最終回 今日も明日も明後日もただいまを言うために
今日も明日も明後日もただいまを言うために
ドラゴンの息吹で俺たちは壁に向かって吹き飛ばされる。
「まだ、抗うのか! 私たちには勝てないということをなぜ学ばない!」
ドラゴンの少女、カリスがドラゴンの姿で叫ぶ。
「抗うさ! 俺たちはお前たちに負けるわけには行かないんだから!」
俺は壁にぶつけた肩を押さえながら叫ぶ。
体はボロボロだ。だが、負けられない。
負けちゃいけないんだ!
「クッ! ならば、これでかき消されろ! 『覇竜の息吹』」
巨龍化したカリスの口から黒い炎が放射される。
その炎は俺たちを飲み込もうとこちらに迫ってきていたがそれよりも早く奏が動いた。
「フェンリル、朽炎」
狼、フェンリルの口から赤い炎が黒い炎に向かって飛ぶ。
その炎たちは交わり、融合、対消滅していく。
「何!? これが朽ちる炎の力か!」
すごい。あの炎をたった一撃で止めた。否、粉砕した。
奏は俺の方を向いて言う。
「誠、ここは私たちがなんとかするから誠は水無月の方に行って」
「ダメだ! そんなの危なすぎる!」
「もう! 私は誠の娘じゃないよ! ひとりでも大丈夫だよ!」
奏の一括に俺は口ごもる。
別に奏を娘みたいに見ていたわけではない。
ただ、守りたかった。できれば、戦いの場には出したくなかったんだ。
だが、そんな奏の勇姿に俺は口を出せなかった。
出してはいけなかったんだ。
「……わかった。でも、無理はすんなよ? いいな?」
「わかってるよ。それに何も私一人で戦おうって言うんじゃないよ。私にはみんながついてるしね」
俺の肩を千石が叩く。
それに気づいて振り向くとみんながいた。
「そうよ。私たちで戦うんですもの。負けるわけがないじゃない」
「不服だが、瑞菜様が戦うんだ。俺だってやってやるさ」
「基本的にオレッチは戦いを望まないんだけど、今回はあのドラゴンさんに復讐を兼ねての戦いだからなぁ、本気も本気だぜ!」
ほかの奴らもみんな頷いていた。
「お前ら……ほんと、バカ丸出しだな。ここは頼んだぞ!」
俺は振り返らず水無月のいるところに走る。
俺のダメージはでかい。どこまでやれるかなんて考えられない。
だけど、これがホントの最終決戦だ。気張れよ、俺!
俺は空に浮かぶ翼が生えた水無月を見る。
「カリスの攻撃を受けてなお立てるか。まあ、そうこなくっちゃ面白くないなぁ。さあ、今度は俺様との勝負だなぁ!」
翼を羽ばたかせるだけで氷や炎、雷といったものを生成し俺に向かって飛ばしてくる。
俺はバックステップでそれを避けるが水無月の攻撃は止むことを知らない。
「ほらほらほらほら!! もっと俺を楽しませて見せろや!」
水無月の攻撃が俺の避けるスピードに追いついてくる。
このままじゃやられる!
「クッ!」
水無月の攻撃が俺の頬を掠る。
そこからは全て当たる。嫌なほど水無月の攻撃が命中する。
「ひゃははは! 避けないと死んじまうぞ!!」
異様な笑みを浮かべて水無月は叫ぶ。
水無月の攻撃が俺の腕を砕き、俺の腹を抉り、足を折る。
とうとう俺は地面に倒れこむ。
「もう壊れちまったのか!? クッソつまんねぇなぁ! 俺様を楽しませて見せろって!」
無茶だ。
こんなの勝てっこない。
どうしよもないんだ。
「チッ。ここまでか」
残り少ない力で頭を動かし水無月を見る。
すると、水無月の上には炎、氷、木、水、土、そのほかたくさんの物質が交わり塊り一つの巨大なものになっていた。
まさか、それを俺にぶつけるつもりか?
ありえない。
あんなのどうやって避けろって言うんだよ。
勝てないのか?
そんな言葉が俺の中に浮かんだ瞬間だった。
声が、声が聞こえたんだ。
『諦めるのかい? 屈服するのかい?』
違う。
『負けるのかい? 勝利を放棄するのかい?』
違うんだ。
『君の行動は逃げとしか捉えられないよ?』
だってしょうがないじゃないか。
あんなのどうしろって言うんだ?
『砕くんだ。どんな障害だって、壁だって砕いて先に進むんだ』
できないよ。そんなこと。俺にはできない。
『そんな事ないよ』
なんでわかるんだよ。
『だって、君は僕だ。僕は君で、君は僕なんだ。だからわかるよ。君はまだ戦える』
お前はいったい誰なんだ?
そんな声も虚しく水無月が作り出した物質は今まさに放たれようとしていた。
「このビルにいるやつらは全て吹き飛ぶ。これが俺様の特大級の技『ニューゲート』」
あんなのがこのビルに当たったらみんな死んじまう。
それだけはダメだ。
死人は……出させない!
