第1話
もうちょっと書き溜めてから投稿する予定でしたが我慢できずに投稿してしまいました。
少しでも楽しんで貰えたら幸いです。
「っうー……あー……ねむ……」
いつもと同じ時間に目を覚したつもりだったが、周りはまだ薄暗かった。
「あー……」
どうやら、いつもより早く目が覚めてしまったようだ。部屋の暗さからしてまだ日の出前っぽい。
「……むぅ……」
寝ぼけながら時間まで二度寝しようと寝返りをうつと、どうもいつも寝ているベッドの感触と違う気がする。というか掛け布団が無い。また蹴飛ばしてしまったのだろう。
「んんー……」
うつ伏せになり手を動かしてベッドの下に落ちているだろう掛け布団を探してみるが手には何も当たらない。そんなに勢い良く蹴飛ばしてしまったのだろうかとぼんやり思っていると、ブゥゥゥゥン…という機械音が聞えてくる。
パソコンの電源落とし忘れてたのかな…と思っていると、床についた手から違和感を覚える。
床が冷たいのだ。自分の部屋は確かにフローリングだけどカーペットを敷いている。
なのにこの床の感触はおかしい。何だかビルの床面みたいだ。掌から伝わってくる床の冷たさに段々と頭が起きてくる。
「…あー…あれ?どこだここ…?」
目を開くとそこはいつも見慣れた自室ではなかった。
◆◇◆◇
「まさかリアルで見知らぬ天井ネタをする日が来ようとは……」
あまりの事に目覚めてから暫く放心状態だったけど、ふと我に返り部屋を観察する。
夜明け前の時間と思っていたが、どうやら照明が点いてなくて部屋が暗く、薄らぼんやりと点いていた壁面のモニタ光を勘違いしたらしい。
頼りない光だが、ここがどこかの部屋の中という事は解った。
「自分の部屋で普通に寝てた筈だけど……はっ、まさか拉致監禁!?」
いやいやいや、そんな事をしそうなヤンデレ彼女なんて居ないし自宅を襲われて誘拐される程ウチは金持ちじゃない。いたって普通の中流家庭だ。
となると夢を見ている、幻を見ている、幻覚を見ている、白昼夢を見ている……まてまて、落ち着け、パニックになるなクールに冷静に、深緑の智将のごとく冷静になれ。
暫く深呼吸をして気を無理矢理落ち着けて口を開く。
「俺の名前は桐見冬真(とうみ とうま)。18歳で明日…いや、今日から大学生。昨日までの春休みはぐーたら過ごしていた。別に海外旅行にも行って無いし、むしろ家からはあまり出ずに過ごしてた。夕べは大学の入学式のために早めに……確か22時くらいに布団に入った筈。……うん、自分の事はちゃんと覚えてる。」
不安を紛らわすかのように口に出して自分の事を確認する。
「それにしても変なベッドだな。何か太いケーブル付いてるし、機械にベッドがくっついた感じだけど。」
ぱっと見、なんだかSF作品に出てくる医療カプセルみたいだ。
そんな風に思いながら、いつまでも混乱してても仕方が無いと思い直す。不思議と混乱していた筈の頭はいつの間にか冷めており、ベッドから降りてみると裸足の足裏からひやりとした感触が伝わってくる。
「つめたっ……スリッパとか無いのかなぁ……」
とりあえず、ぼんやりと光るモニタを調べるため壁際まで移動する。しかし、電源が付いているだけで画面は真っ青だ。
「青画面って事は何か不具合でも起きてるのかな」
良く観察してみると、壁一面にモニタが設置してあり、制御盤の様なものが設置されている。何かの端末の様にも見える。
「何か警備室みたいだな……。でもその割には変なベッドが部屋の真ん中に置かれてるから警備室っぽく無いけど」
この端末を動かして目の前の青画面を何とかできれば何か解るかもと思い、薄い光の中目を凝らして見てみると、プラスチックカバーで覆われた赤いボタンが目に付く。
「これ……かな?パワーって読めるし、赤いボタンだし」
プラスチックカバーを開き、赤いボタンを押してみる。
「これで警報装置だったら笑えるな」
まぁ、そうなったら誰か来るだろうからかえっていいかもしれない。そんな風に思っていると機械が動く際の低い駆動音が聞えてくる。
すると、目の前にある青画面のモニタのうちの1つの画面が変わり文字が表示される。
「ええと……なになに?主電源の故障?サブ電源の起動を行ってください?ってどうやるんだよ……」
幸い、サブ電源の起動手順は解りやすく、画面の手順通りに操作をすると無事にサブ電源を起動できた。サブ電源の起動完了と共に天井の灯りが付く。恐らく全開の光量ではないだろうが部屋全体に行き渡っているので良しとする。
「はぁ……」
周りが明るくなり思わず安堵する。見知らぬ暗い部屋で過ごすのは正直精神に悪い。
明るくなった所で改めて部屋を見渡してみると全体的に埃が凄かった。ベッドから壁際まで歩いてきた足跡がくっきり見える程だ。
「うわ……どんだけ放置されてたんだろう……」
見た限り、壁面のモニタと制御盤、部屋の中心部の医療カプセルのような物以外に何も置かれて居ない殺風景な部屋だった。
「本当に訳が解らないな。一体どこなんだここは……」
端末のコンソールを適当に叩き、何か情報が無いか探しているうちにふと、重大な事に気が付き一気に血の気が引いて青くなる。
「……何だこの文字?」
そう、モニタに映る文字は全く見知らぬ文字だった。日本語は勿論英語等の外国語とも全く違う。もしかしたらどこかの凄いマイナーな土地の文字かもしれないが、少なくとも地球上にある文字であるとは思えなかった。
しかし、問題はそこじゃなかった。いや、それも十分問題だけどそれ以上に重大な問題に直面していた。
「何でこの知らない筈の文字が読めて理解できるんだ?それに、何でこの端末の操作も出来てしまうんだ!?」
そう、おそらく地球上の文字でないものを理解し、地球産でない機械の操作を全く違和感無く行えてしまっているのだ。
その事に気付いた途端言いようの無い悪寒が全身を駆け巡る。
「ここは……一体何処なんだぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
そして誰も居ない無機質な部屋に俺の悲鳴が響き渡るのだった。