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メゾン☆アストロVS空き巣高校生  作者: SAND BATH
空き巣高校生VS支配人
80/112

英雄と高校生、意気投合の宇宙剣

「お前ら……ふざけんなよ」

 作戦がある、フォーメーションがある。

 そう言われて任せてみれば、このザマだ。

 参太は悔やんだ。彼らに任せることしか頭になく、入ってくるなと言われて萎縮した自分に。

(せめて、変身しておくべきだった!)

 参太は両手を握り込み、渦巻く悔恨をかみしめる。

 勇騎は血を吐きながら、なおも叫んできた。

「おい! 早く。もうお前しか、いないんだ」

 その言葉に透が顔を俯かせているが、当然状況は彼を気遣っている場合ではなかった。

 そして、生きたままの人間を兵器化することをためらっている暇もない。

「くそったれ!」

 参太は叫び、顔を上げて変身する。

 スキル、兵器化の発動。

 己の体を人型兵器に変えることにより、参太は全身を機械鎧に変身させた英雄となる。

 兜からは一本角がアンテナのように伸びており、角の下部、瞳の位置に取り付けられた高解像スコープで外部の様子を人間を圧倒的に凌駕する動体視力で把握していく。

「参太くん。ようやくお出ましかね」

 勇騎の胴体から拳を引き抜いた管理人は、赤黒い血の付着した腕を払うこともなく、そのまま勇騎の瀕死の体を蹴り飛ばす。

 慣性の法則にしたがって宇宙の彼方へ飛ばされた勇騎の肉体を、しかし参太は足裏のロケットブースターから噴射炎を吐き散らし加速、即座にその手を掴んだ。

「ありがとよ……やってくれ」

 スキルがなくなり己を強化できなくなった“英雄”は、すでに蒼白になっている顔をそれでも笑顔にして、告げる。

 参太の脳裏に零華を兵器化した記憶が駆け巡った。

(また救えなかったんだな、俺は)

 諦めに似た気持ちが胸を締め付け、参太は一度目を閉ざすとスキルを起動させた。

「すみません」

 相手にとっては気休めにもならない謝罪を口にし、己に言い聞かせる。

「大丈夫だ」

 直後、つないだ勇騎の手のひらがそのまま剣の柄となり、全身が凝縮。やがて鋼鉄の刃が顕現し、瞬時に大剣が生み出される。

「兵器化……完了」

 勇騎に報告するように呟くと、参太はその手に握った新たな剣――宇宙剣“ブレイド・サーガ”を構えて管理人を睨みすえた。

「ほう。そのスキルを人間に対して使うとはな」

 あらゆる物体を兵器に変える力は、石ころをミサイルにすることもできるし、犬をメカドッグにも変えられる。

 その本質は周囲の存在、森羅万象を己の道具にしてしまう点にある。

「人を下僕以下の武器に変える、か。生命の尊厳を無視する使い方だな」

 管理人は淡々と言葉を放ちつつも、その視線は鋭く剥かれている。

「そのスキルを授けたのは、君を救うためだ。そのはずだったが……参太くん。その使い方をして、それでいったい何が救えるのかね」

 その本質を知っていてなお、管理人は参太にスキルを授けた。

 すべては彼女を救いたいという純粋な想いのために。

 すべては現実に屈しつづける己を救いたいという少年の叫びを形にするために。

 管理人は力を与えた。

「うるさい」

 参太ははるか昔にも思える記憶……管理人を初めて殺した、その直前に触れた、管理人の本心と対話したことを思い起こす。

『救ってやりたい』

『私もだ。君と私は、一緒だな』

『君は、君自身を救いたくはないのか』

 かけてもらったその言葉はまだ胸に響きつづけている。

 言葉とともに受け取った力は弱まることがない。人生を支える柱のような、自分のすべてを預けられる家族のような言葉と、いかなるスキルにも引けを取らない力。それさえあったらもう、何もかもできるような気がした。

 今を知らない、一歩さえ踏み出していなかったあの頃は。

『そうだ。君を救えるのは、君だけだ』

「うるさい」

 参太はかぶりをふって、消えない言葉を打ち消すように叫んだ。

「俺は、それでも、何もできなかったんだよ!」

 力があっても、言葉で支えられても。

 それでも何もできなかった。メゾン・アストロの住民間闘争を終わらせることもできなければ、エイリアン化した彼女を救うことすら叶わなかった。そしていま、目の前でさらなる犠牲者を増やしている。

 参太は叫びつづける。

「それでも俺は、やる。やると決めたんだよ、俺は」

 救えなかった彼女が、武器にその身を堕とされた彼女がなおも自分に語りかけてきてくれる。

 だからこそその意志に応える義務がある。

 罪を償うと決めた。贖うと決めた。もしそれで許されるのなら。

『そうだ。それでいい、参太!』

 新しく刻んでしまった罪そのものであるはずの大剣が、参太の心に言葉を贈った。

『俺がやれって言ったんだ。お前はその通りにやってくれた! 正義はお前にある、胸を張れ!』

 勇騎の声がブレイド・サーガから滲んで響いた。

 直後、ブレイド・サーガがその機能を起動させる。

 外観は純白の柄に白銀の両刃が伸びた大剣だが、それはレーザーソードである。白銀の刃からは徐々に、赤色のレーザーが内側からわき出るように両刃を包み込んでいく。

 勇騎のスキル“英雄”を引き継ぐ宇宙剣、ブレイド・サーガは己の刃をレーザーコーティングで徐々に、しかし永遠に強化しつづける性質を持つ。

 一秒、一秒。その刃は己を研ぎ澄まし、己の力を増していく。

『俺も管理人の旦那から叩き込まれたもんさ。そうだろ、旦那! 弱かった俺に、ひたすらもがき続けることの大切さを、あんたは俺に教えてくれた。だから“英雄”のスキルを与えてくれたんだろ、なあ!』

 ブレイド・サーガから心の波動が放射される。

 形のない力の波は、しかし管理人に確かに届いた。

「意志を保ったまま、兵器となる……か」

 声を受け取り、勇騎の心が消えていない状態を知った管理人は、そこに奇跡を見る。

 兵器でありながら、心がある。道具でありながら意志がある。二項対立であるはずの観念が共存してひとつの存在にまとめ上げられている。

 管理人は静かに、訂正した。

「そういえば、そうだったな。参太くん、君という人間は。先ほどの私の言葉が間違いであったこと、その剣に免じて認めよう」

 しかし同時に、管理人は懐から虹色のペンを取り出し、すぐに武器に変える。

 再び現れた聖剣を構え、管理人は参太と正対した。

 一方参太はブレイド・サーガの柄を握り込み、なおも響く勇騎の言葉に心を傾ける。

『俺がついてる。だから参太、お前ももがけ。足掻け。何もできないのは、何もしないからだ。俺はお前の道具なんだ、せいぜいめいっぱい使え』

「……はい」

 参太は頷くと、目の前の現実と向き合った。

 虹の刃がこちらを殺すべく迫る。

 対する参太は、赤い光の刃を振り上げた。

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