表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

最強の魔法使い

作者: 畑の神様

この作品作者がとある本で見つけた某長期休載中の漫画の最強の魔法使い、ダークシュナイダーという名前と女の子にキスされると子供に戻るという設定だけを見て、想像した物語です。


そのためバ○タードとは一切関係ございません。登場するキャラクターも全くの別人です。

ご了承ください。

なおこの作品は作者の趣味が前回な上、思い付きで書いております。

設定など足りない部分が多いと思いますが処女作なのでご了承ください。


※この作品はpixiv様の方にも投稿しております

―――――昔々のとある世界。



 そこでは魔法が発達し、人々の生活を支えていた。



 しかし、発達し過ぎた魔法はやがて武力として使われ始め、争いを呼び、やがて魔法を使った大規模な戦争が始まった。



 人々は大規模な魔法を放ちあい、その魔法はお互いを傷つけ、町を破壊し、無関係の人を殺した。



 さらに魔法の余波による魔素の影響でいくつかの動物は魔物へと姿を変え、人を襲った。



 そんな争いの中、一人の男がいた。



 その者は自身の持つ圧倒的な魔法で戦場をかき乱し、障害となるものは全てねじ伏せた。



 やがて、その男により戦争は終結させられた。



 しかし、その後彼の姿を見た者は誰もいない。



 そして人々は伝説となった彼のことをこう呼んだ。



―――――――最強の魔法使い、ダークシュナイダーと








♦♦♦♦




「水ぅ~水はどこだぁ~」



 そうぼやきながら少年は荒野を歩く。


 少年は水を求めて周囲を見渡すが、しかし、辺り一面見渡す限りあるものは砂、砂、砂、砂ばかり。


 かれこれ数日間飲まず食わずで歩いてきた彼はもはや限界だった。



「どっどこか……どこかで水を補給しなければ……」



 そしてそれから歩くこと数時間、彼は遂に村を発見した。


 それはそんなに大きな村ではなく、見たままを言えば決して栄えてるどころか、廃れているとすら言えるような村だったが、今の少年にとってはそんな村すらも天国のように思える。



「村だ…村だぞ!! あそこで何か分けてもらおう!!」



 しかし、そう思い少年は重い体を引きずって何とか村にたどり着いたものの、おかしなことに村には誰もいない。


 そしてきっとみんな家の中にいるのだと思った少年は一番近くにあった民家に向かった。



「……よし…ここの…やつに…何か…分けて……」



 しかし、少年はドアの前まで行ったとこで力尽き、倒れてしまった。



♦♦♦♦♦♦



「ん? 今何かドアの方から『ドサッ』って音がしなかった?おじいちゃん」

「そうかい? わしには聞こえんかったがローラよ、一応念のため見て来てはくれんかい?」

「わかったよおじいちゃん、ちょっと行ってくるね」



 ローラはそう言ってドアへと向かい、ドアを開けようとするが……。



―――――ドンッ



 何かに引っかかっているかのようにドアは開いてくれない。



「あれ? やっぱドアの前に何かあるのかな?」



 怪訝に思ったローラはうぬぬ……と唸りながら少し強引にドアを開けて外を確認する。


 するとそこにはぐったりと倒れている幼い少年の姿があった。



「大変! おじいちゃんっ 家の前に男の子が倒れてるよ!!」

「それはいかん、速く中に入れてあげなさい」

「うん、わかったよ。おじいちゃん!」



 そう答えると、ローラは素早く少年を家の中へと運びこみ、処置を始めた。


♦♦♦♦♦♦




「ここは……」


 目が覚める。真っ先に視界に入ったのは見知らぬ天井だ。

 

 少年はここはどこだ? という思いと同時に、自分がベットに寝かされていることから、誰かに介抱してもらったのだと思い当たる。

 

 そして、そのまま視界を動かし周囲の確認をする。そして、そこで初めてこの場にいる他者の存在に気がついた。


 そこにいたのはまだ若い少女と、既にかなりの歳を召していると思われる老人の二人だ。


 少年がこの二人は誰だろうというような視線を向けていると、少女の方が何かに気がついたように話しだした。

 


