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俺と彼女と狼な関係  作者: 七詩のなめ
第二章 政府の闇
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第三十一話 再接触

再接触


家に帰るとちょうどご飯ができており俺たちを祝福してくれていた。

瑞菜はあれだけ食ったのに食い足りておらず出来たてのご飯にかぶりつく。

そんなことがあった夜。

俺は眠れずに過ごしていた。

理由は簡単だ。瑞菜と瑞花のことで睡魔が襲ってこないのだ。

今日のデートであの二人がまさか捨て子だったとは思わなかった。

「なのにあんな笑顔ができるのか」

俺はてっきり普通の家の子供だと思っていた。

違うな。

普通の家の子供だとあんな笑顔は出来ない。

あの笑顔は一度地獄を見た人のそれだ。

俺は何も分かっていなかった。このチームの事を、みんなのことを。

そう思うと途端にみんなのことが知りたくなった。

知って、みんなが抱えているかもしれない悩みを解消してやりたいと思った。

「だけど、一体どうしたらいいんだ?」

「なんだか、お悩みだねぇ」

俺は俺以外の声を聞いて考えを中断させられる。

「なあ」

「ん? 何?」

「なんでお前がここにいるんだ? 瑞菜」

そう、声の主は瑞菜だった。

俺の部屋は鍵がかけられないので誰でもいつでも入れるのだがまさか今入ってくるとは思わなかった。

「で? 何を悩んでるの?」

瑞菜が俺に顔を近づけて来る。

俺は恥ずかしくなり起き上がると少し考えてから話した。

「そのさ、みんなが持ってるかもしれない悩みを解消っていうかさ、なんか、その、自由にしてやりたいんだ」

俺は頬を掻きながら恥ずかしそうに言うと瑞菜は少し驚いたあと笑い出した。

「な、なんで笑うんだよ!」

「ごめんごめん。でも、いいねぇ。君らしいさが出てて。でもさぁ、どうするの?」

「それを考えてんだよ。なんかないかなぁ」

俺が案外真面目に迷っているのに瑞菜はいつもの笑顔で受け答えをする。

「そんなことより、今日はいい満月が上がってるよ。雲一つない月。でも、今日は招かれてない人が来たみたい」

瑞菜の声と共に外から異様な音が鳴り響く。

この音は暴走族のバイクから出る音と同じだった。

「なんだ? なんで暴走族が?」

俺は窓から外を見ると数百といったバイクが一斉に門を潜る。

「あいつらは……」

その先頭を走るバイクの人を俺は知っている。

この前倒した暴走族のリーダーだ。

その隣にいるのはまさか……。

「あいつ、もしかして水無月と一緒にいたやつか!?」

そう、その隣にいたのは水無月のチームにいた女子だった。

「なるほどね。まさか、恨みを利用するとは思わなかったよ」

瑞菜の顔が真剣になって行く。

敵を認識した時の顔に瑞菜がなる。

そう、今この瞬間敵は俺たちのテリトリーに入ってきた。

それは必然的に戦いに導かれていく。

俺は窓から外に飛び出す。

そして、暴走族たちがいるところに向かう。

「おい! 何してんだ!」

俺が叫ぶと暴走族は一斉に走りを止めこちらを見る。

「あなたは確か最宮誠、ターゲットですね?」

まだ幼さが残る少女は俺にそう言うと銃を取り出す。

そして、躊躇なく撃ちだした。

「おいおいおい! いきなり攻撃かよ!」

俺は横にぎこちなく飛び銃弾を避けると暴走族のリーダーの方を見る。

「俺たちはお前に借りがある。それを返しに来ただけ」

リーダーは俺が言わんとすることを先読みし話す。

今の俺は運動能力、知能共に普通クラスだ。

よって、この場をやり過ごす手が見つからない。

そう、一人では。

「もう、先に出てくなんて死んじゃうよ?」

だが、俺には仲間がいる。

掛け替えのない仲間が。

「すまん。なんかこいつらが許せなかったんだ」

瑞菜は笑った。

そして、俺にさりげなくキスをする。

