第十話 勝利の代償
勝利の代償
超能力者、四季彩彩芽に俺は見事勝利を得ることに成功した。
だが、その代償に俺は全身筋肉痛、右手骨折と尋常じゃない痛みに襲われている。
そして、現在つまらない番組を変えるため左手でリモコンを取ろうと手を伸ばそうとすると
「ぎゃあああああ!!」
見事左手が痛くなり全身を動かすと全身が拘束されたように痛くなりという魔の連鎖が起こってしまった。
「へい、にーさん。お久だな」
そこに入ってきたのは四季彩彩芽だった。
彩芽は先の戦いで俺に負けた。というか助けられてからどうやら俺に懐いたと瑞花から聞いていたが二日経ってやっと外出許可が出たらしい。
彩芽は大量の力を使ったせいで脳の一部に膨大な圧迫を受けたらしくて傷つしていたらしい。
らしいというのは俺もあのあとすぐに倒れて気を失ったからだ。
「お前はもういいのかよ」
俺はやっと動いた口で彩芽に話しかける。
「ああ、私はにーさんみたいに大怪我じゃなかったからな。それにしてもあっちのお前は随分と無茶なことをするよな」
同感だ。
いやまさか、攻撃ごと天空に弾くとは思わなかったよ。
「あれって推定だけどトラック三台分の威力だぜ?」
「マジで!?」
それを持ち上げたって事は筋肉痛になるよなぁ。
いや、その前に死んじまうか。
「おいおい。そんなこともわからなかったのかよ。ま、死ななかったしいいんじゃね?」
よくねぇよ!
確かに死ななかったけどさ!
「ほら、そんなこと言ってる時間はないわよ? さっさと本題を話しなさいよ」
「わっ」
俺と彩芽が話していると瑞花が彩芽に背後から抱きつきニヤついた顔で言う。
「本題?」
「そうそう、この子ね――」
「わーわーわー。にーさんはいいんだ効かなくて!」
はい? 俺抜きの本題ならここでするなよ。
「あ、えっと、そうじゃなくて……」
な、なんだ?
なんで彩芽のやつ顔を真っ赤にしてんだ?
「そ、その……た、助けてくれたから、その……~~~~っ!!」
「言わないの? なら――」
「わかってるって! だから! ……ありがとう!!」
……え?
「……これはどう反応すればいいんだ?」
俺は呆気にとられて反応に困っていた。
いや、だってねぇ? どうしたらこうなるのかわからんじゃん?
「~~~~っ!! わ、私、部屋行く!」
そう言って彩芽は俺の部屋を出て行ってしまった。
「お、俺、何かしたか?」
俺は物言わぬ罪悪感と筋肉痛で体が動かせずにいた。
「さて、邪魔者もいなくなったことだし、看病行きますか」
ニヤついた瑞花がゆっくりと俺に近寄ってくる。
「い、いや瑞花さん? 俺、病人ですよ?」
「だからこその看病じゃない」
ダメだ。Sモードに入ってしまっている。
瑞花は俺の上にまたがり指で俺の体を摩る。
「ひぃ!」
「ふふ。可愛いわね」
ヘルプ! へルゥゥゥゥゥゥゥゥプ!!
「おい、瑞花」
とそこへ部屋に戻ったはずの彩芽が戻ってきてくれた。
「あ、あら、彩芽。どうしたのかしら?」
冷や汗をかきまくっている瑞花。この頃気づいたが瑞花はみんなの前だとリーダーを演じるところがある。
そして今、仲間になった彩芽がいる。
俺の推測が正しければこのまま行けば止ま――。
「なに面白いことしてんだよ」
あー、簡単に推測を打ち砕かれましたね、はい。
「なら、やってみる?」
「おお!」
助走付きの大ジャンプを成功させた彩芽は俺にまたがり同じことをする。
あ、そ、そこは!
二人なんて――――
「あんたたち何してんの?」
「うっ」
「なっ」
俺を弄んでいた二人が止まる。
俺はゆっくりドアの方を見るとそこには美奈がいた。
「み、美奈? 私たちは強要されて仕方なく……」
「そ、そうだぞ?」
「違うわ! 俺がそんなこと強要するか!」
「あ、なるほど」
「納得された!?」
俺が頭を抱え始めると美奈は笑う。
「嘘だよ。誠はそんなことしないもんね。私はそう思うけど、奏ちゃんがどう思うかは……あとは頑張って」
へ?
