終幕・黄昏の君
夏休みに祖父母の家にやってきた静華は村の散策を切り上げて榊兄弟と黄昏紫村の隣にある花華町へ訪れた。
「やあ君達この町の人かな?」
「まあ一応」
厭紀は見知らぬ男に警戒しながら返答する。
「オレは園崎緋照、植物学者なんだ」
彼は三人分の名刺を渡してくれた。
「植物学者……もしかしてこの町で新種とか?」
「そう、探しに来たんだ。ついでに隣村はちょっと余所者に厳しそうな印象があるから、兄弟と待ち合わせしてるんだよ」
今から数分で兄弟が来るというので彼の話は一先ず信じていいだろう。
「そういえば上の弟がオカルト好きでね。頼まれたことをメモしてたんだけど」
彼はどうでもいいから君達が代わりに調べてくれないかと紙を渡された。
「女神伝説に黄昏の君ですか……」
「大体知ってるけど詳しくは知らないからなあ……」
二人は顔を見合わせている。もしかすると彼等も伝説が気になって来た?
「おーいここだよリュウキ~」
「まったく世話のかかる兄貴だ」
私と同い年くらいの少女を連れた青年が車から降りてきた。
目が合いぺこりと頭を下げる。
「調べてやるよ。その変わり新種の花が見つかったら写真でも見せてくれ」
「もちろんいいよ」
「おい兄貴、早くのれよ」
「悪い悪い」
そんな感じで村の事を調べたが、なにも見つからず夏休みは終わる。
「そうだ。せっかく村に来たんだしオカルト本でも出そう!」
■■
――とある町に住む“華”という名の少女は父親の書斎で奇妙な本を見つけた。
医学や科学の博識的な専門書の中に、たった一冊の自伝的本があった。
その著者の名は静華といい、少女の名と同じ一文字が入っている。
何か繋がりがあるのかと、少女は考えて最後のページまで読み進めた。
すると最後の白いページに手書きで文字が書かれていた。
[ごめんなさい。私はあの夏に――氏の痕跡を見つけることが出来ませんでした。なので次の夏休みにもう一度探しに行こうと思います西暦2016年/静華より。]
少女は本を閉じて、弟に村の話をする。彼女の学校はもうすぐ夏休みになる。
「――なぜか、いかないといけないような気がする」
少女は本を手に、初めての田舎旅行の支度を始めた。
■■
「……」
――静華は東京のマンションで村の事を思い出していた。
「お父さん。今度の夏休み、二年ぶりにお祖母ちゃん家がある村へ行ってもいい?」
「構わないけど、いきなりどうしたんだ静華」
「……私は今度こそ、必ず探しださないといけない。そんな気がする」
【枯れ華の女神と祟りの男神】




