第三十八話 最終決戦 上
最終決戦
みんなは無事だろうか。
俺たちは簡単に敵を倒しながら街を散策中だった。
「なあ、みんなは無事だと思うか?」
「当たり前だ。あいつらが負けるはずがない」
「そう、だよな。はは、俺何言ってんだろ」
俺は当たり前のことを言った自分に対して笑った。
だが、何だろう、このモヤモヤは。
「どうしたの? フェンリル」
奏がフェンリルの頭を撫でながら聞く。
俺も気になって見てみるとフェンリルが何かに恐れていた。
近くに何かいるのか?
「なんだ、この感じ」
俺の体に鳥肌が立ち始める。
「やはは、やっぱ俺様が出るとバレちまうか」
この声、この話し方、俺は知っている。この人物を。
「水無月。なんで……」
まさか、俺たちが当たりをひいちまったのか?
「いやいやいや、そんなに固くなるな。これを渡しに来たんだ」
そう言って機械を俺に投げつける。
「こ、これは?」
「中を見てみろよ。面白いものが見れるぜ?」
俺は言われた通りに機械を操作し、中を見た。
怒りが生まれる。
中には捕まったと思われる瑞菜たちがいた。
「おい、どういうことだ?」
「ああ? 俺様の現状報告を見て感想はそれだけかよ。まったくつれないねぇ」
水無月を見て俺は再び問う。
「これは、なんだ?」
答えによっては俺は飛びかかる準備をしていた。
瑞菜たちが捕まった。どうやら怪我もしているらしい。
「ふん、ついてこい。ラストバトルと行こうや」
ニヤつく水無月のあとを俺は追う。
奏たちもついてきたようだ。
水無月のあとを追うとそこにはオンボロの廃ビルがあった。
「俺様は上で待ってるぜ? ラスボスってのはどうやら高いところが好きだからな」
「知るか。瑞菜たちを返せ」
「やはは、それはできないそうだんだぜ」
笑いながらビルの中に入っていく水無月。
俺は深呼吸してから奏たちを見た。
「なあ、お前たちはここで待っててくれないか?」
俺の言葉に二人共顔を見合わせる。
そして、呆れたように俺の顔を見て言った。
「嫌だよ。私も行く。誠は一人で行って傷つくことが多いからね」
「同感だ。私も行くぞ。貴様に恩を返すには今しかない」
「聞き分けのないことを言わないでくれよ。お前たちを傷つけたくないんだ」
俺の言葉を聞いて奏が怒り出す。
「それで誠が気づけば私が悲しいよ! 誠は私たちの仲間でしょ? なら、私たちを置いてけぼりにしないでよ」
俺は負けた。奏には適わなかった。
たしかにそうだ。俺は何て馬鹿なんだ。
「……わかったよ。でも、無理はすんなよ?」
「うん!」
「当たり前だ」
全員一緒にビルに向かった。
ビルは高かったが、ほとんどのフロアががれきなどで塞がれており、実際には三フロアくらいしかいることができない状態だった。
「しっかし、よくもまあこんな場所にいられるもんだな」
「ホコリ臭いよぉ」
奏が鼻を押さえて涙目で言う。
たしかにホコリ臭い。
というより、かび臭い。
電気が通ってないらしく廊下はくらいしどう考えても人間が住める場所じゃない。
「慣れればここもかなり住みやすいですよ」
知らない少女の声が聞こえる。
俺は臨戦態勢に入った。
「どこだ!」
俺の声が木霊し静寂をとっぱらう。
「私はここです」
背後から少女の声が聞こえる。
「クッ!」
振り返ろうとした直後腰に痛みを感じた。
俺は咄嗟にガード体制を取るが追撃はこない。
「クソッタレ、奏!」
「うん!」
奏は俺に抱きつきキスをする。
ドクンッ
俺は立ち上がり疾走する。
俺は有無を言わさず殴りかかった。
「遅いです」
少女の一括を後に俺の視界から少女が消えた。
まさか、一瞬で移動したのか!?
俺は辺りを見回す。だが、少女は見当たらない。
まずい、俺はこういう戦いに慣れてないんだ。
「がっ!」
脇腹に蹴りらしきものが突き刺さる。
俺は壁に激突しながらもなんとか立っており再び辺りを見回す。
しかし、敵は見つからない。
「馬鹿ですか? 私はそんなことでは見つかりませんよ」
淡々と語り攻撃をする少女に手も足も出ない俺は必死に攻略方を模索する。
移動しているのなら見えないことはない。
何か、何かないのか!
「これでおしまいです」
一瞬、ホントに一瞬だったが空気が揺れた。
そこから、蹴りが放たれるのがわかった。
俺がガードするには一瞬で十分だった。
「……何?」
少女が初めて表情を変えた。
疑問。疑問。疑問が彼女を覆う。
俺が少女の攻撃を受け止めたことによる疑問が少女を一瞬止めた。
「き、君が動くとき空気が揺れた。それだけで十分なのさ」
俺は少女の足を掴み壁に投げる。
少女は壁に足を着き見事に着地した。
「空気……どこまで怪物なんですか、あなたは」
こっちが聞きたいよ。
だけど、これで少女の攻略は完了だ。
あとはこの体でどう戦うか。
「流石に『ギアチェンジ』が必要そうですね」
ギアチェンジ?
まさか、まだ早くなるのか?
少女は靴と上着を脱ぎ始める。
「なっ……」
服が地面に落ちた瞬間、地面がドスンッと悲鳴を上げる。
あ、あいつは孫悟空かよ。
「これを外すのは一年ぶりですね。まあ、たまにはこういうのもいいかもしれません」
少女は言うやいなや視界から音もなく消える。
ありえない。空気の揺れさえも遅く感じるぞ。
あいつは一体どこまで早くなるんだ。
「速さはただ早いだけじゃないですよ。早さが上がれば上がるほどそれを攻撃に移したとき、威力は何倍にも膨れ上がる」
隕石に直撃したかのように激痛が俺の腰を砕く。
「がっ!!」
意識が薄れる。
だが、倒れるわけには行かない。
みんなが、みんなが俺を待っているから!
「負けるわけには行かねぇんだよ!!」
吹き飛ばされる瞬間少女の足を掴み蹴りの反動ごと少女を壁に叩きつける。
「グハッ!!」
「俺は負けられないんだ!!」
壁にめり込んだ少女に俺の追撃が襲う。
壁を砕く一撃を放ち少女の意識を完全に狩りに行く。
気づけば少女は気絶しており俺は勝利を得た。
だが、同時に体への負担が増した。
これからの戦いは激しい勝負はできなくなりそうだ。
そう思いながら俺はフラつく足で階段を駆け上がる。




