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第19話

 「一言で言ってしまえば、REDが死んだという情報は儲けの種になるんだよ」


 ダイザック商会を出た俺達は再び軽自動車に乗りギルドへと向った。ギルドに到着する間に先程の理由を聞いてみたらそんな答えが返ってきた。

 何でもREDが死ぬとその縄張りにしていた地域に向って、REDの幼生体が率いる大量の魔獣の群れが移動するらしい。大破壊の時の様な規模ではないらしいが、かなりの数の魔獣が周辺地域から移動してくるらしい。


 「何でまた魔獣が大量に移動を?」

 「……それはREDが縄張りにしている場所がエーテルスポットだから。魔素エーテルが濃い程魔獣の成長速度が早まるので、それまでREDが独占していたエーテルスポット中心、周囲から魔素エーテルを集める魔石に向ってREDの幼生体が移動を始める。それにつれられて魔獣の若い個体も一緒に移動する。また、REDは魔石を縄張りにする事であの巨体まで成長して成体になるみたい」


 魔石の話は初耳だが、確かにあんだけでかい巨体に成長するには魔素エーテルが沢山要るんだろう。


 「そして、ベルティスタ王国も群れを殲滅させるために死んだREDの地域に向けて軍を出兵する。これは王国の基本方針になっているからほぼ確実に軍が出兵するな」

 「軍が出兵を?こう言うのも何ですが街に被害が出ないなら放っておいた方がいいような気がするんですけど」

 「それは群を率いているのがREDの幼生体だからだ。放っておくと魔石が集める濃い魔素エーテルで新たなREDが誕生してしまうので、通常兵器で攻撃の通る幼生体のうちに群れごと殲滅して魔石を押さえるのさ。それと、魔石は都市の動力源の源にもなるから王国の領土として開拓できる。あの地域は荒野の真っ只中だがルドゥとブゥア周辺地域を探索するには丁度良い距離にあるから、砦なり町なり作って補給地点を作れば新しい需要が生まれるんじゃないかな」


 なるほど、REDの数も減らせて王国の領土も増える訳か。そりゃ派兵もする訳だ。という事はREDはその地域のボスみたいなものでそれを倒す事で奪われた領土を取り返すチャンスが出てくるという事か。なんだか地域制圧型のSLGみたいな話だな。


 「と、いう訳でREDが死んだという情報が儲けの種になる理由に繋がるのさ。軍の派兵や制圧できた場合の必要物資……これらが確実に必要となる時期が誰よりも先に解ったとしたら?」

 「あぁ……なるほど、先に買い占めておいて売りつけるという訳ですか」

 「そういう事。これからの儲けを考えれば魔騎兵ペイルライダーの補修資材の1つや2つくらい安いものなのさ。今頃ゲンツの奴は商会総出であちこち走り回ってる頃だろう」


 行動早いなゲンツさん。まぁ、商人は商機を掴むのが第一だろうし。それにしても、なんだかタダで補修資材を貰う理由が凄く大きな話になったな。


 「でも、基本方針とはいえこれで軍が派遣されなかった場合どうなるんでしょう……?違約金とか払わないとかいけなくなっちゃうんでしょうか?」

 「それは無いと思いますよ。10年前にもあの地域のREDが龍によって滅ぼされた後に軍を派遣しましたが返り討ちにあって制圧を失敗してますからね。現王子の実績作りにも利用できますし逆に張り切って出兵すると思いますよ」


 ふと気になった事を呟くと、後部座席から身を乗り出して千夏さんが珍しく硬い声で答えてきた。いつものウィスパーボイスでない事に驚いて思わず身を乗り出してきた千夏さんの顔を至近距離で見つめてみまう。


 「千夏」

 「あっ……」


 春樺さんが声を掛けると至近距離で見つめていたのに気付いたのか顔を赤くして後部座席に戻る千夏さん。俺も顔を赤くしつつも龍という気になる単語を聞こうとするが、それより先に春樺さんが先に口を開く。


 「そろそろギルドに到着するぞ。桐見君、龍の事はまた後でな」


 結構喋っていた様でいつの間にかギルドに到着した様だ。いつもほんわかした千夏さんがあんな硬い声を出すなんてびっくりした。10年前に何かあったんだろうか……気になるもやもやを抱えたまま、車はギルドの敷地内に付属する駐車場へ入っていくのだった。

