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メゾン☆アストロVS空き巣高校生  作者: SAND BATH
空き巣高校生VS超宇宙住民
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武装解除して死んだ、高校生

「違う、機体!?」

「プランにはなかったけど、乗り換えるしかなかったの」

 刃と刃をぶつける二人は、武器越しに互いを見つめ合う。

「どうして、そこまで立ち向かうんですか」

「ごめん。でも守らなきゃいけないの、みんなを!」

「守る?」

「だから参太くん、いまは帰って! お願いだから」

 鮮やかなワインレッドの装甲を纏う人型兵器【TN-2 セイヴァー】が瞳の位置にあるスコープから金色の輝きを瞬かせる。

「俺には、やらなきゃいけないことが!」

 正直、もどかしかった。こんなことをしている暇はない。

 そもそも。

「俺は、あなたを倒したいわけじゃないんだ……」

 つばぜり合いは両者、一歩もひかない。

 ひいた瞬間、相手に殺されるのはもうわかっている。

 しかし、退きたい。参太にその気持ちが強くわき上がった。

「私もそうなんだけど。でも、キミがどかないから!」

「くそっ!」

 参太は刃を前に押さず、下方にずらした。

 虹の刃がレールのように下に位置し、零華の青い刃がその上を滑った。

 セイヴァーの体勢が前につんのめる。

 そこを狙って攻撃をかけることもできたが、参太は何もしなかった。

 それどころか、後ろへ下がる。下がって、下がって、刃の間合いから逃れていく。

「何のつもり?」

「もうやめましょうって、言ってるつもりだけど」

「そう」

 もういいだろう。もう無意味な争いの決着を付ける必要はない。

「互いにやるべきことがあるなら、それでいいじゃないですか。俺は、ここですることがあるんです」

「私も同じよ」

「じゃあそれでいい。一緒にやればいい」

「そう」

 零華は大きく息をはいた。笑ったのかどうかは表情が読めないからわからない。

 ただ参太が確かに見えるのは、セイヴァーが腕からイレイザー・ブレイドを噴出するのをやめたことだけだ。

 全高十五メートルの巨人機と全身を兵器に変えた英雄が向かい合う。

 互いに実力を試し合った末、その決着は凄惨なものになるだろう。相手を殺さなければ、命を奪い尽くさなければ、その逆をされる。持っている力が強大すぎるがために、そのすべてを奪わなければ、完全に動かない状態にしなければけして安心できなかった。

 とはいえ。

 本当にそれが目的か? 零華の命を奪うことが、いま自分がするべきことなのか。

 違う。むしろ、逆だ。零華には幸せに生きて欲しいと、そう参太は思ってさえいる。

「もう俺は、戦えない。あなたとは」

 もうどうでもいい。敵だの味方だの、心底どうでもいい。

(こうしている間にも、エイリアンになっている人がいるかも知れない)

 もどかしかった。エイリアン化現象が表面化する前に。その侵食が零華に及ぶ前に、自分がやらなければならないことがある。

 参太は己の意志を伝えるべく、スキルを解除する。鎧を着た英雄は、ひとりの高校生に戻っていく。

 一方、零華はセイヴァーに乗ったままだった。

「なら。仕方ない、ね」

 零華は天使のような声で、笑顔になったに違いないと思えるほどやわらかな声で。

 セイヴァーが右腕からイレイザー・ブレイドを噴出させた。

「死んで」

 冷たい声音。

「そんな」

 あっけない終わり。

 セイヴァーが零華の指示のもと、イレイザー・ブレイドを突き出した。

 参太の視界に青い刃が、まるで巨大な滝のように映る。人間を蒸発させることなど容易いレーザーの飛沫が視界のすべてを支配した。花火のようでさえある。

 スキルを使おうとしたが、遅かった。一度人間の体に戻った参太には高解像スコープで状況を瞬時に把握することもできなかったし、反発エネルギー関節による俊敏な動きもできなかった。

 何もできない高校生がただ、死んでいく。

(お笑いだよな)

 まったくもって間抜けだった、と思う一方、相手を殺すくらいだったらこれでいい、とも思えた。

(もとからろくな人生じゃ、なかったからな)

 空き巣をして自己満足していた歪んだ人生だった。

 

「まったくもって貴様は、見ていられないやつだ」


 瞬間、静かな男の声が響いた。

 夢のような景色が宇宙で発生する。

 参太は見る。目の前に迫った光の滝がひとりでに縮んでいく。伸展したはずの武器が勝手に収納されていく。

 まるでビデオの逆再生でも見ているような、現実を超越した景色だった。


「神童か」

 零華が呟く。

 内側で世界が巻き戻るのは参太には初めての経験だが、零華にとってそれは二度目の救済だった。

 スキル“世界改変”。

 宇宙空間のなかで起こったあらゆる事象を、好きなように操作することができる。

 いまは巻き戻しているが、握りつぶすことだってできるし、未来に早送りすることもできた。

 実際零華は、そのスキルによって破壊された部屋があることを知っている。

「正直、気にくわないわ」

 救われたにせよ、零華には恐ろしかった。自分の命がいつでも握られているのだと、そう言われているような気がする。


 一方参太は、目の前に現れた少女――神居司の背中を見ていた。

 参太は確かにきいた。女の子であるはずの司の口から、男性の声が出ているのを。

 司は参太の死を回避したのを確認すると、振り向いてにこやかにほほえみかける。

「貴様は面白い奴だが、少々、世話の焼けるやつだよ」

 やはり男の声が、ショートヘアの彼女から聞こえる。

 参太は一度、首をかしげた。 

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