その国次第と言ったところだねぇ。
そもそも、連合国家の国々は王を頂点とする
『封建制』が連合国加入の最低条件となっている。
ただその中身や体制はピンキリだよ。
規模によっては―――
国民を売る事も考えられるんじゃないかな」
バーレンシア侯爵が頭をかきながら、苦々しく
応える。
「ですが、それによってどう利益が―――」
ポーラが不安そうな声を出すと、今度は伯爵が
説明を継続する。
「手っ取り早いのは、ここフラールと同様に……
大国の後ろ盾を得る事でしょうか。
それによる序列の昇進を目指すのが狙い、とか―――」
「……確かに、今フラールが商人たちの投資対象に
なっているのは、フラール・バクシア両国で
友好式典を行った影響が強いのです。
そこで出席したバクシアの王族・フラウア様と
フラールの王太子との婚姻の話まで、噂レベルでは
ありますが、出ておりまして。
それを見た他の序列下位の国が―――
同じ考えになったとしても、不思議ではありません」
バートレットの後に、マルゴットが言いにくそうに
自分の推測と現状を話す。
「そりゃ羨ましいっちゃ羨ましいけどよ……
いくら大国とツテを作りたいとはいえ」
「それで国民を売るなんて、本末転倒じゃ
ないですか!」
『奉公労働者』を経験しているミモザとファジーが、
噛みつくように言葉を発する。
「お母さん、もしかしてこれ、僕たちが……?」
アルプは母、ソニアを見ながら『原因』という単語を
飲み込んだが、その不安は隠しきれず、視線を伏せる。
「あー、アルプ君が気にしゅる事じゃないでしゅよ?
君に原因があるんでしゅたら、しょの責任は全て
ここにいるダ女神が取るべきものなんでしゅから」
「いや確かにアルプは眷属ですし!?
上下関係で言えばアタシがトップオブトップですし
責任については異論はございませんけどね!?
もう少し言い方を考えて頂けないでしょーかっ!?」
叫ぶ女神に対し、どう声をかけたらいいものか戸惑う
周囲を気使い、ナヴィが先に口を開く。
「まあでも、こちらが無関係というわけでは
なさそうでしゅね。
レンティルさん、というわけで―――
いじゅれマービィ国には行く事になると思いましゅ」
その言葉に周囲は納得したようにウンウンと頷き、
『女神の導き』のメンバー2人は深々と頭を下げる。
「お、恐れ多くも有難き事……!」
「女神様に来て頂ければ、これほど心強い事は
ございませんっ!!」
心の底から喜ぶレンティルとガルバンをよそに―――
対照的に周囲は微妙な顔つきとなる。
女神と眷属における原則―――
・眷属は1つの国につき1人だけ
・女神が降臨出来るのは眷属にした者の出身国のみ
それを察したのか、勝ち誇るようにフィオナは胸を張る。
「ふっふっふ……
マービィ国にはアタシの眷属はいない……
だから行けないと思っていませんか皆さま?
しかーし!
今のアタシの信者数は3千超え!
当初の2千MAXで眷属追加出来たのだから、
さらに+1千で眷属追加があるはず!
これで勝つる!!」
「って思うじゃん?
