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俺と彼女と狼な関係  作者: 七詩のなめ
第二章 政府の闇
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第四十一話 最強

最強


俺の攻撃を水無月は避け、反撃、それを俺は避ける。

そんなやり取りを何回繰り返しただろう。

水無月は人格を入れ替えないでも俺より強い。

「君は何故、最強を求めるんだい?」

「ん? ああ、簡単だ。……最強の男が俺を殴ったんだ。それも本気でな」

最強の男?

「そいつはな、たかが五歳でビルを崩壊させるほどの力を持っていたんだ」

ご、五歳でビルを崩壊!?

誰だよ、そいつは!

「名前は確か、神谷信五。俺はそいつに殴られて死にそうになった。いや、実際俺は死んだんだ。そして、新たな俺が生まれた。最強になれるだけの力を持った俺がな」

最強になれるための力。

なんでだ。なんでお前はそんなことにしか力を使えないんだ!

俺は懇親の攻撃を放つが水無月はそれを避ける。

反撃が来るが俺は攻撃を放ち続ける。

「僕は君のその考え方が嫌いだ。力は弱い者のために使われるべきだ」

「その考えがお前を弱くしているとなぜ気づかない?」

「僕はみんなが幸せなのが幸せなんだ!」

「お前は自分だけが幸せになるのを恐れているだけだ」

「どうやら、僕と君は分かり合えないようだね」

「ふん。わかりきった事を言うな」

打撃戦を終え一旦間を開ける俺たち。

先に動いたのは水無月だった。

「俺は俺の夢を叶える。そのために俺は強くなる!」

そう言ってドラゴンの少女にキスをする。

異様な威圧感が巻き起こる。

言うならば、畏怖、恐怖、希望をかき消す闇。

水無月が口元をニヤつかせる。

「さあ、始めるぞ。お前を絶望のどん底に叩き落とす死刑執行を」

言うやいなや水無月は俺の下に疾走、突進からのハイキックが俺の体に命中する。

「がっ!!」

「ひゃははは!! まだ死ぬんじゃねぇぞ!」

宙を飛ぶ俺の足を取り地面に叩きつけながら水無月は不敵に微笑む。

「いなぁいなぁいなぁおい!! これほど俺様を楽しませるものはないぞ!!」

地面に叩きつけ跳ねた体に膝蹴り、そして、かかと落としを打ち込まれ俺の体は悲鳴を上げる。

「やっぱり強くなるには俺よりも強い奴をぶっ倒さないとなぁ!」

俺の体に地団駄を踏みつける水無月。

体のあちらこちらから嫌な音が出てくる。

「ただやられるわけには――」

「黙れや!」

ゴキッ!!!!

腕からそんな音が上がる。

同時にえも言われぬ激痛が俺を襲い始める。

「ああ、あぁああぁ!」

腕を支えながら悶える俺。

水無月はそんな俺を見て笑っていた。

ドラゴンの少女は静かに見つめていた。

みんなは嗚咽を吐いていた。ただ一人を除いて。

奏だけは俺を見ていた。

みんなが目を逸らす中、奏だけが俺を見ていた。

まるで、俺に勝てと言わんばかりに。勝つことを見通しているかのように。

だからだろうか。俺はそれを見た瞬間痛みは感じなくなった。

それよりも立たなくてはならないと思えてきた。

気づけば俺は自分の足で立っていた。

「何? 俺様の攻撃を受けて立てるだと?」

俺も不思議だよ。

なんで立ったんだろうな。

あのまま寝てれば確実に気持ちよかった。助かった。

でもな、それでもな、俺は約束したんだ。

「お前を助けなきゃならないんだ」

「ああ?」

「可憐がお前を助けろってさ。こんなひどいことをしたお前を助けろって言ったんだ! 叶えなきゃならないんだ! みんなが目指す結末を、俺自身が求める結末を!」

俺は走る。水無月ほどのスピードも力もない。でも、行くんだ。ここでやられたら俺はきっと後悔する。それだけは嫌だから!

