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会ったことのないあなたに手紙を送ります。
どうか、あたしを拾ってくれませんか?
親は子供が嫌いな人だった。
そんな親に育てられたあたしは無愛想だった。
……と、周りからよく言われた。
友だちなんかできるはずもなく、ただ毎日を静かに過ごしていた。
そんなつまらない毎日が変わる、ある日のこと。
朝目が覚めて時計を見れば6時半だった。
静かな一人部屋。あたしはその雰囲気がすきだった。
本当は部屋からは出たくないのだけれど、仕度はすぐに終わってしまう。
仕方ないので部屋を出て、居間に向かう。
その間の廊下を歩く時間が、あたしが一番嫌いな時間。
出来るだけ音立てないように居間のドアを開ける。
中にはまだ誰もいなかった。
(よかった──)
ため息をついて、すぐそばにあった椅子に腰掛けた。
そして近くの棚に置いてあったパンを取った。
消費期限は今日までだった。
音を立てないように冷蔵庫からお茶を取った。
(……!)
後ろで何か物音がした。
振り返ると彼女がいた。
「おはよう」
笑っていった。……つもり。
笑えていたかは、分からない。
「……。いたの」
冷たい視線があたしを突き刺す。
手に持っていたお茶を冷蔵庫に戻した。
パンは置いたまま、急いで居間を出た。
早歩きであの部屋に、あたしの場所に戻る。
急いでドアを閉めたせいで大きい音がなってしまった。
「は……、は、っあ……、」
本当は違う。
無愛想なんて周りから見たあたしの虚像。
だっていつもこんなにも泣きたくなるから。
腕を力いっぱい握った。そうしないと涙が出てしまうから。
あたしの腕はいつからか痣ができるようになっていた。
でも普段は長袖しか着ていないから、誰も知らない。
きっと、これからもそう。ずっと、そのまま。
特に何もしないまま時間は流れて、8時になっていた。
少しお腹がすいていたけど、気にしないで学校に向かった。
お弁当は作ってくることができなかったから途中で買っていった。
学校はいつもどおりだった。
静かに。地味に。絶対に目立つことはしない。
そして、表情を作らない。
本当は、作れないだけだった。
昔から殆ど誰とも話したことがなかった。
だからいつも話しかけられてもそれに対応することができなかった。
そして終了の鐘の音がなった。
あたしのだいすきな時間が、やってくる。