第二十四話 新たな刺客
歩く武器庫
俺は治りきっていない体で戻ってきた美山邸を歩き回っていた。
いつ見てもでかい建物だ。
ビルみたくただ高いだけの建物と違って瑞花の家は広大な土地にめちゃくちゃ大きい家を立てた昔のような家だ。
だからだろうか。どこか、落ち着く時が多々ある。
「こんなところにいたんだ。この家大きいよねぇ」
そこに現れたのは瑞花の姉であり、かつて敵対していた瑞菜だった。
「ああ、それに設備が恐ろしいくらい整ってるな」
「そりゃあ、国からもらったお金で建てたんだから当然じゃん」
国の金?
もしかして、瑞花は国の組織の一員なのか?
「あれ? もしかして知らなかったの? 私たちは国が秘密裏にかき集めた政府の掃除屋、国に害を及ぼすものを全て秘密裏に解決するんだよ」
なんか、危険な匂いがものすごくしてきたんだが……。
「まあ、簡単に言えば暗部だね」
ほらぁ! なんかそんな気がしてたんだよ!
「どしたの? 頭なんて抱えて」
「今、俺は人生の中での失敗を垣間見てんだよ!」
「ふーん」
「興味なさそうだなぁ、おい!」
「うん」
俺はその場に膝を折って崩れた。
なんか、俺、明日が見えないよ。
「あはは、誠くんは面白いねぇ」
楽しそうに笑う瑞菜。
それに呆れを覚え、瑞菜を見て俺は言った。
「俺は全然面白くないけどな!」
「でも、もう逃げられないよ。誠くんは気づくのが遅すぎたんだから。ここで逃げたら君はきっと国に消される。もしかしたら、それは私たちかもしれない」
俺はそんな真実をなんとなく理解していた。
瑞菜はさっき自分たちのことを暗部だと言った。なら、暗部をやめた奴はどうなる?
殺されるんだ。きっと。
「安心しろ。俺はここを離れることはない」
「まあ、瑞花に借金肩代わりされてるもんねぇ」
ぐっ……そういえばそんなこともあった気が……。
「そ、それもあるが俺はお前らを自由にしてやりたいんだ」
「え?」
「だから、瑞菜は自分のいらない能力のせいで世界に適応せずに今日まで何らかの差別をされてきたんだろ? ほかの奴らだってそうだ。だから、黒崎なんかの手を借りて世界自体を変えようとしたんだろ? 俺は黒崎を倒しちまった。それは同時にお前たちの叶えて欲しかった夢をぶち壊したって事だ。だから、お前たちが自由を手に入れるまで俺はここを出て行かない」
俺は瑞菜を見ずに淡々と語っていた。今の言葉に嘘はない。
俺はこいつらにも幸せになって欲しいと思う。こいつらだって人間なんだ、幸せになる権利はある。
俺は瑞菜の顔を見ると瑞菜涙目になっていた。
「な、何泣きそうになってんだよ!」
「だ、だって、誠くんがそんな優しいことを言うから……」
目に貯めていた涙が今にも溢れそうになっていた。
俺はさっき言った言葉の恥ずかしさと瑞菜の可愛さでつい目を逸らしてしまう。
「そ、それに、黒崎を倒したとき別の方法でお前たちみたいな能力者を幸せにするって誓ったんだ。もう二度と奏みたいな奴を生み出さないようにするために」
俺はそれだけ言うと瑞菜を見ずに廊下を進む。
背後からは声を最大限にまで小さくした嗚咽が聞こえた。
どうやら俺は女の子を泣かす才能があるらしい。とってもいらない才能が。
『警告、警告、侵入者が現れました。各自、戦闘たいせ――』
音声はそこで切られた。
何だ? いつもと調子がおかしいぞ?
そんな事を考えていると庭の方から爆発音が盛大にし始めた。
「な、何だ?」
俺は廊下を走る。
爆発が起こったとされる庭を廊下から見るとそこにはさっきまでの平穏はなかった。
地に伏せる瑞菜、陽。辛うじて立っている瑞花、来夢。何者かと戦闘を行っている炎矢、彩芽、ほか二名。
何だ。何が起きた。
さっきまであんなに平和だったのになんで数分でこんなになるんだよ!
「誠さん! みんなが、みんなが!」
「分かってる……」
「誠さん?」
可憐が不審そうに俺の顔を眺めていた。
俺は一体どんな表情をしているのだろうか。みんなを傷つけてしまったと悲しい顔だろうか。はたまた怒りに染まった顔をしているだろうか。
どちらでもいい。そんなことはどうでもいいんだ。
ただ、あいつらだけは許せねぇ。それだけだ。
「なあ、可憐」
「は、ハイですな」
「今の俺にあいつらが倒せると思うか?」
「そ、それは……無理、ですな」
はは、これは手厳しい答えだ。
だが、確かに今の俺には倒せないだろうな。なんたって爆弾を使う炎矢ですら押されてる状況だ。今の俺が出たら足でまといにすらならないだろうな。
「可憐。俺に力を貸してくれ」
「はいですな」
そう言って可憐は小さな体を俺に近づけてきた。
俺はそれを優しく抱き、そして、キスをする。
ドクンッ
「君の願いはわかってるよ。少しだけ待っててくれるかな?」
「ハイですな!」
そう言って可憐は俺から少し離れた。
さあ、行け。俺が求めるのはみんなの幸せだ。
それを邪魔する奴がいるなら容赦はしなくていい。
「違うだろう、もう一人の僕」
俺はまさしく俺に話しかけるように声を発す。
「敵である、あの人たちにだって幸せをわけないとね」
当たり前のように俺は言っていた。
そうか。お前はそう言う奴だったな。
確かにそうだ。俺が間違ってたよ。この世に幸せになれない人はいない。
行け、結末は常に俺たちが作るもんだ。
「さあ、行こうか。僕が求める最高の結末のために」




