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ヤンデレ彼女の社会復帰政策  作者: 羊羽 一
4/22

食事は楽しく

 一時間後、空腹であることを僕の胃が主張してきたので食卓に向かう。


 今日初めての食事だ。今朝は面倒で下に降りていないからなぁ。ほとんど動いていないとはいえ流石にお腹空きました。


 腹が減っては戦ができぬ。なんて言葉もあるしね。僕が勝手に戦だと思っているだけで、いざ言ってみたら実に平和的に問題は解決した・・・みたいな展開であってほしい。


 食卓へ向かうためのドアを開けると、家族は既に食事を済ませたらしく、思い思いの時間を過ごしていた。

 具体的に言うと父は野球番組の視聴、母は食事後の片付け、そして綾里は携帯をカチカチと動かしている。


 ちょっと前に綾里が「私もいい加減スマホにしたい!」とか言っていたような。僕は携帯を解約された身分だというのに、贅沢な妹である。勿論、自業自得であることは充分分かっているが。


 机を見ると今日のメニューはアジの開きと味噌汁であるということが判明した。

 日本人的でバランスのとれたいいメニューである。まだ食べたわけではないので 確定ではないが☆二つくらいはあげてもいいんじゃないかな? なんてグルメを気取ってみる。何かになりきるというのが僕は好きなのかもしれないな。


 食事は基本的にいつも僕だけ別にとっている。一緒に食べるのは気まずさを感じるのか、食事時に僕をわざわざ呼ぶということはいない。

 家族だというのに気を遣わせてしまっている。そう考えると胸が少々痛んだ。


「いただきまーす」


 礼儀正しい好青年を自負しているので食事の挨拶は欠かさない。(これもなりきりの一種であることは言うまでもない)


 無言でパクパク。テレビのチャンネルを変える主導権は父が握っているので流れている映像を特に感想を持たずに眺める。あ、ホームランだ。


 こうして栄養摂取につとめていると、我が妹が急にたちあがり僕に近寄ってきた。なんだか威圧感を多少感じる。


「お兄ちゃん、さっき上で少し暴れてなかった?」


 なんということか。綾里は僕の微細な変化を見逃さず、こうして問い詰めてきたのだ。洞察力のよさに花丸を頭の中で花丸をあげました。


「あぁ、ちょっと虫がいてね。いきなりのことだったから思わず飛び跳ねちゃったんだよ」 


「へぇ、お兄ちゃん虫が苦手だったんだ。これはいいことを聞いたな」


「なぜ有益な情報だと判断したのかはあえて理由を聞きませんが、決して悪用しないように。お兄ちゃんとの約束ですよ」


「私は最近もの覚えが悪くてねぇ・・・テストの成績も人に言いづらい結果だったのですよ」


 これは暗に『お前との約束なんて覚えてられっかよ!』と伝えているんだろうか。

 遂に綾理が不良になってしまった。更正させるほどの力量は生憎持ち合わせていないので自ら正しい道を進むことを祈ることにした。


「さて、ごちそうさま」


 綾理との会話の最中でも手はちゃんと動かして口を動かしていたので、食事は素早く完了。早く終わらせたところで特にやることはないが、時間は有効に使わなければいけないと昔誰かが言っていた気がする。


 綾理はさっきの会話でも分かるように、家族の中で唯一僕に気兼ねなく話しかけてくる貴重な存在だ。僕も流石に妹相手なら会話を成立させることができる。

 まちこさんと会うときもこの経験を存分に生かすようにしたいものだ。応用問題は昔から苦手なので少し不安ですけど。


 リビングから出て、再び僕の世界へ入国。この国の入国管理は近年厳しくなっており、ここ最近は僕しか入国していない。

 未だに鎖国政策をとっている閉鎖的な国だが、鎖国しているからこそ生まれる独自の文化もあるはずと信じている。


 約束の時刻まで後三時間くらいか。

 ベッドに横になり、無為に時間を消費してその時を待つことにする。


 そういや服装はどうしよっかなー。現在装備中のジャージセットのままでいいか。他にマトモな服があるというわけでもないし。

 このジャージも実は昔この国を救った英雄が着ていた由緒あるジャージなのです!

 こう考えると何か神秘的な気持ちになってくる気がしますね。妄想も使いようということか。もっと鍛えて妄想マスターを目指すのも悪くないかもなぁ。


 それで飯が食えるなら、絶対妄想マスターを志していたのに。

 こうして妄想をし続けている内に瞼が重くなり、意識が沈んでいった。


 いい夢が見られますように。

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