 

◆◇◆◇


 ギルドもダイザック商会と同じく3階建てのビルだったが規模はこちらの方が大きい。元の世界だったらナントカ会館とかついていそうな建物で敷地も広い。

 敷地内に付属する駐車場には猟兵や猟団のものらしき馬車やらトレーラーやら軽トラックやらが停まっていた。車両はどれも年代ものな上に修理改造が続けられたせいか同じものが1つとない。何だか博覧会みたいで面白かった。


 ギルドの入口はぶ厚い鋼鉄製の扉で何と自動扉だった。大破壊時に損傷が少ない建物だったのかもしれないけど、今でも自動扉を稼動させている建物は珍しいんじゃないだろうか。

 重い扉が左右に開き中に入ると、建物内は何か元の世界の役所内をイメージさせる作りになっていた。フロア全体にカウンターが置かれてそれぞれ区分けされており、ご丁寧に天井には案内板がぶら下がっていた。

 まぁ……カウンターの順番待ちをしている人や談話スペースで笑い合っている人達はオブラートに包んだ言い方をすればどなたもワイルドな人達ばかりなのが元の世界と決定的に違う所なんだけど。


 春樺さん達はそんな中を慣れた様子で歩いて行く。俺も彼女達の後についていくが周りの視線が痛い気がするのは気のせい……じゃないんだろうなぁ。

 ぱっと見た所ギルド内に居る猟兵らしき人達は男性が多く、そんな中を美人3姉妹にくっついて歩いている男が居ればそりゃ鋭い視線を向けるよね。俺だってそうする。

 俺だけが居心地悪い感じの中を進んで行くと、丁度空いたカウンターがあったのでそこの受付の男性(ちなみに受付職員は若い女性の所だけ何故か混む傾向がある)に春樺さんは何かカードを見せた。

 すると男性は内線でどこかに連絡を取ると春樺さんに「2階のいつもの所だ」と告げると春樺さんは頷いてまた歩き出す。大人しく付いて行って2階に上がるとそこも1階と同じような作りになっていた。違う所はカウンターが扉までついたパーティションになっており個室になっている点だろうか。


 「2階は上位の猟兵専門カウンターになってるんですよ。ウチはお姉ちゃんが上位のA級猟兵なのでここに案内されたんです」


 不思議そうな表情が出ていたのだろうか。千夏さんが体を寄せてきて耳打ちをして教えてくれる。さっきの事は無かったかのようにいつも通りのウィスパーボイスだった。それにしても耳元で千夏さんのウィスパーボイスを聞くと癒され度が半端無いな……

 個室になっているのはおそらく指名依頼とか機密性の高い依頼も扱うからなんだろうとアタリをつけながら中に入る。中はこちら側に椅子が2つあってカウンターの向こうには女性の職員が座っていた。

 くすんだ金髪を肩口まで伸ばした人で女性の年は良く解らないけど、おそらく30後半は越えている気がする。ギルドの銀行員の様な制服が凄く板についている事と雰囲気を合わせてベテランの職員さんって感じだ。

 椅子に春樺さんが座り、俺は後ろで立っていようとしたら何故か俺も座らされた。千夏さんが俺の、秋穂さんが春樺さんの後ろに立つけどパーティションはそれほど広くないからちょっと狭いかもしれない。


 「おかえり、春樺。今回も無事だったみたいね。千夏と秋穂も元気そうで何より」

 「あのREDを相手にしてテストするのはいつもの事だからな。油断しなければ大丈夫だ」

 「そりゃ頼もしいねぇ」


 職員さんと春樺さん達は気安い感じで依頼についての話を続けていく。ゲンツさんと同じく付き合いの長い人なんだろう。


 「ダイザック商会から依頼完了の報告が来ているよ。報酬はいつも通り猟団の口座に振込みで良いかい?」

 「ああ、それで頼む」

 「春樺もたまには自分の口座で受け取れば良いのに。元々は猟団じゃなくて春樺個人宛ての指名依頼なんでしょ?」

 「ウチは身内だけの猟団だから別に不便は無いよ」

 「アンタはいつもそれだねぇ」


 職員さんは春樺さんからカードを受け取ると、カードを読み取り機にかけて端末を操作する。驚いた事にパソコンに良く似ていた。

 暫くすると振込みが終わったのかカードを取り出して春樺さんに返してきた。それと同時に俺の方に向き直りじぃ……と値踏みするかの様に見つめてくる。


 「で……身内というけどこの坊やは?迷子の新人でも連れてきてくれたの?」

 「いや、身内だよ。ウチの新しい猟団員だ」

 「……」


 驚きで暫く固まる職員さん。会う人ごとに珍しがられるな……誰も彼も驚くっていう事は猟団員希望者をずっと撥ねていたんだろうけど……そこまで驚かれるレベルで希望者が殺到していたんだろうか。


