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メゾン☆アストロVS空き巣高校生  作者: SAND BATH
空き巣高校生VS超宇宙住民
40/112

宇宙ハッキング、空き巣高校生と

メゾン☆アストロVS空き巣高校生 40


 午後6時、汎神高校玄関。

「奥津くん、どうした? 顔色がよくないよ」

 透は息を切らしてやってきた参太に眉根を寄せた。

「いや、ちょっと急いできたから」

 参太はグラウンドから全力疾走で玄関までやってきた。さすがに転校初日の初バイトで遅刻はできなかった。

「そう、なんだね。まあ。気をつけて」

「ふーん」

 透はそれ以上追求せず、司は怪しげな視線を送るがやはり何も言わなかった。

 もっとも透と司には参太が何を見せられたのか知るよしもなかった。

(あの部活のこと、知ってるのか? こいつら)

 参太は首をかしげるが、二人が歩き始めたのでついて行く。


 三人が向かったのは廃工場の社員寮だった。錆びたドアをあけて光の街へと行く。

 透が足を向けたのは中央研究棟ではなかった。

「ん? 盾伊さんのところじゃないの」

「盾伊さんからはすでに指示を受けている。何でも君に従えとまで言われているんだよ、こっちは」

 透は呆れたように言った。司もやれやれと肩をすくめている。

「君って……俺のこと言ってる?」

「ああ、俺たちは今回、君に従うんだよ」

「はああああ?」

 盛大な疑問符を浮かべる参太に司はひとりで笑っていたが、透はため息ひとつで片付けると『空間移動室』の看板で表示されている建物に入る。ビルではない、ドーム状の建物だった。

 中に入るとたった一つのドアだけが見える。まるでアパートのドアのような、ごくありふれた家屋のドアノブが見えた。

 透と司はドアの前で足をとめた。

「さて。コード番号とパスワードは君が知っていると盾伊さんは言っていたけど。本当?」

「ああ……そういうことか」

 参太はようやく理解する。

 コード番号5、パスワードはRAINBOW。田代真が言いのこした言葉を反芻すると、胸に熱い気持ちが蘇ってくる。

 住民のエイリアン化を止めるために。

 参太はコード番号とパスワードを透に伝える。

「レインボウ、か。つくづく呪われているな」

 透はけだるげに呟くと、固くドアノブを握る。

 そしてついに施設の中に入る。

 そうとばかり思っていた参太は、直後に固まった。

 ドーム状の施設の内装は見えなかった。ただそこには宇宙空間が広がっている。それはまるで、メゾン・アストロの部屋にそっくりだ。

「どういうことだ、これは」

 首をかしげる参太。

「メゾン・アストロの技術を解析して造った、現実空間と宇宙空間とを自在に移動できる装置なんだよ。このドームは」

 司があたり前のことを話すように説明してくれた。

 要はメゾン・アストロの部屋を再現している、ということか。

「コード番号5、ということはメゾン・アストロの5階のどこかか、ここは」

 透はコード番号をもとに状況を把握する。

 周囲を見渡せば闇。遠くには星々の光がまたたく。ブラックホールもワームホールもない、太陽さえない宇宙の平原だ。

「何もない、か。しかしながら不可解だ。これほどまでに何もない宇宙世界というのも」

 メゾン・アストロの住民たちは管理人の指示のもと、“誰がよりよい宇宙世界を構築できるか”という課題に各自取り組んでいる。だから何もない宇宙世界というものは存在し得ない。どんなに小さなものであっても、何かしらの構造物や人工天体、あるいは暗黒星雲があるのが普通である。

 しかしここには何もない。透が疑問を浮かべるのももっともだった。

「何かあるな。司、何か見えるか」

「うーん、そうだねえ」

 司はそこで目頭を押さえると、

「パスワード“RAINBOW”について、考えたんだけどね。それって虹色の構造物だとボクは思うんだよ」

 司はにやりと笑い、参太を見る。

「持ってるんでしょ、君。光とも言えない、でも触れている実感もない不思議な虹を」

 参太はぎくり、と背筋が寒くなる。

(なぜ、知ってるんだ)

 あの決闘のことを知っている人間は限られている、はずなのに。

 まして聖剣をこっそり持ち帰ったことなど誰にも知られていないはずだった。

 それがこの二人には筒抜け。いったいどういうことか。

「その虹が鍵になると思うんだけど、どうだろう」

「俺も同じことを考えていた」

 透と司はうなずき合うと無言の視線を参太に寄越してきた。早くしろよ、とでも言われているかのようだ。

「わかったよ」

 選択肢はないようだ。参太は悟ると内ポケットにしまってあった虹色のペンをそっと取り出す。決闘の末に盗み出したもの――聖剣を。

 光と物質の中間に位置する未知の素材で造られた小さな逸品。それは宇宙空間にかすかな光を放射する。

 とはいえ、何が起こるわけでもなかった。

「これをどこかにやればいいってことかな」

 参太は透に聞いてみるが、しかし誰も答えを知らない。

「どこかとっても、ここには何もない。道しるべもないとなると……」

 透はいま一度周囲を観察してみるが、視界にはやはりはるか遠方の星々しか見えなかった。

「どこに行けばいい?」

 じれた声を漏らす透に、お手上げというように肩をすくめる司。

 参太はしかし、ふいに頭痛を感じた。

「!」

 二人の様子は変わらない。どうやらその頭痛は参太しか感じていないものらしい。

 手がかりのない沈黙がつづく中、やがて参太は見る。

 星々しか見えないはずの遠い宇宙の一角に、星のまたたきとは異なる強さの光の群れが浮かび上がっていく。それはまるで夜景だった。

「あ、あれ」

 参太は思わず指さし、透と司に言う。

 夜景は徐々に、しかし確実に近づいてくる。

「何だ、これは」

「いやあすごいね」

 透と司も思わず声をあげた。

 ゆったりと近づいてくるそれは、圧倒的な威容で三人の前に現れる。

「鉄の、鯨?」

 それが参太の第一印象だった。

 巨大宇宙戦艦が目の前に停まった。

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