動けないままの高校生、ブラックホールを見る
目を開けば、宇宙怪獣と白銀の巨人が互いの刃をぶつけていた。
朝か、と寝ぼけた目をこすろうとして。体が一切動かないことに気がつく。
(そうか。そういえば、そうだった)
参太は自分が戦場にいることを思い出す。
白銀の巨人が、あのOL風女子が来てくれたことが嬉しくて、奇跡のように思えて、気がついたら眠っていた。
張り詰めていた心が安心感で緩んでいくのを自覚したときにはすでに遅くて、布団のなかのような暖かさの中、熟睡していた。
藍色の宇宙怪獣が全身に巻き付いて締め上げられた記憶が蘇る。思い出した瞬間、恐怖で叫びたくなったが堪え、目の前の現実を見る。
巨人は宇宙怪獣から放たれるレーザー攻撃を光の盾で防いで、そして必殺技じみた武装を起動しようとしていた。
各部の装甲が展開され内部機構が露わとなった直後、装甲で覆い隠されていた無数のレーザーキャノンの砲門から一斉射撃が行われた。
青色の破壊光線がまっすぐ宇宙怪獣に向けられていく。
一切体を動かせない状況のなかで、しかし参太は巨人が危機に陥るだろうことを知る。
零華はモニターを見て、眉をひそめた。
レーザーの一斉射撃は宇宙怪獣に命中することはなかったからだ。
「いままでずっと、静観していたのに!」
宇宙怪獣をかばうかのように出現した、青色のエイリアン。突然割り込んできて、キラーの一斉射撃を両手を振っただけで無力化してしまった。
「コレは試練ダ。部外者二倒されルわけニモいかない」
「試練?」
「聖剣の試練なのだヨ!」
青色のエイリアンは一瞬にして剣を六本、背後に顕現させる。
まるで後光のように宙に浮かぶ六本の剣はどれも異なった形状をしていた。零華は悟る。
「武器召喚と似てる。私と同じってわけね!」
負けられない。
宇宙怪獣が支援砲撃とばかりに大口をあけてレーザーを放ってきたが、それをやすやすと避けたキラーは、迫る青色のエイリアンの斬撃をレーザーソード――イレイザー・スラッシュで防いだ。
「アクマで、アノ若造二向けられタ試練ダ。貴様ハ失せろ!」
青色のエイリアンは力で刃を押し、あろうことか全長15メートルのキラーを押し返し吹き飛ばす。
「なんて力っ!」
うめく零華はしかし全身の装甲を一度閉じて一斉砲撃モードを解除。一瞬だけ目を閉じて操縦を放棄、両手を組み合わせて祈りを捧げた。
スキル“召喚”である。
(お願い……私に力を貸して!)
参太を救い、自分も生き残りたい。その思いが宇宙を駆け、異次元へと飛翔した。
彼女の願いを受けた異次元世界は返答として最上の武器を用意する。
キラーの目の前に専用武装【ブレイズ・スラッシュ】が出現した。それは燃えさかる炎の大剣だ。
光の剣でもなく、まして実体の刃ももたない。ただ聖火のように炎を噴出させつづけるだけの武装だ。
放出する熱は温度にして六千度。地球世界における恒星、太陽の表面温度に等しく調整された、異次元世界の職人が零華のためだけに作り上げた逸品だった。
(ありがとう、いつも!)
零華はお礼の念を贈った直後、目を開けて現実に舞い戻る。
モニターにはちょうど青色のエイリアンがいた。
「太陽剣の錆にしてあげるわ」
零華は舌なめずりすると、キラーは目の前の太陽剣の柄を握り込む。
「武器召喚! ハハ、蛮族モ又、我ラと同じか!」
エイリアンは叫び、両手に握った剣で連続斬撃を繰り出そうとしてくる。
対するキラーは太陽剣を振った。
直後、宇宙全域が炎に包まれる。
「ナッ!」
宇宙の景色が一瞬で火炎地獄に変わったことに、エイリアンはそのときはじめて本気で驚いた。
宇宙怪獣は焼けて炭になる。
ブレイズ・スラッシュは剣の形をした空間転移兵装で、一振りすると周囲の空間に炎を出現させる力がある。まさに小さな太陽を生み出し、そのなかに敵味方まるごと放り込む大胆な武装である。
キラーは周囲にプロテクト――光の盾を出現させつづけることで火炎地獄のなかを生き延びる。
だがあくまで生命体の肉体しかもたないエイリアンと宇宙怪獣はそろって焼け死ぬ。
だから。
青色のエイリアンは試練だなんだと言ってもいられなくなった。
刹那。はじめて彼はその力を解放させる。
零華は見た。
頭上に巨大なブラックホールが発生したのを。
「これは……まずいわね」
キラーが引力に引きずられていくのを感じつつ、零華は炎に包まれた青色のエイリアンが細胞を増殖させ、ゆったりと巨大化していくのもみた。
戦いはまだこれからだというように、巨大化した青色のエイリアンはついにキラーを見下ろした。