 「桐見冬真君だ。ギルドにも入っていない新人でな、今日は報酬と一緒に登録を済ませようと思って連れて来た」

 「あぁ……春樺が男を連れてくるなんて……明日は雪でも降るんじゃないかしら」


 大げさに顔を両手で覆う職員さん。そこまで言うほどの事か……?と冷や汗を掻いてしまうが、紹介されていつまでも黙ったままでいる訳にもいくまい。


 「桐見冬真です。よろしくおねがいします」


 と、ぺこりと挨拶。それを見て職員さんは顔を両手で覆うのを止めてこちらを見てくる。


 「ふぅん……猟兵になろうっていう割には行儀の良い子だね。春樺、詳しく聞かせてもらおうかしら?」


 そう言う職員さんに春樺さん達は説明をしていく。俺が冷凍睡眠者スリーパーである事。依頼の途中で出会った事。今回の依頼を手伝った事。神機使いとREDを倒した事以外は伏せて俺が説明する間も無く彼女達が説明してくれた。……何%か美化が掛かっていた気がするけど。

 

 「なるほどねぇ……記憶が無いっていうけど眠る前はエースだったのかしらね……その割には線が細いし魔騎兵ペイルライダー乗りっぽい感じは受けないんだけど」


 カウンターから身を乗り出して俺を品定めし直す職員さん。


 「まぁ、人は見かけによらないって言うしね。それじゃ登録をしてしまいましょうか」


 と言って登録の準備を始めた所ではたと止まる職員さん。そして春樺さんと俺を交互に見ながら尋ねてくる。


 「ねぇ、桐見君の猟兵登録なんだけど今度入った新人の子に任せてもいいかしら?勿論、私が後ろで監督して間違えたとしてもその場でちゃんと直すから」

 「また唐突だな。そういえば千夏の時もそうだった覚えがあるが」

 「いやね、猟兵になろうって人は大抵荒っぽい人が多いでしょう?研修終わったばかりの新人に任せるにはちょっと荷が重い所があってねぇ……」

 「ふむ……私達も猟兵だぞ?」

 「まぁ、そうだけどね。でも春樺達みたいに行儀の良い猟兵は珍しいのよ。だからこういう時に経験を積ませたいの。頼めないかしら?」


 春樺さんがどうする?とこちらを見てくる。


 「ええと……俺が行儀が良いっていう根拠は?」

 「春樺が連れて来た男だもの、それにここまで随分大人しかったしね」

 「はぁ……まぁ、俺は構いませんよ」


 この職員さんも見ているみたいだし研修も受けてるって事なら別に断る理由は無いので受ける事とする。職員さんは俺にありがとうと言ってその新人の子を呼びにパーティションから出て行った。


◆◇◆◇


 暫くして職員さんが連れて来た新人の子は小柄な女の子だった。しかも長い緑髪を三つ編みにした眼鏡っ子だ。むぅ……三つ編み緑髪眼鏡っ子……パーフェクトじゃないかウォルター。不人気属性とか言うやつは俺が出て行ってやっつけてやる等と考えているとその子はカウンターに座ってこちらにぺこりと挨拶してきた。


 「初めまして、私が桐見さんのギルド登録を担当させて頂きますアーシェ=トリスです。至らない所があるとは思いますがよろしくお願いします」


 随分と丁寧な物腰の子だなぁ。ギルドの教育の賜物なのかそれとも良い所のお嬢さんだったりするんだろうか。ギルドの制服をまだ着慣れていない感じがまた可愛い。


 「桐見冬真です、こちらこそよろしくお願いします」


 俺もぺこりと挨拶を返すついでににっこり笑いかけておく。第一印象って大事だし、これからギルドにはお世話になるんだから職員の人に愛想良くして損は無いだろう。大した顔じゃないけど笑って挨拶が出来る人は魅力的に見えるものだとおばあちゃんが言っていた。