「あっおじいちゃん、この子気がついたみたい」

「それはよかった。少年、何か欲しいものはあるかね?」



 欲しい物はないかという老人の問いかけに対し、少年の脳裏に浮かぶ物は唯一つ。



「しょ、食料を……飯と水をくれないか……」



 既に体中の水分はほとんど残っていない。加えて、最早腹の音すら鳴らないほどの空腹もあるとなれば、思い浮かぶのはこれ以外に他にないだろう。



「そうかいそうかい、ローラよ、すぐに用意してやりなさい」

「わかったよおじいちゃん」


 

 そんな少年の欲望に忠実で、子供らしい反応を見て、微笑ましい表情をした老人は、少女、ローラに声をかける。


 ローラは老人に肯定の言葉を返すと、すぐに用意をしに向かった。



―――――――数分後。



 そこには用意された食事と水を腹の中にこれでもかというほど詰め込み腹がパンッパンに膨れた少年がいた。



「いやぁ~食った食ったぁ~、ごちそうさん」

「それにしてもよく食べるわね、あなた……」

「きっと育ち盛りなのじゃよ。

 ところで少年、名は何というのじゃ?」

「ん? 俺か? 聞いて驚け、俺様の名前は最強の魔法使い、ダークシュナイダー様だ!!」

「「…………………」」

「ダークシュナイダー様だ!! 大事なことだから2回言ったぞ!!」

「「…………………」」

「何だ! 何なのだその反応は!! 本当だぞ!? 本当なんだからな!?」



 少年のそんな叫びを微笑ましいものを見ているような顔で見つめながら黙っている二人。


 そして小声で何かを話し合う。



『ねぇおじいちゃん、あの子…』

『あぁそうじゃな、とてつもなく痛いの……ま、これも若さゆえの過ち、かっこいいものに憧れてしまうという子供の性じゃろうに……理解してあげなさい』

『そうだね、おじいちゃん。そんな時期もあるよね』



 やがてローラがその顔のままダークシュナイダー(自称)に声をかける。



「そうかそうか、私の名前はローラ、こっちがおじいちゃんのエルドね。よろしく。

 それで、シュナイダー君は何で家の前で倒れてたのかな?」

「う~む、今なんかその前にそこで納得のいかん会話がされた気がするがまぁいい、教えてやろう!」



(どうでもいいけど助けてあげたの私たちなのに何で毎回上から目線なんだろう?)



 そんなローラの考えに気づかずに話しを続けるダークシュナイダー(自称)。



「俺はある目的のために旅をしているのだがその道中、盗人に食料をとられてしまってな、しかしそこは何もない荒野の中、食料を調達しようにも何もない。

 そこで! どこか調達できるとこはないかと探して、飲まず食わずで三日三晩歩き続けた結果、ここにたどり着いたというわけだ!」

「「…………………」」



 そこでまたも微笑ましいものを見るような目になった二人は小声で話し合いを始める。



『ねぇおじいちゃん、この子…』

『駄目じゃローラ、その先を言ってはならぬ…きっとこの子は商人の子供なのじゃろう。

 しかし移動中にはぐれてしまった彼は偽りの自分に身を包むことで自分を奮い立たせ、見事ここにたどり着いたのじゃ…今ここでこの子に真実を叩きつけたらこの子の心は壊れてしまう! この子が親と再開できるまではそれを告げてはならぬぞ! ローラよ』

『そうか、そうだったんだね…おじいちゃん。

 わかった、私この子の痛さについては受け入れるよ! いつかこの子がこの偽りの仮面ダークシュナイダー(笑)を脱ぐことができる日まで!!』

「なぁ聞こえてるからな? そのまったく納得の出来ん会話全部まる聞こえだからなッ!?」



 そして今度はおじいちゃんがさっきの微笑み+少し涙ぐんだ眼でダークシュナイダー(笑)に告げた。



「そうかそうか、それは大変だったね、君の親御さんが君を見つけてくれるまで君はここにいるといい、うん、それがいい、そうしなさい」

「なんか俺の知らない内に感動のエピソードを勝手に作って自己完結するなぁぁぁぁあッ!!」

  


