真の平和国家邪神王国
「やったー、日本人だわ!」
山道を歩いていたら、日本人女子と出会った。
こちらは徒歩、幌馬車が追い越すと思って道を空けたら、馬車が止って黒髪の女子が出てきた。
「イエーイ!」
ハイタッチを求めてくる。思わず手を出す。
そして、
ハグされた。明るい子だな。
「おい、ちょっと」
「あ、ごめんなさい。奥様の前で」
「違います。違うよな」
「まあ、良かった。立候補しようかな」
エスダが睨んでいる。ツンとそっぽを向いた。
「情報交換をしたい。俺は松永康夫32歳、日本時代は自衛官から傭兵をしていた」
「まあ!自衛官、あの時は大変お世話になりましたわ。私は佐山愛子、女子高生17歳、クラス転移で来ました。一人だけ逃げて来たの」
「え、自衛隊に世話になった・・」
「じゃあ、戦争はお詳しいのですね」
「いえ、いえ、最近の戦争は分かりません。ましてやこの世界の戦争は歴史学者レベルでないと難しいと思います」
「まあ、信頼できるわ。私、この世界で『知っている!知っている!』という日本人がすぐに亡くなるの見てきたから」
この子も人の死を経験したのか。
相談した。安住の地を求めている。
「じゃあ、我国に来ませんか?邪神王国です」
「はい?」
「女神信仰圏から外れていますが、10日の距離です」
行く事にした。馬車に乗せてもらった。彼女は商人だ。一応用心棒として銃は出しておく。
エスダは終始ムッとしている。
邪神王国は四方を山に囲まれている。とても守りやすい国だ。
人口は30万人ほどだという。
入国審査が通って。
「我が邪神王国にようこそ」
「どうもです。あの武器は・・」
「どうぞ、どうぞ」
担いでいる銃は簡単にOKをもらった。
佐山の商会に行く。ここで干し魚や食料を売るそうだ。
冒険者ギルドに行くが。
「よお、兄さん。新顔だね。良いクエスト紹介しようか?」
「お願いします」
臨時にパーティーを組み。魔獣を狩る。
銃を出し説明するが、
「「「分かった」」」
「なら、俺たちサポートした方が良いな」
分け前は等分に分ける。
ここで気になることがあった。
分け前は等分で良いが、働けない冒険者がいた。足を怪我しているようだ。
「サムソンさん。俺が背負うから見張りでもしてくれないか?」
「はい、いいのかい?」
皆、助け合っている。
邪神王国だろ?
仕事はなんなく終わりそのまま別れた。
「マツナガ、また組もうぜ」
「ああ」
そのことを佐山に聞いたが理由は話してくれない。定住を進められた。
「フフフフ、松永さん。いっそここに住んじゃえば?」
「それもいいな。でもエスダの気持は・・・」
「エスダちゃんはエスダちゃんの人生があるわ」
そうだよな。エスダは・・・
「マツナガ・・・出て行こう」
「ああ、もうちょっといよう。いたい」
外に出たがっている。
気持は分かる。ここには悪意は全くない。ワナかと思うぐらいだ。
そして気がついたことがある。
佐山さんの地位が高いことだ。
国王陛下が店まで来られた。
「陛下にご挨拶します」
呆気にとられる俺たちにも寛容だ。
「よい、よい、外の民じゃ。礼儀は省略じゃ。マツナガ殿、歓迎する」
「ご挨拶します」
「冒険者じゃそうじゃな。でな。クエストを発注するぞ」
「謹んでお受けします」
クエストを受けて驚愕した。訓練の監修だ。佐山が指揮を執り。
天幕を立てる。
「皆さん。この線が境です!では訓練汚染者は進んで下さい」
「「「はい」」」
「訓練兵士の方の指示に従うこと」
「「「はい!」」」
たまげた。兵士の姿は・・・防護服・・・全身を覆い。厚いマスクで口を覆っている。
「ここで衣服を脱いで下さい」
「汚染した服、物はこの大型土嚢に入れて下さい」
「次はシャワーです」
まるで除染所だ・・・まさか。シャワーまである。
次の言葉で確信した。
「放射能をながして下さい!」
「いいですか?放射能とは放射線を発する能力のことです。放射線は光と思って良いです」
そして、最後は・・・聖女がいて。
「浄化!」
裸の男女を清めている・・・
「松永さん。どうですか?」
「どうも、こうも除染所だろ!邪神って一体・・」
「フフフ、邪神ルル様の権能の一つですわ」
「目だな。目を覆うものが無ければ被ばくするぜ。それ以外はよく出来ている。汚染された衣服や物は?」
「ええ、大型土嚢に入れて、古い鉱道の中に入れます」
「そうか・・・もしかして、君の出身地は・・・」
「質問です。除染について聞きたいのですが、ホットスポットは分かりますが、通常の土はどの程度掘ればいいのですか?」
「約五センチだ・・・」
「分かりました。五センチですね」
確信した。ここの神は放射能だ。鉱山、まさか、ウランの精霊か?