奏?
美奈の後ろから奏が出てきた。
その目は見てはいけないものを見たという冷たい視線だった。
「か、奏、俺は何もしてないぞ?」
取り敢えず、誤解を解消するために言ってみたが効果はなかった。
「誠」
「はい?」
「私いつも思うんだけどさ。女の子といろんなことし過ぎだよね?」
「はい」
「私は出会い頭にキスされたし」
「それは――」
「ん?」
「はい」
こ、怖い。目が怖いよ、奏。
「美奈ともキスしたんだって?」
「はい」
「瑞花とも」
「はい」
「今度は体なの?」
「い、いや、これは――」
「ああ?」
「……」
ちなみに瑞花と彩芽は奏が入って来た瞬間さっさか出て行きやがった。
クソウ、何逃げてんだよ!
「誠は一人の女の子だけってのは我慢できないの?」
「いや、そういうつもりは――」
「何?」
「だ、だから――」
「ん?」
「えっと――」
「ああ?」
怖いよぉ! うわーん!
俺は咄嗟に美奈に助けを求めようと目を向けると美奈はドアの隙間からじっと見ていた。
何? 美奈も怖くなったのか?
いやいやいや。俺も助けてよ。
「誠、負けを認めるのも立派だと私は思うよ?」
「ま、負けって――」
「負けだよね?」
「はい」
なにこれ、新手の拷問ですか?
てか、奏マジ怖ぇ。
「これだから誠は……」
「今度からは奏と一緒にいればいいんだろ?」
「は?」
「だってさ。奏と一緒にいれば問題なんじゃね?」
「い、いや、でも――」
「なんだよ」
「も、もう!」
「グナッ」
なんでだ? なんで俺が殴られなきゃならん?
「そ、そうだ。私こんなの持ってるんだぁ」
そう言って殴り続けようとする奏を止めるため美奈が入ってきた。
美奈が持っていたのは水族館のチケットだった。
「なんでそんなの持ってるんだ?」
俺が言うとドアの後ろでガサッと音がした。
ああ、なるほど。瑞花か。
「こ、これ誠にあげるよ」
そう言い残して美奈はさっさか出て行ってしまった。
いや、水族館のチケットって二枚じゃん。
ん? 二枚?
あとひとり必要なんじゃ……。
瑞花はダメだろ。
美奈は……行かないか。
来夢は無理か。
可憐は……そこまで仲が良くない。
なら、彩芽は……まだ治療中か。
「んー」
俺が考えていると目の前の目をキラキラさせている奏が目に入った。
「……行くか?」
「え?」
「だから、水族館一緒に行くか?」
「うん!」
どうやら仲直りできそうな気がしてきた。
「でも、俺の体が満足に動けるようになってからだぞ?」
「わかった!」
俺は肩を竦め奏の頭をなでてやった。
撫でられた奏は嬉しそうに笑顔を浮かべると走って部屋を出て行ってしまった。
「てことは早く体直さないとな」
俺は不意にチケットを見た。
裏面にはこう書かれていた。
『立花水族館無料券。
利用期間、五月三日~五月三十一日まで』
そして、今日の日にちを確認する。
五月三十日。
つまり、明日でこのチケットは使えなくなるってわけだ。
……。
「瑞花ぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!!」
俺は叫んでいた。
あいつはSだ。完璧なるSだ。
俺は明日までに体を完治させなくてはならないというとてつもなく無茶ぶりを強いられ右手を見る。
骨折。つまり折れている。
「治るわけねぇ~」
だが、誘ったからには行かなくてはならない。ちなみに水族館に入るために掛かるお金を俺は持ってない。
つまり、このチケットが使える期間でなければ無理ということになる。
「はあ」
俺はため息を着いてベットに全ての体重をかける。
明日のことは明日の俺が何とかしてくれるさ。
俺はまず寝ようかな。
そして、俺は眠りに着くのだった。