ドクンッ

体から魂が離れるような感覚が起こる。

そして、始まる。俺が求めた、みんなが共に求めるような結末が。

「さあ、始めよう。僕が求める最高の結末を」

言うやいなや俺は駆け出す。

そして、暴走族の一人を鷲掴みし、壁へと投げる。

「君たちは少しうるさいよ」

俺は次々とバイクに跨る暴走族をバイクから強制退出させる。

そして、立ち上がる暴走族を待っていたのは瑞花たちによる完全なホールドだった。

「やはり、この人たちではあなたの遊びにすらなりませんか。まあ、それは予想済みです。ですから――」

少女は大きな目を瑞花たちに向け言葉を発す。

『シャットダウン』

少女が言うと目の前にいた瑞花たちは一斉に動きを止めた。

まるで時間が止まったかのように動かずに静止していた。

「へぇー、君は瑞花ちゃんと同じ催眠術を使うんだね」

その答えはもう一人の俺が冷静に、または楽しそうに言った。

催眠術。瑞花も同じく使うものだが瑞花とはまるで違うものだ。

操るのではなく、止める。

「そうです。流石、水無月さんを本気にさせるだけのことはありますね。ですが、それでは私はまだ倒せませんよ」

そう言って少女は俺の方を見てさっきと同様の言葉を話そうとする。

だが、それよりも早く俺の足は動いていた。

「それは使わせないよ」

俺が目を押さえよと手を伸ばすとバンっと音が鳴る。

その直後俺の腹部から激痛が起きる。

「な、に?」

俺は腹部を押さえながら後ずさる。

「私が一体いつシャットダウンを使うと言いました? 私には『これ』がありますよ」

そう言って右手に持った銃をチラつかせる。

そうだった。

俺としたことが忘れていた。

相手は何よりも強力な武器を所有をしていたじゃないか。

「取り敢えず、これであなたの行動は制限されました。あとは……彼女たちを殺すだけです」

いけない。

そう思うのに体が言うことを聞かない。

銃弾にやられた痛みが俺の体を拘束する。

少女は静かに右手に持った銃を静かに瑞花たちに向ける。

もう、ダメなのか?

そう思った瞬間だった。

瑞花たちの前に立ちふさがる人がいた。

「瑞菜、なんで」

そう、瑞菜が少女の拘束を受けずに動いていたのだ。

「知ってた? 私は常に私自身を操っているんだよ。だから、あなたの能力は効かない」

そう言って怒ったように瑞菜が話す。

現に瑞菜は怒っていた。

少女の行動の一つ一つに。

だからこそ、瑞菜は容赦なく言い放つ。

「これ以上、みんなを傷つけると殺すよ?」

静かに、冷静に、冷徹に。

何の躊躇もなく、本気の一言が戦場に響く。

「その気で来なければ私があなたを殺します」

少女の方も本気だった。

俺は自分の怪我のことでいっぱいいっぱいで瑞菜たちの会話に入ることができなかった。

少女は銃を瑞菜に向けた。

そして、躊躇なく撃ち放ち銃弾が瑞菜の元に飛ぶ。

だが、その銃弾は瑞菜には当たらない。

「言ったでしょ? 私には微弱だけど電磁波が飛んでるの。銃弾みたいな鉄はずらすことができるんだよ」

そう言って瑞菜は勝利の笑みを浮かべる。

「そうですか。なら、これはどうですか?」

少女は再び銃を撃つ。

避けた。そう思ったのだが銃弾は瑞菜を掠ってずらされる。

おかしい。さっきは掠りすらしなかったのになんで今回は掠った?

「外しましたか。やはり拳銃では命中度に難がありますね。ですが、今度は外しませんよ?」

今度は少女が笑みを浮かべた。

逆に瑞菜の方は苦い顔に変わる。

俺は早くなった頭の回転で考える。

戦いが始まってから今までの言葉の中に答えがあるはずだ。

なんだ? 何が答えだ?

ひらめく。そして、凍る。

もし、少女がこのことに気づいているのなら瑞菜は確実に殺される。

そして、少女はこう言った。

『今度は外しませんよ?』

殺される。

直感した。体を動かせ、瑞菜を助けろ。

だが、体は動かない。

いつだってそうだ。大事な時に俺は何もできないのか?

