第七話 敵の正体
敵の正体
どうも、俺こと皆さんご存知最宮誠です。
この頃の悩みはラッキースケベで気を失うことが多々あるということです。
今日はすでに三度もラッキースケベに出くわしました。
そのせいで二度も気を失うという由々しき事態に陥りました。
「ああ、なんて不幸なんだ」
俺は風呂場での一件のあとみんなからの一斉の視線攻撃に耐え、奏の噛み付きに耐えて今現在は、家の中を探索中です。
「不幸なのは君じゃなくて私ですな」
目の前から声が聞こえたが姿が見えない。
「おーい。可憐はここなのですな」
俺はゆっくりと視線を下げるとそこには可憐が上を見上げながら立っていた。
「……」
「……」
「うわぁぁぁああああ!!」
俺は跳ね飛び後ろに退く。
な、なんて小さいんだ。下を見てなかったら気づかなかったぞ。
「そんなに驚かなくてもいいのですな。ちょっと傷つくのですな」
可憐は肩を落としてしょんぼりした。
ああ、すんげぇびっくりしたけどよく見ると幼女だったのか。
「すまんすまん。まさか幼女が「私は君と同い年なのですな!」はい?」
お、同い年ですか……。
「馬鹿にするのもそれくらいにしてくださいのですな! 私だって「可憐は幼女だろ?」だから、違うのですな!」
俺がチャチャを入れると可憐は顔を真っ赤にしてこちらを見ていた。
俺はそんな可憐が面白くて笑っていた。
「わ、笑うなですな!」
「くははは!」
「~~~~っ!!??」
可憐はとうとう怒りゲージが溜まりきったらしく手に持っていた体には余る大きな本で俺の頭を狙って振り下ろす。
だが、俺はそれを軽々しく避ける。
「なんで、当たらないのですな!」
「いやいやいや。だってそれ痛いだろ?」
「当たり前ですな!」
そう言いながら可憐は本を俺に当てるために何度も振り下ろすが全て避ける。
そんなことを何回か繰り返すと可憐が本を落として息を上げた。
「わ、私は戦闘は不向きなのですな」
そう言って可憐は床に座り込んでしまった。
そして、俺の顔を睨みつける。
俺、何かしたか?
「こんなのにフェンリルを任せてどういうつもりですな。全く、瑞花は見る目が落ちてきましたのですな」
可憐は首を振ってやれやれというポーズをしている。
「おい。俺のことはどう思ってもらっても構わんがフェンリルって呼ぶな。あいつのは奏って言う名前をあげたんだ。その名前で呼んでやれ」
俺がそう言うと可憐はムスっとした顔をする。
「あの化け物に名前ですな? そんなものを与えたところで状況は――」
「化物じゃねぇんだよ。俺がそんなものにしねぇよ。もう一度化け物って言ったらげんこつだぞ?」
俺が握り拳を見せると可憐はしょうがないという顔を見せて引き下がる。
「瑞花が呼んでるのですな。こっちですな」
そう言って可憐は俺を先導していく。
俺は可憐に付いて行くと鉄製の頑丈なドアの前で止まった。
「ここか?」
「はいですな。では私は仕事があるのですな」
そう言い残して可憐はどこかへ行ってしまった。
俺は仕方なくドアを開く。
「あら、やっと来たのね」
そこには座椅子に座った瑞花が何かの資料を見ながらいた。
「なんだよ。用ってのは」
俺は部屋に入ってから用件を聞こうとすると
「いつから上からものを言うようになったのかしら?」
「うっ……わ、わかったよ」
俺はその場に座るとまたしても瑞花からの文句が飛ぶ。
「背座しなさい」
「なんで!?」
「そっちの方が面白そうだからよ」
「そんなぁ!」
俺は頭を抱えると瑞花はクスクスと笑う。
「嘘よ」
「ですよねぇ~」
俺はそのままの格好で話を聞くことになった。
「用件は簡単よ。奏ちゃんに関してのこと。そろそろあなたも知ったほうがいいと思うわ」
俺は奏という単語を聞いて動揺する。
なぜかはわからない。でも、確実に動揺していた。
「あなたも知っているようにあの子にフェンリルを落とした研究機関は完全に機能を停止していたわ」
「なら、昨日きたのはなんだったんだよ」
「そこよ。昨日きたのは研究機関とは全くの無関係のところだったわ。だけどね、フェンリルを落とした時の最高責任者が関わっているのよ」
なんだよそれ。まだ、奏を悲しませる気なのかよ。
