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俺と彼女と狼な関係  作者: 七詩のなめ
第二章 政府の闇
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第三十七話 危機

危機


瑞菜たちが捕まった同時刻、千石のところでも戦闘が行われていた。

「ぎゃははは!! 吹き飛べ!」

炎矢が配置した爆弾に敵が次々と負傷していく。

「おい! 少しは手加減というものを――」

千石が叫ぼうとした直後目の前から敵の刃物が飛びかかる。

「チッ……千本刀、針落とし」

瞬間、空中に突如現れた刀が針のように塊り落ちてきた。

もちろん敵はそれを避けられず刀に刺されていく。

「おいおいおい! オレッチに言う前に自分がしてどうすんですかぁ~? 馬鹿なんでっすかぁ~?」

炎矢のウザイ言動も今となっては正論だ。

千石は口ごもる。

「どうでもいいから、早く片付けてよ! 私は戦闘系じゃないんだから!」

美奈が泣き言を吐く。

そういう美奈だが、敵を確実に奇襲し倒していた。

美奈の能力『消失』で完全に気配を消し気づかれる前に敵を気絶または負傷させる。

三十以上いた敵が今ではたった三人となった頃、敵は勝てないと確信したのか逃げて行った。

「おいおい。追いかけなくていいんですかい?」

炎矢は殺り足りないと言いたげだったが千石がため息混じりで言う。

「ああ、あいつらはもう捕まった」

「はい?」

見ると敵たちは全て駆けつけた警察によって拘束されていた。

「ぎゃはは、まさか、あんたが呼んだのかい?」

「ん? そうだが、なんだ?」

「いやいやいや、計算ずくだねぇと思ってさ」

「これくらいは普通だ。それより先を急ぐぞ」

千石はいつものつまらなそうな顔で淡々と言う。

確かに千石はつまらないと思っていた。

彼は戦闘狂ではないが戦いこそ彼の娯楽であった。

だが、彼を楽しませるほどの戦い手がいない。存在しなかった。

だた一度を除いて。

あいつだ。あいつ並の戦い手はいないのか。最宮誠のような奴は。

千石を楽しませたのは誠が初めてだ。

同時に負けたのも誠が最後なのだ。

あいつは面白かった。特別楽しかったのだ。

また戦いたい、初めてそう思った。

「よぉ、お前たちだよな。えっと、なんだっけ? ……まあ取り敢えずお前たちだ」

大通りを歩いていると巨人に声をかけられた。

まさに巨人だった。背丈は千石の頭三つ分大きく、ガタイは千石とは比べ物になっていない。

「お前は……水無月の仲間だな?」

直感でそう感じた。今まで戦ってきた奴らとは比べ物にならない殺気を持っていたからだ。

「ん? ああ、そうだぜ。俺は腕の強力京介。あ、名前は名乗るなよ? どうせ覚えないからさ」

にっと笑った巨人、強力を睨む千石。

「まさか、幹部クラスに出会うとはな。今日の俺はついている」

千石は笑う。相手が強いとわかった瞬間から体の細胞一つ一つが疼く。

興奮させる。震撼、共感する。

千石の中に眠っていた感情が一気に出てきた。

「みんなでかかってこいよ? ちまちましたのは嫌いなんだ」

巨人が一歩踏み出した瞬間、まさに瞬間だった。

巨人は手を地面に当て、消えた。

「何!?」

千石が怪奇の声を上げる。

美奈、可憐、炎矢は瞬時に戦闘体型を取る。

「出し惜しみはするな。敵は幹部クラスだ」

「はいはいわかってますってば」

炎矢は爆弾を当たり一面に投げる。

千石も刀を抜いた。

「奴はどこだ?」

言った瞬間だった。

千石に見えないダンプに轢かれたような衝撃と痛みが襲う。

「がはぁ!」

「千石!」

炎矢は笑みを消す。集中し始めたのだ。

