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第2話

 「ここは……一体何処なんだぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


 誰も居ない無機質な部屋に俺の悲鳴が響き渡る。

 すっかりパニックに陥り悲鳴を上げ続けてしまう。深緑の智将も切れたら凄かったよね。

 叫びながらそんな事を考えられるのは意外と冷静なんだろうか。


 「うっ……げほっ、ごほっ……ごほっ!」


 叫びすぎて咽た所で急に思考がクリアになり気分が落ち着いてくる。俺はこんなに冷静な性格だっただろうか?そう考えると収まったいた不安が再度こみ上げそうになるのでとりあえず棚上げする事にする。


 「まぁ、確かに頭抱えて叫んでても問題解決はしないんだろうけどさ……」


 とはいえ本当に訳が解らない状況なのは確かなわけで。

 大きく溜息をついて目の前のモニタを見直す。本当に見覚えの無い文字だ。だけど読めるし理解も出来る。この端末の操作もそうだ。普段パソコンくらいしか触った事が無いのにこんな複雑なボタンやスイッチのものなんて操作できるわけが無い。


 「まぁ……訳がわからなければ調べるしかないんだけどさ……」


 ぶつぶつ呟きながら端末を操作し現状を把握するための情報が無いか手当たり次第探していく。それは半ば現実逃避じみている事に気が付いてはいたが、情報が必要な事に変わりないと言い聞かせながら俺は必死になって情報収集に励むのであった。


◆◇◆◇


 集中しててどのくらい時間が経過したかは解らないけど、それなりの時間をかけて端末から知りえた情報を整理すると、どうもここは地球じゃないようだ。


 「知らない文字って解った時から薄々感じてはいたけど……」


端末から手に入れた情報は如実にここが地球じゃない事を示している。


 「異世界召還ってヤツなのかな……しょうがにゃ……いやいや、それならまぁ文字が読めてしまうのもテンプレといえばテンプレだから腑に落ちるけど」


 アニメやラノベ、ゲームにどっぷり浸かった現代オタクにとってあまりに馴染みすぎる展開にかえって安心してしまうあたり業が深いなぁと思わなくもないけど、納得するって事は精神の安定に大切な事だ。


 「異世界召還ねぇ……テンプレ通りならチート能力とか期待しちゃうんだけど……まさか端末操作の才能が俺のチートとか無いよな……」


 まぁ、明らかに専門家でないと操作できないような代物を自在に操っている時点でチートと言われればチートなんだろうけど……地味だから何かもっと別なチートを持ってないかと期待してしまう。


 ちなみにここは軍の研究施設の様なものらしくこの世界の事はあまり解らなかった。代わりに別な情報は沢山手に入ったけど。

 別な情報というのは、どうもこの施設は魔獣の研究をしていたらしい。魔獣だよ魔獣。それだけでも異世界って納得するってもんだ。この世界は人を襲う魔獣の危険が大きい世界らしい。魔獣に対抗するため様々な研究が行われていたみたいで、ここでは軍の施設らしく武器を開発していたみたいだ。


 「結構危ない世界に召還されてしまったんだなぁ……魔獣の資料見た限り遭遇したら即死だぞ……」


 この世界の人間基準だとどうなのかは解らないけど、平凡な日本人の俺の場合はまず襲われたら生き残れないだろう。

 そもそも軍隊で武器を開発するようなレベルの相手なら、この世界の人間でも生身では厳しいと思う。


 「となると……まずは身を守る術を探す事と、食料探しかなぁ」


 身の安全と食料確保は異世界召還では基本。まぁ、召還先で可愛いor美人のヒロインに保護されるのも基本だけど、俺の場合は1人で投げ出されるタイプみたいだし。俺も保護されたかったなんて残念に思ってないけどさ……思ってないけどさ!


 「まぁ、施設の地図があるから武器も食料も残っていれば何とかなるか」


 この部屋には端末とベッド以外何も無いから探しに行かないといけないが、幸い端末内にこの施設の地図があったので武器と食料のありそうな所の目星をつける事ができたのは運が良い方だろう。


 「なんせ、作品によってはいきなり身一つでサバイバルなものもあるからなぁ……」


 とりあえず目的地までのルートを頭に叩き込み、部屋を出る事とする。誰かに会う可能性についてはこの部屋の埃の溜りっぷりから放棄されたと予想し考慮に入れない。 

 むしろ魔獣の巣になってないかが心配だが変な音も聞えないし、サブ電源入れても特に反応が無い事から特に危険なものが居る事は無いと思う。


 「というか、この部屋を出ない訳にはいかない状況だから危険があっても四の五の言ってられないか……」


 そんな風に呟きながら俺は端末の反対側にある扉(壁にあるボタンを押して開く自動ドアだった)から廃墟と化した施設の探索に乗り出すのであった。


◆◇◆◇


 扉が開いた先は無機質な廊下だった。念のため左右を確認し耳を澄ませてみるが特に異常は感じない。サブ電源しか入ってないせいか明りも薄暗く、シン…とした静けさと相まって非常に心細い。


 「よし、いくか」


 自分を鼓舞する様に一言呟くと探索を開始する。

 今居る所はどうやら研究区画らしいので、まずは居住区画を目指す事にした。身を守る術についても目星をつけているが、そこは居住区画とは反対側なのでどちらを優先するか迷った末、居住区画の探索を優先する事にした。

 身を守る術を探す事より優先したのは単純に腹が減ったからである。ここで目覚めてから何も口にしておらず、情報収集にも時間を掛けたせいで空腹感が物凄い。時間がどのくらい経っているかは解らないが最低半日は何も口にしていないだろう。

 空腹で体が動かなくなっては身を守る術を探すどころではなくなってしまうのだ。


 「異世界に来て早々餓死だなんて冗談じゃないよな」


 それに、危険と隣り合わせの世界なら身の回りに武器を置いていても不思議じゃない。居住区画に武器がある可能性もあると予想する。

 そんな訳で食料を求めて居住区画を目指す。廊下も埃の層が出来ておりこの施設が放棄されて長い時間が経っている事を覗わせる。


 「まぁ……缶詰くらいあるだろう……あるといいなぁ」


 ぺたりぺたりと裸足で埃に足跡を残しながら俺は居住区画へと向うのであった。

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