 するとアーシェさんは何かほっとした様な顔をして笑顔を返してきた。


 「はい、よろしくお願いします」


 あぁ、うん。若い女性のカウンターが混む理由が頭でなく心で理解できた気がする。でも、右肩が痛い……何で千夏さんいつの間にか右肩握ってるの。何気に握力凄いんですけど……。痛みを堪えていると、アーシェさんは用紙を取り出してこちらに差し出してきた。


 「こちらが登録用紙になります。初めてのギルド登録の場合、ギルド登録手数料とカードの発行に合計1万ゴルト必要になりますがよろしいでしょうか?」

 

 ……登録料!お約束ではあるが無一文だぞ俺!?

 アーシェさんの言葉に瞬時に固まる俺。しかし、救いの女神は隣に座っていた。


 「登録料は猟団の口座から引いておいてくれ。彼はウチの団員だからな」

 「わかりました。それでは桐見さん、この用紙に記入をお願いします。解らない所があったら何でも聞いてください」

 「あ、ありがとうございます。春樺さん」


 ほっとしながら春樺さんに頭を下げる。何かもう世話になりっぱなしだなぁ……

 用紙に一通り目を通してから、ペンを借りて少ない空欄を埋めていく。会話読文だけでなく書き方も標準装備で助かった。

 まず名前と年齢を埋めると横から春樺さんがちょっと驚いた声を出してきた。


 「桐見君は18歳なんだな……」

 「ええ、今年で19歳になりますよ」

 「そうなんですか?それなら私の1つ下の年なんですねー」

 「……私の5つ上」

 「あ、私と同じ年なんですね」


 と女性陣が一斉に喋り始める。これはアレか、よくある年齢より見た目が幼いというアレなのか。


 「えーと、年相応に見えませんか?やっぱり」

 「いや、そういう事でなく18歳であれだけ魔騎兵ペイルライダーを扱えるとは流石だと思ってな」


 てっきり外見ネタかと思ったら感心されてしまった。


 「まぁ……冷凍睡眠者スリーパーなんで318歳になるのか18歳なのかどっちなんだって話ですけどね」

 「ぷ……ははっ、確かにそれはそうだ」

 「そういえば春樺さんは俺のいくつ上なんです?」

 「5つ上だな。年相応に見えないか?やっぱり」

 「あ、いえいえ。そういう事じゃないですけど……」


 あっさり仕返しされてしまい、俺は慌てて空欄を埋める作業に戻る。

 とは言っても、空欄は少ない。名前年齢の他は拠点と登録する猟兵の種別、魔騎兵ペイルライダーの所持の有無と所属猟団の有無くらいだった。


 「この猟兵の種別って何ですか?」

 「あ、えと……猟兵は装甲種と軽装種の2種類に分かれています。魔騎兵ペイルライダー乗りを装甲種、魔騎兵ペイルライダーを持たない猟兵を軽装種ですね。装甲猟兵、軽装猟兵と呼ぶこともあります」


 装甲猟兵とか色々とニアピンな名称すぎるだろう……と思いながら装甲種と魔騎兵ペイルライダー所持で有にマルを付けつつアーシェさんに気になった事を尋ねてみた。


 「魔獣って魔騎兵ペイルライダー無くても対抗できるんですか?」

 「そうですね……小鬼ゴブリン犬鬼コボルト等の小型種ならきちんと武装を整えれば対抗できますよ。壁外の農場に現れるのは小型種ばかりですから農場の警備依頼は軽装種の主な収入源になっていますね」


 魔獣といってもピンキリって事か。エイダも武装すれば対抗できるような事を言っていたし、街中ですれ違った傭兵風の人や全身鎧の人などが軽装種の猟兵って事なんだろう。

 街中の様子を思い出してなるほどと思いつつ拠点と所属猟団の項目を埋めてアーシェさんに提出する。 アーシェさんはそれを受け取ると端末に繋がれたA4くらいの大きさのボードを取り出すと、用紙の中身を登録していく。


