OL VS 高校生
参太と零華は宇宙空間のなかで向かい合う。
小さな星々が瞬く暗黒の景色に浮き立つ全高15メートルの白銀の騎士が、アイカメラから青い輝きをちらと放った。
対する参太は鈍い銀色の鎧に身を包み、瞳を変化させた高解像スコープから緑色の光を薄くもらす。
互いの表情は、互いに見えなかった。
(OL風女子……また、会えた)
参太は正直、嬉しかった。メゾン・アストロから距離をおいた時点でもう会えないと思っていた。しかし会えたとしても話しかけられる気もしなかったから、いずれにしてももう話すことはないだろうと諦めていた。
今、戦場で再会したことで二人は話す必要性に駆られている。
どんな形であれ、彼女と話す機会を得られたこと。それが参太には嬉しかった。
「参太くん。探してたんだよ、あなたのこと」
「どうして、です?」
「それは……」
零華は言葉に詰まった。答えるのに戸惑っていた。
嬉しい感情とともに、参太は暗い予感を抱いてもいた。
自分が相手を想っているからといって、相手はどうか。保証はない。
「これを探していた、の間違いですよね」
参太は零華を見透かすように、その手に聖剣の柄を握ってみせた。
柄を握れば内部機構が作動、虹色の光が伸びて刃の形状を成す。光と物質の中間に位置する未知の素材で形成されたエイリアンの武器――聖剣アゾノフだ。
「図星ですか」
参太はあえて問い詰めた。問い詰めてどうなるものでもなかったが、聞かずにはいられなかった。
怖い物見たさと似ていた。答えを聞けば夢が壊れると知りながら、それでも現実を知りたいと思う自分がいる。怖い物に引きつけられるのと同じような心持ちで、幻想を破壊する現実を知りたいと思う。引力を感じるように、現実を知りたがる。
参太は鎧の下に隠した顔で、歯を食いしばった。
「図星、だね」
零華は認めた。即答だった。
瞬間、参太はぐっと胸を締め付けられた。
(やっぱりな、そういうことだよ)
誰も自分に興味など抱くものか。自分になんか価値はない。
参太は俯くと、しかし己の使命を思い描く。
(それでも、俺は)
興味を抱いてもらわなくても構わない。ただ、彼女がエイリアンになる姿を見たくはなかった。
「俺はあなたを、救います。だから、この宇宙空間からでてください、早く」
「どういうこと?」
「それは言えません」
現実世界でスキルを発現しようとすればエイリアン化する。そんな真実、住民本人に言えるはずがない。伝えてしまえば最後、彼女がエイリアンになるかも知れない――参太はその一心で、己の使命を隠す。
零華はため息をついた。
「私を救う? いったい何から、救ってくれるの」
「言えません」
「私にはするべきことがある。だから参太くん、お願い。あなたこそ、聖剣を置いてこの空間から出て。あなたは本来、この件とは無関係だから」
「何ですか、するべきことって」
「言えないわ、私も」
零華は言い放つ。きっぱりとした口調だった。反論を許さない、強い言葉。
メゾン・アストロの住民ではない参太を、零華はただ巻き込みたくなかった。
彼女を救いたい。
彼を巻き込みたくない。
同じ心根から生じた意志が、互いに負けじと向かい合う。
沈黙が宇宙空間を支配する。
透は後方に下がり、静かにたたずんでいるエイリアンシップを観察する。
その一方で、満身創痍のハルは意識を取り戻しそっと目を開けた。
参太が聖剣を振り上げれば、零華もまた乗機【TN-1 キラー】の近接兵装“イレイザー・スラッシュ”を起動。青色のレーザーソードが顕現する。
虹の刃と蒼穹の剣は、ふたたび互いを敵と認めた。
「わからずや!」
「そっちこそ!」
参太と零華、鎧の戦士と白銀の巨人がぶつかりあった。




