第八章 ネット管理者対コンピューターウィルス
U棟計算機室にて
真っ白なワークステーションが両脇に十台並び、そしてプリンターが有り、大画面のパソコンが中央に五台
U棟計算機室は様変わりしていた
「何者かが侵入していました」木村の声だ
「進入ログを全てチェック、ブレイクファイヤー起動開始」指揮しているのは加納匡
「ブレイクファイヤーによって全てのウィルス除去開始しました」木村の反応は早い
「不審な侵入者には全て此方からウィルス転送、新型ウィルス兵器使用許可を下します」
加納は計算機室室長兼務指揮官
「今、立ち上げているワークステーション全てに向けて不審な郵送物に対し注意を促すんだ」加納からの指令である
「今からどのルートで進入して来たか検索します」若いエンジニアの声である
若いエンジニアは名前が篠原という
加納よりも四歳年下だ。「念の為、本田さんと伊藤さんにも連絡入れて起きます」
―――ぷるるぷるる
伸也のスマートフォンにメールだ。『不審な侵入者が有った為、ブレイクファイヤー使用しました』
「しょうがないな、また子供の悪戯だろうに」伸也は呟いた
「念の為にEB装置すべてのインターネット回線遮断しとくか?」
「序でに俺の作った新型のウィルス除去プログラムも起動と」
「あ、これ木村さんに連絡入れとかないといけないんだよな」一人ブツブツ呟く伸也でした
伸也はその時U棟クリーンルーム直描室内のワークステーションに向かってプログラミング中だった
ワークステーションの警告サイレンがなり、メールが一通届いた
『不審な侵入者が有り新型ウィルス兵器使用しました』
伸也は木村にテレパシーを送った。「EB装置は全てオフラインです」
「α波発生ASICの描画中なのに、誰だろう」
伸也は不審者リストをワークステーションで取り寄せた
「石井拳士郎?」こいつか?
伸也は木村に「石井拳士郎」とテレパシーを送った
木村から直ぐに返事があった。「分かりました」と一言
「久しぶりにサイコキネシスいきましょうか」伸也はワークステーションのネット回線に進入し、ネットログを調べ、石井拳士郎なる人物のネット回線へ接続を開始した
数秒後「ごめんなさい、もうしません」とテレパシーがあった
石井からである
「もう、二度と来ない様に」とメールを石井に送った
そして、EB装置のネット回線を全てオンラインにした
その後、伸也はクリーンルームを出て、喫煙所に向かった
何故か伸也はマイルドセブンの1mを吸っていた。そして直ぐにクリーンルームへと引き返した
「木村さん、サイバー攻撃に備えて新たにウィルス撃退ワクチンの製作を急いでください」加納指揮官の声だ
「了解しました。伊藤君にも連絡入れますか?」
「そうして下さい」
木村はテレパシーの方が早いと思いワークステーションのネット回線を利用し伊藤に信号を送った。
信号キャッチした伸也は直ちに了承のサインを出した
「ちょっと、今日は徹夜かな?」伸也は呟くとEB直描装置横のワークステーションから過去のウィルスリストを取り出し、ホルダーからその時のワクチンをリストアップした
ワクチン製作者森泉、森泉、森泉、神山、神山・・・
「こんな時代から在ったのか」伸也は呟き、リストの一番下を見た、製作者木村
「へ~」伸也は驚いた
「話が早いじゃん、木村さんか」
「もしも~し、木村さん?一番最近のウィルス撃退ワクチンのプログラムは何て名前?」
「是は、内密な話よ。グリミクロンネオ101ってゆう名前なの、それだけ?」
「あとワクチンホルダーにアクセスするユーザー名とパスワードは?」
「それは~ユーザー名は取り合えず木村で、パスワードはDIRECTWRITINGよ」
「何でパスワードが其れなんだよ?」
「しょうがないでしょ、思い付かなかったのよ。絶対秘密だからね」
「了解、返事は明後日かな」
ワークステーションから警告音がした
「ブ~ブ~EB直描終了しました」
「よし、サンプルワクチンでも作るか」伸也はそう呟くと、何処にも繋げていないノートパソコンを取り出しカチャカチャといじり始めた
午前0時、時計の針は日付が変わった事を標した
加納は溜め息を付いた。「ワークステーション全てオンラインからオフラインへ」
「明日は日曜日か」伸也が呟いた
息子勇也の運動会だ
伸也は4年前に由果という名の娘と結婚していた。しかし式は上げていなかったのだ
母と由果、そして勇也の四人家族だ
「よし、ワークステーションは非常事態モードにしておこう」伸也は息子の為に普段余り使わないモードにEB直描用ワークステーションを操作した
「ネット回線はオンラインでと、うん是で良し」
プロテクトコードHIT、パスワードはEBDIRECT
翌朝、「さあ、勇也今日はお父さんも見に来てくれるからね」優しそうな由果の声だ
いったい何処で知り合ったかって?5年前に同期の仲間たちと合コンをしたのだ