 「このボードに手を乗せて下さい。これで桐見さんの生体情報をこちらのギルドカードに登録します」


 言われた通り右手をボードに乗せるとアーシェさんが端末を操作する。すると掌に静電気に触れた時の様な刺激が流れ思わず声を上げてしまった。


 「って!」

 「あ……すみません!読み取り時にちょっと刺激が起きる事を伝え忘れていました!」


 慌てた様子でぺこぺこ頭を下げてくるアーシェさん。


 「いえ、ちょっと驚いただけですから問題ないですよ」


 なおも頭を下げようとするアーシェさんを宥めてカードの説明をお願いする。このくらいの小さなミスに目くじら立てるほどじゃないし、ちょっとビリっとしただけだ。そういえばエイダを起動させた時もビリっときたな……と思っているとアーシェさんが顔を赤くしながらカードを取り出してカウンターの上に置いた。


 「本当に申し訳ありませんでした。これが桐見さんのギルドカードになります」


 置かれたカードは春樺さんが1階で見せていたものと同じものだった。ギルドカードは身分証兼通帳機能を持ったものでギルド直営店や提携店での買い物時にカードだけで買い物ができるらしい。

 しかし、それ以外の店は現金でのやり取りになるのでカードとある程度の現金を持ち歩く形が一般的な様だ。

 また、ギルドカードは生体情報を登録しており本人以外で通帳機能を使うことは出来ない上に本人証明の際は念じると外枠が光るらしい。実際手に取って本人証明と念じると外枠が薄白く光った。

 むぅ、これは地味に凄い技術を使ってるな……パソコンに似た端末といい恐らくギルドは大破壊前の技術を使っているのだろう。


 「ギルドランクはS~F級に分かれています。Sが特級、A~C級が上位、D~F級が下位ランクとなっておりますが、これは装甲種・軽装種では別々のものとなっていますので注意してください。例えば桐見さんなら装甲種のFランクといった具合ですね。また、魔騎兵ペイルライダーを入手し軽装種から装甲種に変更する場合は元のランクを加味したランクで登録されますけど……桐見さんは最初から魔騎兵ペイルライダーをお持ちですのであまり気にしなくて良いかもしれませんね」

 「魔騎兵ペイルライダーを失った場合はどうなるんですか?」

 「その場合は再度魔騎兵ペイルライダーを入手するまで軽装種に変更となります。また、ランクも軽装種の最下級Fランクになりますが、所持する武装によってはそれより上のランクで登録となりますね」

 「聞く限りでは軽装種にも上位ランクがあるみたいですけど装甲種と同じなんですか?その、魔騎兵ペイルライダー無しで大型の魔獣を倒したりとか」


 小型種は武装すれば倒せるって説明だったけどそれなら種別ごとに分けてランクを設定している意味がない。小型種を倒せるのは下位ランクまでという風に統一すればいいからだ。


 「はい、極稀ですが魔騎兵ペイルライダー無しで大型魔獣を討伐する方がいらっしゃいます。なので軽装種にも上位ランクが設定されています」

 

 予想通り魔騎兵ペイルライダー無しで大型魔獣を倒す存在が居るらしい。どんな怪力男なんだろうと思っていると春樺さんが口を挟んできた。


 「軽装種の上位ランクは全て強化人間ブーステッドだ。大破壊前に魔獣に対抗するために肉体強化を行った者たちの子孫らしい。魔騎兵ペイルライダーに負けず劣らずの身体能力を持っているが数が少ない。混血で血が薄まったせいと言われているな」


 そういえばエイダが言ってたな。強化人間ブーステッドって素手で魔獣と渡り合えるくらい遺伝子調整された人間だって。


 「春樺さんの言うとおりですね。今では純血種も珍しいですしたまに先祖返りが出るくらいなので軽装種の上位ランクは少ないんですよ。ベルティスタでも軽装種の上位ランクは5人だったと記憶しています」


 大破壊の生き残りも少なかったのだろうなぁ。


 「依頼を受けたい場合はカウンターにおります職員にご相談下さい。ランクと装備に見合った依頼をご紹介させていただきます。その際はギルドカードを忘れずにお持ち下さいね」