 叫ぶダークシュナイダー(嘲笑)しかし、そんな痛い子の叫びをローラは微笑ましい顔で右から左に受け流すと、質問を続ける。



「それで、シュナちゃんは何で旅をしているのかな?」

「俺の名前はそんな某どこかの世界の元州知事みたいな名前ではないッ!!」

「じゃあ、あの紙を細かくする…」

「それはシュレッダー」

「ライ○ーゼロ! シュナイ―――――」

「その先を言うなぁぁぁぁぁぁあ!! それはだめだその先はだめ、大人の事情でダメ!!」

「??? シュナちゃんは大人じゃないよ?」

「お・と・なだッ! って言うかいい加減にしやがれ! 少しは世界観というものを考えろ!! 設定を壊しにかかるんじゃない!!」

「世界観? 設定? 何のこと?」

「こいつ急に素に戻りやがったッ!? ったく……もういい、なんかどうでもよくなってきたわ…」



 圧倒的なローラのマイペース具合に諦めてしまうダークシュナイダー(失笑)



「それで、シュナちゃんの旅の目的は?」

「ああ、それはな、この体に掛けられた子供化の呪いを完全に解く方法を探しているのだ」

「「…………………」」

「なんかもう慣れたな…」



 また二人して聖母の微笑み開始、そして小声での会議も開始。



『おじいちゃん、やたら設定凝ってるね』

『しょうがないじゃろう、自分を騙すためにはそのくらいの設定が必要だったのじゃろう……』

『そうだね…悲しい子なんだね……』

「もう聞こえてるけどどうでもいいや……」



 呆れきってしまったシュナちゃんは逆に質問をしてみることにする。



「ところでこの村は何故皆家に引きこもっているのだ?」



 シュナイダーとしてはなんとなくして見ただけの質問、しかし、その質問をした瞬間、さっきまであんなに楽しそうだった二人の顔が突然暗くなった。



「なんか、まずいこと聞いちまったか?」

「いや、あのじゃな―――――」

「いいの、おじいちゃん」

「じゃが……」

「いいのよ。どうせそのうちわかることよ。実はこの村は―――――」


 ローラがそう話を切り出そうとしたときだった。



―――――突然爆発音が響き渡った。


 

 音は外から聞こえてきた。そしてその音を聞いた瞬間青くなるローラとエルド。


 シュナイダーは突然のことと二人の焦り用にただ驚いていた。

 