俺は体に力を込める。
体に力を込めると傷口から鮮血が飛ぶ。
だが、構わない。みんなが死ぬよりマシだ!
立たない。立ってくれない。これだけ力を込めているのになんで立ってくれないんだ!
『自分を解放するんだ。傷なんて筋肉で塞げ、目の前にある守りたいものにだけ集中するんだ』
もう一人の俺の声が聞こえる。
自分を解放。
できるのか、そんなこと。
否、しなくちゃならないのか。
「ぐ、おおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
「遅いぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
ニューゲートがこちらに飛ぶ。
止める。なんとしても止めてみせる!
「止めるんだぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁっぁああ!!!!!!!!!」
俺の懇親の一撃が水無月の懇親の一撃に追突する。
重い。硬い。痛い。
ありとあらゆる感情が芽生える。
だが、俺は負けなかった。
感情に、水無月に、そして自分に。
「打ち砕け!!」
あれだけ重かった攻撃が一瞬で、たった一瞬で消え去る。
「何!?」
驚く水無月を前に、俺は一瞬の隙も見せなかった。
「お前を救うぞ。それが俺たちの願いだからな」
ビルの壁を蹴って空に飛び水無月の目の前に行く。
そして、俺の攻撃が無防備な水無月の体を容易に貫いた。
自由落下する俺たち。最後に見たのは奏たちがカリスを無力化しているところだった。
勝ったんだ。俺たちは勝った。
次の瞬間、地面に落ちた痛みが俺を襲い、俺は否応なしに意識を持ってかれた。
◆ ◇ ◆
そんな戦いから実に一週間がたった今現在。
「おーい! 早くしろよ! 映画に遅れるぞ?」
俺たちはみんなで映画を見に行く用意をしていた。
水無月はというと俺たちの仲間になっていた。
なぜかは聞かないでくれ。実は知らないんだ。
いきなり仲間になりたいと言って聞かなくなり、しょうがなく仲間にしたというのが本当だからな。
「ったく、なんで女子ってのはこんなに遅いんだぁ?」
炎矢が愚痴をこぼす。
まあ、それには賛成だがしょうがないだろう? 女子ってのはそういう生き物だ。
「お前ら、瑞菜様のお支度を待てないというのか?」
いつものように千石は瑞菜LOVEだった。
全く、好きなら告れよな? 見てると恥ずかしくなってくるよ。
「しょうがないなぁ、俺が女子の着替えを――じゃなかった、裸を見てきてやるよ」
仲間になりたての水無月がニヤついた顔で足を進めようとしている。
なあ、水無月よ。言い直したのはいいが、もっとひどくなってるぞ?
「水無月。一体どこに行くって?」
水無月の襟を掴み持ち上げる少女、カリス。
コイツも水無月についてきていたのだ。
そして、どうやらカリスは水無月のことが好きみたいなんだよな。
「か、カリス! い、いや、俺は!」
「言い訳はいいぞ? 私はお前のその態度にイラつきを覚えているんだ」
あ、青筋が見える……。
「か、キャリスシャマ? そんなに怒らなくっても――」
「取り敢えず、ブレスの三千回くらいで許してやるから動くなよ?」
「死ぬ! それは死んじゃうよ! カリス、お前は俺を殺す気か!」
水無月とカリスの追いかけっこが始まってしまった。
頭を抱える俺を前に支度を終えた美少女たちが外に出てきた。
「おっまたせ! って、あれ? 水無月くんはいつもの痴話喧嘩?」
「これのどこが痴話喧嘩だ!」
「少なくとも、夫婦喧嘩よ、姉さま」
「違う! お前ら、見る目がないぞ!」
「ああもう! 早くしろよ! 映画始まっちまうよ!」
時間が迫る中瑞菜たちの話を聞いている時間はない。
「まあまあ、急がなくたって映画館は逃げないよ」
そうじゃない。今日のは違うんだ。
「違うわよ、姉さま。今日の映画は奏ちゃんが初めて行きたいと言ったものなのよ」
そうなのだ。あれだけ外の世界に出ていなかった奏がこないだいきなり映画に行きたいと言い出したのだ。
俺がこのチームに入ったのは奏を外の世界に適応させるため。
それの足がかりとなりそうなものができたのだ。これは是非行くべきだろう!
「お待たせ、って、みんな早いなぁ」
今回の主役の奏がやっと出てきた。
「ほら行くぞ!」
俺と奏を戦闘に俺たちは映画館に向かう。
「なあ、奏」
「ん? 何?」
「これからもいっぱい遊ぼうな」
「うん! そうだね」
人知れず俺と奏は手を繋いでいた。
ここまで読んでくださった方ありがとうございました。
次回作は神様が与えたいらない能力の続編
そして、天才と大馬鹿は紙二重を更新していきたいと思います。