そうじゃない。するんだ。

一度でいい。神様、俺に力をくれ。

目の前の女の子を救えるだけの力をくれ。

代償は……命で支払うから――

パンッと拳銃が音をあげる。

「うおおおおおおおおおおお!!」

俺は動かない体に鞭打って走る。

瑞菜を突き飛ばす。

その瞬間俺の頭は銃弾によって打たれた。


              ◆  ◇  ◆


何が起きたかわからなかった。

目の前で私を認めてくれた人が打たれた。

私を庇って打たれた。

また、また、私のせいで誰かがいなくなるの?

親たちだってそうだった。

私がこんな能力を持っているから捨てられた。

全部、私のせいだ。

「いや、いやだよ。いやあああああああああああああああああああああああ!!」

瑞菜の声が静かだった世界を割るように響く。

大切な人が死んだ。

私が初めて好きになった人が私のせいで死んだ。

誰? 私を苦しめるのは一体誰だ?

視線を誠から銃を持った少女に向く。

「あらら、外しましたか。私は嘘をつかないというので有名でしたが明日からはそれすらも嘘になってしまいますね」

軽々しく語る少女を見て瑞菜は何も感じなかった。

感じないからこそ自分に怒りを感じた。

「お、前か? 私を苦しめるのは、お前か?」

瑞菜の口から発せられる言葉は無機質で、感情がなく、逆に恐怖を感じるものだった。

「? どうかしましたか?」

少女はわけが訳が分からないといった顔をするがそんなことすら瑞菜には関係がないこととなっていた。

「そう、そうかぁ。お前がしたんだぁ。私を苦しめるのはお前か」

瑞菜は言っていることが分かっていなかった。

脳は常に誠のことを考えていた。

誠が撃たれた瞬間が無限ループしていた。

それが瑞菜の限界という壁を超えさせた。

「お前は選択を間違えた」

瑞菜の体から蒼いスパークが迸る。

「何度やろうが同じことですよ」

少女は拳銃から三発の銃弾を放った。

全て避けられる物じゃなかった。さっきまでは。

今の瑞菜にはこんな攻撃はハエ当然のものだった。

銃弾は瑞菜に当たる前にずらされる。完全に瑞菜を拒否する。

「何!?」

そのあと何度撃とうが弾は瑞菜を拒否しずらされる。

「お前の呪縛は解いた」

少女が自分の能力で止めたはずの人を見る。

するとそこには止めたはずの人たちが何事もなかったかのように動いていた。

「馬鹿な!? なぜ動ける!?」

少女はありえないものを見たような顔をし考える。

そして、ある可能性を見出す。

「まさか、あなたの能力ですか?」

そう瑞菜に言う。

瑞菜は無表情で行動を起こさない。

だが、それだけでも答えだとわかった。

「あなたの能力は小規模にしか働かないはずなのになぜ、こんな広範囲に広がっているのですか?」

「答える必要性は皆無。抹殺を始める」

無機質な声から放たれたのは死刑執行の幕開けだった。

「やれるものならやってみなさい!」

少女は拳銃を瑞菜に向ける――はずだった。

拳銃は瑞菜へとは向かず、自分の方に向いていた。

そして、無意識のまま引き金を引く。

少女は間一髪で頭を捻らせたおかげで銃弾の直撃は免れたが掠り傷を負う。

「なぜだ……まさか、私すらも操っていると言うんですか!」

衝撃の事実に少女は取り乱し、同時に激怒する。

少女は拳銃を捨て瑞菜に殴りかかる。

だが、地面に倒れたのは少女の方だった。

「なんで……」

少女の頬に痛覚が働く。

自分で自分を殴ったのだ。

まさかとは思った。だが、瑞菜にとってそんなことは簡単で少女は完全で瑞菜のおもちゃ状態になっていた。

「わ、私が負けるわけにはいかないんです。必ず誰かを道連れに――」

ドスっと鈍い音がする。

少女は再び自分で自分を殴っていた。

「お前はここで死ぬ。誰にも知られず、誰にも気づかれず。ただ、冷たくなっていく」

瑞菜は一歩踏み出す。

そして、右手を挙げたかと思うと下げた。

すると少女は右手を壁に何度も叩きつける。

「や、止め――」

骨が砕ける音。肉が切れる音。

そんな音が静寂の中に響く。

「ああ、あああああああああ!!」

少女は手を抑え悶える。

激痛という名に相応しい負傷と屈辱という名に相応しい負傷を同時に受けた少女は怒りと恐怖に表情を染める。

瑞菜が再び手を上げた、その瞬間だった。

死んだはずの彼が静かに、何事もなかったかのように立ち上がった。


              ◆  ◇  ◆


頭を撃たれたのか?