次の眷属追加条件は
『初期信者数MAX』の2倍という事になって
おりましゅ。
つまりあと1千人必要なんでしゅよ。
また天界(市役所)からの通達を見ていなかった
でしゅね?」
イスから立ち上がりガッツポーズのように
握りこぶしを高々と掲げる女神に、その隣り、
眼下からお目付け役が発言をし―――
「NOおおおおおおお!!」
冷や水、否、液体窒素を頭からかけられる級の
現実を突きつけられた女神はイスから立ち上がった
ままの姿勢で絶叫した。
「(ホントは通達の中に、信者数が3千になった
特典としゅて、
『第一眷属がいるところなら降臨可能』という
能力追加が書いてあったんでしゅがねえ……
面白そうでしゅのでしばらく放置……じゃなくて、
反省してもらうという意味でも、様子を見る事に
しましゅ)」
ナヴィが生暖かい目で見守る中―――
フィオナの混乱と周囲の困惑の時間が過ぎていった。
―――10分後―――
「えーと……
つまり、僕が移動すれば、そこにフィオナ様は
降臨出来る、という事ですね?」
ようやく場が落ち着きを取り戻し、アルプが
特典の説明と確認をする。
「うぅう~、ナヴィのイジワル……
最初からそう説明してくれたらいいのに」
「これに懲りたら、今度からちゃんと手紙を
読む事でしゅ」
女神をたしなめるナヴィを横目に、商人と貴族は
今後の動向を考える。
「では、アルプがマービィ国へ―――
他の眷属である方々は……
ファジー君は引き続きここ、フラールのアルプの
家に留まってもらって、ポーラさんはバクシアの
ボガッド家に待機―――
これで、要所の連絡は取れると思います」
「あとは、マービィ国に行く時の護衛を誰にするか……
これは少し骨が折れそうですね。
私もバーレンシア侯爵も、もう軽々と動くわけには
いきませんし」
考え込む伯爵に、女神は質問する。
「あり? でも、ミイト国へは2人とも……」
「あれは、相手が大国であった事と―――
お見合いという限られた期間であったからだねぇ」
「私も、一時的な護衛や公的な任務なら
まだしも―――
長期間領地を離れる事は、本来難しい
ものなので……」
貴族2人の言葉の後に、『女神の導き』の
メンバーが続く。
「まだお時間はありますゆえ、ゆっくり
お考えください。
こちらも迎え入れる準備や、相手に
気取られないよう動く用意が必要
ですから」
「そうそう、我がマービィ国はあまり特徴の無い
国ではありますが、温泉がありますよ」
ガルバンとレンティルが場を和ませるように
語ると、女性陣が食いつく。
「へえー、温泉ですか。
いいですねえ」
「効用は何ですか?
美肌とか……」
「そういや、今年の収穫もそろそろ
一段落するんだろ?
アルプさん、ソニアさんと一緒に
母子で行って来たらどうだい?」
ポーラ、マルゴットが感想を述べ、そしてミモザに
突然提案を振られた母子は赤面する。
「温泉なんて、いつ以来かしら……
ね、アルプ」
「あ、遊びに行くわけではないんですから」
「そうだよミモザ姉。
旅行じゃないんだからさ」
弟であり第二の眷属も、姉の軽口を注意する。
「温泉かー……
胃腸に効く温泉とかないかなあ……」
ボソリと侯爵が小声でつぶやき、微妙な空気の
流れを変えるようにすかさず伯爵が割って入る。
「バーレンシア侯爵、護衛の件なのですが―――
いざとなれば私が同行いたしますので、
その時は出国許可と、私の領地の面倒を
お願い出来ないでしょうか」
「ああ、それは構わないよ。
ビューワー君にはお世話になっているし。
そういや、月に一度ミイト国の騎士団の指導に
行くようになったけどさ、あの中でビューワー君の
目から見て、有望そうなのいる?
それで修行とか訓練とか称して、護衛をやらせて
みるのもテかも」
クスッ、と笑いながら侯爵の冗談じみた
アイデアに、彼も乗っかる。
「いいですね、経費も浮きますし―――
ただ手合わせしてみた中からですと、1対1の
戦闘はともかく、護衛に向いている人はそうは
いないかと。
レイシェン・シッカ伯爵令嬢……
彼女くらいの腕前があれば、申し分ないのですが」
「そういえばそろそろ、彼女の陞爵の儀が
行われるんじゃなかったっけ。
近いうちに、連絡があるかも知れないなあ」
│ ■フラール国・バクシア国代官館 │
「……くしゅんっ!
―――風邪?
いかんな、バーレンシア侯爵様に会うというのに」
同時刻、野戦病院からややグレートアップした、代官館の
前で―――レイシェン・シッカ伯爵令嬢が佇んでいた。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在3027名―――