第十六話 危うい爆弾魔
危うい爆弾魔
「だ~ん!!」
炎矢の掛け声と同時に地面が爆発を起こす。
「ふぅん。君は爆弾を使うようだね。でも――」
俺は地面を蹴り炎矢の懐に潜り込む。
だが、炎矢の顔は未だ笑っているままだった。
「ざんねぇ~ん。この行動は予想済みだよぉん」
そう言って小さい玉を俺の前に投げた。
「まず――」
玉は小さな爆発を起こすと針が俺の体に突き刺さった。
「くっ……やるじゃないか。これは予想できなかったよ」
俺は右手で針を全て受け体へのダメージを最小にしたあとバックステップで距離を置く。
「くくくくひゃひゃひゃひゃ!! まさか、避けるとはな! おれっちマジで楽しくなってきたよ!!」
狂った笑いを上げ、炎矢は手を上げパチンっと音を立てる。
すると、俺のいる場所から五メートルある場所で爆発が起こり続いてこちらに向かうように爆発し始めた。
俺は自分のいる真下の地面が爆発する三秒前に前に飛び完全に爆発を回避した。
はずだった。
「なっ……」
俺が前に飛ぶと爆発は俺がいたところの手前で止まり俺がいた場所は爆発しなかった。
その代わりに飛んだ先の場所で爆発が起こった。
「ひゃっはぁ~!! 死んだか!!」
あっぶねぇ~。
爆発の一瞬体を捻らなかったら体がバラバラになっていた気がするぞ。
「ま、まあ、それでも右手は完全にいかれちゃったけどね」
俺は右手をブランと力なく垂らし立ち上がった。
「ニーちゃんマジイケテルヨ!! マジ感動だわ! ところで、後ろのは噂のフェンリルですか~?」
炎矢は俺の後ろにいた奏の方を見てニヤついていた。
「だ、だったらなんだい?」
「こりゃあ、手間が省けたってもんだぜ! おいおいおい、フェンリルさんよぉ。そこの家を吹き飛ばされたくなかったらこっち来いよぉ?」
な、何を言ってるんだ?
俺は家に振り返った。
何も変わらない家。
俺が住んでいる家。
瑞花たちの大切な場所。
そこを吹き飛ばす?
ふざけんなよ。
ドクンッ
「おい……クソが」
「ああ? なんだよニーちゃん。文句があるなら――」
俺は自分の足で地面を蹴りそのままの勢いのまま炎矢を蹴り上げた。
「ぎゃぁーす。な、何しやがんだよ」
「テメェ、ここを吹き飛ばすのか?」
「ああ? そうだよ! 吹き飛ばしちゃうよ!? どうせ、お前らにはどうしようも――」
「てめぇをここでぶっ潰す」
俺は限界まで接近した炎矢を再び蹴り上げる。
「ぐぎゃぁー! な、なんだよ! なんでこんなに強いんだよ!」
炎矢はさっき投げた玉を数十個投げた。
その玉は規則正しく爆発し針が俺に向かってくる。
もちろん、今の俺に避けるだけの技量はない。
向かってくる針に俺は避けるという概念を捨て顔以外は守らずに前に進む。
「な、何だ!? 何がニーちゃんを動かすんだよ!!」
恐怖の色に顔を染め服の中に手を入れて何かを取り出した。
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!! なら、これでどうよ!!」
そして、手にしていたロケット花火みたいなものを空に投げる。
ロケット花火はランダムに動き、だが確実に俺の方に向かってくる。
あ、あれは当たったら死んじまうかな?
俺は咄嗟にそんなことを考えてしまい体が冷え上がる。
ど、どっちだ? どっちに避ければいい?