「おいおいおい。そんなに集中しなくても俺は見えないぞ?」

強力に声だけがあたりに響く。

「え、炎矢! 左だ!」

千石の声が聞こえ瞬時に目に飛ぶ。

すると一瞬だが何か通ったような気がした。

「ま、まさか、高速で移動してんですかい?」

流石の炎矢でもわかった。

早すぎて見えない。

いや、違う。奴は千石たちの視線を見て、視界に入らないようにしているのだ。

「そんなもん、どうやって倒せと?」

炎矢はどうしようもない攻撃に手が出せないでいた。

「俺が止める」

千石は肩を押さえながら言う。

「おいおいおい。そんな体じゃあ、流石に――」

「ふっ――いいから見てろ。こんなに楽しいのは久しぶりなんだ」

千石に笑みが生まれた。

笑っている。

あの千石が笑っている。

炎矢はそれを見て肩を竦めると戦いを続行した。

「そこか!」

千石の刀が何か物を受け止めた。

強力だった。

「マジかよ……」

ホントに止めやがりましたよっと炎矢は呆れ果てていた。

「止められたのは初めてだぜ。まあ、そのオンボロ刀じゃあ無理だがな」

メキメキと音を上げる刀を見て千石は舌打ちをする。

今日まで一緒に戦ってきた刀もここまでか。

だが、千石は諦めなかった。

誠が常に諦めないのを知っていたからだ。

あいつならどうやってこの場をやり過ごす?

考える。

そして、ある情景が思い出された。

この前のコンビネーションだ。

弱い力でも集まれば巨大な力になる。

俺の刀ももしかしたら――

だが、それには重大な欠点がある。

千石は自分の能力を操作できないのだ。

どうすればいい。どうすれば俺はこの能力を扱える?

「そういやぁ、そろそろお前たちの仲間は捕まった頃かぁ?」

その言葉に千石の心が動く。

仲間、思い出されるのは瑞菜だった。

捕まった? 瑞菜様が?

あるはずがない。そんなことはありえないんだ!!

「おい……」

俺の力よ

「ん? なんだ?」

くすぶっている暇があるのなら爆発しろ。

俺の手駒になりやがれ!

「くっ。こ、これは!」

折れそうだった刀に無数の刀が寄り添って太く、厚く、固くなっていく。

「千本刀、強化刀 一刀両断」

強力の片腕を簡単に切り裂く一刀。

強力は飛び退いたが千石の攻撃は終わらない。

「千本刀、強化刀 針の山」

千石が持っている分厚い刀と同じサイズの刀が地面から現れる。

「グハッ!」

強力の体に刀が突き刺さって行く。

「お前の負けだ」

千石の顔から既に笑みはない。

あるのは恐怖を思わせる表情と殺気のみ。

「確かに京介の負けだ。だが、お前たちの勝利ではない」

千石が振り返るとそこには空を飛ぶ少女がいた。

「なん……だと……?」

「お前は能力者か……目障りだ。『巨龍化』」

少女の纏っているローブが膨らみ弾ける。

そこには少女の姿はない。その代わりに大きい翼と尻尾、ドラゴンがいた。

「う、嘘だよな……これは夢だって」

炎矢は口を開いたまま驚き恐怖する。

「嘘ではない。強いて言うなら貴様の存在が幻想だ」

ドラゴンが翼を靡かせる。

そのせいで強風が吹き荒れ千石たちは壁まで吹き飛ばされた。

「ブレスを使うまでもない相手か。まあいい、おい京介もう回復しているだろう? さっさと連れていけ」

ドラゴンから人に戻った少女はやられたはずの強力に声をかける。

「ああ、今回復した。右腕は……まだ無理か」

「私は帰る。このままだと風邪を引きかねんからな」

裸の少女は静かに翼を靡かせ空を飛んでいってしまった。

「まったく、人使いが荒いことで」

強力は千石たちを担ぎ帰って行った。

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