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共鳴の暴走、あるいは臨界点突破の青

「セッション、開始から300秒。全員のバイタルが同期リンクし始めています。……これは、もはや統計学の範疇を超えていますね」


つむぎの報告する声が、どこか遠くから聞こえる。

部室の空気は、まるで高電圧の回路のようにパチパチと震えていた。

中央で向き合うゆいとあずさ。そして彼女たちを囲み、指先を重ねるみおとりつ。


ゆいは、りつが提唱した「伝統の型」を忠実に守りながらも、その内側に、かつてルナとして描いた『青いクラゲ』の脈動を走らせていた。


(熱い……。一人で禁呪を描いていた時とは違う。四人の体温が、数式を通じて私の中に流れ込んでくる……!)


「あはは! 何これ、最高に気持ちいい! 自分の境界線が溶けて、ゆいっち先輩の中に混ざっちゃいそう!」

みおが恍惚とした声を上げる。彼女の奔放なエネルギーが、厳格なりつの型を「弾性」へと変容させていく。


「くっ……。私の『型』が、これほどまでに侵食されるなんて……。七瀬ゆい、あなたの理論は、一体何を……!」

りつは必死に理性を保とうとするが、彼女の厳格な正義感すらも、ゆいが構築した「弾性の渦」に飲み込まれていく。


その時、つむぎのホログラム端末が真っ赤な警告を発した。


警告アラート! ゆい先輩の精神負荷が 120% を突破。このままでは、意識が理論の深淵に呑み込まれます。……強制終了シャットダウンが必要です!」


「待って、まだ……。まだ、この先に『誠実の核』があるはずよ……!」


ゆいの瞳が、現実のものではない青い光を帯びる。

彼女の視界には、部室の壁が崩れ、光都アークラインの巨大な塔が、青いクラゲの群れに包まれて崩壊していく幻覚が見えていた。


(ガードじゃない……。私は、世界を拒絶したかったんじゃない。私は……ただ、触れたかっただけなの!)


ゆいの絶叫に近い思考が、5人の意識を一つに束ねた瞬間。

部室全体が、爆発的な青い光に包まれた。


「――っ!」


沈黙。

気づけば、5人は床に倒れ込んでいた。

デバイスは煙を吹き、モニターには『究極マナー理論:β-Phase 完成』の文字が、バグのように点滅している。


「……ハァ、ハァ……。みんな、大丈夫?」


ゆいは、隣で意識を失いかけていたあずさを抱き寄せた。

あずさは、微かに目を開け、ゆいの頬に手を伸ばした。


「先輩……。今、見えました。……誰も傷つかない、本当の『温度』が」


ゆいは無言で、あずさの頭を胸に抱いた。

かつて自分を焼き尽くした炎上も、孤独も、今は遠い。

理性のガードは、今や5人の絆を守る、不可侵の聖域シェルターへと進化したのだ。


だが、この「暴走」の記録は、大学の監視ネットワークを通じて、ゆいの過去を知る「ある人物」の元へと送信されていた。

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