「また奴らだ、奴らが来おった!」

「奴らって?」

「なんでも魔法大戦でそれなりの功績を上げた貴族だそうよ」

「何でそんな奴がここに?」

「それは奴はその功績の褒美としてこの土地もらったらしいの、そしてこの村に来ては重い税をかけ、自らその徴収をしていったわ。

 そして家に来た時に私に一目ぼれしたらしくて、それ以来、私を引き渡せとか言い始めたの。

 村の者は皆でそれを拒否してくれた、そんなことしたら自分たちがどうなるかわからないのにね……。

 案の定奴らは執拗な嫌がらせを始めたわ、だけどそれでも引き渡さなかった私達にしびれを切らしてやつは私を力ずくで連れて行こうとした。

 そしてその時に抵抗した私のパパとママを……」

「…………」



 そこまで言うとその時のことを思い出したのか蹲ってしまうローラ。


 シュナイダーはそこまでの話で大体の事情を察した。


 そしてエルドがそれを引き継ぐように話す。



「そしてそれ以来、村の者はやつを恐れて極力外に出ずひきこもるようになってしまったんじゃよ……。

 さぁとにかくじきに奴らが来る、私が何とかするから二人は奥に隠れてなさい」

「そんな、おじいちゃん……」

「いいから早くいきなさい」

「……わかった、死なないでね、おじいちゃん……さあ、行くよ、シュナちゃん」

「ああ」



 そうして奥に隠れた二人はそこから様子を窺う。



 そしてその数秒後、誰かにドアを蹴破り、中に入って来た。


 入ってきたのは何人かの騎士を引き連れたキザッたらしい振る舞いでいかにも高そうな服を着た金髪の男だった。


 恐らく村の人達から搾り取った税金で買っているのだろうとあたりをつけるシュナイダー。



「さぁローラよ、迎えに来てあげたよ! 一緒に城に行こうじゃないか! そしてこの私、火炎のアレクセイの妻となるがいい!!」

「ローラならおらんよ」



 そうキザッたらしい言葉を吐いたアレクセイに冷たく言い返すエルド。


 その言葉を聞いたとたん、キザッたらしい顔を崩し、鬼の形相を浮かべるアレクセイ。



「そんなわけねぇだろ糞ジジイ、この家にいるのはわかってんだよ、さっさと出しやがれ」

「いねぇもんはだせんな、今日のとこは帰ってくれ」」



 その言葉を聞き、また怒鳴ろうとするアレクセイ、しかし、そこで何か思いついたような顔をするとその顔に醜悪な笑みを浮かべる。



「なるほど、貴様がそう言う態度をするというのならこちらにも考えがある。

 オイ、お前たちあいつを外に引きずり出せ」



 アレクセイがそう指示すると近くにいた騎士二人がエルドを捕まえ、外に引きずり出す。



「なんじゃ! なにをする気じゃ貴様ら! 放せ、放さんかッ!!」



 しかし抵抗空しく、そのまま外に連れていかれてしまうエルド。

 


『おじいちゃん!!』



 それを見ていたローラが飛び出そうとするが……シュナイダーがそれを止める。



『放してッ! おじいちゃんが、おじいちゃんが……』

『何を言っている! 今貴様が出て行ったらエルドが体を張った意味がないだろうが!』

『でも……』



 そうして二人が争っていると外からアレクセイの声が聞こえてくる。



「ローラよ、10秒やろう、その間に外に出てこなかった時はこのジジイを殺す!!

 では行くぞ、一、二、三―――――」



 それを聞いて即座に出て行こうとするローラ。


 それをシュナイダーは引き止めようとするが所詮子供の力、今度は簡単に振り払われてしまった。



「八、九、じゅ―――」

「私はここです!」

「おお、やはりいるではないか!!」

「ローラよ何故出てきたのだ!! 愚か者ッ!!」

「何を言っている糞ジジイ、麗しい家族愛ではないか!