それにしては痛みがない。

もしかして直死か?

それにしてはさっきまでの痛みが残っている。

なら、どうしたんだ?

「あ、たまいてぇ」

頭がグラグラする。

さっきから、立とうとするが脳が揺れたせいかうまくいかない。

そんなとき、瑞菜と悶え苦しむ少女の声が聞こえた。

だが、自分が向いている方向とは逆なせいで姿が見えなかった。

しかし、彼を本気にさせるには十分すぎる声だった。

立てよ。

誰かが苦しんでるだろうが!

敵だろうが味方だろうが助ける目的は同じだろ!

立って、助けろ!

俺の足に力が込もる。

そして、立ち上がる。

グラつくがなんとか踏ん張り瑞菜たちがいるであろう方を見る。

そこには地獄が広がっていた。

さっきまで戦っていた少女はところどころから血が流れる右手をしており、瑞菜は止めを刺さんかというような格好で手を上げていた。

そんなとき、瑞菜が俺に気づいた。

「ま、ことくん?」

「あ、ああ、俺だ。死んでないぞ?」

俺は話しているとき奥の方に違和感を感じ、試しに吐き出そうとして唾を吐く。

な、なんてこった。

俺は『弾を噛んで止めた』のか?

奥歯に挟まっていたのは銃弾だった。

俺は銃弾を噛んで止めたんだ。

とうとう、俺は人間じゃなくなってきたな。

「てことだ。瑞菜、もうやめろ。相手は俺がする」

「ダメだよ。この子は私が消す。大丈夫、みんなの記憶からも消すからあとは残らない」

それじゃあ、ダメなんだ。

「お前には残るんだろ?」

「……」

やっぱりな。

瑞菜は自分の記憶は改ざん出来ない。

「それじゃあ、意味がないんだ」

「じゃあ、じゃあ、どうしろっていうの!」

俺は歯を食いしばり叫ぶ。

「助けるよ! 敵も味方も神も仏もこの世の全ての生ある物を!」

俺は叫ぶ。心から本音を。

「バカみたいなことかもしれない。でも、それでも俺は成し遂げたいんだ。カッコ悪くたっていい。地味でいい。誰も認めてくれなくたっていい。ただ、助けたいっていう感情だけを信じて誰かを守りたいんだ」

俺は瑞菜に近づき目の前に立つ。

そして、抱いた。

最初は抵抗していた瑞菜はすぐに身をこちらに寄せるようになった。

「このままやったらあの子は死んじまう。それに何より瑞菜、お前が救われない」

殺しは殺す方が荷が重くなる。

その重圧を瑞菜に背負わせちゃいけないんだ。

「か、勝手に話を進めないでください。わ、私は水無月さんの役に立ちたくて、そのためだったらしだって――」

「そう言うと思ったよ。だから――」

俺がやるんだ。

瑞菜に背負わせちゃいけないものも俺だったらいいんだ。

犠牲は、代償は俺の命なんだから。

「ゴメンな……」

軽い体の俺は疾走する。音速を超え、光速を超え、限界という限界を突破する。

体の骨が音を上げる。

軋む、歪む、狂う。

全身に痛みを感じる。

そして、少女に放ったパンチは第三宇宙速度を超えていた。

「瑞菜」

「……」

返事はない。

俺は微笑み、語る。

「殺せなかった。俺にはやっぱ無理だったよ」

嬉しさと悔しさ、怒りと悲しみ、歓喜と悪寒。

それら全てが現れ、混ざり、反発し、結合し新たな感情が生まれる。

「でもさ、俺はちゃんと自分の結末が見れた気がするよ」

それを最後に俺は地面とキスをした。

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