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形勢逆転

 股間を押さえて蹲るヤドゥンの姿に。


『待たせたな! 息子たちが来やがったぜ!』

『娘たちも来たわ! やっちまいナァァァァァァ!』


 イチローとマドモアゼルがほぼ同時に叫んだわ。


 いやああああ!

 天井から大量の蜘蛛が下りてきて、ヤドゥンに集まりだした。

 それに加えて、靄のような蚊の大群が現れてヤドゥンに向かう。


「うわああああああああああああ!!」


 その先はホラー映画よ。

 うう、観てるこっちが卒倒しそう。

 蒼白になってなりゆきを見守る私に、棚の向こう側からスーゴちゃんとアルバトロスがかけてきた。


「ミラルディ殿!」

「大丈夫じゃかあ!?」


 スーゴちゃんとアルバトロスはすぐに私のもとへ来たものの、獣の手足では私のベルトを外せるわけもなく周りでウロウロした。


「ヨシュア様、早く!」


 スーゴちゃんが言い終わるよりも先に。

 背の高いジャージ姿の男の子が整理棚の後ろから駆けてきて。

 私の両手を捉えたベルトを外しにかかった。


 やっと両手が自由になった私は床に座ったまま。

 自分の身体を抱きしめた。

 まだ、震えていたわ。


「……お嬢」


 ためらいがちにヨシュアが声をかけたけど、私はなんだか顔があげられなかった。

 すごく怖かったから、ヨシュアに抱きつきたいような気持ちと。

 あんな場面をヨシュアに見られた羞恥心と。

 ヨシュアも男だから、あんなことがあった今、近づきたくない気持ちっていうのかしら。

 いろんな気持ちがごっちゃになって、私は混乱していた。


「ミラルディしゃん」


 くーん、とそんな私をアルバトロスが覗き込む。

 私はアルバトロスの首にしがみついた。


「怖かったわ……」


 アルバトロスがペロペロと私の頬を舐めてくれる。

 その湿った温かさと毛並みの温かさに。私は少しずつ心が落ち着くのを感じた。


「お嬢。もう、大丈夫だよ」


 ヨシュアも気を遣ってるのが分かった。

 ヨシュアは私の前に膝をついて、床に座って。

 アルバトロスの首に回してる私の手に、上から触れてそっと置いた。


「大丈夫だから」


 ひやりと冷たい乾いたヨシュアの手。

 私はヨシュアの顔を見れなかったけど。

 もう片方の手でヨシュアの手を探って握った。


「怖かったわ」

「うん……大丈夫だから」


 ヨシュアが私の手を強く握り返す。

 私は安堵のあまり泣きそうになった。


「もう……怖く……ないから」


 ぶっ。


 ……ダメ、脳裏にアンドレ様がチラついちゃった。


 ヨシュアの言葉に。

 不覚にも私の頭にベルばらのアンドレ様が浮かんで、私は思わず吹いた。


「あははははははははは……!」


 だめ、こんなときなのに。

 いえ、こんなときだからこそ? かしら。

 ツボに入っちゃったわ。


 いきなりケラケラ笑い出した私を見て、ヨシュアはあっけにとられたみたい。

 ああ、ごめんなさい。アンドレ様。

 だって、面白かったんだもの。


 涙目になりながら、私はそんなヨシュアから手を離し微笑み返した。ヨシュアがほ、としたような顔をする。

 私はアルバトロスからも離れ、ため息をついて声を出した。


「追いかけてくれたのね。ありがとう」

「いや、それがさ。本当は警察か何かに頼った方が良いと思ったんだけど」


 ヨシュアが言いにくそうに語り出したのは、私が予想もし得ない真実だった。


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