 さぁお前たちローラを連れてきなさい」



 その指示で騎士達が動こうとした時だった。



「―――――あぁ~ああ大人げない、大人げない、振られたからって無理やり連れてくとか大人としてどうなのかねぇ~」



「なァァァん、だァァァァァとォォォォォォ!!! 今のを言ったのはどいつだ!」

「俺様だよ、そこの変態君」



 アレクセイの声に答えながら奥から出てきたのは小さな男の子だった。



「シュナちゃん!?」

「おいガキ、ガキだからって許される発言と許されない発言がある! 今すぐ今の言葉を撤回したまえ!」

「そうだよシュナちゃん! 早く謝って! 今ならまだ許してもらえるわ」

「嫌だね」

「どうして……」

「あいつが気にくわん、ブッ飛ばさなきゃ気がすまねぇな」

「吠えたなガキが! 今の言―――」



 最早シュナイダ―にアレクセイの言葉は届いてはいない。


 シュナイダーは大声で叫ぶアレクセイを無視し、ローラに問いかける。



「おいローラ、じいちゃんを助けたいか?」

「当たり前でしょ!」

「そうか、ならば少し屈め」

「こんな時に何を―――」

「いいから屈め」



 ローラはシュナイダーの今までと違い、真剣な顔を見てひとまず屈んでみることにする。



「ほら屈んだよ。これでいいの?」

「―――ああ十分だ」



 シュナイダーはそう答えると……



―――――突然ローラにキスをした。



「――――ッ!? へっなっなっ?????」



 突然のことに動揺し、頬を赤く染め、蹲るローラ。


 しかしその行動はアレクセイを怒らせるには十分すぎた。



「こいつッ!! オイお前たち、あいつを殺せ!」



 その命令を聞き、騎士達がシュナイダーを殺そうと向かって行こうとした次の瞬間―――シュナイダーが光に包まれた。



「なっなんだ!? 何が起こっている」

 


 焦るアレクセイ。そして光の中から全裸の男が歩み出てくる。



「ハハハ戻った、戻ったぞ! 俺の体だ! 俺の魔力だ!

 ―――おっとよく見たら全裸ではないか!」



 男―――ダークシュナイダーはそう言うと、パチンッと指を弾く。


 するとさっきまで全裸だったはずのダークシュナイダーは一瞬にして漆黒の衣服を身に纏っていた。



「……シュナちゃん?」

「さて、ローラよ。少しこの場で待っていろ、直ぐに片付けて来る」



 しばらく呆気にとられていたアレクセイはここでやっと回復し、騎士達に指示を出した。



「何をしているお前たち! 今すぐあの男を殺せッ!!」



 その声で騎士達も気を取り直し、シュナイダーを殺そうと向かってきた。


 アレクセイの騎士達は外にかなりの数が控えていたらしく、大体数十人はいる。


 その騎士達に対してダークシュナイダーは焦りもせず、静かに右腕を上げると何かを唱え始めた。



「―――The sand is my sword」

 ≪その砂は我が剣である≫ 


 

 ダークシュナイダーがそう唱えた瞬間、突然地面から砂が舞い上がり、その形状を巨大な刃の如く変化させると前方にいた騎士達5人程を鎧ごと一瞬にして斬り裂いた。



「なっ!?やはり魔法使い……おまえ、一体何者だ?」

「フハハハ、我が名はダークシュナイダー、最強の魔法使いと言われた男だ!!覚えておくがいい!」

「ダークシュナイダーだと……その名…まさか…いや、そんなはずは……」

 


 驚愕を隠せないアレクセイそして騎士達は突然のことに怯み、その動きを止めてしまう。


 その隙を逃すダークシュナイダーではない、ダークシュナイダーは即座に次の詠唱を開始する。



「―――The lightning is in my order」

  ≪その雷撃は我がために≫



 その詠唱に答えるように隙だらけな騎士達の間に雷電が迸る。


 騎士達は一人、また一人と倒され、その数を減らしていく。


 しかし、何とか間を抜けてきた騎士の一人がダークシュナイダーに向かってきた。


 それに対しダークシュナイダーは即座に詠唱を開始する。



「―――And patron to the wind cuts through thy」

  ≪その風は我を守護し、汝を切り裂く≫



 しかし、名にも発動しない、これを好機と思った騎士はダークシュナイダーに袈裟懸けに斬りかかる。

 

―――この状況、このタイミング、殺った!


 そう騎士は確信するがしかし、騎士は忘れていた、ダークシュナイダーがすでに詠唱を終えているということを……。


 そして次の瞬間、騎士の剣は見えない何かに阻まれたかと思うとその何かは騎士を切り裂いた。


 騎士を切り裂いたもの――――それは風の刃。


 その風の刃がダークシュナイダーを剣から守り、そのまま騎士へと反撃したのだ。


 つまり、さっきダークシュナイダーが詠唱したのは風によるカウンター魔法だったのである。


 そしてダークシュナイダーは次々と強力、否、凶悪な魔法を詠唱していく。


 そこにあったのはかわいい男の子の姿ではない、魔法大戦時に突然現れ、戦場をかき乱し、遂には魔法大戦そのものを終結させた伝説の英雄、最強の魔法使い―――――ダークシュナイダーの姿だった。

