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俺と彼女と狼な関係  作者: 七詩のなめ
第一章 フェンリル計画
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第九話 誰もが望む結末を

誰もが望む結末を


超能力者との戦いで美奈が傷ついた。

しかも、遠分は再起不能だそうだ。

俺はまだ外で空を見上げていた。

美奈があんなんになったのは俺のせいだ。

俺がもっと強ければ美奈はあんな目に遭わなくてよかったんだ。

「あんなのは俺の望んだ結末じゃないよな」

俺が望む結末。

それは誰もが笑顔でいることだ。

どんなにひどいことをされようが最後は味方も、敵も全てが笑っていられる。そんな結末だ。

「別にあなたのせいではないわよ? 私たちも戦えなかったもの。だから――」

「立前は誰だって立てられる。言い訳は誰だって言えるんだ。先の戦いで確かにお前たちは戦えない状態だったかもしれない。でも、俺は戦えたんだ。俺はあいつを倒すことが出来る瞬間を手に入れることができたんだ。だけど、勝てなかった。これは俺の弱さ以外の何が問題だ?」

俺は瑞花のフォローも無残に壊して話を終わらせた。

そうさ。これは俺の力不足。俺が未熟だってことさ。

「そんな事なんじゃないかな?」

俺と瑞花の話を挟んで誰かが俺に後ろから抱きついてきた。

「か、奏?」

抱きついてきたのは奏だった。

奏は狼の尻尾、耳が生えている。

しかも頬ずりなんかしてくるからどちらかと言うと犬に近いかもしれない。

「だって、美奈が願ったのは勝つことじゃなくて追い払うことでしょ? なら、誠はその願いを叶えたんだよ? どこに弱さがあるの?」

先の戦いを思い出す。

確かに、美奈は俺に勝てではなく追い払えと願った。

だから、俺は倒しに行かなかったのか?

いや、しかし美奈が傷ついたのは紛れもない俺のせいだ。これはどうやったって変えられやしない事実だ。

「もう、そんなに気にすることないよ。戦うことは誰かを傷つけることなんだからさ」

ど、どうしたんだ、奏のやつ。酔ってるのか?

「お、おい。なんでそんなに近づいて――」

「昔のことは忘れてさ。楽しく行こうよ」

奏が俺を押し倒し上に乗っかってくる。

おいおいおい! 待てよ! このままじゃ規制ギリギリを超えてデッドヒートだぞ!

「さ、奏ちゃん。ここは一人にさせてあげましょう?」

瑞花が奏を抱きかかえこの場から離れていった。

い、一体何だよ、さっきの。

「なんであんなに呑気なんだ?」

「そりゃあ、私が元仲間だからだろ?」

「なっ!」

俺は振り返るとそこには超能力者の少女がいた。

「おいおい。まだ私は襲うとは決めてないぞ? 話をしに来たんだ。いいだろ、話くらい?」

どういうつもりだ? 話をしに来た?

「それに、元仲間ってのはどういう意味だ?」

にへぇと笑った口元がこの先を語る準備をする。

俺はなぜか生唾を飲んでいた。

「聞いたことはないのか? 双子が集団を統べたという話を」

聞いたことがある。

というかつい最近聞いた。

「でも確かあれは解散したって――」

「あんたたちも新しい集団を作っただろ?」

「まさか……」

もう片方も作ったってのか?

でも、それじゃあまるで……

「お前の考えどうりだよ。そうさ、私たちは解散したんじゃない。分裂したんだ」

分裂、でもなんで。

「お前はなんでと思っているだろ。簡単さ。同じ力を持った二人がいる集団はもどかしいだけだからな。双子といえどそこだけは譲れなかったのさ」

双子、同じ力。まさか……。

「その双子の片方は瑞花なのか?」

最高潮まで達したニヤつき顔で少女は俺を見る。

「大当たりだぜ、にーさん。だが、まだ足りないところがあるけどな。瑞花は妹だ。つまり……」

「完全の洗脳ができる姉はお前たちのリーダーなのか」

少し驚いた顔をする少女だったがすぐに大笑いし始めた。

「ふははは。大正解だ! にーさんは結構頭がいいんじゃないか? まあいいや。お話もどうやらここまでのようだな」

少女が言うと俺の後ろには仲間が勢ぞろいしていた。

「少しばかり長話になっちまった。さあ、ここからは戦争だ。私たちとにーさんたちのな」

少女は飛び上がり俺たちと距離を取る。

「彩芽。私たちはあなたを傷つけたくないの。降参してくれないかしら」

「は? 私が降参するって? しないよ。だって私は、四季彩彩芽はテメェらより強いんだぜ?」

そして、彩芽と名乗った少女は辺りの瓦礫を吹き飛ばす。

「これが私の力だ!」

まるで隕石のようにこちらに飛んでくる彩芽。

俺ら一同は動けなかった。

だが、その中でただ一人、奏だけが動き俺たちの前に立ちふさがる。

「奏!」

それに気づいた俺は奏を呼ぶ。

だが、奏は俺の声を無視して右手を前に出した。

突進してくる隕石とお衝突する直前、奏は体を回転させて数ミリという感覚を保って隕石にぶつからずだが右手は肩に触れていた。

「あ? なんだテメェ」

彩芽が立ち止まり奏を見た。

「あは♪ 彩芽ちゃん。勝手に出撃はいけないんじゃないかな?」

奏とは思えない話し方で彩芽に話しかける奏。

「はあ? なんでテメェが……まさか!」

恐れ慄く彩芽。

なんだ? 何が起こってるんだ?

