高校生と決戦・結
その星はかつて、他星への侵略をきわめた歴史があった。しかし時が経って時代が進むにつれ弱い文明の星々をその外敵から護るようになった。
なかでも虹色に輝く光でもなく物質でもない素材で鋳造された“聖剣アゾノフ”をもつ戦士は英雄と讃えられ、たったひとりで一つの星を護ることができるほどの力をもっていたという。
だが。
その星の歴史は突然、衰退の一途をたどることになる。
聖剣を持つ英雄が突如、何の言葉も残さずいなくなってしまったのだ。
残された住人たちは英雄を失ってもなお奮起したが、しかし強大な外敵の出現を前に庇護下の星々を護ることはおろか、故郷の星への侵略さえも許した。
住人たちは星を物質ではない、光と同質の情報体に変質させることで外敵の手から逃れ、ワームホールの技術で宇宙から宇宙へ、世界から世界へと渡った。
宇宙の支配者から星ごと逃げ回る旅人の身に堕とされた彼らは強大な侵略者から逃げると同時に、聖剣と英雄を探し出す決意をその胸に秘めていた。
特に聖剣の探索任務はいかなる犠牲を払っても実行されるべき最重要課題となる。
そして彼らは発見した。
地球という蛮族の星から聖剣の反応が発せられていることを突き止めたのだ。
奇しくも聖剣と同じ虹色の体表をもったエイリアンは、七色の部下とともに聖剣の反応が放たれる宇宙空間へのダイブに成功する。
虹のエイリアンは開いたワームホールを背にして、己が母星をかばうような姿勢で言った。
「かつて我らが母星も、地球と似た岩石の地面を持つ豊かな星だった」
参太は不意に始まった解説にいぶかしみながらも、しかし剣を振るうことはやめなかった。やめてしまえば死ぬ。そう思えるほど相手は強い。
「しかし侵略の手から逃れる為……我らは母星をあのように輝きに変えなければならなかった」
エイリアンは参太の一撃を受け流しつつ、反撃の一閃を喰らわせる。
ギン、と鋭い音を響かせて白刃と神剣とが衝突した。
反動で互いがのけぞり、しかし両者は同時に次撃の準備をしている。
「聖剣さえ取り戻すことができれば。私が英雄となる!」
決意の叫びがエイリアンからほとばしる。その声は放射線となって参太の身を焼いたが、しかし大したダメージもない。
そのまま神剣を振り下ろした参太は、「知るか!」と吐き捨てた。
「お前たちが何者だなんて、俺には!」
神剣が大出力を維持したまま、さらに柄に埋め込まれた加速装置から炎が噴き出す。圧倒的な速度で振り下ろされる神剣をエイリアンは白刃を横に構えて防ぐが押し込まれ、じりじりと顔の目の前まで刃が迫った。
このまま押し込めばエイリアンの頭ごと神剣の輝きで葬れる。
エイリアンの顔は、しかし笑みのままだった。
彼は負けじと剣を押し返し、徐々に、しかし確実に押し戻していく。それは落ちてくる隕石をひとりの英雄が受け止め、そのまま外宇宙に投げてしまう勇姿に似ていた。
「他者の為に力を使うと、言うのなら!」
エイリアンはついに神剣を完全にはね除けてしまうと、直後、反撃の一閃を繰り出す。
光の速度の突きが炸裂した。剣先が参太の肩に届き、装甲を貫通する。
「く!」
参太はうめくが、しかしそのまま退いてもいられない。
逃げはしないと心に決めた以上、もう相手を倒すしかないのだから。
「我らを救うために、貴様も動け! 蛮族の英雄よ!」
「どうして!」
参太は肩に刺さった白刃を神剣を叩きつけて折り割ると、刃を翻して下から上へとはね上げた。
黄金の斬撃が刃を失ったエイリアンの体表を引き裂く。紫色の液体が血のように噴き出した。
「ガ!」
エイリアンはうめくが、しかし彼もまた退くつもりはないらしい。
「結局、貴様も!」
叫び、エイリアンは参太の肩に刺さった刃の欠片に向かって手を伸ばす。
刃に巻き付いていた宇宙怪獣が目を覚まし、蛇のような体をくねらせると刃から離れてエイリアンのもとへとはせ参じた。
宇宙怪獣はエイリアンの傷跡にそのまま覆い被さると、エイリアンの体に吸収されてしまう。
「己の為だけに、力を使う。他者の為の力とは何だ。先ほどの言葉は、どうした!」
「お前は、敵なんだろう!」
参太もまた兵器化のスキルを発現。穴のあいてしまった肩をまるごと小型砲台に変えてしまうことで傷を埋めた。
互いに傷口をふさいだ両者はすぐにぶつかりあう。
エイリアンは剣を失ったが、宇宙怪獣と融合したことで両手の先が指ではなく蛇の頭のように変形していた。戦う牙を手にしたエイリアンは、参太の神剣を避け、反撃の一撃を思い切りぶち込んでいく。
「敵だから、救わないと?」
蛇型宇宙怪獣の口が大きく開かれ、さらに手首にあたる部分が伸びることで急激に加速する。
手前で速度変化が起こった攻撃を避けられる道理はなく、参太は神剣を構えて防ごうとする。が、敵の拳はさらに伸びて剣を回り込んでかわし、直接参太の手首を狙ってかじりつく。
黄金に輝く鎧は手首さえ堅固な装甲と化しているが、それでも敵の牙は食い破る。
手首を噛みちぎられた参太は神剣を手放す格好となった。
「俺が救うのはあの人だ。お前なんかじゃない!」
参太の叫びに応じて肩の大砲が火を噴いた。
ゼロ距離砲撃。
参太の決意がエイリアンの胸を貫いた。
エイリアンの口の形はまだ笑っていた。




