第三十三話 非日常
非日常
体が動くようになって三日余り。
俺は瑞菜とだけ寝たペナルティーとしてみんなと寝るようになった。
理不尽だと叫んだがフェンリルの朽炎の発射準備を向けられて何も言えなくなった。
フェンリルはどうやら俺と奏の言うことしか聞かないようだが今回ばかりはちょっと焦った。
奏は本気でフェンリルに朽炎を放つつもりだったし周りも止めすらしなかった。
「どうして、こうなったんだ。俺はどこで人生を間違えた?」
当然誰も答えてはくれない。
仕方ないのでこれまでのことを思い出していた。
これまでいろんな奴らと戦ってきた。
仲間になった者もいればならなかった者もいた。
だが、その全てを俺は倒して来た。
勝ってきたんだ。
「そんな俺が今はこの状態とは。泣けるな」
俺の左右には瑞菜、瑞花。
体には奏、美奈。
完全に身動きがとれない状態だ。
どうしたらこうなるんだ?
普通、こうはならないだろ。
ああ、ほんとどこで人生ミスったんだ?
「うぅん」
奏が俺の体の上で寝返りを打つ。
うっ、か、奏の太ももが俺の太ももに……
いやぁぁあああああ!!
柔らかいものが俺の体に!?
待て待て待て、平常心だ俺、平常心だ俺!!
「誠くん」
寝言で俺の名前を呼ぶ瑞菜。
それと同時に寝返りを打つ。
やめてくれぇ!!
俺の理性が吹き飛ぶ!!
四人に囲まれ、挟まれ、ありもしない誘惑を食らって俺の理性は吹き飛ぶ寸前だった。
「いいご身分だな、いや、いいゴミ分か?」
「だ、誰がうまいことを言えと言った! 頼むから助けてくれ」
「邪魔者はさっさと退散でもするか」
「助けてって言ってるよね!? 無視? 無視してる?」
千石はため息を吐きながら俺を見る。
「お前は見せつけたいのか、助けられたいのか、馬鹿なのか。一体どれだ?」
「二番目だよ!!」
「馬鹿か」
「違うよね!?」
「ったく、俺は忙しいんだ。あのクズに飯を作ってやらんとならんのになんでお前を助けないといけないんだ?」
「俺はお前の主の主だぞ!?」
「友達の友達は友達じゃないぞ?」
「ここでそれはおかしくない!?」
このやりとりに何か意味があるのかと思えてきた頃。うるさかったせいか瑞菜が起きてしまった。
「うるさいなぁ。誠くんは私を寝かせてくれないの?」
「意味がなんとなく卑猥に聞こえるのは俺だけか!?」
「あはは、起き立てにそれはダメだよぉ」
そう言って大きなあくびをする瑞菜。
そして、ドアの方を見て千石がいることに気付く。
「で、なんでこんなにうるさいの?」
「今まさにその理由を見たよね!?」
「え?」
「完全に無視した!?」
俺は千石の方を見ると千石は地に伏していた。
「ふ、ふふ、無視などされてはいない。俺は無視などされていない」
「なんか、かわいそうになってきたよ!」
「千石、うるさい」
「ぐはっ!」
「かわいそうだって!!」
なんか千石が見てられなくなったので話を変えることにした。
「な、なあ、瑞菜。みんなを起こしてくれないか?」
「おやすみ」
そう言って瑞菜は再び俺の左腕を抱き枕のようにして寝始めた。
「あーもう! なんで俺の人生はこうなんだ!!」
俺は嘆き悲しむ。自分が守ってきたものに対して。
◆ ◇ ◆
オンボロのビルの三階、そこに四人の人たちが悠々と作業をしていた。
「ああ? 美留香が捕まった?」
水無月は高そうな椅子に座りながらつまらなそうに言う。
「はい。今さっき『脳』から報告がありました」
水無月の前でパソコンを動かしながら淡々と話す少女。
「やはは、あのバカが捕まったか! やっぱ俺が行ったほうが良かったんじゃないか?」
百キロを超えるダンベルを片手で持ち上げながら高笑いする男性。
「うるさいぞ、京介。そもそもお前は武器の腕を片方無くなってただろうが」
水無月がその男性を制す。
男性は面白くなさそうに再びダンベルを持ち上げなおす。
「そんな事より目の回収はいつするんですか? それによって脳に命令を出さなければなりません」
再びパソコンをいじって言う少女。
「そうだな。お前はどうしたらいいと思う? カリス」
「……私に決定権はないと思うが、あえて言うなら捨てたらどうだ? 結局、私とお前がいればこのチームは成り立つ」
ローブを纏っている少女らしき人の背中から鱗がある翼が伸びる。
それと同時に同じく鱗があるしっぽが生える。
「はは、それもそうだ。だが、それじゃあ花がない。確かに俺とお前がいればこのチームはほぼ完成だ。しかし、それじゃあほぼ止まり。俺は完成を望むぞ」
水無月はニヤついた顔で高調する感情を口に出す。
「俺は最強じゃ止まらねぇ。その先の最強に、またその先の最強に興味がある。そのためには俺とお前だけじゃ足りない。ここにいるセカンドチルドレンの力が必要だ」
「……ふん。勝手にしろ。私はお前に付いて行くと決めている。最終決定権はお前にある」
翼を生やした少女は振り返りどこかへ行ってしまう。
水無月は立ち上がり最高潮に高ぶった感情を吐き出す。
「そろそろ幕開けだ。闇の奴らを全て招集しろ。今日まで俺たちがやってきたかったるい作業ゲーも今日で最後だ。ゲームを開始するぞ」
パソコンを持った少女は無表情で水無月の後ろに付き。
男性はダンベルを投げ捨てニヤついた顔で跡を追う。
外に出ると数百といった大軍団が何個もの集団となって水無月の降臨を待っていたかのように見上げる。
水無月はパソコンを持った少女といきなりキスをしたかと思いきやニヤつきさっきまでの空気とはまるで違う全くの別人へと変貌する。
「行くぞテメェら。死刑執行の兆しは見えた。今こそ、俺たち闇の世界を外の世界で暴れさせるときだ。存分にやりやがれ!」
水無月の声に共鳴するように大集団が一斉に掛け声を上げた。
「さあ、始めるぞ。あいつらを絶望のどん底に叩き落とす死刑執行を」