奏は一体何をしたんだ?

「ん? ああ、誤解が無いよう先に語らせてもらうけど。私はフェンリル……違った、奏ちゃんじゃありませーん。私は『明日の命令を出す者』って呼ばれてて、本名は美山瑞菜。以後お見知りおきを」

美山瑞菜。瑞花の姉さんなのか?

でも、なんで奏の中に……。

「ああ、これ体を借りてるとかそういうのじゃないから。先読みした会話と行動を定刻になったらやらせるように洗脳したんだよねぇ。だから、これを聞いている頃時間は午後五時三十三分三十九秒じゃないかな?」

俺は咄嗟に時計を見る。

確かにそうだ。瑞菜が言った時間とぴったり同じだ。

「さてさて、彩芽ちゃーん? お仕置きの時間ですよー?」

「や、やめろ! 私はお前たちのために!」

「そんなのは関係ないよねぇ? さて、今回のお仕置きは『暴走』でどうかな?」

暴走? どういう意味だ?

「まずい! 誠、彩芽を保護しろ!」

来夢が突然叫び出す。

俺は何がなんだかわからずあたふたしているところに事は進んでいた。

『タッチマインド』

瑞菜が操っている奏がそんなことを言い出す。

「あ、ああ、ああああああ!!」

彩芽が頭を抱えて地を這う。

どうしたんだ? 誰か俺にもわかるように説明してくれよ!

「誠だって? ちょっとこっち来てよ」

奏が手招きする。

俺は行くのをためらった。なぜなら、今の奏は奏じゃなく敵のリーダーなのだから。

「あれれ? 来なくていいのかな? この子の命は私が握ってるって言ってもいいんだよ?」

俺はさっきまでの考えが吹き飛んだような気がした。

奏が死んじまうのなら、誰かが傷つくのなら俺が傷ついてやるよ。

俺は一歩ずつ奏に近づいていく。

奏は俺の耳元に顔を寄せ小さな声で話した。

「あの子をよろしくね」

よろしく? どういう意味だよ。

俺が考えを広げようとすると奏は俺にキスをしていた。

ドクンッ

「ふふ、やっぱり変わっちゃうんだね」

「今の君はどこでこの子を操っているのかな?」

入れ替わったと同時に俺は相手が自動で話しているという嘘を見破る。

「あれ? 気づいちゃったの? まあいいや。私の願いはたった一つ――」

あの子を救ってあげて。

奏の口から出たのは何とも悲しげな声だった。

俺は追求はせず、ただニッコリと笑って振り返った。

「引き受けたよ。さあ、始めよう。僕が望む最高の結末のために」

俺は苦しむ彩芽にゆっくりと近付く。

「近寄るな! 巻き込まれるぞ!」

今のは彩芽からの忠告だった。

だが、俺は足を止めない。足を進めるスピードを早め近寄る。

「君は優しいんだね。敵のことを思いやるなんて」

俺は緩んだ口元で語りだす。

「なっ……死にたいのか! さっさと離れろよ!」

俺はすでに彩芽のすぐそばに立っていた。

「死なないさ。君を助けるまではね」

俺は彩芽を抱きかかえるといきなり暴れだす。

「ダメだ! もう――」

「君の全てを僕に当ててごらん? 全力で僕と戦おうか」

俺は彩芽から離れるとゆっくりと彩芽が立つ。

「ダメよ! そんなことしたら――」

「この子は今体内に眠る膨大な力が一気に溢れようとしてるのを我慢しているんだ。それを一気に使い果たせば暴走は止まるよ」

さっき抱きかかえた時にすでにやるべき事はわかった。

もう一人の俺は望んだことを必ず叶えるんだ。どんな障害があろうとも必ず乗り越えて。

「いいかい? 全力で最大の攻撃を僕にだけに放つんだよ? 僕以外の人を傷つけようとすると僕は君を許さないよ?」

彩芽はゆっくりと頷くと集中しだす。

俺はただ立つばかりで何もしない。

「にーさん。死ぬなよ?」

「はは、これはこれは。僕も見くびられたものだね」

俺は苦笑いを返すと彩芽は巨大な砲撃を放った。

「君の全てを受けて、なお僕は乗り越えていくよ」

俺は右手でその砲撃を軽く受け止め手首を回し上へと砲撃を誘導する。

「「「「う、そ……」」」」

砲撃は俺には当たったが傷一つ与えず天空へと吹き飛ばされた。

「いや、これが僕が望んだ結末さ」

俺はどこまでも広がる蒼い空を見上げてそう言った。

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