俺は宿に帰りエスダに促す。
「外に出よう・・」
「うん」
「エスダ分かっていたのか?」
「何となく・・ぼんやりとした恐怖に包まれていた」
この世界には魔法がある。この世界の住民は見えない力に敏感なのか・・
「佐山、すまない。外に世界に出る」
「あら、残念・・・松永さんだったらこの国の幹部になれるのに」
その時、銅鑼の音が聞こえた。
「カーン!カーン!カーン!」
魔道拡声器で放送が流れる。
「女神教の討伐軍が来ました。規模は二万と見積もられます。臣民の皆様は定められた行動を取って下さい。足弱。女性、子供、非戦闘員は家から出ないこと・・ルル様が出陣されます」
街の者に慌てている様子はない。
「あれ、十年ぶりか。何故今?」
「なんでも魔王討伐が決まって、女神教徒さん活性化しているみたい」
「それ考えると教義って必要なのかな?」
「これ、他の宗教の悪口は言わない。だって、私達も昔はこうだったのだから」
「「「「違いない!」」」」
こいつら邪神に絶対的な信頼を置いている・・・
「邪神ルル様のお渡りでございます!皆様、家の中に入って下さい」
金属の箱を乗せた輿を担いでいる一行が街を通る。あれは鉛であの中に邪神がいるのか?
3日後、敵軍は谷間で全滅したらしい。
その後、除染所の開設。
風魔法士が敵軍の来た方向に風を流し。数日経過してから死体の処理をする。
皆、厚手の防具服を来ている。
「死体は?」
「燃やしたら大気に行くから埋める一択だわ」
「ちょっと待て」
俺は自衛隊の防護服と放射線測定装置、防護マスクを出した。
「君たちの再現能力には敬意を表するがマスクが不十分だ。目も覆え!」
皆は口々にお礼を言う。
「佐山、教範も出しておくから・・・」
ここで寝落ちした。莫大な魔力を使い失神したようだ。
目が覚めたら、右手に感触を感じる。
「エスダ!」
エスダが俺の右手を握って寝ていた。
「・・マツナガ、生きていた」
「何、やっているのだよ!」
「邪神の聖女とサヤマが来たよ。夢うつつのマツナガと関係持とうとした・・・」
エスダが操を守ってくれたのか。能力見せたから、引き留めか・・・
抗議をしたら、佐山はペロと舌を出して言い放つ。
「ざ~んねん。エスダちゃんがいたからね」
兵を使って引き留められるのか?
と思ったが、国王まで見送ってくれた。
「マツナガ殿、感謝に堪えない。国民を代表して見送るぞ。また来て欲しい。指命クエストを出すからその時はよろしくたのむぞ」
「「「「マツナガ殿の行く先々に幸あれ!」」」」
「み、皆様、お世話になりした」
俺は最後に気になる事を聞いた。
「佐山・・・出身地は?」
「〇〇〇だよ」
そうか、原発と共に生きる道を選んだ街・・・
膨大な利権があったが、危険と隣り合わせ。そして、あの災害が起きたのか・・
「私は邪神様と生きて行くと決めたわ・・・」
そうか、この地の人が良いのは・・・恐怖によって統治されているのか。
クエストが来たら定期的に行こうと決心はした。
まだ、安住の地は遠いな。
最後までお読み頂き有難うございました。




