第二十六話 失敗作
失敗作
廃ビルの屋上、崩れる寸前のところに俺たちはいた。
「参考にまでに聞こうか。なぜ、俺の攻撃を避けられた?」
「さっきの敵が機械だと気づいた時から誰かが操作していると気づいたからね。それから、君が攻撃をしやすいところを探すとここしかありえないって気づいて躱せたんだ」
俺はさも当然のように言うがこれは普通できないことだ。
それにしてもさっきの敵もそうだったがガードが硬そうだ。しかも夏なのにロングコートまで着ていた。
だが、俺も諦めるって事を知らないから同じか。
「貴様が最宮誠だろう?」
「ん? そうだったらなんだい?」
「そうか、貴様が……殺す」
なんでそういう思考になるんだよ!
だが、奴の目は本気だ。理由は知らないがなぜか敵は俺を目の敵にしているらしい。
俺ってそんなに気に食わないものだった?
「俺は歩く武器庫。貴様を消しに来た。答えを聞く気はない」
もはや、自己中の範疇を超えてるよな?
だが、こっちだって頭に来てんだ。
「言葉は不要だろう? さっさと肩をつけて瑞菜様の手当をしたい」
千石が俺たちの話に割り込んできて刀を構える。
「オレッチは早く飯を食いたいねぇ」
炎矢はいつものようにニヤニヤした顔で話す。
「仕方ない。君は僕たちが倒させてもらうよ」
俺が言うと敵はロングコートのポケットに手を入れ素早く出したかと思うと両手に拳銃を持っており発泡してきた。
「飛び道具か!」
千石は刀で銃弾を斬り回避する。
「オレッチはそれ苦手なんだよぉ~」
そう言って炎矢もなんとか回避できたらしい。
俺に至っては……。
「危ないじゃないか」
そう言いながら握っていた手を広げるとジャラジャラと地面に銃弾が落ちていった。
お、おい。なんで銃弾を掴んでるんだよ!
「くっ、化物が!」
そう言って今度はロングコートのなかからリボルバーを取り出す。
そのままリボルバーをこちらに向け撃ってくる。
「クッ……!」
オートマチックと違ってリボルバーの威力は強い。流石の千石でも防ぎきれなくなってきていた。
「まずいね。このままだと負けちゃうかな?」
なんでそんなに冷静でいられるんだよ!
俺はまた手で銃弾を掴み回避する。
こいつは化物か!
俺は俺に向かってそんな事を言い放ち打開策を探す。
「炎矢くん」
「な、なんでございましょうか!」
炎矢は銃弾を躱すのに一生懸命になりながらもこちらに反応する。
「爆弾を配置してくれ」
「この状況で!?」
「君ならできるだろう?」
「無茶ですけどね!?」
「それは認めない」
「あーもーうー、しょうがないからやってやがりますよ!」
そう言って炎矢は服から爆弾をビルのありとあらゆる場所に投げる。
あいつの何処からあんな量の爆弾が出てくるんだ?
「今から、合わせ技をするよ。千石くんも準備してくれ」
「わ、わかった」
「はいよ~」
俺はビルの屋上の中心に立ちまるで指揮をするように手を上げる。
「さあ、爆弾合唱交響曲第一章」
そして、手を振り始める俺。
俺の無言の指示を千石は理解し敵を目的の場所まで誘導、攻撃する。
続いて炎矢が俺の指示で爆弾を爆発させる。
「ぐあ!」
どうやら攻撃は通じているらしい。
敵が落ちる瞬間を狙って俺は再び指示を出す。
再びの爆発。その連続が続く。
敵もただ攻撃されるだけじゃない反撃もするが全ては千石に落とされる。
「な、なんだ! この攻撃は!」
敵は叫ぶ。だが、その声すらももはや曲になっている。
「爆発合唱交響曲第二章」
爆発がさっきより速くなる。
炎矢が仕掛けた爆弾は実に数百個。その爆弾が既に半分使われている。
「さあ、フィナーレだ。爆発合唱交響曲最終章」
さらに爆発の威力、スピードが増す。
まるで、曲の最後を盛り上げるかのように。
「仕上げだよん!」
炎矢が火炎瓶を両手いっぱいに持ち敵に投げつける。
火炎瓶が地面に落ちる瞬間、最後の爆弾が爆発する。
敵のいたところは夥しい量の煙と炎が包んでいた。
「終わったか?」
「いや、まだだね」
俺は静かに煙の方を見る。
そこには人のシルエットがあった。
「ちっ! あいつは不死身か!」
千石が刀を構える。
その瞬間、ありえないでかさの殺気を感じた。
目の前からではない。かなり遠いところから。
「みんな伏せろ!」
俺は普段叫ばないのにこの時だけは叫んでいた。
俺たちが伏せた瞬間目の前にいたはずの敵の頭が吹き飛んでいた。
「な、何が起きたんだ?」
千石が今の光景を見て身震いさせていた。
「狙撃だよ。きっと対戦車用のね」
対戦車用!? そんなので狙撃するなんてありえないだろ!
