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第2章 ミステリー篇

 さて次は中間小説のメインストーリームとされるミステリーです。

 個人的にはミステリーは以下のように大きく三つに大別できると思います。

  A.本格ミステリー

  B.国際ミステリー

  C.ハードボイルドその他


①薔薇の名前/ウンベルト・エーコ/A

②暗殺者/ロバート・ラドラム/B

③ダヴィンチ・コード/ダン・ブラウン/A

④マイン/ロバート・R・マキャモン/C

⑤霧越邸殺人事件/綾辻行人/A

⑥検屍官/パトリシア・コーンウェル/C

⑦後鳥羽殺人事件/内田康夫/A 

⑧恋/小池真理子/C?

⑨ジャッカルの日/フレデリック・フォーサイス/B

⑩龍の契り/服部真澄/B


番外編 Red Dragon/Thomas Harris/A


 ①は衒学的歴史ミステリーの傑作。別のエッセーでいろいろ書いたので省略します。


 ②は映画「ボーン・アイデンティティー」の原作。クーンツが絶賛してるので読んでみたら、確かにメチャクチャ面白かったです。

 記憶を失った一流のスパイ。自分が誰かわからないものの、敵から命を狙われたら、体が覚えている護身術を駆使して、逃走したり反撃したり......。とにかくカッコイイ主人公です。


 ③は「写楽殺人事件」の海外版というのが最初に読んだときの私の感想です。つまり殺人事件の推理はどうでもよくて、それよりも歴史を推理する方が知的で面白いというもの。

 写楽の正体は誰か。キリストは本当は十字架にかけられず、生き延びて、子孫を残したのでは......。

 こうした歴史の真実を暴く方が、殺人事件の犯人を暴くよりも、スケールの大きな話でしょう。

 主人公たちが追手から逃れながら謎を解くというストーリーも好感が持てます。昔とちがい、最近ではミステリーもこういうアクション小説的要素がないと受けないのでしょう。


 ④はモダンホラー作家、マキャモンの作品だから反則でしょうか?

 若い既婚女性が自分の赤ちゃんを夫の不倫相手の女に奪われた。そこで赤ちゃんを取り戻すべく、不倫女を追いかけるというアクション小説。

 映画を観ているような、視覚に訴える緻密なアクション描写がすごい。

 ミステリーに入るかどうかわかりませんが、ハズレの多いマキャモンの作品の中では最高傑作です。


 ⑤は国産ミステリー。新本格派の旗手、綾辻行人の作品。

 ネタバレになりますが、ラストシーンで探偵が応接室に登場人物を集め、連続殺人事件の推理をします。推理が終わったと思ったら隣の部屋からピアノの音が......。

 突然、隣の部屋から現れた少年が応接室に入ってきて、もう一度推理をやり直す......。このドンデン返しが最高です。

 トリックの綾辻行人ですが、この作品はトリックより完成度の高さで評価しました。


 ハードボイルドは国内でも海外でも女流作家の方が面白い、というのが私の持論です。

 特に国内の男性ハードボイルド作家は、レイモンド・チャンドラーのフィリップ・マーロウシリーズをハードボイルドのお手本と考えているらしく、主人公のキャラクターはニヒルな男と相場が決まっています。

 一方、女流作家は作家の作品は、主人公のキャラクターが様々です。

 ⑥のように中年キャリアウーマンの検屍官が出てきたり、ヤンキー上がりの女白バイ警官が出てきたり、お嬢様育ちの箱入り娘が出てきたり......。

 どんな女主人公が出てくるか予想つかないのが女流ハードボイルドの魅力と言えます。

 またハードボイルドに分類される作家は、ほぼ例外なく文章がうまいと思います。

 ⑥は昔読んだのでストーリーはほとんど忘れているのですが、覚えているのはキャリアウーマンの職場の男性社員に対する厳しい視線。大変、リアリティーがありました。

 読後感は最高に面白かったと思ったことだけ覚えているのでランクインしました。


 ⑦は内田康夫の作品。浅見光彦シリーズ第一弾です。

 内田康夫のミステリーは横溝正史と西村京太郎と松本清張を足して三で割ったミステリーと自分では解釈しています。

 横溝正史の金田一耕介は東京から八墓村や獄門島といったいわくつきの田舎へ出張して、そこに留まって謎を解きます。

 一方、浅見光彦は電車で東京と”八墓村”を電車で往復します。第一の殺人事件が”八墓村”、第二の殺人事件が東京、第三の殺人事件がまた”八墓村”というように、両方で殺人事件が起こるからです。

 真犯人もまた電車で東京と”八墓村”を往復。真犯人は時刻表を使ってアリバイを作るため、西村京太郎風、鉄道ミステリーも楽しめます。

 さらに内田康夫のミステリーの魅力は旅情。小説としての完成度は社会派ミステリーの大家、松本清張の域に達しています。


 ⑧は小池真理子の直木賞受賞作品。フランス文学風恋愛小説のラストのオチがミステリーになっています。恋愛小説風ミステリーというより、ミステリー風恋愛小説に分類するべきでしょうか。

 ⑨は今では古くなりましたが、当時は一世を風靡したドキュメンタリー風国際ミステリー。ドゴール大統領暗殺を企むスナイパー、ジャッカルと警部の戦いを描きます。

 ⑩は国際ミステリーであるとともにビジネス小説である点が魅力。ただし小説としての完成度がもう一つ。状況描写や人物描写が弱いのでベスト10の最下位に選びました。



 さて、番外編はThomas HarrisのRed Dragonです。

 実はこの作品、英語のペーパーバックで読んで、訳本は読んでいないのです。ただし、レンタルビデオで映画は見ました(字幕スーパー付)。

 映画を見ると、原書でよくわからなかったストーリーがなんとか理解できます。

 著者はサイコキラーものというミステリーの新しい潮流を作りました。


よろしければ「なろう」内の拙作ミステリーもお読みください。


①観世音菩薩殺人事件

②空飛ぶカレー本舗


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