 


「バカな、まさか本物……おい騎士ども! 人質だ! 人質を使え!」

  


 このままだと負けると確信したアレクセイはエルドを人質として使うことにした。


 そしてアレクセイの前に連れてこられるエルド。



「おい、この糞ジジイがどうなってもいいのかッ!!」



 その声に動きを止めるダークシュナイダー。



「おじいちゃん! そんな、卑怯だよ! おじいちゃんを放して!」

 


 とローラが叫ぶ。だが、アレクセイは必死の抗議をあざ笑うかのように底意地の悪い笑みを浮かべる。



「嫌だね。卑怯だぁ? 上等じゃいか! 卑怯で何が悪い! この世界、まっとうに生きたってなんも得なことなんかない、むしろ卑怯であることは才能なんだよ!」



 そう悦に浸って持論を展開するアレクセイ、しかし……。



「それは違うな」

「何だと?」

「お前は卑怯にしかなれなかっただけだ。この世の中でまっとうをまっとうに生き抜くことから逃げただけだ。

 それを才能だと? 笑わせる!

 本当に才能を持ってるのは、この世の中でもしっかりと正しい心を持っているローラやこの村の人々だッ!

 お前にはできるのか? 重い税を掛けられ、自分たちの食料の確保も大変な中、行き倒れている見ず知らずの子に腹いっぱい食わせることが!

 嫌な顔せず迎えることが!

 冗談を言って励ますことが!

 それをできることの方がよっぽど立派な才能ではないかッ!!」

「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れぇぇぇぇぇえ!!!おい、今だ、今ならあいつは手を出せない、殺ってしまえ!」



 そうアレクセイに言われ、我こそはとダークシュナイダーに殺到する騎士達。

 だが……。



「―――Your body is in stone

 ≪貴公の体は石の如く≫


―――Our water is destroyed only my enemy」

  ≪我が水は我が敵のみを滅ぼす≫



 ダークシュナイダーは人質がいることなど気にもせず二つの魔法を連続詠唱、直後現れた濁流は騎士達、アレクセイ、そしてエルドまで飲み込んだ。否、そのように見えた。


 濁流はエルドを避けるかのようにエルドの周りにだけ及んではいなかったのだ。


 水は呪文の通り、ダークシュナイダーの敵のみを飲み込んだのである。


 しかし、飲み込まれなかったのはエルドだけではなかった。


 エルドを取り押さえていた二人の騎士、そしてアレクセイだ。


 だが、エルドのすぐ横にいた者はともかく、何故近いとはいえ十分危険地帯にいたはずのアレクセイまで無事なのか? それは簡単だ。


 アレクセイも仮にも魔法で名を立てた者、彼は自身の周囲に炎の壁を展開、その温度で自身の周囲の水を蒸発させたのである。


 これにはダークシュナイダーも少し驚く。



「ハハハ、大方、人質以外を全員殺れば大丈夫とでも思ったのだろうが詰めが甘かったな! もういい、その糞ジジイを殺ってしまえ!!」

「そんな、おじいちゃん!!」

「くっここまでか……」



 目を閉じるエルド、しかし、自分の死はいつまでたってもやってこない。

 


「お前ら、何をしてる、早く殺ってしまえ!」

「フッフハハハ!」

「貴様ッ! 何がおかしい!」

「何もかもだよ、俺が予想外だったのはお前が耐えきったことだけ、その騎士達が残るのも計算済みだ。

 その騎士さん方はな? 殺りたくても殺れないんだよ!

 そいつらをよく見て見ろよ。

 んで、エルド、あんたはさっさとこっちに来い、もう来れるはずだぞ?」

「何じゃと? そんなはずは……なぬッ!?」

「バカなッ!? いつの間に!」



 二人が驚いた理由、それはエルドの体は何の抵抗もなく騎士達の手の中から抜け、ローラたちの元の戻ることができたからだ。


 ではなぜ戻れたのか、それは二人の騎士が石のように固まっていたためだ。


 ダークシュナイダーは濁流を詠唱した時、共に騎士二人を固める呪文を唱えていたのである。


 こうしてアレクセイは部下と人質を失った。



「糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞がぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!! もういい、貴様ら全員死にやがれ!


