第二十二話 偽りの平和
偽りの平和
目覚めた。
そこまではよしとしよう。
だが、昨日俺は瑞花になんて言われた?
俺……死んじゃうのかな?
「おはようなのですな」
まだ、回転し始めたばかりの頭で頭に入ってきた言葉を理解する。
「あ、ああ。おはよう。で、ここはどこですか?」
「記憶喪失のですな? これは電気ショックを――」
「まったく持って必要ないから!?」
「なら、なんですな?」
「可憐、俺は昨日集中治療室とやらに寝ていたはずだよな?」
「そうですな」
「なら問おう。なんで俺は俺の部屋で寝ているんだ?」
「いやぁ~。移動させるのに結構かかったですなぁ」
そういう話をしてるんじゃないよ!
それと、なんかきずついたよ!
「そ、そうか。なら、もうひとつ聞くがなんでみんなして俺の部屋のしかも俺のベットで寝てるんだ?」
「う、うたた寝ですな!」
絶対に違うよね!? 今の反応は絶対違うよ!
「そうよ。それは違うわ」
俺たちがそんな話をしてると瑞花が目を擦りながら起きてそんなことを言い出した。
「ほら見ろ「ここはあなたの部屋じゃなくて私たちの部屋よ」はい!?」
いつからそんなことが決まったのかな?
「そもそも、あなたの部屋なんてないのよ。そんなもの私が与えると思う?」
「どうせなら自分の部屋で寝て欲しいって思うんでしょ? 瑞花のことだから」
また新たに瑞菜が割り込んできた。
って、はい? それはどういう……。
「姉さま! そんなはしたないことは――」
「思ってるよね?」
「そ、そんなことは――」
「じゃあ私が誠くんをもらっちゃおうかな?」
「「「「「それだけはダメェェェェェェェ!!」」」」」
瑞菜が言うと寝ていたはずのみんなが一斉に起き上がって叫びだした。
な、何事ですか!?
俺は耳を塞ぎながらも状況を判断しようと思ったがなんか頭がズキズキしてうまくいかなかった。
「え~。じゃあ、誠くんに聞いてみようかな。誠くん、この中で選ぶとしたら誰がいい?」
は? え? なんですか?
この中から選ぶ? 何を?
疑問が疑問を呼び疑問の無限ループが始まってしまった。
「ち、ちょっと待て! 何をお前らはさせる気だ?」
「だってぇ~。この中に誠くんが好きな人はいないって」
キッとみんなの視線が期待から殺意に変わり俺を見る。
待て待て待て! どういうこと!? 俺まだ何もしてないよね!?
「待ってくれ! この場合俺はどうすればいいんだ!?」
「取り敢えず、選んでよ」
選ぶって、だから誰をだよ!
「ほらほらぁ~。早くしないとタッチマインドだよぉ~?」
あーもう! こうなればなるようになれ!
俺は目を瞑り指を差す。
「……へぇー。やっぱりそうなんだ」
「これはまずいのですな」
「取り敢えず、殴らせようか。なぁ、誠よ」
「仕置が必要のようね」
「あちゃァ、これは強敵だなぁ」
なになに? なんでみんな呆れたような怒ったような声でいうわけ?
俺は自分が指差した方を見るとそこには寝ている奏がいた。
と、取り敢えず、攻撃は降ってこないようだな。ふぅ、なんとかできたようだ。
「ん? みんなどうしたの?」
奏がさっきの騒ぎで起きたようだ。
「おはよ」
俺は奏に声をかけると奏は俺を見るなり抱きついてきた。
「おいおいおい! その反応はおかしくないですか!?」
「だって、だって誠起きないんだもん! 私のせいで傷ついて意識失って起きなくて、だから、だから!」
ああ、俺はまた奏を心配させたようだ。
ダメだな、やっぱり。
女の子を泣かせるのはさすがにダメだよ。
俺は奏の頭に手を乗せ、優しく撫でる。
「お前のせいなんかじゃねぇよ。これは俺のわがままの代償だ」
俺はみんなを助けたかった。ただ、それだけなんだ。
「だから、お前がどうこう考えることじゃねぇんだよ。だ、だから、泣くんじゃねぇよ」
自分で言ってることが小っ恥ずかしくなり最後の方は投げやりな言い方をしてしまった。
だが、それでも奏には通じたようだ。
「うん。わかった。もう泣かないよ」
そう言って奏は俺の体に身を埋めてしまった。
そこで俺は気づいた。
今、この部屋にいるのはここの集団の皆様とプラスα。
つまり、この状況を全ての人に見られているということだ。
「場所を考えて欲しいよねぇ」
「熱々ですな」
「私の鎌が修理中でなければ真二つにしたものを」
「まずは首吊りかしらね」
「うわーん! 二人がお似合いに見えるよ!」
瑞菜は怖いくらいの面々の笑みを浮かべ、可憐は頬を染めながら目を隠し、来夢はベットのシーツを破りながら怒りを抑えていた。
てか、瑞花さん? それって拷問ですらないよね?
