『透きとおるものの記憶』
掲載日:2026/01/09
とりあえず読んでみてください。
あの せせらぎのなかに
わたしは まだ あなたの声を聴いてゐた
それは 風のかたちをして
水面に そっと ふれては消える
風は あらたな風と
かさなりあふことを 知つてゐた
わたしが わたしになるまへ
はじまりへと 舞いおちた
ひとひらの 時間
あれは かげろうではなく
たしかにあつた 想い出の交差
ふたつの影が すれちがふとき
ひとつには ぬくもりが残り
もうひとつには 忘却が
やさしく 降りる
影なきものを ひとは追ふ
透きとほるものを 抱きしめようとする
それが 夢であつても
それが 終はりの朝に
ふとよぎる 水の音であつても
──そして わたしは 思ふ
わたしは あなたのなかにゐた
あなたは わたしのなかにゐた
それは いまも 耳の奥で
しずかに 息づきながら
流れつづけてゐる
読んでくださった方々、ありがとうございました。