「しかも、今度は一つの機関じゃないの。ありとあらゆる機関での独立した人たちが集まった機関とは言えない集団。同じ思惑を持った集団だってことよ」
言われた事の半分も理解していないが奏を悲しませることだけはわかった気がする。
「要はそいつらから奏を守ればいいだけだろ? なら任せろよ。俺が――」
「多分、あなただけじゃ太刀打ちできないわ」
衝撃の事実を叩きだすように瑞花が言い放つ。
「どうしてそんなことわかるんだよ」
俺は握り拳を作る。
「その集団のリーダーは……いえ、なんでもないわ。でも勝てないのよ」
瑞花は表情を曇らせ言葉を濁してしまった。
なんだよ。まだ、俺に隠してることがあるんだろ? 教えてくれよ。
「瑞花様、お客さんから電話ですよ」
そこで来夢が部屋に入ってきた。
俺と瑞花の話は中断され瑞花が来夢の返答をする。
「誰なのかしら?」
「さあ? ですが『明日の命令を出すの者』と伝えてくれと言われました」
それを聞いて瑞花が取り乱す。
「そ、それは本当なの!?」
「え、ええ。確かにそう伝えろと……」
「……わかったわ。電話を繋いで。それとあなたたちはここから出て行きなさい」
呆気なく追い出された俺たちは呆然とドアを前で立つしかなかった。
「何なんだよこれ」
俺は怒りを出すことも叶わず来た道を戻ろうとすると来夢に肩を掴まれる。
「ちょっとばかし昔話をしてやろうではないか」
「は? なんでいきなり……」
「二年前――」
「って、もう始まるんかい!」
「ちゃんと聞け。二年前、それはそれは美しい双子の姉妹がいました。妹の方は正反対のことをやらせてしまう、姉は絶対に逆らえない魔法の言葉を持ち二人はとても似ていた。能力までもが全く同じと言っていいほどのものだった。やがて二人は世界を守るための集団を作りました。それはもう強い集団でした。ですがある日、その集団は壊滅させられたのです。一匹の狼によって。なんとか狼を止めることはできましたが仲間は先の戦いで傷つき集団を維持するのはとても難しくなりました。妹は新たな集団を作りますが姉の方は……消えたのです」
長ったらしい昔話だったがなんとなく今のこの集団みたいだった。
妹は瑞花。じゃあ、姉は?
俺の中に疑問符が残ったが答えを聞く前に来夢がいなくなってしまった。
「なんだよ。お前は俺に何を言いたかったんだよ」
俺は頭に残った疑問を解こうとするが情報が少なすぎるのか全く掴めなかった。
「誠はそこで何してるの?」
不意に背後から奏の声が聞こえた。
振り向くとそこには奏がフランスパンを持って立っていた。
「なあ」
「何?」
「なんでフランスパンなんだ?」
「んー、硬いから?」
「どういう理由だよ!」
全く、なんて呑気な奴なんだ、奏は。
「あのなぁ。なんでお前は――」
「食べる?」
噛みちぎったフランスパンを俺に差し出す奏。
「あ、ああ。もらうよ」
そういや、昼飯が近いせいか腹が減った。
俺はもらったフランスパンを噛むと
「か、硬!?」
普通のフランスパンじゃ有り得ない硬さだぞこれ。
「だから、歯にいいじゃん。これね、可憐からもらったんだよ? 私の歯は普通じゃないから普通の食べ物だと食感がないんだよね。だから、作ってもらったの」
自慢しながら語る奏を見て俺は少し悲しくなった。
だって、こいつは今、自分で普通じゃないって言ったんだぞ?
こいつが理解してるのどうかはわからないさ。でもな、自分でそんなことを言うのはとても悲しいことなんだ。
俺は奏をいつの間にか抱いていた。
「え? ええ!? な、何?」
「お前は普通だ。異常なんかじゃない。だから、もう自分で普通じゃないとか言うな」
俺は震える声でそんなことを言っていた。
「う、うん。わかったよ。だから、もう離してくれる? みんなが見てるよ」
「へ?」
俺は奏を遠ざけるといろんなものが見えてきた。
顔を真っ赤にする可憐、ムスっとしている美奈、平然と立っている来夢、クスクスと笑っている瑞花。その全てが俺たちを見ていた。
「あ、えっと、これはスキンシップの一環で……」
「なら、私もしてもらおうかしら」
「……いやマジすみません。調子づきました」
俺は土下座をして謝った。
うぅ、なんでこんなに暑いんだこの家は。