「いつから日本はそんな物を合法にしたんだろ~ねっぇ」
爆弾使いのお前が言えたことじゃないが確かにそうだ。
まさか、テロでも起こすつもりか?
「でもまあ、狙撃手は僕たちには攻撃をしてこないようだね」
「な、なぜわかる?」
「だって、狙撃手はきっと赤外線スコープ何かを使って狙撃してるはずだからこっちの居場所だって分かってるはずだよ。それに狙っているのならさっさと打つはずさ。あれは対戦車用だからこんなオンボロのビルの壁なんて守りにすらならないしね」
俺が言ってることは正しいかもしれない。
俺たちは立ち上がりビルを後にした。
屋敷に戻るとみんなは可憐に手当されていた。
「瑞菜様大丈夫ですか?」
「あはは、心配性だなぁ。まあ、大丈夫ではないけどねぇ」
笑っていたが瑞菜は体のほとんどに包帯を巻かれいた。
「誠くんは大丈夫そうだね。流石リーダーだね」
「お世辞はいいから休んどけ。そういえばフェンリルはどこにいるんだ?」
「奏ちゃんを守ってたみたいだよ?」
そうか。フェンリルがな。
俺が安心したのも束の間、玄関から人の声がした。
玄関に向かうと見たことがない奴らが五人いた。
「ああ、あんたさっきビルの上で戦ってたやつだよな?」
その中の一人がそんな事を言う。
俺は唖然とした。なんでそんなこと知ってんだよ。
「ああ、ごめんごめん。さっき狙撃したの俺のチームの目だからさ」
目? チーム?
何を話しているのかわからなかった。
「ん? ああ、ごめんごめん。挨拶がまだだったな。俺は水無月夏希、チーム『セカンドチルドレン』のリーダーをしてんだ」
セカンドチルドレン。俺は再び唖然とする。
なんでこいつらがその名前を知ってるんだ?
「そして、すまんな。俺んとこの失敗作がお前らに迷惑をかけたみたいで。安心しろ、見たとおりあいつは始末した」
始末。殺すのを戸惑わないその表情が俺は怖くなった。
こいつらは本物だ。本物の殺し屋だ。
「お前が最高傑作の最宮くんかぁ。強かったよ、それなりに」
今の言い方はまるで自分の方が強いと言わんばかりの言い方だった。
「お、お前たちは一体……」
「あれ? 聞いてなかったのか? セカンドチルドレン、第二世代の子供だよ。知ってるだろ?」
そうじゃない。お前たちはなんで仲間を殺したのに感情が揺らがないんだよ。
「仲間を殺してなんで何にも思わないんだよ」
「仲間? あいつは失敗作だ。物以下の存在なんだよ」
こ、こいつら。
狂ってやがる。
「それともう一つ謝んないといけないんだけどさ――」
そう言って隣にいた仲間の腰に手を当てたかと思うとキスをした。
「死んでくれや」
感じが変わった。コイツも二重人格なのか!
「俺様はお前さんと違って他人の願いではなく自分自身の願いを叶えるんだ。死ぬ気でな!その意味がわかるか?」
こいつが願ったのはなんだった?
『死んでくれや』
殺すつもりか。俺たちすべてを。
「さあ、始まりだ。テメェを絶望のどん底に落とす死刑執行の結末のな!」




