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俺と彼女と狼な関係  作者: 七詩のなめ
第二章 政府の闇
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第二十八話 コンビネーション

コンビネーション


いきなりの襲撃から一日が経った。

今、俺たちはリビングに集まって緊急集会を始めていた。

「昨日はなんとか追い返さたけどやっぱり次はないと思うなぁ」

笑顔で言うのは瑞菜だ。

こんな状況でも瑞菜は楽しんでいるらしい。

「ですわね。姉さまの言う通りだと思うわ。私もさっきので自分の技が効かないことがわかったし、それ以前に私たちには水無月に対抗するための力を何一つ持っていないわ。リーダー、つまり、誠を抜いてね」

それは少し疑問が残った。

「いや、さっきの戦いで一体一で戦ったら俺は確実に負けてたよ。あいつは言うだけのやつじゃない。全てが本気なんだ」

そうだ。さっきの戦いで瑞花が来てくれなかったら俺は死んでいた。

俺はみんなのために力を使うのに対してあいつは自分自身のために使う。

これがこれだけの違いを見せるとは思わなかった。

「水無月は自分のために、お前は他人のために力を発動か。決定的な違いは想いだな」

千石が誰に言うでもなくポツリとつぶやいた。

「想い?」

「ああ、水無月は自分の娯楽のために力を使うがお前は他人の願いを叶えるために使っている。自分のために使っている水無月の方が想いが強く、純粋だ。他人の想いっていのは濁りがあるんだ。その濁りがお前を弱くしている可能性がある」

想いの濁り。

確かにそうかもしれない。俺は人の願いを叶えたいとは思ったことがない。

全てはもう一人の俺が思ったことだ。

だから負けたのか?

「でも、それでも、俺は自分のために力は使えない」

「わかっている。お前にはそんな器用なことはできるわけがないだろうが。俺が言いたいのはお前は何でもかんでも一人でやりすぎだ。今は、その、ええーっとだな、俺たちもな、仲間なんだから俺たちも頼れというなんかだな」

どういう意味だ?

柄にもなく千石が言葉を詰まらせていた。

俺は言葉の意図が理解できず困っていると助け舟が入った。

「千石くんはね。私たちを使うんじゃなくて仲間として助け合いをしようって事だよ」

瑞菜のわかりやすい説明で理解できた俺は目頭に熱いものを感じた。

「な、泣く奴があるか! 俺はただ……あの男の戦いの時にしたみたいなコンビネーションで戦えと言ってるだけだ! そうだ、そうに決まってる!」

顔が赤くなった千石は椅子から立ち上がり部屋を出て行ってしまった。

「コンビネーションねぇ。それは面白そうかも」

また、瑞菜は面白そうというだけで決めようとしてきた。

「コンビネーションって難しいだろ? 短期間じゃ出来やしないよ」

「そうでもないかもしれないわ。あなた、水無月の戦いのとき何気に私に指示を出して水無月を拘束したし」

「うっ……」

今、それを言われると言い返せないんだけど……。

「それにコンビネーションじゃないときっと勝てないと思うなぁ」

瑞菜が追い討ちをかけてくる。

「い、いやでも……」

「なんかダメな理由があるの?」

「そ、それは……」

ダメだ。勝てる気がしない。

「じゃあ、決まりだね。まずは……美奈ちゃん行ってみようか!」

そう言って完全に当人を置いてけぼりにして話を進める瑞菜。

選出された美奈はいきなりのことで驚いたのか裏返った声で返事をする。

「美奈ちゃん! 用意はいいかなぁ?」

「な、何がですか!」

「イッツ、デェェェェェェェェェェェエエエエエエエエエエエエエエト!!」

「「は?」」

見事に俺と美奈の声が重なった。

なぜにいきなりデート? そして、なぜデート?

「だってだって、デート方が面白そうじゃん?」

「そんな理由で!?」

「さあさあ、行ってこーい! 今日は帰ってこなくてもいいよぉ」

「帰ってくるからな!」

無理やり追い出され尚且つ規制ギリギリの言葉を発してハイテンションで手を振っている瑞菜。

「な、なんであいつあんなにハイテンションなんだ?」

「き、きっと、恋愛ものが好きだからだと思うよ」

「そうか……」

なんでだろう? 美奈の顔が少し赤い気がする。

……風邪か?