「うぁ~ん、こけたぁ~」勇也が伸也のもとへと走って来た
「うん、頑張れ」伸也の普段出した事のない声を出し、勇也を見守った
そして、和やかな日曜日は過ぎていった
U棟喫煙室にて
伸也と加納がいる「昨日は参ったよ、車レッカーされてたよ」伸也の愛車フェラーリーテッサロッサを路駐していたそうだ
「しょうがないですよ5時間でしょ?」加納は自分も経験在るとばかりに伸也に言っている
「それはそうとU新メモリのロット、やってるんでしょ?凄いな~直描は引き手数多ですね」
「それでね、ワークステーションもう一台増やそうと思ってて」
「良いですよ、大歓迎です」加納はもう一本タバコを銜えた
「今度、誰か紹介してください。勿論女の子ですよ」加納も彼女が欲しかったようだ
「良いよ、女短の娘で知り合いいるから」妻、由果の後輩の女の子を伸也は紹介する事にした
今日は週に一回のワークステーション会議の日だ
研究所内の全てのワークステーションの間でチャットを使い会議をするのだ
本日の議題は「不審郵送物の取り扱いに付いて」である
指揮するのは今日は木村だ
「では第553回ワークステーション会議を開始します」
・・・「最近、不審な郵送物が増えて来ているようですが、その報告をお願いします」
236番ワークステーション「無記名の郵送物で、開けては駄目と書かれた郵送物がありました。見るからに不審だったので上司に報告しました」
木村のワークステーション「で、郵送物は如何しましたか?」
236番ワークステーション「ウィルスワクチンを使い処理しました、どうもそれは増幅系のウィルスで、ホルダーに訳の分からない書類を勝手に作るウィルスでして、結局ワクチンによって処理出来たのですが」
157番ワークステーション「それなら、此方にも来ました。同様にワクチンで処理しました」
―――木村のワークステーション「最新のウィルスには、最新のワクチンが必要なようですので、後で全使用者に最新型ワクチンを送ります。以上で会議終了とします」
研究所のワークステーションの数が300台を越えました
そしてULSI開発研究所は秋栄電機ULSI開発研究所と名前を変えました
是により研究所は秋栄電機の持ち物となり、人事など秋栄電機によって行われる事となりました
伸也はEB描画技術開発室長兼務ネットワーク管理人代理となり、ワークステーション全てを管理する立場となったのです
―――始めましての人が多いと思いますが、伊藤伸也と申します。趣味は愛車フェラーリでドライブする事です・・・
―――013番ワークステーションを使用していますので、何か御用の方は此方までメールを送って下さい。
篠原が加納に不審者進入ルートを報告して来た
「どうも、古いタイプの設計ツールCAEKOを通じてアクセスしてきています」
「あ~あれはセキュリティーが甘いからな、しかしCAEKOの存在をどうやって知ったかだが」
「多分、内部に知り合いがいたとしか思えないのですが」
「しかし、CAEKOを操作できる人間はそんなにはいないのだが」
「伊藤さんに聞いてみましょう」
「うん、それがいいかもな」
ハッカーは大抵単独犯が多い
しかし最近徒党を組んで、集団でハッカー行為をしている連中がいるという情報があった
伸也は対ウィルス戦略兵機成る者を考案中だった
ウィルスと判断されたファイルに対して即座のプログラム破壊と消去を目的とするプログラムだ
「木村さんはハッカーを如何思いますか?」伸也がテレパシーを使い木村と交信をしだした
「ほっとけば良いんじゃないの、多分趣味の世界だから」
「悪趣味だよな、でもハッカーがいるから我々も存在しているんだからねぇ」
「今考えているのは、フローティングオンオフライン接続って言うのだけど、超機密事項なんだけどね、新しいネットワークの構築を考えているの」
「そんな大事な事、話しちゃって良いの?」
「うん、伊藤君だしテレパシーだからオフレコねぇ―――」
「オフレコ?まあそれでね、ハッカーの事だけど。この前捕まえた石井って奴を使って、新型ウィルスを作らせる訳、そのウィルスを使って攻撃してきた奴を逆に攻撃するって考え、妙案でしょ?」
「それって法律に引っかからない?」
「目には目をだよ」
「それよか、うちの旦那がね危険物取り扱い責任者の試験受けるって言うのよ、あの歳で大丈夫かなと思って」
「へ~妙な方向に向かってるねぇ、まあじゃあまた今度U棟喫煙室で」
「何で喫煙室なのよ~」
木村は交信を絶った
伸也は001番ワークステーションにメールを送ろうとしていた
001番はU開第五部加本部長の専用ワークステーションだ
「――ご無沙汰しております。いかがお過ごしでしょうか?ところでハッカーを使って防衛システムを作ろうと思っています。宜しければ了承ください――」