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01アメと焼き芋の包み紙

一章から行間スペースを少なくして

リニューアルしてみます。



ここは日本。そのとある都市部のマンションの一室。

モニターに向かってゲームに夢中になる少女が一人。


セミロングの黒髪を揺らしながら、画面に食い入り

コントローラを操作している。


どこにでもある、普通の光景―――


「あぁ……いやちょっと待ってください!

 これ鬱ENDってヤツじゃないですかあ!?

 いやいや、ここまで来てそりゃーねーでしょうよ」


彼女の名前はフィオナ。

フィオナ・ルールー。


日本人ではなく、外国人でもない。

そして―――人間でもない。


神である。


「うはぁ……くうう、どこでフラグ間違えたかなあ。

 ここはネットで……うぐぐ、しかし、それは何か

 負けた気がする。


 ―――おーし待ってろよ、次こそは貴方のハートを……

 ってブンブンうるさいのよ!


 国を離れてまだ半年も経ってないでしょーが!

 天変地異でも起きた訳!?」


耳障りな騒音の元を乱暴につかむと、耳に近付けて

しゃべり始める。


「はい!? あ、天界市役所?


 んん? えーと、まだ別世界滞在期限はあったと

 思うけど。


 手続きだって先月済ませましたよね?

 はあ……え? え? 何? もう一度―――」




―――あなたの神の資格が、はく奪される寸前です―――

―――至急、こちらに来られて説明を受けてください―――




「え? は……はぁあああああ!?」






「こちら受付となっております。

 ご用の方はそれぞれの管轄の―――


 あ、ルールー様ですね。

 5階、天界資格カウンターまでお願いいたします」


天界市役所までやってきたフィオナは、

受付の女性が言うが早いか、書類をひっつかむと

彼女はそのまま階段を駆け上がって行った。




「……はぁ、はぁあ、あ、あのー、

 フィオナ・ルールーですけど、一体何が―――」


「ルールーさんですね。お待ちしておりました。

 まずはおかけになってください」


淡々と事務手続きをこなすように座る事を促す

職員らしき男性に、彼女は立ったまま噛みついた。


「いやいや、説明を聞きにきたんですよ!

 アタシ何かしました!?

 神の資格はく奪って―――」


「落ち着いてください。

 神の資格を失うにはいくつか理由がありまして……」


「ていうか、アタシ何も悪い事してないでしょ!?

 そりゃ信仰地域をちょっと放置気味だったけど」


「今回は、それが問題になっておりまして―――」


「はい?」


「まず主に二つの理由で、神の資格を失う時があります。


 一つ目は、とても神とは思えないような振る舞いに

 至った場合。

 まあ、虐殺とか意味の無い殺生や残虐な事、ですね。


 二つ目は、信者が短期間で10%未満に

 落ちた場合です。


 どちらにしろ、一つ目の理由で二つ目も

 同時達成される事が多いのですが」


「まあ……そんな神様についていく人、

 あまりいませんものね」


「ええ……それで、ルールーさんの信者数がですね。

 現在、定数の15%ほどにまで低下しています。

 このままいくと、神の資格をはく奪しなければ

 ならないので、緊急にお呼びした訳です」


「へ?」


「へ? ではなくて。

 貴女の信仰地域、そこの信者数が激減して

 いるのです」


「な、何で?」


「そこまでは……

 ただ、このままですと10%を切りますので、


 神から神以外のものになってしまいます。

 確か、神としての担当は今回初めてでしたよね?


 もしご家族とかおりましたら、まず連絡を―――」


「わわ、わかりました!

 至急両親に相談してみるッス!」


「本日はお疲れ様でした」






急いで自分の部屋に戻った少女は、情報を整理する。


「―――ちょっと待って。


 最近確かに放置気味でしたが、全く見てなかった

 訳でもありません……

 先月だって特に変わった様子はなかったはず……

 って事は、ここ一ヶ月で何かあったって事?

 むむむ……悩んでいても仕方ありません。


 ちょっと見てみましょう―――神眼展開!」



彼女の目の前にスクリーンのようなものが現れ、

画面の中に地図のように大地が表示される。


「えーと、あった……アタシの管轄、フラール国。

 ん? 『バクシア国管理下・フラール国』……


 何これ?

 あり?  確かあそこ、連合国家でしたよね?

 10ヶ国以上からなる……


 バクシア国もその一つだったはず。

 それがどうして同じ連合国の隣国を

 管理下にしちゃってるの?」


謎が謎を呼び謎を呼ぶ。


しかし、それよりも重要な情報を見なければ―――


「そ、そうだ! 信者数です!

 えーと、フラール国は人口約1万人。


 そのうちの2千人くらいがアタシの信者で―――

 今の信者数が、えーと」




―――女神フィオナ信者数:現在302名―――




「あっはっは、そうですかー。

 15%くらいって言ってましたもんねー。

 2千人から302人ですかそうですかー。


 つーか何だよこの中途半端な数字は!

 302人って何なんですか!」




カシャ☆

―――女神フィオナ信者数:現在300名―――




「そうそう、これでキッチリすっきり……

 じゃねぇよ!

 そうじゃないんですよ!

 何があったのアタシの国ー!?」


―――い、いや落ち着くんです。


こういう時は確か素数を数えて……

素数が一匹、素数が二匹、素数が三匹―――


「よしっ、落ち着いた!