「美奈」

「な、何?」

「そんなに動揺することないだろ。それより顔赤いけど、風邪か?」

「はぁ、これだもんなぁ」

なんか今、すごく馬鹿にされた気がする。

「そんなことよりさ。デートってどこ行けばいいんだ?」

「それを女の子に聞くかなぁ」

「し、しょうがないだろ? 俺は彼女とか持ったことないし」

「あはは、それもそうだね」

調子が良くなったのか美奈が笑顔を見せてきた。

俺もそれを見て少し楽しくなってきた。誰かと遊びに行くっていうのは純粋に楽しいものだ。

「じゃあ、街でもぶらぶらするか?」

「うん」

俺たちは目的もなく街をぶらぶらすることに決定しそれに向かって歩き出した。

街に出るのは久しぶりかもしれない。

今日まで何かと忙しくって外に出ることがなかったような……。

主に、怪我とか怪我とか、あと怪我があったな。

なんか、今までの記憶を思い返していると涙ができていた。

「な、なんで泣いてるの?」

「いや、少し今までを省みてみた」

「ああ」

なんか、納得されてしまった。そんなに悪かった? そうでもないだろ、普通だよ普通。

……うん。なんかどんどん悲しい方に行きそうだから考えるのはやめよう。

久しぶりに見た外の景色は特に変わらずいつもみたいに明るかった。

人は多くも少なくもなく、活気づいていて楽しささえ感じられる。

俺が親に捨てられる前にずっと通っていたクレープ屋も未だに健在していてスーパーも朝だというのにたくさんのお客さんが入っている。

「わー、外ってお店がこんなにあったんだ!」

美奈は目を輝かせながら辺りを見ている。

「美奈、ちょっと聞くが外って出たことないのか?」

「ううん。夜はいつも出てるよ? でも、朝は人がいっぱいいるって聞いたから出たことがなかったかな。それに戦い続きだったからね」

暗い顔を見せたがすぐに明るくなった美奈。

そうか、こいつはそういえば『消える』のが得意だったな。

「そういえば、なんでお前は消えるようになったんだ?」

「そ、それを本人から聞くかなぁ。でも、いいや。教えてあげる。その代わりあそこのクレープおごって」

「はいはい」

俺はしょうがなくお望みのクレープを買って美奈に渡す。

「じゃあ、話すかな。私って前にも言ったけど元々影が薄かったんだよね。でも、確実に消えるようになったのは確か中学生の時だったかな」

話し始めた美奈の表情がどんどん暗くなって行く。それも見て俺はもしかしたら聞いちゃいけなかった事なんじゃないかと今になって気付く。

「私、こういう性格じゃん? そして、なんかわからないけど男の子にモテちゃったんだよね。それが女の子には煙たかったみたいで私に向けてのイジメが始まっちゃったんだよね」

いじめ、それを聞いて俺は体に力が入った。

「最初はどうでもよかったことをしていたから無視できたけどだんだん無視出来ないような事されたんだよね。そ、その、ひどい時は男の子達に襲われたことだってあるし」

ガクンっとベンチが音をあげる。俺の拳が当たった反動で出たものだ。

「そんな事を繰り返されたらなんか私が見えなくなったみたいでさ。それっからいじめはなくなったんだ。同時に話し相手すらいなくなったけどね」

美奈が昔そんな事をされていたのか。なんでだ? なんで誰も助けようとしなかったんだ?