―――Do your burning all things reflected in the eyes of my flame!」

    ≪我が炎よ、我の目に映る万物を燃やし尽くせ≫



 アレクセイが右手を頭上に掲げ、そう詠唱するとアレクセイの頭上に太陽のような灼熱の火球が生み出された。


 そしてアレクセイが右手を振り下ろすとその火球はダークシュナイダーを飲み込もうと向かってくる。



「ハハハこれでおしまいだ! 私も、お前らも、そしてこの村もなッ!!」



 この火球に絶対の自信があるかのように叫ぶアレクセイ。


 恐らくいくらダークシュナイダーでも当たればただでは済まない、否、それどころかこの村ごと燃やし尽くされるだろう。


 しかしダークシュナイダーは落ち着いていた。


 そして、静かに唱える。まるで自分の余裕を見せつけるかのように、相手の息の根を止めるかのように。



「Your magic mine, because of its magic in our hands is」

 ≪あなたの魔法は私の物、故にその魔法は我が手の内にある≫



 ダークシュナイダーの詠唱が終わった。


 と、同時に太陽のような灼熱の火球はその動きを止めてしまったかと思うと徐々に小さくなり、消えて行った。



「バカなッ!? 私の全魔力をつぎ込んだんだぞ、消せるはずが……」

「お前の全魔力なんかたかが知れているのだ、ただ俺がお前よりも遥かに多くの魔力を持っていた―――――それだけの話だ」



 そう、ダークシュナイダーの詠唱は自分の込めた魔力よりも低い魔力の主導権を奪うもの、そして主導権を持つ自信の魔力を自分の意志で消せるのは道理、ダークシュナイダーは周りに被害の出ぬよう、ゆっくりとそれを収縮し、消し去ったのだ。


 つまり、散々凶悪な魔法を連発したはずのダークシュナイダーの魔力がほとんど残っていたアレクセイの魔力を上回った、本当にただそれだけの話なのである。


 

「そんな、そんなバカなことが……」



 崩れ落ちるアレクセイ、しかし、ダークシュナイダーはそんなものは意にも解さず非常な宣告を告げる。



「さて、次はこちらの番だな」

「なっ待て、待ってくれ。降参だ。もうこの村には手を出さない! 本当だ! 許してくれ」

「悪いな、俺はガキだからやられたらやり返さないと気がすまん。大人しく滅びろ」



 ダークシュナイダーは非常にも最後の詠唱を開始した。



 「Without a bone my enemy my dominates darkness. do not eat, absorbed, and our food」

