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あの娘のために俺は、ヤンデレ攻略しています  作者: やんきゃん
プロローグ
3/4

00-03 部活の後輩


「そうですね。急に知らない先輩に話しかけられたら怖いかもです。私も初め先輩に声かけられた時怖かったですし」



「えっ!!苗ちゃん俺の事怖かったの?」


放課後、部活の後輩に今朝のことを聞かれ君はどう思うかと聞いてみたら申し訳なさそうに答えてくれた。

もしかしたらこの見た目はチャラ男というより不良にでも見えるのだろうか。それはそれでちょっとへこむ。

苗ちゃんはへこんでいる先輩をよそに所属している部活の相棒とも言える一眼レフカメラを拭いていた。

俺らは写真部で部員たった2名で活動している。部室は倉庫かと思うくらい狭く隣は音楽室のため、決まった時間にお互いの声が聞こえないほどの音楽が流れるオプションつきだ。

まぁ写真を撮りに外に出るのが殆どで特に問題はないんだけど。

貴重なもう一人の部員、苗ちゃんこと浜元 早苗。ふわふわカスタードベージュの肩まで伸ばした髪と、短く揃えて切っている前髪。二重のぱっちりとした黄緑色の瞳と対照的に少し垂れた眉毛の見た目おしとやかそうな少女。実際はかなり明るく元気でノリの良い子だ。


「鍋先輩は見た目軽そうって確かに私も初めは思ってましたけど、話してみたらそんな事はなかったので、また話しかけてみてはどうですか?」


苗ちゃんはうーーんと考えてからフォローを入れてくれる。いや、これはフォローになっていないような気もするけど。ちなみに彼女は俺の事を親しみをこめて鍋先輩と呼んでいる。何故真鍋の真を抜いたのか聞いても、可愛いからですとわからない返しが帰ってきた。まぁ呼びやすそうだし別にいいけどね。


「そうだね。数日たってから挨拶なり今日の謝罪なりしてみようかな。」


何もしないのは勿体ない気もする。

彼女の言うとおり初めの印象が悪くても話しかければ変われるかもしれないし。前向きに考えた方が良いだろう。


「そんなことよりも!今日はどこを撮った方が良いですか?」


彼女からふってきた話なのにとも思ったが、そろそろ吹奏楽部の人達が全体の通しをしだす時間だからもう活動した方が良いだろう。

写真部は新聞部に毎週他の部活動の写真を撮って渡したりするため意外と忙しかったりする。

靴箱近くに設置している掲示板に週変わりで部活の事や学校行司の事など記載した学校新聞があり、そこに俺達写真部の写真をのせてくれている。

文化祭にはプチ写真展覧会を開きお気に入りの写真を飾ったり、年に一度ある写真コンクールに投稿したりと人数は少ないが真面目に活動している。


「そういえば清ちゃんにどの部活を撮ったらいいか聞いてなかったなぁ。今から聞きに行くかぁ」


清一は新聞部で俺と同じく部長をしている。早橋も一緒だ。運動していそうな見た目と反して清一は大の読書家で、中学の頃は俺や早橋と一緒に文芸部に属していた。

新聞部は写真部よりは人数は少なくないが、そうはいっても清一を含め4名。最近一年が1人入ったらしいから5名か。ちなみに清一意外全員女子である。俺ら写真部にも1人でもいいから部員がほしいものだ。新聞部は階段を降りてすぐだからそんなに遠くない。


「清ちゃーん!遊びにきたよー」


写真部よりは広い部室の扉を勢いよく開ける。そうするとなんとも微笑ましい光景がひろがっていた。


「清一君はこの小説の方が好きだよね。私のオススメなんだけど」


「いやいや、清一先輩の好みは私がよく知ってますから。ねぇー先輩」


「うるさいよ。静かにしてください。集中できないですから。」


「お前ら落ち着けって相野巻き付くなぁ」


「あわわわ」


清一にくっつきながら早橋と言い合いをする後輩の相野さん。その近くで今週の新聞の記事を考えているのだろう伊原さん。そんな彼らを慌てた様子で見ている最近入ったという宇井野さん。疲れている清一がため息をつきながら視線をこちらに向けた。