「チッ! そこまでして勝ちたいのか!」

「違う! 俺は勝ちたいんじゃないんだ! 叶えたいんだ! 願いを! 想いを!」

俺の攻撃が奇跡的に水無月の体に突き刺さる。

「グアッ!」

「お前ほどの力なんていらない!」

もう一発当たる。

「ハッ!」

「お前ほどの地位もいらない!」

再び当たる。

「がっ!」

「守るんだ! 平穏を!」

最後の一発が水無月に突き刺さる。

強烈な一撃を受けて水無月は膝を折って崩れる。

「お、おっかしいなぁ。俺様が負けるわけにはないんだがなぁ」

血を吐きながら水無月は首を傾げる。

全身の力を使い切ったがどうやら水無月は倒れないようだな。

全く。大したやつだよ。

「前に誰かが言ってたよ。思いの強さが勝敗を決める時があるってな。お前は自分の願いを、俺はみんなの願いを叶えようとしている。一体どっちが強いんだろうな」

俺は息を切らしながら言う。

「はぁ? そんなの自分のが強いに決まってるじゃねぇか」

「確かにそうかもな。でも、みんなの願いが一致してたらどうだ? みんなの願いが一緒だったら?」

「……まさか。そんなことありえない。全員の願いが同じなんてありえない!」

「同じなんだ。今、俺は、俺たちはお前を救おうとしている。誰ひとりお前を否定なんてしない」

息を整え体制を変える。

「俺たちはお前たちを否定しないぞ?」

俺の言葉を聞いて水無月が少し驚いたような顔をする。

そして、いきなり笑い出す。

「くくくく、くはははは!! 否定しない? ありえねぇんだよ! そんなもん!!」

水無月の表情が怒りの色を見せる。

「俺たちのような能力者は検査され、解剖され、実験される! お前は最高傑作だから、素それだからそんなことはないだろうぜ! だがな、作られた俺たちは違う! 違うんだ! お前のように普通に生活なんてできねぇんだよ!!」

その迫力に俺は気圧されてしまう。

どうして、どうしてだよ。なんでそんな顔をすんだよ。

「俺より弱いお前がなんで最高傑作なんだ! 見せてやる、見せつけてやるよ!! セカンドを超えた『サードチルドレン』の力を!!」

サードチルドレン?

なんだよそれ。

水無月の背中に水、火、雷、土、鉄、木の羽が生えていく。

「すべてを超越したこの力! 身体能力だけでなく、超能力を覚えた子供! それがサードチルドレンだ!」

超能力。

嘘だ。そんなの勝てるわけ無いじゃないか。

俺は歯を食いしばる。

勝てない。どうやっても勝てやしない。

「やっと本気を出したか。お前はいつも本気が遅い」

無表情のドラゴンの少女が口を開く。

「はっ! 本気になるだけまだましだろ!」

「それもそうだ。では、私も本気を出すか『巨龍化』」

ドラゴンの少女の体が膨らみ大きくなっていく。

ドラゴン。まさにそれだった。

大きな翼、尻尾。恐怖を与えるその姿は俺に更なる追い討ちをかける。

ダメだ。俺だけでは勝てない。

どうすればいい? どうすればいいんだ!

「誠、まだ戦えるよね?」

不意に奏に話しかけられる。

振り向くと奏が俺のそばま来ていた。

「か、奏?」

「行くよ。みんなも戦ってくれるって」

奏の後ろにはみんながいた。

そうだ。俺には仲間がいるじゃないか。

敵だった者も今は仲間だ。

奏が俺にキスをする。

だが、人格は入れ替わらない。俺のままだった。

「どんな壁も障害も全て打ち砕いて突き進んで、誠にはそれができるんだよ。それをするだけの力が誠にはあるんだよ。だから――」

――勝って

その言葉が俺を射抜く。

新たな力をくれる。

不思議と俺は微笑んでいた。

俺は奏の頭に手を乗せゆっくりと問う。

「それが、お前の願いなのか?」

「うん」

奏が笑顔でそれに答える。

後ろにいたみんなも頷く。

そうか。それがみんなの願いなのか。

なら、叶えないと俺じゃないよな?

「みんな、力を貸してくれるか? 俺だけじゃあいつを倒せそうにないんだ」

「「「「「その言葉を待ってたよ」」」」」

一斉にみんなが言う。

微笑むと同時に笑いが漏れる。

そして、歩き出す。勝つために、守るために、みんなの願いを叶えるために。

「行くぞみんな。結末を見に、勝つために、理想を突き通すために。俺たちが望む結末を作りに行くぞ!」

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