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そんなやり取りが部室で行われていた頃、紅は自身のもう一つの肩書きである生徒会副会長として会議に出席していた。
議題は新入生歓迎会。
それは代々生徒会が主催しているイベントの一つだ。その名の通り新入生を歓迎するためのイベントで、在校生と新入生との交流を目的に行われている。例年は「昨年と同じことをしよう」とすぐに会議が終了するのだが、今年は少し荒れていた。
原因は、昨年と同じことでは面白くないと発言した紅と多少リスキーなゲームの方が全力で楽しんでくれると思うんだと発言した生徒会長にある。死なない程度のリスクで昨年行ったスタンプラリーではない事を目標に、今、会議が進行されているというわけだ。
「やっぱりサバイバルがいいと思うんだよ」
紅のその言葉に
「だとしたら、無人島かな?」
と、のりのりで行き先を考える生徒会長。
この二人は、他人の人生を振り回しながら人生を謳歌する人種だ。現実的な問題を一切考慮せず、楽しそうだからという理由で動く。今だって新入生に無人島での自給自足のサバイバルをさせようとして口元に弧を描いているのだ。狂っているとしか言いようがない。
「お前ら……自分たちが出来るからって他人にも同じ事を求めようとするな。一般的な高校生はな、自給自足生活なんて出来ないんだよ。ガス・電気・水道が無きゃ生きていく事もままならない生活してるんだ。せめてキャンプぐらいにしておけ」
これ以上あらぬ方向に話がいかないよう釘を刺したのは、会計。上の二人に比べ、常識人でありこの生徒会の最後の砦と言っても過言ではない人物だ。
「マッチ・薪・食材・テント又はコテージはこっちで用意して、後は自力でどうにかなるだろ。とりあえず予算と日中にやるレクリエーションを決めて、今日の会議を終わらせてくれ」
一部を除いて会計同様真面目な書記は畳み掛けるようにそう口にした。