「でも、今はそれでも良かったと思ってるんだ。そのおかげで私はこんな素晴らしい仲間に会えたわけだしね」

最後に見せた美奈の笑顔は素晴らしかった。本当に素晴らしかった。

そんな人生を送ってきたからこそあんな笑顔ができるんだと心から思えた。

「あっれ~? 美奈じゃん」

とそんな話をしていると一人の女性が美奈の名前を呼んだ。

「あ? 誰だよ、その女」

その隣にいた男

「覚えてないの? あんたが襲った女だよ」

「あ? ああ、あの時のか。へっへっへ。まさかこんなところで会うとはなぁ」

男は異様な微笑を浮かべながら話す。

すると女子が俺の方に視線を移した。

「なになに、あんたもしかしてこの子の彼氏さん?」

「ち、違っ――」

「美奈、私がいつあんたに聞いたわけ?」

美奈の反論は自己中な女子によって阻まれる。

「俺は別に彼氏ってわけじゃない。友達だ」

俺はきっぱりと言ってやった。彼氏だと言えなかったのはなんかかっこ悪かったが今は関係ない。

「あはー! やっぱそうだよねー、この子が彼氏なんて作れるわけがないもん」

笑いながら当たり前だと公言する女子。

今一瞬右手に力が込もる。

「こんな豚が男を作れるわけないじゃん!」

美奈は何も言わずうつむいている。

俺は激怒した。そんな発言をする女子に、そんな反応をする美奈に。

「黙れ」

「は? 何言って――」

「テメェのその汚い口を閉じろって言ってんだ!」

俺の怒りがくちいから漏れていく。

「な、何怒ってんの? ばっかじゃない?」

それでもなお強気の姿勢を見せる女子。

まだ、美奈はうつむいていた。

「テメェらのせいで美奈はこうなったんだぞ? お前たちこそ馬鹿じゃないのか?」

「なっ……こ、こいつは自滅しただけで――」

「その自滅を仕組んだのはテメェだろ?」

「……」

俺の言葉に女子は答えられない。

当然だ。全て事実なんだから。

「人の人生を狂わせた奴がのうのうと生きれるなんて思うなよ?」

「う、うるさい! おい、あんた族連れてきてよ」

「もう向かってる」

遠くからバイクの音が聞こえる。暴走族だ。

こんな朝っぱらから招集がかかったのか。

「に、逃げよう、誠。大人数じゃ太刀打ち――」

「お前はそれでいいのかよ」

「え?」

「お前は馬鹿にされたままでいいのかよ」

「そ、それは……」

「いいわけないよな? 嫌だろ? 悔しいだろ? ならなんでお前はそれから逃げるんだ? お前には素晴らしい能力があるじゃないか。普通持てない素晴らしい能力が。逃げるなとは言わないよ。お前が馬鹿にされたままでいいって言うなら俺は引く。だけどもし、お前が立ち向かうって言うなら俺は協力を惜しまない」

これは俺の本心だ。紛れもない本心だ。

美奈は俺の顔を見たまま静止していた。

その表情は驚いたようにも見えるし、嬉しそうな顔にも見える。

そして、美奈は首を縦に振った。

「私は悔しいよ。ホントはやり返してみたかった。でも、私じゃ太刀打ちできないから今まで我慢してたんだ。ねぇ、誠」

「なんだ?」

「私のためだけに戦ってくれる? 私のためにその力を使ってくれる?」

俺は少し笑った。

「当たり前だ」

すると美奈は俺に近づき頬を紅潮させながら背のびして顔を近づける。

そして、唇と唇が重なった。

ドクンッ

集まってきた暴走族をゆっくりと眺めると俺はただ哂った。

そして、美奈に向き直り聞く。

「さあ、君の願いはなんだい?」

「わ、私の願いは……過去の柵から私を開放して欲しい」

頷いた。そして、頭に手を置くとくしゃくしゃになるほど撫でた。

そうだ。それでいい。お前は過去に縛られちゃいけないんだ。

「お前ら、片付けろ」

暴走族が俺たちに武器を突きつけ襲ってくる。

「僕が君を自由にしてあげるよ。だから、美奈ちゃんはここで待ってくれ」

俺は歩き出す。

敵の一人が凹んだ金属バットを振り下ろす。

俺は避けもせずただ右手でバットを優しく押し俺に当たらないところまでズラす。

「邪魔だよ」

後頭部を支え、足を蹴り上げると空中で一回転する敵。

「な、なんだこいつ!」

今度は二人の敵が一斉にきた。

一人は避けて足をかけて転ばし、もう一人は武器を持っている腕を抜いた。

俺は突き進む。

美奈の柵を解くために。

「あ、あんたの族弱いじゃん!」

「ば、馬鹿言うな! 俺のはこの街で最強の――」

「なら、僕はその上を突き進むよ」

川で水が流れるがごとく敵の波を避け女子たちの前まで行き着いた俺は会話に割り込む。

「や、やれ!」

敵たちは四方八方から襲いかかる。

このままだと俺は袋叩きだ。

だが、こんなピンチの中で俺は笑っていた。

足を振り上げ地面に叩きつける。

すると地面から衝撃波が飛ぶ。

「グアッ!」

「ギャー!」

敵たちは全て吹き飛ばされていった。

これはきっと中国武術だ。いつの間に勉強したんだ?

全て倒れた敵たちを踏みながら女子たちに近づき言う。

「柵を解くって言うのは君たちを叩けばいいのかな?」

「あ、ああ、なんだこいつ」

俺の話を聞いていないようだ。男は自分の族を見て口を開けていた。

「あ、あんた強いじゃん! 私の彼氏に――」

「お断りだよ。僕はそうやって自分の利益だけで決める女の子が嫌いでね」

俺は右手を引き一発の銃弾のように放った。

「ま、待って!」

俺の右手は女子の顔面寸前で止まった。

「もういいよ。誠はそれ以上悪者になることはないよ」

そう言って美奈が俺の前に立った。

「でも、まだ君の柵は――」

「もういいんだぁ。私にはこんな仲間がいるから。私なんかのために傷ついてくれる仲間がいるから」

そう言って美奈は俺に抱きついた。

ドクンッ

いつの間にか入れ替わった体で俺はタジタジになっていた。

女の子に抱きつかれるのは初めてでしかもなんか柔らかいものが当たっているような……。

「帰ろう? きっともう何もされないから」

女子の方を見ると白目を向きながら失禁していた。

ちょっとやりすぎたかな?

「ありがとね。これは私からのご褒美」

そう言って頬にキスをする美奈。

気づいた時には美奈は走り出していた。

「お、おま……」

適度に赤らめた頬の美奈は振り返り手を振る。

「早く来ないとご飯は私のだぞぉ!」

振り返った顔を俺は忘れない。

「ま、待てよぉ!」

俺は走り出す。美奈のもとへ。


そう、俺は忘れないだろう。あの生き生きした美奈の笑顔を、あんなに可愛かった笑顔を。

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