「とんとん、取り敢えずドア空いてたんで叩いたフリしてみた。と、そんなことはどうでもいいだけどさぁ。早く飯作ってくんねぇ? オレッチ腹減ったんだけど」
そこに現れたのはいつかの爆弾魔の炎矢だった。
「なんでお前がここにいるんだ?」
「ああ? お前さんまのせいでここに囚われてんだろうが! ど・う・し・て・くれんぇすか? オレッチ囚われの王子様だぜ?」
喧嘩を売るか、馬鹿なことをいうかどっちかにして欲しいもんだな。
「あ、誠くん。ちなみにこのリモコン操作してみて」
そう言って瑞菜に渡されたのは、痛い、マジ痛い、かなり痛い、チョー痛い、頭が割るという五つのボタンがついたリモコンだった。
「なんで最後のが痛いじゃないんだ?」
「イイからいいから、押してみてよ」
そうか。なら、まずは痛いから……
「いってぇ!!」
押した途端に炎矢は頭を抱えて痛み出した。
「え? どういうこと?」
「これねぇ、可憐ちゃんが作ったんだけど、直接脳の痛覚に刺激させて痛みを味あわせるっていう機械なんだって」
ほう、そうかそうか。
俺は続いてマジ痛いを押してみた。
「いてててててててて!!! マジいいたいってぇぇぇぇぇぇぇ!!」
おお、これは面白いぞ。
お次はかなり痛い。
「ぬおぉォォォォォォォォォォォォおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」
スゲェ。こいつ頭で逆立ちし始めたぞ。
とそこで瑞菜にリモコンを奪われた。
「誠くんは結構Sなんだね。まあ、それも面白そうだけど。でも、その子は私たちの仲間だよ?」
はい? 仲間?
「そ、そうだぞ! 俺は瑞菜からこっちに行けっていうから仲間になってやったのによぉ。なんで来たらいきなり実験!? 流石のオレッチもなきそうだっ――瑞菜ぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ、なんで!? なんでボタンを押したぁぁぁぁぁぁぁあ!!?」
「いやぁ、なんか呼び捨てされた気がしたから」
「瑞菜――いやぁあぁぁぁぁぁああ、瑞菜さん! 瑞菜様! もう言いません! 絶対言わないからぁぁっぁぁぁああああ!! だから、頭が割るはおすなぁああああ!」
「押すな?」
「押さないでください!!」
こ、怖い、瑞菜を敵に回すと怖いぞ。
「痛かった、まじ痛かったよ。凄まじい痛みだったよ。これ以上ないいた――」
「もう一回押そうか?」
「すみません!!」
あ、有り得ない。あの爆弾魔が頭をさげたよ。
これがあの能力者たちを統べるリーダーの力か。
まあ、当人はただ遊んでるだけだろうけど。
「ぎゃーぎゃーうるさいぞ。頭を切り捨てられたいのか?」
また人が増えた。今度は……
「千本刀!?」
「ん? 起きたのか。ちっ、ご飯が足りないじゃないか」
どこの主婦だよ!
「ああ、剣。ごめんごめん。みんなを呼びに来たのに私ったら遊んでたよぉ」
あ、遊びだと? と炎矢は泣き目で言う。
わかる。分かるぞ、炎矢。さっきのは誰の目から見ても遊びじゃなかった。
「だと思いましたよ。だから、私が呼びに来たんです」
千本刀が敬語を使ってるよ。
おかしなこともあったもんだな。
「お前って敬語使えたんだな」
「なんだ? 死に損ないが口を聞くのか。さっさとくたばれば良かったものを」
なに、この温度差。
俺ってそんなに嫌われてるの?
「まあまあ、喧嘩しない」
「千石、オレッチの飯は――」
「誰だ、貴様は」
「おいおいおい!! 腐っても元仲間ですが何か!?」
「腐ったのか」
「この単細胞――」
「喧嘩、しない」
瑞菜の本気の殺気が乗った言葉が放たれた瞬間、炎矢と千本刀の口が閉じる。
そして……
「ね?」
瑞菜の死刑執行前兆が起こると同時に千本刀と炎矢はその場に土下座していた。
「あはは、大げさだなぁ。私はそんなに怒ってないよぉ」
嘘だ!
「ん?」
笑顔で俺の顔を見る瑞菜。
俺は苦笑いをしながら背中に流れる嫌な汗を感じながら震えていた。
「じゃあ、早くご飯にしよっか。今後の話もしたいしね」
そう言って俺の、もといみんなの部屋に集合していた俺たちはそろって飯を食いにリビングに足を運んだ。




