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メゾン☆アストロVS空き巣高校生  作者: SAND BATH
空き巣高校生VS超宇宙住民
57/112

利害関係、高校生

 住民を遠隔操作できる力が、アパート全体に張り巡らされているのだろう。

 敷地に一歩足を踏み入れた瞬間、参太は全身にビリッと電気が走るようなショックを感じた。

「っつ!」

 静電気にふれたかのようだ。

 思わず、参太は後ずさる。

「マジだよな、これ」

 透たちが説明したことは信じたくなかったが、どうやら現実での出来事らしい。

「はあっ」

 大きくため息をつく。これでは管理人室に行くこともできないし、蘇った管理人に会いに行くこともできない。

 重い腰をあげてはみたものの、一瞬で手詰まりだ。

「さて、と」

 参太は落ち着いて自宅に帰ると、自転車にまたがった。

 時間は午後の五時半。

「まだいるか、あの先生」

 先生というか大学生のような、あの美人教師。眼鏡のよく似合う小顔を思い浮かべると、参太は汎神高等学校へと急いだ。

 メゾン・アストロに入ることができないのであれば、外からアクセスする必要がある。それを可能にする勢力は盾伊を中心とする光の街だが、そのバイトは辞めたばかりだ。もうあそこに入ることはできないし、参太としても戻りたくはなかった。辞めたばかりのバイト先に電話をかけるようなものだ、実に気だるい。

 参太は気だるいことが大嫌いだった。

 だから友だちも作らないし、部活もしない。テスト勉強もがんばらない。くそったれ。

「よしっと!」

 ペダルをこいで高校の鳥居をくぐり、駐輪場へ。

 そのまま玄関をくぐらずグラウンドに足を向ける。マラソンのように走り込み、グラウンドの隅に立つプレハブ小屋の前に立つ。

 窓はあるがブラインドに覆い隠され、秘密のベールに包まれたその小屋は新しく、やけに小綺麗に見えた。

 ドアノブに手をかけ、回す。

 鍵は、かかっていない。

「やあ。待っていたよ」

 美人教師がやはりブラウス一枚のラフな格好で、椅子に座ってグラスに注いだアイスカフェオレを飲んでいた。艶のある唇についた灰色の液体をなめ取ると、眼鏡の上を蛍光灯の閃光が走り、その視線は隠れる。

「協力してくれる気になった?」

「復讐には、疑問を思いますけど」

「ますけど?」

 ふふ、と美人教師は小首をかしげて息をはく。まるで弟の口調をまねて笑う意地悪な姉のように。

「……盾伊を排除する必要がでてきました。なので、その点では協力します」

「利害の一致、ってやつか。いいね、キミ。ぼうっとしてる草食系男子に見えて、よく考えてる」

 美人教師はアイスカフェオレを飲み干してしまうと、空のグラスをデスクにカタンと置くと、

「それじゃあもう、今日、始めるね?」

「お願いします」

 参太は頭を下げた。

 メゾン・アストロの現状を打開するには、聖剣を握っている盾伊を討つしかない。光の街に直接乗り込みたくはない以上、この女を頼るしかなかった。

(めんどくさいけど……やるしかないな)

 参太は頭を上げると、棺のような檻に収められてしまったかつての強敵――虹色のエイリアンを見つめる。

 彼女はエイリアンを敵ではなく、下僕だと言った。

 それがいったいどういうことか。

 参太は視線をエイリアンから美人教師に移す。

 彼女は笑っていた。

「私の最初にして最高の手駒、このレインボー・コードをもってして、あいつの息の根を止めてあげるわ」

 彼女はやや顎を引いて、不敵な笑みを浮かべた。眼鏡の表面に走っていた蛍光灯の閃光が外れ、彼女の爛々と輝く瞳を参太に見せる。

 参太は心底、彼女の笑顔に背筋が凍る思いだった。

(復讐する直前だってのに……どうして、そんな風に笑えるんだよ)

 わからなかった。憎くてたまらない相手に会いに行くだけでも気だるいというのに、さらに復讐するとなれば嫌悪感しかないのが普通なのではないか。参太はそう思う。

 だからこそ参太には彼女の笑顔が理解不能で、恐ろしかった。

 理解不能なものが、想定外の事態を引き起こす。まさしく彼女はテロリストだ。笑顔のテロリストなど、狂人以外の何ものでもない。

(またとんでもないことに、なるかもな)

 参太は嫌な予感を抱いたが、しかし、彼女に頼るしか道はない。

 両手の指を一度、リラックスするべく解きほぐしてから、また握る。

「どこに行くんですか」

 参太は恐怖と寒気でうまく動かない口を動かし、のどから言葉を絞り出す。

 彼女はまったく笑顔を崩さないまま告げる。

「この部屋から、光の街の疑似宇宙空間に移動するわ。いまバイパスをつないでる途中だから、ちょっと待ってね」

 星のでるようなウィンクをされた。

 参太はどくんと胸が高鳴ったがさっと視線を反らす。

 

 美人教師と偽った、かつての主任研究員と。

 過去、世界を救った英雄だった高校生。

 その共闘が世界をふたたび混乱に陥れることなど、参太にはまだ知る由もない。

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