パシャっ


無言でシャッターを押す俺に青ざめる清一。


「何勝手に撮ってんだーー」


清一の声が部室内にこだました。




「いやぁ清ちゃんが相変わらず青春しているからつい。」


「ついじゃないだろ。昼は元気なかったのにもう元に戻ってるな。」


「すぐ開き直るのが俺の良いところだからね。」


「はいはいそうかよ。」


またまたため息をつく清一。

あんまりため息をつくと幸せが逃げるというけれどその説が本当なら彼は結構幸せを逃していることになる。それほどため息をよくつく。


「んで、何の用事で来たんだ?冷やかしならでてけ。」


「いやいや。今日聞いてなかったと思ってね。どの部活動の写真がいるの?」


「あぁ、えっと今週は陸上部と園芸部の写真を頼む」


「はいはーい。じゃあ苗ちゃんは園芸部お願いしていいかな?俺は陸上部行くから」


「はい!了解です。」


俺の背中に隠れていた苗ちゃんがぴっと敬礼のようなポーズでかえす。


「苗ちゃん聞いてよー早橋先輩が酷いんだよー」


苗ちゃんの同級生で友人でもある相野 舞が清一にくっついていた手を離し苗ちゃんの方にくっついた。ドングリのように丸く赤い瞳と赤髪ショートヘアーの髪でかなり賑やかな子だ。清一はよくこの子に困らされているらしい。


「苗ちゃんはこれから写真を撮りに行くんだから離してあげなさいよ舞。」


書いていた手を止め、水色の瞳でギロッと相野さんを睨んだのは水色の髪を一つにくくり右肩に垂らしているクール少女の河原 可奈。同じく苗ちゃんの友人で、三人はとても仲がいい。


「舞ちゃん、可奈ちゃん、じゃあまた。帰り一緒に帰ろう。えっと新しく入部した子の宇井野さんだっけ?」


苗ちゃんは二人に手をふるとすぐ近くにいた下級生の宇井野さんに話しかけていた。


「はい、宇井野 綾です。」


入学して数日後に入部した一年生。

濃い緑色の長髪と右側に黄緑色のヘヤピンを一つつけていて、緑色の目を左片方髪で隠している。両側つければとも思うが俺がいうのも何なので内心のみでとどめている。そんな宇井野さんが緊張した様子でぼそぼそと答えていた。


「頑張れ!」


「は、はひっ!」


笑顔でガッツポーズを作る苗ちゃんと、慌てながらガッツポーズを作って舌を噛んだ宇井野さん。新聞部は個性的な子がとても多いような気がする。

見ていて面白いからいいんだけど、部長である清一は時々疲れた顔をしているから今度労ってあげよう。





苗ちゃんと別れた俺は早速陸上部が練習しているグラウンドへ向かった。

グラウンドに着くと丁度よく陸上部員が走っている。陸上部の顧問の先生に断りを入れ、写真を撮りはじめる。グラウンドは広く、陸上部以外にも他の運動部員がそれぞれ活動していた。

俺はよく趣味で人物ではなく風景を撮る事の方が多い。けれど、一生懸命活動している姿を撮るのは意外と楽しいもので、今では結構ノリノリで撮っている。


「はーい、不審者発見」


ぱこっと後ろから軽く頭を叩かれる。一瞬驚いたが叩いた人物は分かる。というか不審者とは失礼な。


「なんのご用でしょうか比島さん」


後ろを振り向くと部活のユニフォームを着た比島が笑っていた。

比島は女子ソフトボール部の副キャプテンだ。小学生の頃からしていたらしく、中学の頃も文芸部で本ばかり読んでいた俺達をよそに一生懸命に活動していた。


「部活しなくていいんですか?」


「いいのいいの。今休憩中だから。」


比島の後ろを見ると確かに遠くでソフトボール部の部員が水分をとったり座って喋ったりして休んでいた。


「んで、今日は写真はどんなかな?」


強引に俺のカメラを奪い写真を見る比島。見られて困る訳でもないので別にいいけど。


「ふーん。いい写真じゃん」


「ありがとう」


「……ところでさぁ。今日会った女の子って前真鍋が話してた初恋の女の子?」


「…………えーと」


突然言われたので一瞬固まる。

そういえば比島には鈴音の話を少しした事がある。どうやら覚えていたらしい。


「なんか照れ臭いけど……うん。そうだよ。」


俺は前からいろんな人の恋愛相談をよくされる。この比島もそうだ。

その時自分も話したんだからお前も話せと半強制敵に話させられたが、やっぱりするもんじゃなかったと後悔した。

俺は自分の事を他人に言うのはあまり好きじゃない。


「ふーん。そっか…」


一瞬彼女の顔が曇る。どうかしたかと聞く前に取られていたカメラを返された。


「良かったじゃん。ずっと好きだった子に会えて。真鍋って意外と一途だし、もしかしたら付き合えるかもよ。……じゃあ私部活に戻るわ。」


また適当な事をとも思ったが、比島なりに俺を慰めてくれているんだろう。


「はいはい。お前も彼氏とうまくやりなよー」


手を降ってそう伝えると比島は困ったように笑っていた。

そういえば高校に入ってから比島から恋愛相談をされなくなった。中学の頃は毎日のようにされていたけれど、順調なんだろうか。まぁ俺から聞く事でもないし大丈夫だろう。

撮った写真を確認して部室に戻ることにした。


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