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メゾン☆アストロVS空き巣高校生  作者: SAND BATH
空き巣高校生VS支配人
110/112

空き巣高校生と勝利の運命

 虹は七色にしてひとつであり、単一の輝きのなかに多様な色彩をしまいこんでいる。

 故に、単一の可能性が無限の未来につながる希望の象徴として、エイリアンたちは好んで虹を心のよりどころにした。

 虹の体表をした同胞は英雄となる運命を持つ者として将来が望まれる。

 そして虹の輝きを放つ刃は聖剣と言われ、あらゆる剣を凌駕する究極の性能が鍛冶師たちによって与えられた。


 いま、その虹の刃が振り下ろされる。

「君の剣は、何だ!」

 振り下ろされた刃はあらゆる物質を切り裂き、あるいは透過して直接相手を切り刻むことができた。

 対するは偽りの聖剣たる“星剣”。

 それは聖剣と同じく七色の輝きを放ってはいるが、色は虹のそれと比べて均整がとれていない。

 赤、青、黄、緑まではいい。しかしそこに黒、灰、金色が混じっている。

 その上、剣と言っておきながら形状は明らかに刀。どこまでもふざけている。

 虹の美しさに対抗するにはあまりに不揃いな色をまとめたその武装は、しかし完璧に聖剣の光刃を受け止めていた。

 透過する事も許さず、生意気にも聖剣と互角の出力を備えているのだ。

「この刀は、俺が救えなかった人たちだよ」

 刀を握る高校生はその両手が震えているのも構わず、確かに聖剣の一撃を受け止めている。

 震えているのは腕だけでなく、声もだ。剣を受け止めるのに必死でおしゃべりどころではないのだろう。

 エイリアンはそんな未熟な相手をみて、ため息をはいた。

 相手に向かって、ではなかった。未熟な相手さえ一撃で葬り去ることのできない己に対して、ため息をはいたのだ。

(やはりこの状態では……しかし、泣き言もいっていられまい)

 エイリアンは管理人の資格が剥奪されたことの大きさを自覚しつつ、しかし目の前の高校生を――かつて救おうとした人間のひとりを、全力で殺す方法を模索する。



 一方、参太は手にした刀の軽さに驚いていた。

 七本の宇宙剣をまとめてできた逸品であるはずだが、その重さはどの宇宙剣よりも軽い。

 その時点で物理法則を超越した特別な兵器であることがうかがい知れる。まさに妖刀とも言える刀を、参太は思い切り押した。

 虹の刃を瞬時にはじき返し、反撃の機会をつくりだす。

(いけるか……これなら)

 相手は管理人。技量も、経験も、力も、すべてが自分より上だとわかる。

 完敗を喫し、幸運がなければ殺されていた。

 普通なら逃げるべき相手だ。無闇に突っ込んでいくのは自殺行為に他ならない。

 それでも挑むのは、やはり意地になっているからだ。

「俺は!」

 先ほど受け止めた相手のあまりの強い力に、刀を握っている両腕は痙攣するように震えている。スポーツも何もしていないばかりか筋肉トレーニングさえしていないその力ない腕がそれでも刀を保持していられるのは、手にした刀の性能が強大だからだろう。

