表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/48

審判の朝、白銀のドレスコード

12月25日。光都大学の大講堂は、静謐な狂気に満ちていた。

内外から集まった学術的権威、そして和先輩が配置した《ORACLE》の監視端末が、獲物を待つ蜘蛛の目のように光っている。


控室の空気は、吐き出す息さえ凍りそうなほど張り詰めていた。

ゆいは、鏡の前に立っていた。手元には、かつて自分を守るために作り上げた、非の打ち所がない「完璧な正解」が書かれた原稿がある。


「……ゆい先輩」


あずさが、ゆいの背後からそっと声をかける。

あずさ、みお、りつ、つむぎ。4人は今日、あえて光都の規律ドレスコードを微かに無視した、それぞれの「色」を身につけていた。


「この原稿、捨ててもいいかな」


ゆいの言葉に、4人は驚き、そしてすぐに深く納得したように微笑んだ。

ゆいは、自らの手で完成された理論の原稿を破り捨てた。それは、かつて「ルナ」として炎上した際にしがみついた「理論の盾」との決別だった。


「今日は、マナーを教えに行くわけじゃない。オレたちが古民家で、あずさの部屋で、この部室で見つけた『体温』を……ただ、ありのままに伝えに行くだけだ」


つむぎが、端末の最終チェックを終える。

「準備完了です。プレゼン用サーバーの防壁は、私の『熱暴走ロジック』で書き換えました。和氏の《ORACLE》が干渉してきた瞬間、それは私たちの『情緒』を増幅する回路に変わります」


りつが、ゆいの襟元を丁寧に整えた。

「綻びを隠す必要はありません。その綻びこそが、今日、人々の心を繋ぐ『針穴』になるのですから」


みおが、ゆいの背中を勢いよく叩く。

「ゆいっち先輩! 世界で一番不作法で、最高に誠実なセッションにしようよ!」


チャイムが鳴る。

それは、ゆいを断罪しようとする者たちの合図であり、同時に、新しい時代の産声うぶごえへのカウントダウンでもあった。


ゆいは、あずさの手を最後に一度だけ強く握った。

「行くわよ。オレたちの『δ(デルタ)』を見せつけに」


白銀の雪が舞う中、5人は真っ直ぐに、審判の壇上へと歩み出した。

背後で、《ORACLE》の警告音が、かつてないほど不快な音を立てて響き渡っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