 「わかりました」


 まぁ、最下級ランクだし無茶な依頼は無いだろう。後はコツコツ依頼を重ねていくだけだ。


 「ええと……他に何かご質問はありますか?」

 「いえ、今の所気になった所は説明してもらいました」


 戻ってから気になる点が出てきたとしても春樺さんも千夏さんに聞けばいいだろうし、今の所はアーシェさんの説明で十分だ。


 「そうですか。それではこれでギルド登録の完了といたします。ようこそ桐見冬真さん、そしてよろしくお願いします」


 ぺこりとアーシェさんが頭を下げる。つられて俺も頭を下げると同時に頭を上げてしまい思わず見つめ合ってしまった。途端、アーシェさんは顔を赤くして後ろで受付の監督をしていた職員さんを振り向く。


 「あの……クリスさん。どうでしたか?」

 「65点」

 「あう……」


 あら、意外と辛めの採点。生体情報読み取りの所の説明不足以外はちゃんとやれていた気がするんだけど。それにしても職員さんクリスさんって名前だったのか。良く見ると胸元にネームプレートが着けてあるのに今気付く。クリスティナ=トルスと書かれているのを確認すると右肩がまた痛くなった。愛称なんだろうなぁ……あたたた……


 「生体情報読み取りの説明不足もだけど、大事な説明を1つ忘れているね。装甲種で登録するなら一度ギルドに所持する魔騎兵ペイルライダーを持ち込んで登録と動作確認が必要なのを忘れたかい?」


 クリスさんがそういうとアーシェさんは青くなって平謝り。


 「すみませんすみませんすみません……」

 「私はいいから桐見君に説明」

 「は、はいっ……」


 あ、ちょっと涙目。一度ミスるとドツボにはまる子なんだろうか。


 「た、たた……大変失礼しましたっ!い……今クリスさんがおっしゃった通り、装甲種登録の際は所持する魔騎兵ペイルライダーも登録が必要になりまひゅ……っ!?」


 あ、噛んだ。しかも涙目がやばい感じ。


 「大丈夫ですよ。アーシェさん、落ち着いて下さい。深呼吸深呼吸」


 なるべく優しい声を出して説明不足に怒っていないと伝えるために笑顔を向ける。彼女が深呼吸を繰り返して落ち着くまで暫し時間が掛かった。


 「はぁ……ぁ。お見苦しいところをお見せしてしまいました」


 ようやく落ち着いたアーシェさんから詳しい話を聞く。とはいってもクリスさんが言った事以外は登録と動作確認の理由を聞いたくらいだ。

 たまに不良品の魔騎兵ペイルライダーを買わされて動作不良で魔獣に殺されてしまうケースがある様で、それの防止のためにギルドで確認するんだとか。また、ギルドに登録させる事で王国軍以外の防衛戦力がどのくらいあるのか把握しておくためらしい。

 ギルドで申請すればいつでも登録手続きはできるので、できれば依頼を受けるのはギルドで登録と動作確認をしてからにして欲しいという事だった。

 まぁ、ベルガは中破してるからまずは修理しないと依頼を受けられない状態だ。きっちり修理してから登録に来るとしよう。

 

 「それじゃあ、とりあえず登録は終わりという事ですか?」

 「はい、そうなりますね。色々とご迷惑をお掛けしました」

 「私からもありがとう、桐見君。アーシェには良い経験をさせる事ができたよ」

 

 アーシェさんの後ろに立つクリスさんもお礼を言ってくる。

 魔騎兵ペイルライダーの準備が出来たらまた来ますと伝えるといつでもお待ちしてますとの事だった。

 席を立ってパーティションから皆で出ようとするとアーシェさんが声を掛けてきた。


 「あの……桐見さんが初めての相手で良かったです。ありがとうございました」

 

 と、席を立ってぺこりと頭を下げてくる。その瞬間、その場全員が固まってしまった。

 彼女も頭を上げた所で自分の台詞で周りが固まってしまったのに気付いたのだろう、耳まで一気に真っ赤になるとぱたぱたと真っ先にパーティションから出て行き、クリスさんは思い切り笑いを堪えている。

 そして千夏さんが右肩を思い切り握ってくる。何故だ、アーシェさんの小柄な割りに大きな胸に視線を吸い寄せられるそうになる度に肩を握られそうになるから必死に耐えていたというのにっ!


 「あははっ!桐見君は意外とモテるんだなぁっ」


 そして春樺さんは頭をわしゃわしゃと撫でてくる。秋穂さんも心なしかジト目な気がする。

 何だか理不尽を感じながら俺達はギルドから出るのだった。

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