俺が左右どちらに避けるか迷っているとどこからか声が聞こえる。
――右だよ。
右、そう聞こえた気がする。
「くそったれが! 右だぁぁぁぁあああああ!!」
俺は誰かの声の通り右に避ける。
すると次の瞬間俺がいた場所は爆発し、現在俺がいる場所は何事もなかったかのように爆発を逃れていた。
「は~い? なんで散らないのかな~?」
炎矢はニヤつきながらも驚いたような顔をしてこちらを見ていた。
俺自身なぜ避けられたのかわからない状況なのにそれを聞くなよ!
にしてもなんだったんだ、さっきの声は。
「はぁ~。まあ、なんで生きてるのは置いておくとして~。どうせなら、もうこの勝負飽きたしそろそろ俺様の最高の技を見せたいと思うんですがどうですか~? まあ、答えは聞いてないけどさ!」
そう言って炎矢は体中から糸を辺りに撒き散らす。
そして、素早く松明を作ったかと思うとそれで糸に火を点ける。
「おいおいおい!! すべての爆弾を爆発させるつもりかよ!」
「そうだよ~ん」
くそったれが! マジで狂ってるぞこいつ!
俺は導線に向かって走る。
そして、近くにあった導線は全て消していく。
「そんなことしても無駄だっつぅの! 一つでも爆発したら全部爆発だ!」
ふざけんなよ!
俺は世界記録を超すような走りで導線をかき消して行くが何分体がうまく動かない。
そこに導線の消し漏れができ、導線に点いた火が爆弾に向かって突き進む。
「くそったれがぁぁぁぁっぁあああああああああ!!」
俺は飛び込みその火を消すために飛び込む。
なんとか火は消せたが問題が発生した。
俺が倒れたすぐ後ろで炎矢が三日月のような口元を作って立っていた。
「へい、ニーちゃん。プレゼントだぜぇ?」
そう言ってプラスチック爆弾を俺の背中に落とした。
まずいまずいまずい!
これはまずいぞ!
避けられない。俺がそう直感した時またしても奇跡が起こる。
「誠!」
短いがちゃんと聞こえた。
これは奏の声だ。
一瞬、奏の顔が見えた。
泣いていた。
ったく。あいつは泣き虫だな。
その表情を見て俺は無性にあいつを守りたいと思った。
バカだ。俺はバカだ。
俺を捨てたオヤジの言葉をここまで守るなんてよぉ。
でも、それでも――
「守りてぇんだ。あいつを。オヤジとの約束を」
ドクンッ
そのためならこの身を捨ててもいい。
立てよ。
立って勝ってみせろよ!
俺が、俺たちが思い描く最高の結末まで走ってみろや!!
俺ぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええ!!
「引き受けたよ。もう一人の僕」
俺は背中にあったプラスチック爆弾を手に取り足の裏まで投げると足の裏で爆弾を上空の彼方まで蹴り上げる。
「何ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」
炎矢の表情はニヤつきから一転恐怖に彩られ一歩後ずさる。
俺は寝た状態のまま地面を蹴り、地面を滑りながら炎矢の真下に入る。
そして、体を回転し足で顎を二回蹴る。
「ぐぎゃあ!」
続いて腹部にかかとを深く突き刺す。
「ぐふっ」
俺は両手を地面に付き、両足をくっ付け体を縮ませ、勢いよく体を伸ばして炎矢に命中させる。
「ぎゃーす!!」
最後の一撃を食らった炎矢は壁まで吹き飛び背中から衝突した。
「ふぅ、これでおしまいだね。ちょっとかっこよくはないけど」
そうだな。全身軽度の火傷、右手に至っては動きやしない。
まあ、こんな勝ち方もたまにはいいんじゃないか?
ドクンッ
「さ、さあ奏、敵のところまで早く行こうぜ?」
俺は全身の痛みをやせ我慢し先を進む。
この先、戦いは避けたほうが良さそうだな。
多分、あと戦えるのは二回といったところだろう。
二回目は死ぬな。うん。
そんなことを思いながら先行きが怪しいが瑞花たちを助けるために目的地『悠河菜葉ビル』まで足を進めるのだった。