 さらにいま、参太は相手の動きを完璧に把握していた。

 予測できるのではない。すでに定まっている運命がわかる。

 スキル“天啓”を思わせる現象だが、しかし参太には別にスキルを発動した覚えもなかった。しかし実際、スキルを発動したのと同じ現象が起こっている。

 これが星剣の力……まさに全知全能を把握した参太は、相手の動きに合わせて刀を振るった。

「読まれている?」

 エイリアンは驚愕の声をもらしつつ、しかし口の両端を持ち上げた。笑ったのだろう。

「そうでなくてはな」

 エイリアンが防御姿勢をとろうとして剣を構える。その剣を持つ手を狙うように、下から思い切り刀を振り上げた参太だったが、それでも相手が反応してくるのを視界に捉える。

「それも、見えてる!」

 参太は豪語する。たとえ相手が超絶的な技量を発揮しても、瞬発的な反応を見せて切り返してきたとしても。すでに定まった運命から逃れるレベルの力ではない。

 運命を変えるのだとすれば、スキルを使うしかない。

 にもかかわらず、エイリアンはスキルを使うそぶりも見せない。

 エイリアンは一歩後ろに退いて紙一重で刃先をかわしたが、その動きを読んでいた参太は瞬時に刀で突いた。

 切っ先が狙い通りにエイリアンの腹を貫通する。

「g!」

 痛みに苦悶の声をもらしつつ、しかしエイリアンは反撃の刃を振り下ろす。

 それも見えていた参太は刀をエイリアンから抜きつつ虹の刃の先端を斬り上げて弾き、即座に二度目の突きを喰らわせる。

 今度はエイリアンの胸を切っ先で打ち貫き、腹に続いて二カ所目の破孔がその肉体に刻まれた。

 しかし相手は人間を超越する生命体。腹や胸を貫かれたくらいでは死なない。

 やはりその首をはねなければ、確実に殺すことはできない。

「もう、終わりだ!」

 参太は結論を言葉にして世界に解き放つ。

 すべてを把握している以上、スキルを使おうとしない相手がこちらに勝つ可能性は存在し得ない。

「何が、終わりか!」

 エイリアンはしかし反撃に出る。その脚が大きく蹴り出され、参太の腹にブチ当たる。

 参太は吹き飛ばされ、コントロールルームの壁に衝突、モニターを破壊して止まり床に落下した。

「速い……」

 さきほどのキックも運命づけられたもので、来るのはわかっていた攻撃だった。

 しかしわかっていても避けられなかった。タイミングを完璧に知っていたし、来る場所もわかっていたというのに……実際に対応することができない。

「油断は禁物、か」

 壁に衝突し床にたたきつけられたことで全身に痛みが走る。その痛みで己が単なる高校生に過ぎず、戦闘訓練など何も受けていないただの子どもであることを思い知る。

 参太は素早く立ち上がると、しかしすでに見えている相手の追撃を刀で受ける。

 再び刃と刃が衝突し、押し合いになった。

 この先、参太の刀がエイリアンの剣を押し返して弾き、次の瞬間、刀で首をはね飛ばすことになる。

 そこまで見て、しかし相手から放たれる殺気、そして刀ごしに伝わってくる強大な力を前にして参太の心に恐怖さえ渦巻いてくる。

(落ち着けよ……すでに未来は、見えてるんだろうが!)

 参太は大きく息を吐き出して、そんな言葉を心に紡ぐ。

 両手は震えて、刀もぷるぷるとブレている。まったくもって、星剣の力がなければ武器ごと叩ききられていたに違いなかった。

(俺の力では絶対に勝てないってのは、変わらないけど)

 生かされている。様々な力によって、他者からの干渉によって。

 己の無力を思い知ると同時に、刀に封じ込められてしまった七人の魂が自分を支えてくれているのだと気づいて、恐怖も腕の震えもおさまっていく。

「未来を、形に」

 自然と口にでたその一言とともに、参太は虹の刃を押し返した。その衝撃で相手の両腕は持ち上がり、一瞬の隙ができる。

「いける!」

 恐怖から解き放たれ、現実を突破することだけにすべてを注いだいまの参太に、もはやほかの選択肢はなかった。

 刀を思い切り振り抜いて、七色の刃の軌跡が弧を描く。その外周に切り取られるようにして、エイリアンの生首が飛んだ。

 

 瞬間、エイリアンの体がぶるりと震えたが、すぐに力をなくして横たわる。

 頭もごとんと音を鳴らして落下し、緑色の体表をしたエイリアンの肉体は、いまここに骸と化した。

「やった、んだ……俺は」

 やり遂げた。

 これでもう参太は殺されることはない。

 ひとまずの安心感とともに、しかし事態は次の展開を待っている。

 参太は刀を構え直すと、目の前のメインモニターを見る。

 そこには新たな文字列が表示されていた。

(全部、この船の思いのまま……ってか)

 利用されている。

 その悪寒のような感触は確信となり、ため息として参太の喉から出た。

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