 と、とにかくパパに連絡しなくちゃ……

 あのBBAに知られないように。


 パパならアタシに激甘だから

 何とかしてくれそうだけど……

 ママはガチギレしそう。


 もし初めての仕事で神から落ちたら、

 『貴女の来世は焼き芋の包み紙に転生させて

 おくわね♪』

 くらい超笑顔で言いかねん……!」


震える手で連絡機器らしき物を操作し、

待つこと10数秒。


『フィオナかい? どうしたんだね。

 お前から連絡なんて珍しい―――』


「パ、パパァ~!!」


『フィオナ!? な、何かあったのか!?

 誰がお前を泣かせた!?

 今すぐそいつらを一族郎党全滅させて……!』


「ち、違うんです!

 実は……」




―――娘説明中―――




「という訳なんです、パパ。

 アタシにも何が何だかわからなくて……」


『ふぅむ……管理下か。

 それだけじゃパパにもちょっとわからないなぁ。


 でもママに知られたら面倒な事になりそうだ。

 ここはパパが可愛い娘のために―――』




―――あら? あなた、誰とお話ししてますの?―――




「げ、ママ」


『その声はフィオナちゃん?

 たまにはママにも連絡して。

 神様としての大事な初仕事なんだから』


「あ……はい。ソウデスネ」


『ちゃんとご飯食べてる?』


「まあ、それは」


『きちんと寝てる? 寝不足とかない?』


「いやいや……」


『今はフラール国じゃなく別世界に行ってるんでしょう?


 そこで誰かに迷惑かけていたりとかしてない?』


「んもう、子供じゃないんですからー」


『みだりに神の力とか使ったりしてない?』


「大丈夫だって。もー、ママは心配性過ぎます」


『もういきなり信者数減らしたりしない?』


「ウン! 今度から気を付けます」


『 や っ ぱ り か 』


「あ」




―――こうしてアタシは―――

―――洗いざらい白状する事になりました―――




『フィオナちゃん?

 1年も持たないってどういう事かしらー?』


「…………」


『せっかくパパとママがコネをフルに使って見つけた

 超イージーモードの信仰地域だったんだけどー?』


『い、いやしかしだね、ママ……

 まだそう決まった訳では』


『パパは黙っててください!

 あんな楽勝ホワイト地域でダメなんて、

 貴女はどういう……!」


『だ、だからこそ僕らにも責任があるだろう。

 あそこを勧めたのは僕とママなんだから。

 そうじゃないかね?』


『それは……確かにそうかも知れませんけど……』


(パパはアタシに甘いけど、ママはパパに甘いような)


『何か言いました、フィオナちゃん?』


「べ、別に……」


『フィオナ、一ヶ月前は何も起きてなかったんだね?

 しかし、管理下という事は滅ぼされた訳でもないのか』


『でも、信者数は減っています。

 減るような何かがあったのは間違いありません』


「そして今もなお減り続けています……

 こ、ここはやっぱり現地に出向いて―――」


『でも、出来るの?』


「う……」




行こうとしたけど、行けなかった―――

という事はすでに見抜かれていた。




『フィオナ、今のお前には神の力である信仰が

 足りな過ぎるんだ。

 信仰地域に降りる事はおろか、神託すら

 ままならないだろう』


「じゃあどうすればいいの、パパぁ~!」


『……仕方ありませんわね。

 ママの信仰を分けてあげます』


「え!? 本当!?」


『このままではどうにもなりませんから。

 ただし! 手を貸すのはここまでです。


 一時的に貴女の力を戻します。

 その間に神託を受け取る相手を選定しなさい』


「ほえ? 一時的にって……その後は?」


『神託を受け取る者を通じて、信者数回復の手立てを

 講じなさい』




講じるって……え?

それ、『考え』と『指示』だけで何とかしろって事?




『えええ!? マ、ママ……

 いくら何でもそれは厳し過ぎやしないかな?』


『当たり前でしょう、パパ。

 本来なら文字通り、手も足も出なかったのですよ?』


「う~……わ、わかりました、ママ……

 でも、もしどうにもならなかったら、信者だけは

 何とかしてあげてください」


『……良き心がけですね、フィオナ。

 もし貴女がどのような姿になっても、

 貴女は私の娘ですよ』


「マ、ママ……

 ってそれ、アタシが神の資格はく奪される前提の

 話ですよね!?」


『そうそう、もし神の資格を失ったら、

 貴女の来世は焼き芋の包み紙に転生させておくから♪』


「予想通りのご回答ありがとうございます!

 ていうかアンタの娘の来世が焼き芋の包み紙でいいのか

 このBBA!!」


『今BBAって言ったから、貴女の前世

 アメの包み紙に変更しておいたわ♪』


「嫌アァアアせめて哺乳類!

 つかアタシ前世でも来世でも何か包む

 運命なのかよ!!」


『お、落ち着きなさい2人とも!

 フィオナ、とにかくお前は神託を受ける

 眷属を探しなさい!

 そして情報を……!』




通話が途切れ、都市部のマンションの一室に

静寂が戻ってきた。




「―――ふぅ」




―――こうしてアタシは―――


―――アメの包み紙という前世を引っ提げ―――


―――焼き芋の包み紙という来世を―――


―――振り払うため―――


―――信仰地域へ向かったのでした―――




カシャ☆

―――女神フィオナ信者数:現在296名―――


―――神の資格はく奪まで、残り96名―――




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― 新着の感想 ―
[良い点] 小中学生でも楽しめる [気になる点] どっかで読んだような、オリジナリティの欠如
[一言] Twitterの絡みありがとうございます 早速ブックマークさせていただきますね
2021/01/26 12:17 退会済み
管理
[良い点] 01アメと焼き芋の包み紙 読みました。 『ここはネットで……うぐぐ、しかし、それは何か負けた気がする。』がリアルで笑えました。 あるあるですね。 私はわりとすぐ調べてしまうタイプですが、…
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