第四十話 最終決戦 下
最終決戦
廃ビルの最上階にたどり着いた俺は辺りを見回す。
だが、どこにも奏たちは見当たらない。
どこだ? どこに行ったんだ?
「お前が探しているのはきっとさっきの犬だろう?」
少女の声が聞こえる。
俺は構えを取ろうとするが体が感じるはずのない恐怖に強直してしまっていた。
なんだ。何なんだこの感じは。
恐怖、恐怖、恐怖が体を染め上げる。
ただの少女の声になんでこんなにも恐怖するんだ?
「驚くことはない。それが正しい反応だ」
上からの声。
圧倒的な圧力を持った声。
その声の主が俺の前に現れた。
鱗の翼、尻尾を持ったローブを被った少女。
「ついてこい。水無月のところに案内しよう。そこにさっきの犬もいる」
少女は振り返り進む。
俺はそのあとをただただついて行った。
それ以外何もできなかった。
階段を上がる。
少しばかり風を感じるようになった。
最後の階段。その先には一つのドアがあった。
そのドアを開けるとそこは外だった。
屋上、またここに来てしまった。
まあ、黒崎の時はこんなおんぼろではなかったけど。
「ああ、遅かったな。そうか、みんなは倒されたか」
水無月の悲しげな声と瞳。
おかしい。こいつは仲間なんて信じなかったはずだ。
なら何故、今こいつはこんなにも悲しそうなんだ?
「あんな奴らに賭けたお前が悪いのだ。そもそも、このチームは――」
「わかってるよ。俺とお前がいれば完成だ。だけど、それだけじゃ足りないって言っただろ?」
少女がムスっとした顔で水無月を見る。
仲間割れ?
違う。これはなんだか暖かい気がする。
「さて、最終決戦だ。おっと、その前に」
水無月が俺に鍵を投げた。
「それはお前の仲間の拘束具の鍵だ。お前の仲間ならあっちにいるよ」
俺は鍵をキャッチすると奏たちがいるところに向かう。
そして、奏たちを開放する。
どうやら、怪我は直されているみたいだ。
「どうして、そんな事をしたかって顔だな。いいよ、教えてやる。俺も仲間を返してもらったからな。俺も返さなきゃ不公平だろ?」
仲間を返してもらった?
俺が入ってきたドアから俺のよく知った人物、可憐と水無月の仲間、美留香がいた。
「誠くん、可憐はスパイだったんだよ」
可憐がスパイ?
てことは可憐が美留香を?
嘘だ。そんなの嘘だ!
「なんで、なんでお前が――」
「私はセカンドチルドレンなのですな」
セカンドチルドレン。
可憐がセカンドチルドレン?
「これは本当だぞ?」
水無月が可憐の肩を持ち抱き寄せる。
可憐は抵抗しない。
本当に俺たちを裏切ったのか?
怒りじゃなく、後悔でもなく、よくわからない感情が俺の中に現れる。
「……可憐」
「なんですな?」
「お前は俺たちを裏切ったのか?」
「……」
「答えてくれ。頼む」
「少なくとも望んでしたことではないですな」
「そうか」
まだ大丈夫だ。
可憐はまだ俺たちの仲間だ。
俺はかけ出す。そして、水無月に殴りかかる。
水無月は俺の攻撃を涼しい顔でよけてみせた。
だが、俺は攻撃が目的でやったわけじゃない。
俺は水無月に抱き寄せられていた可憐の手を引き元いた場所に戻る。
「何をするんですな!」
反論する可憐を俺はただ抱く。
「なっ……」
「なぁ、可憐」
「ななな、なんですな?」
「俺たちの仲間にならないか?」
絶句する可憐。
空気が凍る。
ただ、俺の声が行き届く。
「なんで、なんでそんなに優しくしてくれるのですな?」
「人は間違えるんだ。何回も何回も間違えるんだ。だけど、それを正すことができる。お前はどっちが正しいと思うんだ?」
「わ、私は……」
「水無月の方が正しいか? 俺の方が正しいか?」
「……水無月は間違ってるのですな」
可憐は泣きそうな声で言う。
俺は再び可憐を抱く。
「なら、あとはわかるな?」
「でも、でも、私は!」
「いいんだ。お前が決めたことだ誰かに文句を言われる筋合いはない。文句を言う奴がいるなら俺がそいつをぶっ飛ばしてやる」
「水無月くんは私を救ってくれたですな。水無月くんを裏切ることはできないですな!」
「何も裏切れなんて言わない。ただ、正すんだ。あいつは間違ってるだから俺とお前たちで正すんだ」
可憐は頷くと小さな体で精一杯背のびして俺にキスをする。
ドクンッ
「水無月くんを助けて欲しいのですな。私を救ってくれた水無月くんを」
俺は微笑み頷く。
「さあ、始めようか。僕が求める最高の結末のために」
俺と水無月の最後の戦いが今、幕を上げた。