  ≪我が支配する漆黒の闇よ、我が敵を骨も残さず喰らい尽くし、吸収し、我が糧とせよ≫



 するとアレクセイの周囲が突然闇に包まれた。

 そして闇はアレクセイを覆い隠すように、否、食すかのようにアレクセイ覆った。



『嫌だ、嫌だ、助け――――』



―――――バキッボキッグキッガリッ



 と何かが噛み砕くような音を最後に闇は消え去り、そこには何もなかったかのような村の風景が広がっていた。




♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦



「もう行っちゃうの?」

「ああ、ローラのおかげで一旦元には戻れたし、皆に食料と水も分けてもらえたからな。

 今度は完全に解く方法を探さなければならない」

「えっ完全じゃないの?」

「ああ、もし私がまた女とキスをしてしまえば私はまた子供に戻ってしまうのだ」

「……そうなんだ」

「ん? それがどうかしたか?」

「ううん、何でもない。おじいちゃんを呼んでくるね見送りしたいって言ってたから」

「ああわかった」



 そうしてそこを離れるローラ。

 そして最初にエルドのとこに向かった。



「おじいちゃん、やっぱ今日シュナちゃん行っちゃうって、それで……」

「言わなくてもわかっておるよローラ。なに、ローラの人生だ。ローラの好きにしなさい」

「おじいちゃん……」

「だが、これだけは忘れないでおくれ、私はいつでもローラの味方だし、ローラの帰る場所だ。

嫌になったらいつでも帰っておいで」

「うん、ありがとうおじいちゃん。さぁお見送りだよ。

おじいちゃんも来てね」

「ああ、もちろん行くよ。すぐに行くからお前もやりたいことをやってきなさい」

「……ありがとう、おじいちゃん」



 ローラはそのまま家を出るとダークシュナイダーのとこに戻った。


「ん?ローラよ。エルドはどうした?」

「後から来るって」

「そうか」

「……シュナちゃん、パパとママの仇を討ってくれてありがとうね」

「なに、気にするな、一宿一飯の恩というやつだ」

「うん、でもそれじゃ気が済まないから私からお礼を渡させて?」

「……まぁ構わないが?」



 ローラはダークシュナイダーのその反応を確認するとゆっくりと彼に近ずいていきそして、



――――――ダークシュナイダーの唇に自らのそれを重ねた。


「―――――ッ!?」



 驚くダークシュナイダー。そして光に包まれていき、子供の姿に戻ってしまった。



「ふふふ、これで元に戻りたいときにキスしてくれる女の子が必要になっちゃったね!」

「なっ何を……ローラ、お前、図ったなッ!」

「騙されるシュナちゃんが悪いんですよぉーだ!ふふ」



 そう言って笑った後、ローラは突然真剣な表情をして告げた。



「どうか、私のことを連れて行ってください、お願いします」


 

 そう言って頭を下げるローラ。



「だが、しかしな……」

「わしからも頼む」



 後からやって来たらしいエルドも頭を下げてきた。



「あんたまで……」

「その娘がわがままを言うことなんて初めてなんじゃよ。

どうかこのじじいに娘の最初で最後になるであろうわがままをかなえさせておくれ」

「おじいちゃん……」



 その姿を見て少し考え込んだかと思うとローラの方を』向き、真剣な顔で告げる。



「つらい旅になるかもしれんぞ?」

「大丈夫」

「死ぬかもしれんぞ?」

「シュナちゃんと一緒なら大丈夫」

「本当にいいんだな?」

「しつこいよ? シュナちゃん」

「……はぁー、わかった俺の負けだ、好きにしろ」

「やったーシュナちゃん大好き!」


 そう言って抱きついてくるローラ、その甘い香りと柔らかい感触に一瞬不覚にもドキッとしてしまったダークシュナイダーはそれを振り払うようにエルドの方を向く。



「それじゃあエルド、世話になったな」

「ああ、また気が向いたらよってくれ、今度は村総出で歓迎しよう。

 それから孫をよろしくな」

「ああ、任せろ、それじゃあな」

「じゃあね、おじいちゃん、元気でね」



 二人はエルドにそう告げると荒野の中へと消えて行った。



 

―――――――――二人の旅はまだ始まったばかりだ。



 

 



――――【完】――――


 


英語はBingでの翻訳なので少しおかしいとこがあるかもしれません。


楽しんでいただけたならば幸いです。


感想とか書いていただければ作者テンション上がります。

感想とか書いていただければ作者テンション上がります。


大事なことなので二回言いました!!



……なんかすいません





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] テンポが良いですねぇ~、短編の鏡って位丁度良い長さも良いです [気になる点] リスペクトって唄ってますからダーシュの名を使わない方が良かったかなぁ~・・・あ、それだと獅子零(笑)シュナイダ…
[良い点] わかりやすいストーリーで、情景が浮かびやすかったです! [一言] 続きがあれば読みたいなぁ と思わされました
[一言] 会話のテンポがよかったです! 英語すごいですね! 魔法とか好きなので、楽しめました( ^ω^ )
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